mederi株式会社 代表取締役 坂梨 亜里咲

mederi株式会社は女性が抱える健康課題に寄り添い、ピルを処方するオンライン診療サービスや医師監修のWebメディアなどを提供しています。

代表取締役の坂梨 亜里咲氏は、低用量ピルを10年以上にわたり服用した経験や不妊治療の原体験から、適切な医療アドバイスを女性がいつでも受けられるサービスを提供したいと考え、起業に至りました。

社名は「愛(め)でる」と、medicalの「med」に由来しています。

順調にユーザー数を伸ばし、最近は資金調達も実施した同社ですが、これまでの道のりは順風満帆ではなかったようです。

今回は、坂梨氏に事業内容や起業してから直面した壁についてなどを詳しくお聞きしました。

 

女性が後悔することのないよう健康をサポートし、正しい情報を届けたい

事業の内容を詳しくお聞かせください

「より女性が生きやすく暮らしやすく、働きやすい社会にむけて。」をビジョンに掲げ、忙しい女性でも簡単に健康管理ができるプロダクトサービスを提供しています。

主軸事業となるのは、オンラインピル診療サービス「メデリピル」の運営です。生理に悩む女性がオンライン診療で産婦人科の先生に気軽に相談ができ、低用量ピルをはじめとしたピルを処方してもらえます。

またWebメディア「mederi magazine」では医師監修のもと、生理に悩む女性や妊娠・出産を控える女性に向けた記事を配信しています。今後は更年期に関する記事も配信する予定です。

その他にも、役立つ情報を記載した「知識カード」を毎月お届けする低用量ピルのパッケージの中に入れてお届けしたり、LINEでも配信を行っています。

弊社のサービスはおもにBtoC領域なのですが、最近は「メデリピル」を福利厚生として導入してくださる企業が増えて、BtoBtoC領域も伸び始めています。お問い合わせにすぐに対応できるよう、法人向けの窓口も設置しました。

 

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

20代は生活のためにお金を稼ぐ、ライスワークをしていました。でも、これまで自分がお金も時間も使ってきた領域で起業をしたら、30代の人生はライフワークにチャレンジできるのではないかと考えたんです。

 

そこで、自分がこれまで多くのお金と時間を費やしてきたことは何かと考えた時に、不妊治療だと思ったんです。有り難いことに今、妊娠9ヶ月目を迎えたところなのですが、妊娠するまでは7年間にわたって不妊治療をしていました。年間300万円ほどの金額を不妊治療に使いましたし、さらに悲しい体験もした自分ならきっといいサービスを生み出せるだろうという謎の自信もあり、起業することにしました。

 

不妊症は私だけの問題ではなく、社会課題だと捉えています。晩婚化や晩産化が進み、さらにはエイジレスな時代になってきていますが、人間の生殖機能には確実にリミットがあります。

 

しかし、生殖機能に限界があることを知らない人が性別問わず多いため、正しい情報を気軽に得られるサービスが必要だと考えるようになりました。少子高齢化が進む社会でも、女性が希望するタイミングで妊娠・出産、また理想のキャリアを実現できるように私たちが後押しすることが、国力にも必ず繋がっていくと思います。

 

強い原体験があったからこそ生み出せたサービス

起業家としてのご自身の強みを教えていただけますか?

私には強い原体験があるため、ちょっとしたトラブルや事件などの、ネガティブな出来事にも負けない強さを持っています。

 

私の特権は、不妊治療で感じる悲しみや悔しさを知っていることと、女性であることです。これらを活かして、ユーザー目線に立ちながら素早くPDCAを回して事業を展開できるのは、私ならではの強みだと考えています。

 

私自身、妊娠を望むまでの10年間、低用量ピルをずっと飲んでいました。この経験があったからこそ、ユーザー視点のサービス設計や情報発信ができていると思います。 

また、不妊の原因にもなった早発閉経と呼ばれる症状から、私はいま更年期ケアをおこなっています。

 

