株式会社イースマイリー 代表取締役 矢澤 修

「みんなと笑顔をつくる」をテーマに、社会にポジティブなインパクトを与える活動を続けている株式会社イースマイリー。

 

「社会課題の解決」と「事業の持続可能性」が両立する仕組みをつくり、福祉や子育て支援を始め、さまざまな事業に取り組んでいる企業です。現在、渋谷には子ども達の可能性を引き出し、地域を盛り上げることを目的とした「ワオ!クエスト 渋谷本町ラボ」を開校しています。

 

今回は渋谷区本町のラボにて、代表取締役の矢澤 修氏に事業内容や今後の展望などを詳しく聞きました。

 

難病を持って生まれた兄妹に誇れる人生を目標に、人を笑顔にできる事業を展開

早速ですが事業の内容をお聞かせください

弊社は「社会問題の解決と事業の持続可能性が両立する仕組みをデザインする」をテーマに、他の企業や組織と協業しさまざまなサービスを生み出しています。我々だけで何かをするのではなく同じ目的を持った人と協力し、「みんなと笑顔をつくる会社」という弊社のビジョンに沿った取り組みをしています。

具体的に言いますと、主な活動として子ども向けの絵本をつくっています。7年ほど前から子ども達がいつも観ているYouTube上で「見て、楽しんで、学べる」動画を提供したいと思い、「きっずちゅーぶ」というチャンネルをつくって実験や工作、絵本の読み聞かせ動画を公開していました。

 

始めて1年ほど経った頃、チャンネルの中で一番評価が高いのが絵本の読み聞かせだと気付きました。視聴者からのニーズがあり、我々が伝えたいメッセージをしっかり伝えられるのも絵本の読み聞かせであると考えそれからコンテンツを読み聞かせに絞ることにしました。これまでに700本ほど公開しています。動画のうち600本は我々が手掛けたオリジナルの物語で、イラストやナレーションも含め、すべて自前で制作しています。

 

最初は動画のみだったのですが、動画をずっと観てくださっていた視聴者から「紙の絵本はありませんか?」というお問い合わせをいただいたことがありました。我々も近い将来、紙の絵本を手掛けたいと思っていましたし、親御さんの気持ちを考えたら、子どもを膝に乗せて手触り感のある絵本で読み聞かせをしたいだろうと。私自身、子育てをする中で同じことを感じていたので、絵本のニーズがあることはわかっていました。

 

そんな中、ちょうど良いタイミングで紙の絵本化プロジェクトに興味を持ってくださる企業とご縁をいただいたため、出版事業を始めることになりました。

 

現在、「SDGs絵本」というシリーズも提供しています。これは絵本を通じて子ども達が社会問題を学べる機会をつくりたくて、実現させた企画です。絵本であらゆる社会問題について知っていたら、子ども達が実際にその問題を目にした時に、自分事として捉えられると思うのです。

 

このシリーズは社会問題を解決するために活動している団体と一緒につくっていて、さらに快適すぎて動けなくなる魔法のソファの提供で有名な「Yogibo(ヨギボー)」社にスポンサーについていただき、無料で計2,000冊を配り終えたところです。

 

活動内容が幅広く、ここで全てをお伝えしきれないのですが、他にも子ども達の心を豊かにすることをテーマにさまざまな活動を手掛けています。

 

この事業を始めた経緯をお伺いできますか?

いまの活動を始めようと思ったのは、筋肉が弱っていく筋ジストロフィーという難病を持つ兄と妹がいたことが影響しています。

 

兄は15歳、妹は17歳で亡くなったのですが、兄のお葬式に500人、妹の時は700人の方が来てくださって、2人がどれだけ周りの人に愛されていたのかを実感しました。同時に「自分のお葬式にはこんなに人は来てくれないだろうな」と思い、何だか圧倒されたのを覚えています。2人のお陰で私もさまざまな人との出会いと学びを得られたことに、本当に感謝しています。

 

それから兄と妹に誇れる人生を送りたいという想いがずっとあり、学生時代から社会貢献につながる仕事に就こうと決めていました。2人と同じ家庭に生まれたのはある意味、自分の使命であり運命だったと思います。

 

とはいっても、すぐにこの事業を始めた訳ではなく、最初は幅広い仕事に携われるIT企業で経験を積み、しっかりと営利を追求する事業会社の経営もしてきました。世の中やビジネスの仕組みをしっかり学んでから、2016年にこの会社を創業しました。

 

「世の中のためになっているのか?」を常に考える

仕事におけるこだわりを教えてください。

何か新しいことをする時は「世の中のためになっているのか?」を一番に考えています。

 

活動する中で「こうやったらもっと儲かるのに」と思うこともあるのですが、利益を重要視すると、どうしても社会へのインパクトが薄れてしまうこともありますもちろん、利益を出すことも持続可能な仕組みにしていくために必要なことなので、そのバランスを見つつ「世の中のため」を軸にした意思決定を常に意識しています。

 

もう1つ大切にしているのは、社会問題に関するプロジェクトを立ち上げる際、当事者と同じ目線で物事を考えるようにしています。世の中には多くの問題がありますが「自分事」としてあらゆる問題を捉えるのは誰でも簡単ではないですよね。

 

しかし当事者意識を持ってプロジェクトに携わらなければ、中途半端は伴走支援しかできないと思います。協業する団体や相手が抱える問題についてしっかり学び、相手となるべく同じ目線で物事を判断できるよう心掛けています。

 

