【#046】課題の多いSES業界で働くエンジニアの満足感や納得感を高め、豊かさを実現したい。専門学校を開校し、目指すのは社会貢献。|代表取締役 白川 聖悟(株式会社ESES)
株式会社ESES 白川 聖悟 氏
株式会社ESESは、SES事業を行っている会社です。ネガティブな印象を持たれているSES業界を、変えていくために事業を展開しています。特に、従業員満足度やエンジニア全体の満足度を高めるために、単価連動性の評価制度や案件選択制度など独自の制度を設けているのが強みです。
ITの専門学校を卒業してもIT企業に入社する方が少ない現状を打破すべく、専門学校の設立も予定しています。今回はそんな同社の白川 聖悟氏に、具体的な事業内容や事業を始めたきっかけ、今後の展望について伺いました。
SES業界のネガティブな印象を払拭し、エンジニアが満足感や納得感を持って働いてほしい
さっそくですが、事業内容をお聞かせください
IT業界のSES事業(System Engineering Service)をしている会社です。当社でエンジニアを採用して、技術職の足りていない企業さまにエンジニアを常駐させてもらって、そこで一緒にプロジェクトを回していくというような事業をしています。
また、SESは「エンジニアを安く雇っている」ですとか「キャリアアップがしにくい」といったネガティブな印象を持たれやすいです。なので、当社では2つの制度を設けています。
1つ目は、単価連動性の評価制度です。この制度は、エンジニアの給料を市場価値にあわせた価格設定にしているので、エンジニアが報酬や給料に納得して業務に取り組めます。
2つ目は、案件選択制度です。エンジニアは基本会社の意向に沿ってプロジェクトに入りますが、エンジニアにもやりたい案件とそうでない案件があります。なので当社では、エンジニアがやりたいといった案件をさせてあげられるような制度を設けています。
この2つの制度は他の会社ではあまり見られないと思いますので、当社の強みだと考えています。
IT業界は給料が低いといわれていますが、それは多重下請け構造が理由です。常駐先のシステムを開発する場合に委託された業務が、2次請け、3次請け、4次請けのようにどんどん下に業務を落としていく、IT業界でよく見られる仕組みになっています。
どうしても下請けになるほどマージンが引かれていくので、現場で働いているエンジニアは安い給料で働く傾向にあります。また、例えば常駐先から100万円の報酬を受け取っていたとしても、経営側に多くの利益が渡っていて、エンジニアには30%程度しか報酬が入らないといったことも考えられますね。
このように、エンジニアの給料が安くなりやすい環境が業界でできてしまっているので、当社では先ほど紹介した2つの制度を設けて改善につなげています。
現在の仕事を始めた経緯を教えていただけますか?
始めた経緯は2つあります。1つ目は、僕がもともと独立を考えていたことです。2つ目は、コロナと重なってしまい、当時の会社でやっていた人材紹介の売上が7割も減少してしまい、大きく影響が出てしまったことです。
僕のなかで「このまま人材紹介1本でやっていくのは難しいのではないか」と思ったときに、何か別の事業をつくる必要があると思ったのです。
その2つの理由があって新しい事業を始めようとしたときに、前職の会社から「辞めて独立するなら、うちの支援のもと会社をつくらないか?」と提案を受けました。こちらが起業の背景ですね。
前職からの支援を受けられた理由を教えていただけますか?
僕がある程度成果を出していたからだと思っています。横浜支店の立ち上げで僕が1年ほど参加してまして、立ち上げには成功したのですがこのタイミングでコロナが流行したんです。
その際横浜支店は上手くいっていたのですが本社の業績が振るわなくて、横浜支店から僕と大坂支店の方とで本社を立て直すように指示がありました。結果1年間で過去最高収益を出しまして、支店の立ち上げと本社の立て直しが上手くいったので、そういったところで会社を持たせてもらえたのだと思います。
起業しようと思ったきっかけはありますか?
