株式会社MIYOSHI 代表取締役 佐藤 英吉 氏

株式会社MIYOSHIは、現場監視カメラ「G-cam」の開発・製造・レンタルや、電子機器の製造、LED照明器具の販売・施工などを手掛ける会社です。それらの事業のほとんどが、お客様の困りごと解決をきっかけにスタートしています。

 

代表取締役を務める佐藤 英吉氏は、母のボランティア活動や父の倒産で経験した周囲の人々からのサポートを背景に、寄付を目的に起業。事業内容や起業に至った想い、今後の展望などを詳しく伺いました。

 

お客様の困りごと解決をきっかけにさまざまな事業を展開

さっそくですが、事業内容をお聞かせください。

事業内容は、カンタン監視カメラ「G-cam」という製品の開発・製造・レンタルや、サーモカメラのレンタル、その他、製品開発などです。メイン事業は、全国の建設現場で稼働しているカンタン監視カメラ 「G-cam」です。

 

G-camは届いたその日に設置でき、すぐに監視カメラを利用できるのが最大の特徴です。モバイルSIMと設定済みルーターを内蔵しているので、複雑なネットワーク設定は必要ありません。

 

また、工場から直送することで低コストを実現しています。送料や返送料も無料です。暗闇でも雨でも使用できますので、建設現場やイベント会場、コインパーキング、高速道路、通学路、物流倉庫などさまざまなシーンでご利用頂いております。

 

さらに、アプリケーションでの閲覧、ブラウザでの閲覧、複数人での同時閲覧も可能です。9月からはプロゴルファーの藤田寛之さんを起用したテレビCMも放映されています。

 

飽くなき探究心がテーマになっており、藤田プロと同じように当社も徹底してより良いものを作り続ける姿勢でいようという気持ちを表現しています。ご興味のある方は、カンタン監視カメラ「G-cam」を、ぜひ利用していただけると嬉しいですね。

 

現在の事業を始めた経緯を教えていただけますか?

もともとは電子機器の下請け製造業であるEMSを行っていました。このような仕事は海外進出していく傾向にありますし、競争力を国内で維持するのはなかなか大変です。

 

自社技術や自社製品の必要性を感じるなかで、2008年からLED照明や電気自動車などさまざまな開発に挑戦してきました。その後、お客様の困りごと解決をきっかけに、2016年に開発をした現場監視カメラがヒットしまして自社製品になっています。

 

「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」を実現できるポイントを探したい

仕事におけるこだわりや譲れない軸を教えてください。

大体の事業がお客様のお困りごと解決からスタートするので、お客様に寄り添って開発しています。そのなかで特にこだわっている部分は、お客様や、我々に協力してくださる外注さん、そして社員がいる中で、誰かだけが得をしたり損をしたりしないようにすることです。

 

三芳には三方よしの意味も含んでいると聞いたことがありますが、まさに「売り手よし」、「買い手よし」、「世間よし」を実現できるポイントを探していきたいですね。

 

当社の経営理念が「人のために火をともせば我がまへあきらかなるがごとし」であり、この部分を意識しています。

 

お客様の困りごとに重点を置こうと思った理由

いくつか重点を置こうと思った理由があるのですが、まず私が高校1年生のときに45歳の母が癌で亡くなってしまったことが1つ挙げられます。母は癌になってから短い人生をどう生きるか考え、フィリピンに27回訪れ、そこで楽器を寄贈していました。

 

私の母は音楽の先生をしていたのですが、日本の小学校からいただいたハーモニカやカスタネットなどを洗ってフィリピンに寄贈していたのです。

 

私も何度か手伝いをしたのですが、もしかしたらそのような母の姿が、お客様のお困りごとに重点を置くきっかけになっているのかもしれません。ボランティア活動を通して現地の方々はもちろん、手伝ってくれた日本人の方々も貢献できたことを喜んでくれていましたね。

 

また、2001年に父の会社が倒産して負債をかかえたこともお客様のお困りごとに重点を置こうと思ったのも理由の1つです。当時、私は父の会社の取締役をしていたのですが、お金や仕事でつながっていた人が離れていくなかで、友人や近所の方々のサポートのおかげで立ち上がれた経験があります。

