株式会社エアドア CEO 鬼頭史到

透明度の高い公開情報や、オンラインで多くの手続きが完了できる仕組みを背景に、ローンチして1年ほどながら、すでに高い評価を得ている賃貸プラットフォーム「エアドア」。今回は同サービスを展開する株式会社エアドアで代表を務める鬼頭史到氏に、事業が生まれた背景、これまでの最大のピンチ、今後の展開プランなどについてお話を伺いました。

 

満足度の高い部屋探しをオンラインで行う「エアドア」

事業の内容をお聞かせください

弊社では、“オンライン中心でお部屋探しを完結する”という仕組みのもと賃貸物件情報を提供するプラットフォーム「エアドア」を運営しています。

 

通常ユーザーさんは、仲介会社さんと電話で話し、店舗へ行ってお部屋探しをするといったオフラインでのやり取りが多いのですが、そのサービス内容は多くのことがオンラインで決済される現代において適正とは言えません。

 

そこで「エアドア」では、契約業務など多くがオフラインで行われていたお部屋探しをオンライン上でできる世界を構築しています。

 

お部屋情報の掲載も管理会社が行なっているため、ユーザーは常に最新の不動産情報を閲覧することができ、掲載物件を見て問い合わせをしたにも関わらず「すでに契約済み……」という状況がありません。

こうしてオンライン上でお部屋を探し、リクエストした内見は現地集合・解散ができ、気に入った場合はその場でのお申し込みが可能です。

 

もし違う物件を探したいとなった場合は、引き続き「エアドア」で探していただく。その場での追客、営業は一切しません。

また一般的には家賃1ヶ月分を求められる仲介手数料ですが、物件の管理会社から掲載料をいただく弊社のビジネスモデルによって、「エアドア」では無料もしくは2万2000円に均一化しているところも特徴です。

 

非常にユーザーファーストなのですね。事業はどのような経緯で始められたのでしょうか?

私が新卒で入社したのが“不動産テック”の事業を展開する会社でした。

 

当時はまだシステム会社と呼ばれていて、クラウドという言葉が社会に浸透していないころ。そこから10年ほど経て、今でこそ不動産テックという言葉もよく耳にするようになりましたが、テクノロジーによる恩恵の多くは事業者が受けており、“ユーザーのお部屋探し”という顧客体験には進化が見られないように感じたのです。

 

転職先の会社で経験したホテル事業の場合、ユーザーはオンラインで部屋を予約するのが一般的となりました。けれど不動産の場合、ユーザビリティの向上はほとんど見られないのです。

 

これは課題だな、と。でも誰かがいつかは手掛けるだろうと思っていたんです。ところが誰もしない。それなら私たちが変えようと思い、手掛けることにしたのです。

 

常に信頼度の高い情報を提供する 

仕事におけるこだわりを教えてください

嘘をつかないことでしょうか。

 

不動産業者とユーザーとの間に生まれる情報の非対称性というものは、100%改善できないと思うんです。

 

どうしても業者側が多くの情報を持つことになりますし、そのため売り上げを求めて発信される企業の情報というものに、「ユーザーは果たして十分に納得しているのだろうか?」といった点は強く意識しています。

 

ただ、このフェアネスを意識し過ぎると我々も疲れてしまい、継続性を保つことが難しくなってしまいます。

 

企業として利益を追求するところは必ずあって、そのことをお客様には理解していただきながら、公平性をできる限り意識する。その姿勢には、かなり強いこだわりを持っています。

 

そのこだわりを抱いた経緯を教えてください

まず私が大学入学のため地元・福岡から東京へ出て来たときに、右も左もわからない、何を信じれば良いのか分からないという状況を経験しました。

当時と比べ、今という時代はさらにオンライン上に情報が溢れていて、私が経験した以上に“何を信じれば良いのか分からない”状態になっているような気がするのです。

そんな自身の経験と今という時代を重ね合わせたとき、“ちゃんと信頼度の高い情報を届けよう”と、そう思い至りました。

 

起業から今までの最大の壁は何でしょうか?

想定していた事案が期待通りに運ばなかったことがありました。

 

創業期のことですが、データ連携をお願いしようと思っていた企業から良い返事をいただけずに事業プラン変更の必要性が生まれ、新しい提携先を探すことになったのです。

 

きっと大丈夫だろうと、そういった自分の思いありきで進めているのも今思えば良くなかったのですが、起業早々のタイミングでしたので精神的にはキツイものがありましたね。

 

大好きな不動産業界に好循環を生み出したい

それでも進み続けるモチベーションは何でしょうか?