私はもともと起業しようと思っていませんでした。学生時代はあまり勉強をしてこなかったですし、ビジネスマナーとかも知らなくて。当然入社後の研修では成績も良くありませんでした。
ただ、スポーツをやってきて負けず嫌いだったので、とにかく頑張ることだけに集中したんです。その結果、同期内で1番の成績を取ったり表彰してもらったりして、「僕でも頑張ったらビジネスの世界で結果を出せるんだ」ということに気づけました。
学歴がなくても、バックグラウンドがなくても、やりきれば成果が出せるということをもっと広めたいと思ったのです。 また、前職は1日の労働時間が長かったので、そういう働き方をしないでも成長できる会社をつくりたいなと思いまして、その2つがきっかけです。
僕が1番働いて1番成長し続けること。考えを押しつけない
仕事におけるこだわりや譲れない軸を教えてください
会社を大きくするためにも、会社は経営者の器以上に大きくならないと思っているので、僕が1番働いて1番成長し続けることが大事だと思っていて、そこにこだわっています。また、プライベート含めてですが、自分の考えを押し付けないようにしています。
仕事で部下に「今までこうやってきたのだからこれが正しい。言われた通りやって。俺が成長させてやる」と伝えたり、プライベートではパートナーに「幸せにするよ」と伝えたりする場面があると思うのですが、それは自分のエゴだなと。
僕はあくまでも部下やお客様の「こうなりたい」を明確にしてサポートすることが大事で、僕の役割だと考えているので、そういう考え方を持ち合わせて部下やお客様と向き合うことを軸としています。
仕事におけるこだわり以外にもメンタル面で配慮していることはありますか?
運動を定期的にするようにしています。僕はあまりメンタルが崩れるタイプではないので、上手く言えないのですが、仮に仕事で落ち込んでも仕事で盛り返せばいいと思っていますね。
また、将来的にどうなっていたいかはとても考えます。そうすれば「落ち込んでいる場合じゃないな」と思えるので。
仕事におけるこだわりや考え方は社会人経験で培われたのでしょうか?
そうですね。考え方の大枠は変わっていないのですが細かい部分は変化していて、具体的には前職時代は僕の考えが絶対だと思っていました。僕を信じてついてきたら結果がついてくるからとにかく頑張れというようなマネジメントをしていて、当時はそれが是だと思っていて。
しかし、僕以外の社員やお客様の考えに触れたことで、「果たして今のままの考え方でいいのか?」と疑問に思ったのです。
あくまで僕は完璧な人間ではないですし、僕ができない業務をできる方がいるって気づいたときに、自分が絶対正しいわけではないと思えたので考え方が変わりました。これからも少しずつ変化していくと思うので、5年後も今と同じ考え方かといったら、また違うと思います。
起業から今までの最大の壁を教えてください
壁にぶつかる経験は結構多いのですが、すごく大きな壁があったかというと今のところはそんなにないですね。ただ、会社を設立したときに消費税を2年間免除される制度があるのですが、その免除の基準を満たしていなく申請ができず、納税負担が大きくなってしまったことには苦しみましたね。
過去の壁ではないのですが、これから起こりうる課題は常に考えています。この業界は注意しなければならない法律が多く、法律も勉強して誠実に正当に事業を推進する必要があるので、いかにクリアな状態で経営をしていくのかをより深く考える必要が出てくると思っています。
また、SESだけでやっていこうとも思っていなくて、新しいビジネスを展開するつもりです。そもそも僕はSESの経験がなく当社を立ち上げているので、さらに新しい事業を始めるとなると未経験のことが増えてしまいます。そうなったときに伸ばし方が分からない壁が出てくるだろうと考えていますね。なので、少し話しが逸れてしまったのですが、今のところは乗り越えられないような大きい壁には出会っていません。
人材面で苦しんだ経験はありますか?
過去に退職した方がいたのですがその方は派遣先に常駐していたので、お客さんに交渉をして契約期間の前に退職によって抜けさせてもらう許可をもらって、本人の希望時期に退職する段取りを決めていたのです。
その流れで退職希望の方からも同意してもらっていましたし、僕からは有給休暇の使用を提案していたので、特に問題なく退職させてあげられるはずだったのですが、退職予定の2週間くらい前に退職代行を使って辞めてしまったのです。
当時の僕としては結構悲しかったですね。本人が退職しやすいようにお客さんへの交渉や有給休暇は全部使っていいからねと伝えていましたし、会社としてできることはやっていたので。結果、常駐先のお客さんにはとても迷惑をかけてしまいました。また、退職代行を使って辞めてしまったので、本人が何を思って辞めたのかも分かりませんでした。
これは壁というかショックな出来事でしたね。
IT業界を未経験で始められたからこその悩みがあると思いますが、どのように乗り越えていますか?
