株式会社Helte 代表取締役 後藤学
日本語でのクローバルコミュニケーションサービス「Sail」を主軸に日本のシニアを元気に、そして海外から日本へ就職したい人材をサポートするなどの事業を行う株式会社Helte。今回は代表の後藤様にお話をうかがいました。
外国人との交流を日本のシニアの生きがいに
事業の内容を教えてください。
分断のない 活力ある社会を目指すことを目的に、日本のアクティブシニアと外国人を結び付け、1対1で、日本語で25分間交流してもらうというサービスを2018年の11月から行っています。
外国の方に対しては日本のことを知ってもらいたい、日本人と交流してもらいたいというのが目的です。日本のシニアに対しては日本語で気軽に交流できることからエンタメや生きがいになればいいなと考えて事業を始めました。
始めてみてからわかってきた付加価値もありました。
これまで20万会話以上が生まれた中で、東京大学との共同研究により、始める前から半年間の間でシニアの孤独感がなくなってきたという結果が出ました。
外国人の方々は日本に来たい、就職したいという思いが強まっています。
会話データの30秒で認知症の手前のMCIの判断ができることもわかってきたので、今後は「Sail」のサブスクリプションモデルを積み上げて主要なKPIを追いつつも、AIやビッグデータも活用しながらシニアの健康状態を可視化していきたいと考えています。
今自治体、保険会社、製薬会社と連携して治験などに活かしていこうとしているところです。
もう一つは、自治体との連携で医療費を抑えるという試みも行っていて、ICTに利用できるんじゃないかという話になりまして、ここにその先ほどのAIなどのデータを組み合わせてシニアの身体だけでなく心の健康を維持していこうという取り組みを行っています。
一方で海外側の利用者は現在約2万5千人いるのですが、そのうちの68%が日本で就職したいという希望を持っているため、企業とのマッチングによる人材紹介事業も行っています。
この事業を始められた経緯を教えてください。
僕は元々母子家庭で母がフリーランスのカメラマンということから、アメリカと日本を行ったり来たりする生活をしていたので、幼少期から海外との縁がありました。
大学時代にアメリカとインドに留学しまして、アメリカでは公民権に強い関心をもって勉強していましたし、インドでは哲学的な思想を学びました。
なぜかと言うと幼少期の海外経験から、自分は人と違うんだというコンプレックスが強かったからです。
自分自身がマイノリティだと感じていることもあって、黒人の方たちの公民権運動やヒンドゥー教のカースト制度を学ぶことで生き方を模索していたのだと思います。
特にインドでは、道で亡くなっている方がいたり、生きるために我が子を売る方がいたりと大変ショッキングでしたが、こうした大変な中でも日々の生活に楽しさを見出している姿を見て影響を受けました。
帰国後はすぐに就職できて働いていましたが、それでもまだ自分がどこに属しているのかわからなかったので、ひたすら旅をしてましたね。
その中で、どこに行っても「日本ってすごい国だよね」と褒められることが多かったです。
こうした経験から日本人としての誇りを持つことができ、アイデンティティがやっと定まりました。そこで、世界と日本にとって有意義な仕事を作りたいと思うようになりました。
ただ、当初はここまでの広がりは考えていなくて、青臭い気持ちでした。まあ、今もなんですけど(笑)。事業を始めてからのご縁や学びによって成立してきた形です。
起業する際に迷いはなかったですか?
無知だったので逆に迷いませんでした(笑)。
今もし当時の自分と対話できるなら、3〜5年は最初に勤めた会社で辞めずに働く、もしくは来世なら公務員として働くように言うかもしれません。
今ももちろん楽しいんですが、大変な部分もありますから、数年はしっかり修行した方がよかった面もあると思いますね。
どう生きるかではなくどう生かされるか
仕事におけるこだわりや譲れないポイントはありますか?
