【#112】五感すべてを満足させるお菓子を提供。日本のお菓子を通して日本文化を世界中に届けたい|CEO Danny Taing(ダニー・タン)(Bokksu Inc.)
Bokksu Inc. CEO Danny Taing(ダニー・タン)
Bokksu Inc.の創業者であるDanny Taing(ダニー・タン)氏は、アジア系アメリカ人としてアメリカで育ち、Googleでの勤務を経て来日し、その後楽天で勤務。日本に滞在している間にお菓子や文化に魅了されたDanny Taing(ダニー・タン)氏は、日本のお菓子と文化を世界中に届けるべく、Bokksu Inc.を設立。今回は、そんなBokksu Inc.のDanny Taing(ダニー・タン)氏に、具体的な事業内容や起業した経緯、今後の展望について伺いました。
日本のお菓子と文化を世界中にお届けしたい
さっそくですが、事業内容をお聞かせください。
2015年に創業したときはBokksuが存在してなかったため、日本のお菓子をNYへ持ち帰り、箱詰めから発送作業まで1人でしていました。現在はお菓子の定期購入サービスを主軸として、複数の事業を展開しています。
当社のミッションは、日本のお菓子とその文化を世界中に届けることです。日本全国に展開しているメーカーさんと直接取引をしており、新しいお菓子を見つけるときはメーカーさんに聞いたり、自分で検索したりしています。また、YouTubeで流行をリサーチすることもあります。
海外と日本のお菓子の違いを教えてください。
海外と日本のお菓子は全然違いますね。恐らく日本のお菓子はどのような場面においても魅力的に感じられます。その理由は、お菓子自体はもちろん美味しいですが、パッケージデザインがオシャレですし、開けやすさも工夫されているからです。また、開封したときの香りにもこだわっていて、五感すべてが喜ぶようなつくりだと感じます。
さらに、海外のお菓子は季節によって味が変わることはないのですが、日本では季節ごとに違う味がでますよね。そのような限定商品も魅力的だと思います。
Bokksuを通じて他では手に入らない商品と出会える
現在販売されている商品へのこだわりはありますか?
1つのボックスが完成するまでにはさまざまな条件があります。美味しいかどうかはもちろんですが、まず100種類以上の候補品を出し、その次にテーマと色が決まっているためそれに沿っているお菓子を40種類に絞り込みます。
そこからメーカーさんに連絡をとって試食品を送っていただき、ニューヨークに届けます。ニューヨークにいる20人くらいのスタッフで試食を行うのですが、テーマや色、お金、メーカーさんとの関係をもとに決めているため、1つのボックスができあがるまでに3ヶ月ほどかかります。テーマを決めるところから数えると1年以上前から動いているイメージです。現在企画しているものも来年の4月頃にできあがる予定です。こうして多くのメーカーさんと取引を行い、長い期間をかけてボックスが完成するため、Bokksuを利用してくださるお客様は他では手に入らない商品と出会うことができます。
日本で選んだお菓子がニューヨークのスタッフの舌に合わないこともありますか?
よくありますね。そのため、必ずニューヨークのスタッフに試食してもらわないといけません。匂いや味、食感などが日本人の感覚と全然違います。和洋折衷がイメージしやすいのですが、和菓子の要素を残しつつ、海外の方の舌にもあうようなフレーバーを足したちょうど中間のものが刺さるので、商品開発は結構大変ですね。
お客様が本当に求めているものは何なのか。アンケートを通してテーマを決定
同業他社との差別化はどうしていますか?
創業当時は同業他社が20社ほどあり、子どもから大人まで幅広い年齢層が好みそうなものが多くありましたが、 当社は、どちらかというと大人向けで伝統的なお菓子を提供することで差別化を図ってきました。
また、当社は毎月お菓子を送ったあと購入者に回答いただくアンケートを必ず確認し、それにもとづいて次のテーマを決めているため、お客様のニーズにあったものを提供することができます。
現在の事業を始めた経緯を教えてください。
2008年に卒業したスタンフォード大学では、心理学を専攻していました。心理学に携わる会社で働きたかったわけではなく、単純に興味があったからです。卒業後はGoogleに入社してマーケティングを担当していました。
そこのマーケティングはチャレンジが足りなくて、1年ほどで飽きてしまいました。自分の人生を変えたかったため早稲田大学の留学プログラムで来日し、日本語を学びました。すぐに帰国する予定だったのですが、次第に日本が好きになっていきました。
そのため、帰国せず就職活動を始め、楽天株式会社に入社しました。そこでは貴重な経験が得られたのですが、とても大変な日々でした。また、日本にいる間は日本食のなかでも特にお菓子に魅了され、日本のお菓子を世界中の人に届けたいという思いがあり、現在のBokksu創業に至ります。
どういった経験から日本が好きになったのでしょうか?