 

そういう方々への恩返しをしたいという気持ちもあります。倒産を経験した半年後に当社を設立したのですが、人生の原点は中高時代に得られると思うので、教育への貢献をするために事業家になり、寄付をしていくことも目標にしていました。

 

起業から今までの最大の壁を教えてください。

壁は先ほどお話しした父の倒産です。経済でつながっている人は会社が倒産すると離れてしまう。生きざまのなかでつながっている人がどのくらい周囲にいるのかが大事だなと感じました。

 

これまで友人だと思っていた人たちが手のひらを返したようになるなかで、寄り添ってくれた先輩や友人たちもいました。そのときに寄り添ってくれた方々にとても感謝しています。

 

「何のために稼ぐのか」「儲けたお金の使い道」

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

私たちの行動指針は「全人類の幸福と平和を目指し人のために火をともす行動に徹する」です。「儲けたお金は寄付をしていくんだと。もっと言うと寄付をするために頑張って儲けるんだ」、これがモチベーションです。

 

新型コロナウイルスが流行したときの話なのですが、飲食店でアクリル板が不足している問題がありました。その際、自社製品である「カンタンパーテーション」を全国の困っている飲食店に13,000枚を無料でお配りしました。

 

すると泣きながらお礼の電話をくださる飲食店の方や、段ボールに励ましのメッセージを書いて送ったのですがそれを切り取ってお店に飾ってくれる方もいまして、これはとても印象的な経験でした。

 

「何のために稼ぐのか」「儲けたお金の使い道」これが、私たちのモチベーションです。

 

現在は平和、教育、文化、環境、福祉、スポーツの6つの分野に寄付をさせていただいており、当社の数値目標の最上段は寄付目標になっています。その寄付をするための出さなくてはいけない利益を設定しており、他にはない珍しい会社かと思います。今では、寄付の累計が2億円を突破しました。

 

当たり前のように寄付できる文化ができてほしい

今後の展望をお聞かせください。

今年、社員が居住する社会福祉協議会に50万円ずつ寄付をしました。9自治体ほどありそれぞれ寄付をしたのですが、そこでは食堂支援やヤングケアラー支援が実施されています。より地元に密着して、私たちに何ができるのかコミュニケーションをとりながら確かめています。

 

これからやりたいことは、社員のお子さんたちの留学支援をすることです。中学、高校、大学で1回ずつ海外留学の機会を用意したいと考えています。そのなかで視野を広げ、学びのモチベーションを向上してもらえたら嬉しいですね。

 

また、私たちは寄付を目的で起業した珍しい会社ですが、日本国内には会社や個人で寄付をしているケースはよく見られるのです。しかし、日本人は恥ずかしがって公表しない風潮があるので、もう少し当たり前のように寄付できる文化ができてくれたらいいなと思います。

 

儲けたお金の使い道を先に考える

起業しようとしている方へのメッセージをお願いします。

儲けたお金の使い道を先に考えることが大事だと思います。私は中学校や高校で起業家教育の講師をしているのですが、そのなかでも同じことを伝えています。父の会社の倒産を経験してから、寄付、特に教育支援をすると決めて起業をしましたけれども、それがモチベーションになっていますし、経営の質にも関わっているのです。

 

起業後はどうやって儲けるかに考えが囚われてしまいやすいため、起業前の若い段階に儲けたお金をどう使いたいかを考えておくと良いと思います。それが利他的であればビジネスはより上手くいくと私は信じています。

 

仏教に、苦しみを取り除き、楽を与えるという意味の「抜苦与楽」という言葉があるのですが、この言葉に当てはまることがビジネスに必要な要素だと思っていて、寄付の精神とビジネスの成功はイコールだと感じています。

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:佐藤 英吉 氏

経歴:創価大学卒

1989年 丸井入社

1996年 父の会社へ

2001年 会社倒産

2002年 MIYOSHI設立

 

【企業情報】

法人名

株式会社MIYOSHI

HP

https://3yoshi.jp/

設立

2002年10月

事業内容

・監視カメラ開発・レンタル

・サーモカメラのレンタル

・その他、製品開発

 

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