ある意味当事者に憑依し「この人であれば、こう判断するだろう」と思える共感力を持つことが大切です。

起業から今までの最大の壁を教えてください

これまで色々な壁がありましたが、壁にぶち当たっても「越えられない壁はない!」と昔から思っています。問題があれば必ず解決方法があるはずです。私は逆境も楽しむ姿勢を持つようにしているので、壁があっても壁と思わないのかもしれません。

起業してからは事業計画書通りに物事が進まなかったり、進行していた事業が実現直前で頓挫したりもしましたが、結局ここまで来られました。壁に直面しても「越えられない」と思ったことはなく、基本楽しく活動しています。

問題や壁があっても楽しいと思えるので、飽きないですね(笑)。

 

他の人の成功に貢献し、「出会えてよかった」と思ってもらえる人でありたい

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

協働・共創した相手が我々と組んだことによって前進したことで、「出会えてよかった!」と言ってもらえるのが一番のモチベーションになっています。


そう思うのも兄妹の存在が影響しています。2人のお葬式で別れを惜しんで泣いている人をたくさん見て「2人は素晴らしい人生を送ったんだな」と思いました。それは2人が多くの人に愛され、周りの人に尽くしたからです。

 

その経験から私も人から「出会えて良かった」と思ってもらえるような人でありたいと常に思っています。

自分の信念を貫いた行動に対して、相手から感謝の言葉が返ってきた時はとくに嬉しく感じます。

 

今後やりたいことや展望をお聞かせください 

今後はビジネスの仕組みで社会課題を解決する「ソーシャルインパクトデザイン」をできるだけ多く生み出したいと考えています。

 

社会貢献をしながら利益を生み出す事業をつくり、さらにはその分野でのプレイヤーも増やすのが目標です。極端かもしれませんがわかりやすく言うと、NPO団体を始めとし社会に良いインパクトを与える団体を運営しながら、年収1000万を稼ぐプレイヤーを増やしたいと思っています。それが実現する世の中をつくるのが目下の展望ですね。



あと、子ども達の選択肢が広がる活動をもっと増やしていくことも考えています。子ども時代にさまざまな経験をすることで、大人になった時「あの時の経験があったから」と原体験から生まれた選択肢が増えていくと思うのです。

 

渋谷に構えているこの教室もその取り組みの一環ですが、今は渋谷という土地に限られているため、今後はさらに裾野を広げていきたいですね。

 

仲間を集めてすぐにやる。シンプルな成功法則

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

起業もそうですが、やったことがないことにチャレンジするのは誰でも怖いものです。怖気づくのも当然だと思います。ですが、実際やってみると何とかなるのも事実です。

 

まずは一歩を踏み出してみると、これまで見えなかった世界が一気に見えてくるので、考えすぎず行動するのが何より大事です。

 

信念を持って行動していると、そこにヒト・モノ・カネ・情報が必ず集まってきます。ただ、何もやらないと何も集まらないし、失敗経験すら積めません。

 

あと思うのは、「この事業アイデアは素晴らしいから自分の中に留めておこう」という意見をたまに聞くのですが、それは無意味だと思います。

 

大抵のアイデアは他の人も思いついていますし、あなたと同じアイデアを持つ人がすでに動き出しているかもしれない。ですので、やりたいことはどんどん人に伝えて、仲間を集めて動き出してください。人と一緒にやった方がアイデアがさらに広がりますし、面白いことを考えている人ともつながれます。

 

1人でやらずに、多くの人に自分がやりたいことを伝えていった方が結果的にうまく行きますし、いい仲間にも巡り会えますよ。

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

 

 

起業家データ:矢澤 修

1983年生まれ。難病のある兄妹とともに育った原体験から福祉を学ぶ。社会に出てからはITサービス業界にて様々な事業の立ち上げに従事。2012年にマーケティング支援事業を行う株式会社ソーシャランドを創業し、ナショナルクライアントを中心に支援を展開した後、社会課題の解決を目的とした事業を推進するため2016年に株式会社イースマイリー、2018年にNPO法人エースマイリーを創業。

 

ビジネスセクター、ソーシャルセクター双方での経験を活かし、ビジネスの仕組みで社会課題を解決する仕組みをつくる「ソーシャルインパクトデザイナー」として様々な事業開発を手掛けている。

 

企業情報

法人名

株式会社イースマイリー

HP

https://www.esmiley.co.jp/

設立

2016年3月

事業内容

・絵本関連(SDGsえほん/出版販売/共創絵本)事業

・知育動画制作・配信事業

・事業開発(創出・改善)伴走支援事業

・クラウドファンディング支援事業

・障害・難病支援事業(コミュニティ/プロデュース)

・学習支援事業

・飲食サービス事業

沿革

2016年3月 株式会社イースマイリー創業

    6月 知育動画サービス「きっずちゅーぶ」開始

2018年3月 株式会社リクルート主催の起業家支援プログラム  

      「TECH LAB PAAK」 Demo Day にて AWARD 獲得

2019年1月 障がい・難病当事者と家族のためのコミュニティイースマイリー」開始

    9月 障がい・難病に関する情報発信チャンネルとりすま」開始

   10月 選択内容によってお話が変わる「わかれみち絵本」を公開

2020年5月 出版事業「キッズチューブ出版」の開始

2021年7月 社会問題やSDGsをテーマとするオリジナル絵本SDGs絵本共創プロジェクト」を開始

2022年2月 地域と連携し”街”を題材にして社会を学び”探検力”を育むソーシャルスクール

     「ワオ!クエスト」をオープン 

 

2022年10月 社会問題やSDGsをテーマとした絵本「SDGsえほん」の提供・配信を開始

 

2023年4月

子ども達が開発したオリジナルジュースを販売するジューススタンド「ワオ!ジュース」をオープン

 

送る 送る

関連記事