日本を好きになった経緯は2つあります。1つ目は、日本の漫画、アニメ、テレビ番組が好きだったからです。2つ目は、アジア系アメリカ人としてニューヨークで育ちましたが周囲にアジア人がまったくおらず、アジア系アメリカ人としてもっと日本を理解したかったからです。そうすればアジア系としてのアイデンティティも認めることができると考えました。
日本と海外で勤務経験があるからこそBokksuで取り入れているアイデアはありますか?
私は、全然違う国で勤務経験があったからこそ自分の会社を上手く経営できていると信じています。Googleで働いているときは仕事はもちろん人間関係など、さまざまなプロセスが上手くいっていました。割とオープンな関係性だったので何でも意見を出せていました。反対に上手くいきすぎて、改善点を見つけられなかったのです。
しかし、楽天で働いてからは改善すべきだと思う点が多くあると感じました。上下関係もその当時は厳しいように思える環境でした。そのため当社ではダイバーシティを大切にしています。LGBTの方もいますし、女性でも役職に就いています。
当社は契約社員も含めて100人以上在籍していますが、その8割以上が女性やLGBT、マイノリティな人種の方々です。
採用した人に入社後もアイデンティティを大事にしてほしい
仕事におけるこだわりや譲れない軸を教えてください。
採用する人物にこだわっています。採用して終わりではなく、どのような人か知りたいため、必ず私が最終面接を行います。
入社後も研修を行い、仲間と絆を築いてもらって、自分自身のアイデンティティを出せるように環境を整えています。
起業から今までの最大の壁を教えてください。
コロナウイルスが流行した2020年頃は本当に大変でした。当社は日本から世界に商品を送っているのですが、一時的に郵便が利用できなくなったことがあります。その際は売上が0になってしまう恐れもあり、これまでも色々な壁を乗り越えてきましたが、比にならない程のまずい状態にありました。
そのため、友人や知人、メーカーさんなどありとあらゆる方面に助けを求め、1社から商品を郵送する良い方法を教えてもらいました。そのおかげで壁を乗り越え、売上も3倍ほど上がりました。売上0か3倍かの危機的状況にいたときは壁でしたね。
売上を3倍にした取り組みを教えてください。
郵送方法は解決できても遅延問題はありましたし、お客様から商品の安全性を不安視されるなどさまざまな課題がありました。そのため、毎日解決するためにできることは何でもしていました。例えば、商品の安全性を不安視されているお客様にはこまめにメールでやり取りを行い、説明したり謝罪したり誠実な対応を心がけていました。そうした対応に喜んでもらえたのは大きかったと思います。
また、マーケティングや宣伝、広告にも力を入れていました。YouTubeやInstagramなどでお菓子だけでなく、日本の文化を感じられる風景などを投稿していました。
自分のアイデアを信じ、より良い商品を追求してきた
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
モチベーションは2つあります。
1つ目は、誰にもできない、または発明していない商品を開発したいという思いです。創業したての頃は、アメリカ人だけでなく日本人からも商品を否定されることが多くありました。しかし、自分のアイデアを信じ、より良い商品を追求してきたからこそ、会社も大きくなりました。
今では誰と話しても「良いアイデアですね」といわれるようになりました。その道を切り開くのが楽しいです。
2つ目は、従業員の存在です。「大変だけど、ここで働くのが楽しい」と言ってもらえるため、大きなモチベーションになっています。
今後の展望をお聞かせください。
最近では企業買収も行い、さらに事業を拡大していく予定です。日本のメーカーさんと組み、実店舗とオンラインショッピングを通して、より一層多くの方々へ商品を提供していきたいと考えています。
Bokksuの商品の魅力はどのようなところにありますか?
味だけでなく、五感すべてが満足できるところが魅力です。パッケージデザインや開けやすさ、香りなどにこだわっています。
経験を積んでからでも遅くない
起業しようとしている方へのメッセージをお願いします。
大学卒業後すぐの起業もいいですが、年を重ねて経験を積んでからでも遅くないと思います。私自身30歳で起業しており、さまざまなことを経験したからこそ得られたものもあります。やりたいことをやってみて、一緒に仕事をしたいと思える方を見つけてからでも遅くありません。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:Danny Taing(ダニー・タン)氏
ニューヨーク出身のアジア系アメリカ人であるダニーは、スタンフォード大学を卒業後、Googleにて勤務した後に来日しました。早稲田大学で日本語を学び、楽天株式会社に2年在籍後に米国へ帰国した後にBokksu Inc.を創業しました。
企業情報
法人名 |
Bokksu Inc. |
HP |
|
設立 |
2015年11月12日 |
事業内容 |
海外消費者向けの日本菓子サブスクリプションサービスの展開 |
沿革 |
2015年11月 菓子の定期購入サービス:Bokksu Snack Box 開始 2018年5月 菓子及び工芸品販売のECサイト:Bokksu Boutique開始 2020年 サブスクライバー3万人突破 2021年 サブスクライバー4万人突破 2022年1月 アジア食品のオンライングロサリー:Bokksu Market開始 2023年4月 米国のSanrioとの公式コラボ:HELLO KITTY AND FRIENDS Box開始 |
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