株式会社&US 代表取締役 廣岡 伸那

富山県に拠点を置く株式会社&US(アンダス)は、美容サロン専売の目元コスメの販売や美容サロン向けの教育コンテンツの提供、またコンサルティングや会計支援など、幅広い事業を手掛ける企業です。社名の&USには「主役のあなたと共に成功への案を出す」という意味が込められています。目の前の人を大切に思い、共に成長する。5期連続で増収増益を達成している同社の代表、廣岡伸那氏に起業の経緯や仕事のこだわりなど、詳しくお話を伺いました。

 

コロナが追い風となり業績アップ

事業の内容をお聞かせください

弊社は美容サロン向けの化粧品の販売と月額制教育コンテンツの提供、また会計支援の3本柱で事業を展開しています。

 

主力商品のひとつに目元ケアコスメがあるのですが、これはコロナ禍のマスク生活で目元を気にする人が増えたことから開発した商品なんです・・・と言いたいところですが、実はコロナが流行る前の2018年から販売していました(笑)。たまたまコロナ禍の消費者ニーズと弊社の商品がマッチしたと言った方が正しいですね。

 

今でこそ主力と呼べますが、目元コスメが生まれるまで紆余曲折がありました。元々、2016年から美容に特化したコンサルティング会社とあわせて実店舗を運営していたのですが、収益が出始めて順調だったタイミングで通販ビジネスに挑戦することにしました。

 

原価率を度外視して通販で需要のあるシャンプーとトリートメントを作り、フランス語で「それは秘密」という意味のかっこいいブランド名で通販を始めたものの、結局売上が伸びず、失敗に終わってしまったのです。今となってはそのブランドが存在していたこと自体が「秘密」です(笑)。

 

ひと言で化粧品と言ってもその幅は広く、我々の強みは店舗向けのコンサル事業と店舗経営の領域にある化粧品だったため、いま思うと通販はまったくの畑違いでした。その後、通販で売れ残った商品を卸先のサロンで直接お客さんに販売してもらったところ、なんと売れるようになったのです。そこで、やはり我々は商品の売り方をスタッフに伝え、お客さんと直接コミュニケーションが取れる店舗向けの商品が合っているのだと気付きました。

 

その経験から、自社で運営しているアイラッシュサロンでも売れる目元ケアコスメを作ろうということになり、役員兼専務の妻と一緒に開発を進め2018年にローンチしました。今回は自分たちの専門性を活かせる商品にして、ブランド名もフランス語ではなく「Omeme.cosme」というわかりやすい名前にしています(笑)。

 

商品が完成してからは、自社店舗で販売するのみでなく、他の美容サロンにも置いてもらおうと営業を進めました。弊社は2018年からオンラインで営業していたため、コロナ禍でも営業できる体制と売れる商品がすでにあったのです。結果、コロナが追い風となり売上も一気に増えていきました。

 

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

最初から「化粧品会社を作るぞ」と思っていたわけではなく、その時々で最適だと思う判断を下した結果、妻と化粧品会社を興すことになりました。


起業する前、妻は富山県でアイラッシュサロンを運営し、私自身は化粧品メーカーに勤めていました。前職では全国転勤があり、新潟に転勤することになった時に福島の西会津を担当していたのですが、ちょうどその地域を訪問していた時、東日本大震災が起こり被災しました。大震災で「今後も今のまま転勤生活を送っていていいのだろうか」と価値観が大きく揺さぶられたのを今でも覚えています。

 

被災したのと同じ時期に兄が体調を崩し、実家がある富山に帰らなければなりませんでした。当時は結婚する前で、富山と新潟で遠距離恋愛をしながら今は妻となった彼女の美容サロンの経営を手伝っていたのですが、そのサロンが順調に伸びていたため法人化の話を進めていた頃でした。法人化の話と兄のために地元に戻ろうかと考えていたタイミングがちょうど重なったため、結局私は富山に戻り、サロン事業を軸に妻と2人で起業することになりました。

 

どんな時も目の前にいる人を大切にする

仕事におけるこだわりを教えてください。

弊社は「縁ある人の潜在的な可能性を覚醒する」をミッションに掲げていて、人と人との関わりを常に大切にしています。

 

社内では目の前にいる人を大切にする文化が自然に浸透していて、たとえばお客さまが来社された際は全員が立ち上がり挨拶します。そうするように私が教育したわけではないのですが、他の人が立ち上がって挨拶するのを見て、新入社員も自然にそうするようになりました。


もうひとつのこだわりは、セルフマネジメントです。人が人を管理するのは余計なコストだと思っているため、弊社ではガチガチに人を管理しないようにしています。そして、セルフマネジメントの入り口はタイムマネジメントです。私自身、毎朝4時半に起きてランニングやYouTubeで知識をインプットする時間を取ったあと、子どもを保育園に送ってから出社しています。私が4時半に起きるので社員も早起きの人が多くなり、今は社員のほとんどが6時50分までには出社していますね。

 

1分単位で時間を守るタイムマネジメントが、セルフマネジメントの基礎と言えます。どんな時でも時間を守れる人がセルフマネジメントができる人なのです。

 