人よりも早く更年期を経験していると言うと、一見ネガティブに聞こえるかもしれませんが、女性の人生を先回りして情報発信ができているため、ポジティブに捉えています。

 

起業から今までの最大の壁を教えてください

大きな壁は、これまで2つありました。

1つ目は、妊娠・出産を望む女性に向けたサプリメントを発売した時のことです。私はそのプロダクトに自信を持っていて、クラウドファンディングも順調に進み、目標金額を達成したんです。

しかし、その後、マーケティングに力を入れてサービスを軌道に乗せようと思ったのですが、結果的に初めに思い描いた通りにはPMF(マーケットフィット)しませんでした。

上手くいかなかったことによって、資金調達のハードルが一層上がってしまったことが2つ目の壁です。

 

ZOZOTOWN前社長の前澤友作氏からの出資を受けたと伺いました。どのようなきっかけからだったのでしょうか?

前澤さんが以前Twitter(現 X)で募集されていた「10人の起業家に10億円出資する」という企画に応募したことがきっかけです。

 

前述のファーストプロダクトから、こんなにも強い想いがあって、最高のプロダクトを提供しているのに世の中に届かないことがあるのだなとガッカリしていた矢先、前澤さんとの面接が決まったんです。

 

前澤さんとのディスカッションを通して、これからどのような事業をやっていきたいのか、社会をどのように変えていきたいのかを引き出していただきました。

私は他の候補者よりディスカッションに長い時間がかかってしまい、半年ほどディスカッションが続いた後、出資を受けられることになりました。

経営者としても尊敬できる前澤さんと出会えたことは、本当に転機になりましたね。いまmederiが存続できているのも、前澤さんとの出会いがあったからこそです。

 

前澤氏に評価されたポイントはどのような点だったと思われますか?

ご本人から直接聞いたわけではありませんが、起業家の選考基準は「チャーミングであること」と前澤さんがメディア取材で答えていらっしゃるのを見たことがあります。

選考では、それぞれの起業家の情熱や人柄を見られていたような気がします。私に関していえば、前澤さんに厳しい言葉を言われても、宿題が多く出ても、いつも1人で立ち向かい面談に行っていたので、その姿勢が評価されたのではないでしょうか。

プレッシャーに負けて途中で投げ出すこともできた中で、諦めずに前澤さんという偉大な起業家の視点を通して自分と向き合い続けた結果、情熱が伝わったのかなと思います。

 

根底にあるのは「継続して利用してくださるお客さまを裏切りたくない」という想い

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

起業してからは、モチベーションが年々変わっていると思います。

 

それでも変わらず根底にあるのは、継続的にサービスを利用してくださっているお客様を裏切らず、mederiを通してより豊かな人生を送っていただきたいという想いです。

 

また、最近は従業員が増えてきたため、経営者として従業員のキャリア形成やライフステージをサポートしたいという想いも、モチベーションに加わっています。

 

弊社に在籍しているのは女性ばかりだと思われるかもしれませんが、4割は男性社員です。

 

男性社員の多くは、パートナーなどの身近にいる人が生理痛や体調不良で悩まれている姿を目の当たりにして、弊社のようなサービスが世の中に必要だという価値観を持っています。

 

提供しているサービスは女性向けですが、男性社員も自分事としてサービスを捉えてくれていると感じています。

 

また、オンライン診療で医療を身近に感じてもらう医療DXサービスの側面に仕事のやりがいを感じている男性社員も多いです。

 

最近は男性向けに、AGAのオンライン診療をスタートしました。そのサービスにはもちろん、当事者である男性社員の意見を反映して構築しています。社員にとっても新たな挑戦になっていますし、自分たちの意見を取り入れてサービスを構築できることは事業会社で働く醍醐味でもあります。 

 

今後やりたいことや展望をお聞かせください 

現在の「メデリピル」ユーザーである生理に悩む女性が次に向き合わなければならないのが、妊娠や出産です。

また、多くの人がキャリアの悩みも抱えているのではないでしょうか。現在もそういった悩みを支援できるサービスを提供していますが、今後は内容をより一層ブラッシュアップさせていきたいと思っています。