事業をやる中で大変だとか辛いだとかいうことは本当に多いのですが、そうした中でなんでこんなに大変なことをやってるんだろうとわからなくなってしまうこともあります。
そうした時に自問自答を繰り返して「分断のない活力のある社会を創る」というビジョンを常に持ち続けるようにしています。
例えば人材紹介の事業では、数さえこなせば大きな利益になることはわかっているのですが、数や利益ばかり追うと大切な部分が置き去りになってしまう可能性があります。
素敵な会社で素敵な人に働いて欲しいので、常に「何のために?」とビジョンに立ち返り、判断するようにしています。
それでは今までで最大の壁は何ですか?
やはり資金の調達ですね。今までも資金が底をつきそうになったことがありますし。
それから、事業を始めた当初は事業内容を誰も理解してくれないという期間が長くて、辛かったです。
当時はまだSDGsのような考え方も一般的ではなかったですし、門前払いもありました。事業アイデアって自分の子供みたいなものなんですが、それを毎日のように否定されたり批判されたりするのが続くとしんどいです。
ただ、このことが逆に自分は本当にこの事業がやりたいのか、どこに行きつきたいのかという信念の裏打ちになっていたのだと思います。
今現在お仕事をされる中で前に進み続けるモチベーションは何ですか?
大学の時はどう生きるべきか、自分が所属できる場所はどこかを探している感じで、しがらみがないのが心地よかったりしたんですが、事業を始めてみてそれが変わりました。
どう生きるかではなくどう生かされるかという考えになりました。
最初に事業に投資してくれた人がフランス人なんですが、その人が僕の「オビ=ワン=ケノービ」のような存在です。
僕は父親がいない中育ったので、彼と一緒に釣りに行ったりバイクで山に登ったり、ビジネスも教えてもらったりして、彼のために諦めるわけにはいかないなと思っています。
今は一緒に働くチームメンバーなど恩返しをしたい人も増え、これが大きなモチベーションになっています。
多様性のある社会の実現と循環を目指す
今後の野望や理想とするゴールがあれば教えてください。
日本がもっと多様性を受け入れてくれるようになるといいなということは思っています。
そのために僕らができることは、外国の方が身近に、例えば社内に普通に居ることで色々な意見を持つことができるというところだと思うので、人材紹介には特に力を入れていきたいです。
シニアに関しても今までの経験を伝えるということで健康寿命が延びるということがわかっているので、こうした取り組みで生態系をぐるぐる回していけるようになりたいですね。
そして2027年には上場できるよう目指しています。
最後にこれから起業をしたいという方へメッセージをお願いします。
これは自分にも言い聞かせていることなんですが、事業をはじめる時って恐怖もありますが、泥船でもいいから押してみる、沈んでももう一度岸に戻って考えればいいから、まずは漕ぎだしてみるということです。
出航してみないと海が荒れているかどうかわかりませんから。やってみるうちにクルーが増えて形になっていくんだと思います。
サービス名の「Sail」は「帆」を意味しているんですが、皆さんにも帆を上げて出航して欲しいと思います。
事業の広がりが大きく、日本だけでなく世界の未来まで変えていくような勢いを感じました。ありがとうございました!
起業家プロフィール:後藤 学 氏
大学では国際ビジネスを専攻。在学時に米国、インドへの交換留学を経験し、その後30ヶ国を放浪。
大学卒業後、ITコンサルタントとして自動車業界、製造・流通業界などのクライアントに対してITシステムの導入、地域戦略、業務改善サービスを提供。
2016年に株式会社Helteを設立、現在に至る。
企業情報
法人名 |
株式会社Helte |
HP |
|
設立 |
2016年3月 |
事業内容 |
オンラインコミュニケーションサービス「Sail」の運営業務 オウンドメディアの運営 海外人材と企業のマッチング |
沿革 |
2016年3月:会社設立 2018年11月:会話コミュニティサービス「Sail」ローンチ 2018年11月:株式会社カヤックとの資本提携 2021年4月:1億円の資金調達 2021年12月:神奈川県との連携協定締結 2023年1月:外国人人財紹介「世話カツ」ローンチ |
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