
ベンチャーやスタートアップ企業では、資金調達以外に入居審査も課題となることが多くあります。賃貸オフィスの場合、企業の実績や信用度を重視するためです。
仮に気に入った物件があったとしても、必ず入居できるとは限りません。しかし、コツを押さえることで、入居審査に通る確率を上げることが可能です。また、審査に落ちてしまっても、オフィスを借りるための対処法もあります。
本記事では、賃貸オフィスの入居審査に通るためのコツや落ちたときの対処法について詳しく解説します。
Contents
ベンチャー・スタートアップ企業が入居審査で落ちやすい理由
ベンチャー企業やスタートアップ企業が入居審査で落ちやすい理由として、主に以下の4つが挙げられます。
- 開業してから日が浅い
- 資本金が少ない
- 債務超過に陥っている
- 役員報酬が極端に少ない
アパートやマンションと同様、オフィスを借りるときにも入居審査があります。しかし、ベンチャーやスタートアップ企業は開業してから日が浅く、実績や信用度がほとんどないため、入居審査に落ちやすいです。
開業してから日が浅い
個人で開業した場合、開業してから約3年経つまでは審査が通りにくいです。ただし、保証会社を用意すれば、審査に通る可能性があります。また、前職でどのような経験を積んでいたのか見られることも多いです。
前職と開業した業種が全く異なる場合は、審査が通りづらくなります。また、法人で開業した場合は、約1年経つまでは希望のオフィスを契約するのは難しいです。個人で開業したときと同様、保証会社を用意すれば審査に通ることもあります。
しかし、開業後1年未満は決算書類も揃っていないため、代わりに事業計画書や法人用の銀行通帳の写しなどの提出が求められるケースが多いです。その場合、事業の将来性や流動性の大きさなどで判断されます。
資本金が少ない
法律上、資本金は1円からでも会社を設立できますが、一般的には300万円以上あった方がオフィス賃貸の審査は通りやすくなります。資本金が少ないときは、まず増やすことに注力すると良いでしょう。
債務超過に陥っている
会社が債務超過に陥っている場合は、入居審査が非常に厳しくなります。特に決算書をしっかり確認するオーナーの物件は基本的に審査は通らないと考えておいた方が無難です。ただし、保証会社を用意できれば大丈夫というケースも稀にあります。
役員報酬が極端に少ない
会社に利益が出ているのにも関わらず、役員報酬が極端に少ない場合も入居審査が厳しくなります。これは役員報酬を支払うと、会社が赤字になると判断されるためです。
賃貸オフィスの入居審査で見られるポイント
賃貸オフィスの入居審査で見られる主なポイントとして、以下の3つが挙げられます。
- 信用性
- 業績
- 業種
入居審査の厳しさは不動産会社やオーナーによって異なりますが、基本的に見られるポイントは同じです。いくつかの項目を確認し、総合的に入居可能かどうか判断しています。
信用性
企業の信用性は、民間の調査会社の評価点数を参考にしています。評価点数とは、企業の業績や設立年数、資産、事業内容など複数の項目を点数化し、〇〇満点中〇〇点という形で表されたものです。
評価点数の結果は蓄積されるため、以前に調査を受けたことがある企業であれば、データベースにアクセスするだけで情報を確認できます。ただし、既存のデータがない企業に関しては、調査費用がかかるため見送るケースがほとんどです。
業績
賃貸オフィスの入居審査では、業績が安定しているかどうかが非常に重要です。安定している場合、家賃を継続して支払える能力があると判断されます。なお、企業の財務状況を確認する際は、決算報告書が求められます。
その他、ベンチャーやスタートアップ企業の場合、将来性も見られる可能性が高いです。事業計画書が重要な判断材料となるため、可能な限り詳細にかつ精度を上げる必要があります。
業種
賃貸オフィスのオーナーは、景気に左右されない業種の会社と契約した方が安心できます。また、来客や騒音が多いと周囲からのクレームにつながるため、その点からも業種は重要な判断材料です。
貸金業やアダルト業、何をしているか良く分からない会社は、入居が難しいと考えておいた方が無難です。
賃貸オフィスの入居審査に通るためのコツ
賃貸オフィスの入居審査に通るためのコツとして、以下の6つが挙げられます。
- 企業の信用度を高める
- 内覧時から良い印象を与える