 

新卒で不動産業界に入り、のちにホテル業界の会社に転職したのですが、そこで1年ほど勤めた頃に改めて前職の日々が楽しく思い出されました。

 

やはり不動産業界で働きたい。そう思い舞い戻ってきたからこそ、シンプルに良い業界であって欲しいと思っているのです。

 

しかし実際には、「サービスの透明性が高いと言えない」と感じるユーザーさんが多くいらっしゃるのではないか、と私自身が思っています。ですから、まずは自分たちが上質なサービスを提供していく。そこを徹底していきたいですね。

 

そして社会における弊社や「エアドア」の存在感を高めることで、より多くの素晴らしい人材に業界に入ってきていただく。そしてさらなる良いサービスが生まれていく。好きな世界だからこそ、そのようなポジティブな循環を生み出していきたいと思っています。

 

今後やりたいことや展望をお聞かせください

現在のサービスモデルについては、1年展開してみて、とても良い感触を得ています。とはいえ満足することなく、今後も情報の透明度を追求してユーザビリティを高めていきたいですね。

 

加えて、今のところは東京と神奈川だけのサービス展開になっていますので、中長期的にはこれを全国で展開できるスケールに拡大したいと考えています。

 

全国どこからでも標準のサービスを受けられるようになれば、東京へ行く人、東京から他のエリアへ行く人、また地方都市間で移動をする人にも、満足度の高いお部屋探しをしていただけると思っています。

 

スピード感でいえば、首都圏だけでしたら、5年以内でその状態を作り上げなければな、と思っています。全国津々浦々と考えると10年ぐらいのスパンでしょうか。エリアによって慣習なども違うと思いますので、一概に言えないところもあるのですが。

 

住まい探しなら「エアドア」。そのような時代になりそうですね。

お部屋を“自分で探す”サービスとして、最も認知度の高い存在にしていきたいですね。

 

もちろん不動産会社でいろんな賃貸物件を紹介してもらって部屋を探す方法がフィットする人もいます。それは方法の違いであって、どちらのサービスが良い悪いではなく、買い物をネットショッピングでするかスーパーでするかの違いのようなものなのかな、と。

この点において、私たちが想定しているユーザーさんはインターネットに慣れている人たち。オフラインでのやり取りが多くを占める従来の方法にストレスを感じている方となります。

 

まずは目の前の仕事をやり切る。それから夢実現のステップへ

では最後に、起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

「絶対に起業したい」と思っているのなら、ぜひ起業して欲しいなと思います。

 

ただ現在就いている仕事を中途半端にしたままでは、起業をしても上手くはいかないので、まずは現状の責任をしっかり果たすことが大切です。

 

自身が納得するまで向き合うことができたなら、起業をしても同じように目的を達成することはできるでしょう。夢は諦めず、ぜひ叶えていただきたいです。

 

私自身も、やり切ること、夢を諦めないことは、常に意識していました。

 

高校時代は野球に夢中になっていてプロ野球選手を志していました。しかしその夢を諦めたのち、大学ではダンスに励み、プロのダンサーになる夢を抱いていたのですが、いざ就活の季節が訪れるとその夢はどこかへ……意外と自分自身で夢を諦めているんだなと実感したのです。

 

そして社会人になってから抱いた「起業する」という夢に対しては、これも諦めると自分には何も残らないなと思って。

 

だから、「起業する」という思いはずっと持ち続けていました。

 

そのためにも、まずは目の前のことをおろそかにせず、やり切ってから夢に挑もうと。その思いを大切に実行に移せたからこそ、今があるのだと思っています。

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

 

 

起業家データ:鬼頭史到 氏

福岡県出身。立教大学在学中にストリートダンススクールの立上げメンバーとして活動。 2010年、不動産業界特化型SaaSの株式会社いい生活へ新卒で入社。新規事業及び営業部門の部門長を歴任。新規事業の一環として入居者アプリを立上げ、プロダクトオーナーを務める。2019年にインド発のホテルスタートアップOYOへ入社し、初年度年間トップセールスを記録。2020年に退社し、起業の準備へ。2020年9月28日、株式会社エアドアを創業。 

 

企業情報

法人名

株式会社エアドア 

HP

https://airdoor.jp/ 

設立

2020年9月 

事業内容

賃貸メディアairdoorの運営

 

 

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