同業で伸ばしている会社の社長さんにアポイントをとって、直接アドバイスをいただいています。そういったのがきっかけで、単価連動性の評価制度や案件選択制度を導入していますね。
新卒のころからこうした動きはしているのですが、それは経営者になってからも同じで、できている方の真似をするのが1番の近道です。
アポイントを取るときはTwitterで連絡を取ることもあれば、人づてに繋げてもらうこともあります。断られることもあるとは思いますが、断られないように僕は相手の会社さんのことをよく調べて準備して、相手にもメリットがあると感じてもらったうえでアポイントを取るようにしています。
ただ、経営者は頑張っている方が好きですし、同じような目線で話せる方が少ないと思うので、意外と可愛がってもらえるものです。
目指したい未来に向かって進み続ける
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
僕が目指したい未来があるので、それが進むモチベーションになっています。僕が27歳くらいまでは、とにかくお金と役職がモチベーションでした。ただ、役員になってからは目線が変わって、そのモチベーションだけだと人は付いてきてくれないなと思いましたし、お金と役職にモチベーションをあまり感じなくなっていて。
それに気づいてからは、自分の目指す会社の未来を実現したいと強く思えるようになりまして、そこが今のモチベーションになっています。
今後はITの専門学校を開校し、社会課題にも挑戦していく
今後やりたいことや展望を教えてください
僕は人生にミッションを課していまして、自分の人生を豊かにすることと僕の周りにいる方を豊かにする支援ができる知識と環境をつくりたいと考えています。僕の人生を豊かにするというのは、時間や場所、お金に縛られないで人生を追及しつづけることだと定義しています。
周りにいる方を豊かにする支援をするためにも僕は知識や人脈、経験をつけていくつもりです。また、会社としては、社会課題をどんどん解決できる会社になりたいと思っています。僕はIT業界を変えようと思ってこの会社を設立したのですが、同時に、働く前の学習段階から変えていきたいと考えるようになりました。
ITの専門学校は資格を取得することがメインになってしまったり、就職のサポートが薄かったりします。専門学校を出ているのにも関わらず、IT企業になかなか就職できない方もいるのが現状です。僕はそういった状況を解決すべく、2025年開校予定で専門学校をつくろうと準備をしています。開校場所は池袋を検討していまして、その他にも旭川といった地方にて学校法人とも提携していくことを検討中です。オンラインにも対応できるようにします。
また、シングルマザーの50%くらいが相対的貧困家庭であり、子どもたちは親の収入が少なくて十分な教育が受けられなかったり、進学できなかったりしています。そういう女性活躍の場所を提供していくことやお金がなくても学べる環境を作っていくことも考えています。
さらに、人口減少が進んでいくので、少ない人口のなかでどう日本を成り立たせていくかといったところなどに対して、ビジネス面でできることを模索しています。
やりたいと思ったら挑戦したらいい
起業しようとしている方へのメッセージをお願いします
僕は、やりたいと思ったら挑戦したらいいと思っています。僕も最初は分からないことだらけだったのですが、やってみると意外とどうにかなりますし、周りも助けてくれるので。
また、起業することがゴールになってしまうと上手くいかないので、起業しないと実現できないことがあるなら起業したほうがいいです。反対に起業しなくても実現できることなら、起業しなくてもいいと思います。大事なのは目的をちゃんと持つことかと思います。ぜひ、起業する方は頑張っていただきたいです。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:白川 聖悟 氏
1990年生まれ。埼玉県出身。高校・大学はスポーツ推薦で入学。大学では体育教員の免許を取得したものの、いち早く成長したいという理由から、ヘッドハンティング兼採用コンサルティングを行うベンチャー企業に入社。起業を志し、ハードな環境下で猛烈に働く。3年勤めた後縁あってUZUZに入社し、営業・キャリアアドバイザー業務に従事。2年目に営業部長、3年目で事業部長、4年目には横浜支店長を経験し、2020年10月最年少で執行役員に就任。現在はグループ会社ESES(イーエス)代表としても活躍。
企業情報
法人名 |
株式会社ESES |
HP |
https://eses-inc.jp/ |
設立 |
2021年10月27日 |
事業内容 |
■SES事業 ■IT研修事業(ウズウズカレッジ) |