- サポート体制が整っている不動産会社を選ぶ
- 不動産会社の審査基準を把握しておく
- 物件と不動産会社の候補をいくつか出しておく
- 必要書類は余裕を持って準備する
ベンチャーやスタートアップ企業は実績や信用度がほとんどないため、入居審査に通りづらいのが現状です。しかし、いくつかコツを押さえることで、賃貸オフィスの入居審査が通りやすくなります。
企業の信用度を高める
企業の信用度を判定する方法はさまざまですが、民間の信用調査会社を参考にするケースが多いです。具体的には、以下のような項目に点数がつけられます。
設立年数 |
会社を設立してからどのくらい経っているか「継続性」を評価する項目 |
財務状況 |
財務状況が安定しているか評価する項目 |
資本現況 |
収益や支払状況、回収状況、資金調達余力などを調査する項目 |
規模 |
経営規模を評価する項目 |
損益 |
決算報告書などから会社の損益を評価する項目 |
経営者 |
経営者の資産や経営経験、人物像などを評価する項目 |
企業活力 |
人材や取引先、販売力、将来性などを評価する項目 |
設定された項目でカバーできない部分は、加点・減点の方式で評価します。評価点数は、企業の情報を積極的に公開するほど上がりやすいと言われています。反対に、評価点数が下がる大きな要因は利益の激減です。
経営規模は年単位で評価されるため、前年度よりも業績が悪化した企業は評価点数も下がってしまう可能性があります。
内覧時から良い印象を与える
会社の業績が安定していても、経営者の態度が悪過ぎたり、非常識な行動を取ったりすると契約してもらえない可能性があります。
内覧時から入居審査は始まっていると考えておいた方が無難です。清潔な服装を意識し、失礼な態度は取らないようにしましょう。極端な交渉も印象を悪くするため、避けるべきです。
サポート体制が整っている不動産会社を選ぶ
不動産会社によって、強みや特徴が異なります。そのため、どの不動産会社に依頼するのかも、入居審査に通過するために重要なポイントです。オーナーと良い関係を構築している不動産会社は、入居審査が通りやすい傾向があります。
また、親身になって話を聞いてくれる会社は、最後まで物件探しをサポートしてくれるはずです。ネット上の口コミは非常に参考になるため、不動産会社を決める前に確認しておくことをおすすめします。ただし、中には事実とは異なる内容を書き込んでいる人もいるので、全ての情報を鵜呑みにしないことが大切です。
不動産会社の審査基準を把握しておく
賃貸オフィスの審査基準は、不動産会社によって異なります。「特定の地域だと審査が通りやすい」「保証会社を用意できれば審査はほぼ通る」など、会社によって傾向が異なるため注意が必要です。これらの傾向は、ネットの口コミなどで確認できます。
物件と不動産会社の候補をいくつか出しておく
企業の中でも特にベンチャーやスタートアップは、なかなか入居審査が通りません。物件と不動産会社の候補をいくつか出しておくことで、審査に落ちてしまったときでもスムーズに契約を進められます。
審査が落ちるたびにまた一から探すと時間と労力がかかるため、第一候補を決める際に第三候補まで出しておくのがおすすめです。審査が通ったとしても、他の会社にタッチの差で契約されてしまうことも少なくありません。
必要書類は余裕を持って準備する
賃貸オフィスの審査には、いくつか書類が必要になります。提出する際に書類が不足していたり、そもそも期限に間に合わなかったりすると、印象が悪くなるだけでなく、審査にも影響が出るため注意が必要です。
必要書類は入居審査において非常に重要な判断材料となるため余裕を持って準備し、事業計画書などは精度を可能な限り上げておくことをおすすめします。なお、一般的に入居審査で必要な書類は以下の通りです。
- 申込書
- 会社の登記簿謄本
- 会社の印鑑証明・実印
- 会社案内
- 決算書
- 連帯保証人の実印・印鑑証明・住民票・所得証明書など
ベンチャーやスタートアップ企業の場合は、上記の書類以外に以下のような書類が求められることがあります。
- 事業計画書
- 課税証明書
- 運転免許証
- 通帳および健康保険証のコピー
- 定款
必要書類は不動産会社やオーナーによって異なるため、事前に確認しておくことが大切です。
賃貸オフィスの入居審査で落ちてしまったときの対処法
賃貸オフィスの入居審査で落ちてしまったときの対処法として、以下の5つが挙げられます。