 

社会は女性だけでは成り立っているわけではありません。

女性だけではなく、男性や他のジェンダーの方も対象とした、横展開できるようなサービスも生み出せたらと考えています。

目標はすべての人が健やかに暮らせる社会を作っていくことです。

 

自信が湧いてきたら思い切って起業を

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

賢くないからこそ私は起業ができたのだと思います。

起業に興味はあっても、多くの人は深く考えれば考えるほど「やっぱりやめておこう」という結論に行き着くのではないでしょうか。

起業には大きなリスクが伴いますし、「こんなサービスあったらいいな」という大抵のサービスはすでに世の中に存在しています。その中で起業する意義を深く考え始めると、結局は踏み切れなくなるでしょう。

もし「自分ならできる」と謎の自信に満ち溢れる瞬間が来たら、その時が起業の絶好のタイミングです。

漠然と「いつか起業してみたい」と考えている場合は、いきなり起業するのではなく、大手企業に入社して社内ベンチャーや新規事業のコンテストに応募してみるのもいいと思います。まずは自分の熱量にあったスタートは何かを考えてみるのがおすすめです。

 

採用を強化されているそうですね。貴社に入社したらできることや、採用したい人物像などをお聞かせください

現在、弊社には約35名が働いています。規模が小さいため、一人ひとりが責任のある仕事ができるという点や、私やほかの経営陣と近い関係で働けることが魅力だと思います。

今後も資金調達を予定していますので、将来起業家になりたい人にとってはファイナンスや管理部門が育っていく過程を見ながら、ベンチャーやスタートアップについて学べる環境です。

BtoCサービスは気遣いや心遣いが大切です。契約書や利用規約に書いてあることがすべてではありません。枠組みに囚われてしまっては、サービスは面白くなりませんし顧客満足度も低くなってしまうでしょう。

なので、人を喜ばせることが好きな人が合っていると思います。そして、今よりも自分を好きになりたい人、にぜひ入社していただきたいですね。

採用URL:https://www.wantedly.com/companies/mederi

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:坂梨 亜里咲氏

明治大学卒業後、ECコンサルティング会社にてマーケティング及びECオペレーションを担当。2014年より女性向けwebメディアのディレクター、COOを経て、同社代表取締役に就任(2019年退任)。

自らの長年に渡る不妊治療経験から「1人でも多くの女性に望むタイミングで妊娠・出産・キャリアが実現できる社会にしたい」と、2019年よりmederi株式会社を創業。 妊産婦食アドバイザーの資格を保有。

 

企業情報

法人名

mederi株式会社(mederi Inc.)

HP

https://mederi.jp/

設立

2019年8月1日

事業内容

女性の心と体のバランスを整えるヘルスケアサービスの提供

・オンラインピル処方サービス「メデリピル」

・メディカルケアブランド「メデリベイビー」

沿革

2019年8月 mederi株式会社 創業

2020年3月 クラウドファンディングにて妊活サポートブランド「Ubu」サプリメントを販売開始。24時間で目標販売金額200万円達成

2020年9月 膣内フローラチェックキット「Ubu Check kit」を販売開始

2021年1月 元ZOZO創業者 前澤友作、前澤ファンドより出資を受ける

2021年6月 オンラインピル診療サービス「メデリピル」プレリリース

2022年1月 オンラインピル診療サービス「メデリピル」正式リリース

2022年4月 法人福利厚生プラン「mederi for biz」リリース

2022年6月 Ubuが「mederi Baby」に改名しリニューアル販売

2022年7月 「メデリピル」初CM放映(関東・関西・中部・その他エリア)全国的CM放映はオンラインピル史上初、CM好感度ランキング1位

2022年10月 性感染症検査キット「mederi STD Check kit」を販売開始

2023年1月 メデリピルLINE友だち登録者数が10万人を突破

mederiスポーツアンバサダー 始動

2023年11月  メデリピルLINE友だち登録者数が25万人を突破

 

 

送る 送る

関連記事