起業から今までの最大の壁を教えてください

一番ツラかったのは、全社員に辞めてもらった時でしょうか。その当時、売上は伸びていたのですが社内で人間関係の問題があり、もはや修復不可能な状態でした。1人、2人が退職したら解決するような小さな問題ではなく、組織全体に関わる大きな問題でした。どうにかしなければと思い、苦渋の決断で都内にあった2店舗を閉め、他の県で再出発することにしました。同時に当時の社員は全員退職し、妻と2人でゼロからやり直すことになったのです。

 

起業してから最初の半年は売上面での苦労もあったのですが、それ以降の3、4年は人間関係の苦労のほうが多かったですね。本当に胃に穴が開くほどのストレスでした。


自分たちの至らなさから危機的な状況を招いてしまいましたが、振り返ると、その経験があったからこそ今があると言えます。

 

突出した能力がないからこそ圧倒的な努力を惜しまない

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

 

私と関わってくださる方々の潜在的な可能性を覚醒するには、まず私自身が自分の可能性を最大限に引き出す生き方をしなければならないと思っています。



以前から「こんなもんで終わりたくない」という想いがあり、圧倒的な努力を惜しまないことを自分に言い聞かせてきました。私は突出した能力を持っているわけではありません。そのため、圧倒的な努力でしか東京や大阪、また世界中にいる他の優秀な経営者と差をつけられないと思っています。

 

普通の人がありえないほどの努力をして、一流になる。そしてその姿を周りの人にも見せて、皆の成功のルートも作っていく。そういったことを常に意識しています。

  

今後やりたいことや展望をお聞かせください 

現在、全国3,300ほどの事業者が弊社の商品を取り扱ってくださっています。それだけではなく「サロスタ」という弊社が提供している、美容サロン向けの教育コンテンツと会計支援サービス「Fice」を利用してくださる方も多くいらっしゃいます。

 

今後は、こうした美容サロンに特化したソリューションサービスをさらに充実させ、横展開で支援の幅を広げていきたいと考えています。


この数年、コロナで多くの美容サロンが影響を受けてしまいました。さらに過当競争や人材不足に苦しんでいるオーナーさんも少なくありません。私は、人を綺麗にすることが仕事の美容サロンの方々の元気を取り戻したい、パートナーとして少しでも経営の力になりたいという想いで、こうしたコンテンツを展開しています。

 

そもそもなぜ私が美容業界に興味を持ったのかを振り返ると、美容院の存在が大きかったと思います。子どもの頃から私にとって美容院は単に髪を切る場所ではなく、美容師さんとおしゃべりしながら悩み相談をしたり、友達を紹介してもらったりする、楽しい場所でした。私にとっての美容師さんは、人の外見を綺麗にするだけでなく、内面も明るくしてくれる存在です。しかしそうした人たちが今、過当競争や採用難で苦しんでいます。私は事業を通じて、今一度、人の心に灯をともせるリーダーをつくっていきたい。それが教育コンテンツや会計支援を提供する動機になっています。


また、5〜10年後には現在国内のみで提供している教育コンテンツを東南アジアでも展開するのが目標です。具体的なエリアを挙げると、インドネシア、タイのバンコク、シンガポールなどを考えています。

 

なぜ東南アジアかと言うと、これからの東南アジアは文化レベルが上がるにつれ、美容のクオリティも上がっていくと予想しているからです。そうすると美容サロンへの教育がさらに必要になってくるわけです。そうしたニーズを見込んで、日本人の親切心をベースにしたおもてなし精神を教育コンテンツに盛り込み、東南アジアで展開できたらと考えています。

 

起業する前に営業力、影響力、マーケティングのいずれかのスキルを身につけて

最後に起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

私たちがここまで来れたのは、すべて営業のおかげだと思っています。起業を考えている人には、起業する前に営業力、影響力、マーケティングのいずれかのスキルをしっかり身に付けておくことをおすすめします。反対に、3つのいずれかのスキルがないと起業しても上手くいかない可能性が高いでしょう。身につけるスキルに優先順位があるわけではなくて、どれでもいいので自分に合う方法を見つけてみてください。


あと、何かやってみたいという衝動に駆られたらその衝動を信じてください。衝動的にやらずにはいられなくて起業した人、結構いますよ。人と違ってもいいんです。人とは違う経験や視点が経営する上で、大いに役立つ時が来ますから。 

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:廣岡 伸那氏

1984年富山県生まれ。京都の大学を卒業後、大手化粧品メーカーにて営業の経験を積んだのち、地元富山で美容関連のコンサルタントとして2012年6月株式会社andUS(アンダス)を創業。
現在は、コンサルタント業から派生し化粧品メーカー事業を展開。
美容関連の経営者向けセミナーでの講師経験に加え、コンサルティングや自社経営など多様な経験を活かした研修を行っている。
コンサルティング営業を基盤に、フルリモートによるサポートを武器に顧客接点の高い運営を実現。
大手専門研修トレーナーとしても活動しており、研修登壇時の受講生満足度は常時95%以上。

 

企業情報

法人名

株式会社&US(アンダス)

HP

https://and-us.jp/

設立

2012年6月1日

事業内容

化粧品メーカー事業「Omeme.cosme」

美容サロン経営学習サービス事業「サロスタ」

美容サロン会計サービス事業「Fice」

美容サロン兼ラボラトリー事業

 

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