- 物件の条件を変える
- レンタルオフィスを検討する
- 提出書類を見直す
- 不動産会社・保証会社を変える
- 物件を借りる時期を変える
入居審査に通らなかった理由は基本的に伝えられないため、何が問題点なのか分からないことも多いです。そのようなときは、上記の点を検討してみることをおすすめします。
物件の条件を変える
会社の業績と家賃が見合っていないのが原因で落ちている場合は、物件の条件を少し落としてみると良いです。どうしても譲れないポイントは変更せず、他に妥協できる部分はないか見直す必要があります。
レンタルオフィスを検討する
レンタルオフィスとは、業務に必要な環境が既に整っている貸事務所のことです。賃貸オフィスよりも難易度が低く、保証会社を利用しないため保証金も必要ありません。また、デスクや椅子などの設備費用がほとんどかからないので、初期費用を大幅に抑えられます。
賃貸オフィスとレンタルオフィスの初期費用の違いは、以下の通りです。
賃貸オフィス |
レンタルオフィス |
|
敷金 |
賃料の1〜12ヶ月分 |
賃料の1ヶ月分 |
礼金 |
賃料の1〜12ヶ月分 |
不要 |
前家賃 |
賃料の1〜1.5ヶ月分 |
不要 |
前共益費 |
共益費の1〜1.5ヶ月分 |
不要 |
仲介手数料 |
賃料の1ヶ月分 |
不要 |
火災保険 |
1.5〜15万円 |
不要 |
保証会社利用料 |
賃料の50〜100% |
不要 |
その他(鍵交換など) |
1〜3万円 |
不要 |
ベンチャーやスタートアップ企業は資金繰りが課題となることも多いため、レンタルオフィスの方が適している場合もあります。また、事業規模の拡大・縮小に応じてスペースを簡単に変更できる点も大きなメリットです。
しかし、デメリットとして、「坪単価が割高である」「利用時間が決まっている」「プライバシーの確保が難しい」などが挙げられます。自社の業績や財務状況、それぞれのメリット・デメリットを考慮したうえで、最適な方法でオフィスを用意することが重要です。
提出書類を見直す
提出書類の内容を変えることで、審査に通る可能性があります。審査にプラスになる要素があるか、見直すことが大切です。確定申告や決算書類は年に1回しか更新できないため難しいですが、ホームページや連帯保証人などは比較的更新しやすいです。
入居審査の際に、オーナーが会社情報を確認するためにホームページを見ることがあります。そのようなときに、事業内容や従業員数、社歴などが分かりづらいと、審査に影響を及ぼす可能性が高いです。
審査で見られるポイントは記載されているか、誰が見ても分かりやすいかなどを意識しながら、更新することをおすすめします。
不動産会社・保証会社を変える
オフィスの契約がうまく進まない場合は、思い切って依頼する不動産会社を変えてみるのも有効な手段の一つです。入居審査が通らない理由は信用調査や業績であることがほとんどですが、担当者との相性も重要です。
不動産会社を変えることで、他の物件を紹介してくれることもあります。仲介手数料が他より少し高くてもしっかり対応してくれる担当者に依頼した方が、結果として良い物件に出会えるかもしれません。
不動産会社を選ぶ際は、強み以外に口コミやレスポンスの速さなども確認することをおすすめします。最初から一社に絞るのではなく、何社か話を聞くと比較もできるようになります。
物件を借りる時期を変える
すぐにオフィスが必要ない場合は、時期を変えてみるのも有効的です。2〜4月は繁忙期に当たるため、オーナーも強気の条件を出すことがあります。反対に、閑散期であれば条件交渉の余地が出てくる上、多少審査がゆるくなる可能性も考えられます。
時期をずらせば決算書類や確定申告の更新もできるようになるので、前回の条件も良くなりそうであれば少し待ってみると良いです。
賃貸オフィスの入居審査は信用度がカギ
ベンチャーやスタートアップ企業は設立してから日が浅く、業績や信用度がほとんどありません。賃貸オフィスの入居審査は信用度がカギとなるため、入居審査に落ちやすいです。しかし、いくつかコツを押さえることによって、審査が通りやすくなる場合もあります。それでも落ちてしまった場合は、本記事で紹介した対処法を検討してみると良いです。
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