株式会社トラーチ 代表取締役 稲場 基泰
株式会社トラーチは、太陽光と蓄電池の販売・施工をおもに手掛けている会社です。2021年の創業ながらも、すでに他社を圧倒する販売・施工実績を持ち、業界で話題を呼んでいます。代表取締役社長を務めるのは、警察官を辞めて起業した稲場 基泰氏です。公務員を辞めて起業に至った経緯や事業内容などを詳しく伺いました。
メーカーとの直接取引で業界最安値を実現
事業の内容をお聞かせください
家庭向けの太陽光および蓄電池の販売・施工と、電気自動車のスタンド工事やV2Hと呼ばれる、「家から車」「車から家」に送電できる機械の取付工事をメインにおこなっています。
また、屋根修理や外壁塗装を始めとするリフォーム全般も手掛けています。
太陽光に関してはメーカーと直接取引をしているため、仕入れ値が安く、業界最安値で商品を提供できていることが弊社の強みです。自社の職人が施工まで担当しており、大幅なコストダウンを実現しています。
通常の取引では商社を挟むのですが、弊社が多数の受注件数を取り続けていることが評価され、有難いことにメーカーの方から直接取引を提案してくださいました。
カンボジアでの支援活動にも取り組まれているようですね。詳しくお伺いできますか。
私はGCUという建設業の組合の一員として、他の若手経営者たちと共にカンボジアでの支援活動に取り組んでいます。共同で資金を出し合い、カンボジアに小学校を建てたこともあります。
他にも、泥水を飲むしかなかった地域で井戸を掘ったり、孤児院の支援にも携わったり、少しでもカンボジアの方々のお役に立てればという一心で活動を続けています。
私自身、18歳で父を亡くしたこともあり貧困の苦しみを経験してきたと思っていたのですが、カンボジアで目にした現実は当時の私の生活よりも遥かに厳しいものでした。
子供たちがゴミをボールに見立てて裸足でサッカーをしていたり、泥水を飲むしかない環境で幼い子どもが亡くなったりするのを知った時は、大きな衝撃を受けました。
同時に子供たちが学校に行けていないことを知ったため、組合の皆でお金を出しあって現地に学校を建てることにしたのです。
現在の事業を始めた経緯をお伺いできますか?
今の事業を始める前は、約10年間警察官として働いていました。
実は太陽光と蓄電池のすごさを知ったのは警察官の時です。2011年に東日本大震災が起こった際、私は大阪府警の広域緊急援助隊として仙台や岩手県の他のエリアに赴き、支援活動をしていました。
当時は停電で周りが真っ暗だったのですが、太陽光と蓄電池のある家だけ、明かりが付いていたのです。その時に「これはすごい!」と思い、自分でも色々調べてみることにしました。
私の家庭には子どもが3人います。人数が多いこともあり、毎月の電気代に2万円ほどかかっていました。太陽光だと電気代が安くなると以前から聞いていたのですが、本当に安くなるのか正直半信半疑でした。しかし、実際に太陽光に切り替えたら毎月の電気代が3,000円になったのです。
当時から国が太陽光の導入を推し進めていたこともあり、補助金ももらえました。太陽光の素晴らしさと経済的メリットを改めて実感し、ますます興味を持つようになりました。
一方で警察官としての経験から、太陽光関連の会社に騙されてしまう被害者の方が増えていることも知っていました。まさかと思われるかもしれませんが、奈良県の田舎で1人暮らしをしている私の母も騙されてしまったのです。
母は瓦屋根の修理を持ちかけてきた業者に太陽光の設置を勧められ、手付金を払った後にその業者に逃げられてしまいました。自分の身内まで詐欺の被害に遭うとは思っていなかったので、さすがにショックでしたね。
同時に太陽光自体は素晴らしいのに、この業界は一体どうなっているのかと愕然としました。
そんな中、双子の弟が運営していた観光業の会社がコロナの影響で立ち行かなくなってしまいました。弟は以前から「お前は絶対いい営業マンになるから、一緒に事業をしよう」と言ってくれていたのですが、私は最年少で警部補になっていましたし、すぐに警察を辞めるわけにはいきませんでした。
しかし、もし事業をやるなら時流にあった商売をしたいと考えていて、それに当てはまったのが太陽光でした。これから設置の義務化も進みますし、我々が低価格で素晴らしい商品を提供することで、詐欺を働く会社に騙される人を減らせるのではないかという考えもありました。
そういった想いに弟も共感してくれ、太陽光を中心とした事業で起業することになったのです。
父の教え通り、常に一番を目指す
仕事におけるこだわりを教えてください
私は幼少期から父に「一番になれ」と言われて育ったこともあり、常に高い志を持って物事に取り組んでいます。
父自身も42歳の時に最年少で警視に昇格したほど優秀な人でした。その後も異例の早さで出世し、49歳で亡くなった時は所属長を務めていました。
私は生まれた時から常に双子の弟と比較されてきましたし、学生時代はお互い競い合っていました。私も弟も「あいつには絶対負けたくない」と負けず嫌いな性格で、何かやるからには絶対に一番になりたいという気持ちを持っていました。
勉強やスポーツでも、数字が出る勝負では絶対に一番を目指すという環境で育ちましたので、警察学校に入った時も、同期700人の中で一番になることだけを目指して学んでいました。
幼い頃からの父の教え通り、常に上を目指すという姿勢を仕事でも大切にしています。
もうひとつのこだわりは、太陽光業界のイメージを塗り替えることです。不当な金額で販売する業者がまだ多く存在していますが、我々は正義感を持って事業を展開し、これまでのネガティブなイメージを払拭していきたいと思っています。
起業から今までの最大の壁を教えてください
これまでにさまざまな壁がありましたが、一番衝撃が大きかったのは従業員が一斉に辞めてしまった時です。
弊社は創業当初、歩合給制度を取り入れていました。かなり高めの歩合給を用意し、インセンティブのみでチームを動かそうとしていました。
しかし、従業員数が増えるにつれて新人の教育が必要になってきたため、創業から1年が経った頃、制度を変えることにしたのです。
従業員には、固定給を上げる代わりに、新人教育を含めてもっと会社のために動いてもらえるように工夫しました。自分の仕事だけではなく皆で助け合いながら進んでいくために、朝礼、終礼もやることにして社内コミュニケーションも増やしました。
しかし、会社の制度を変えたタイミングで創業メンバー7人が突然辞めると言い出したのです。新人教育をしても自分たちの歩合には繋がらないどころか、新たなライバルを育てることになる。納得がいかない、と言われました。
彼ら彼女たちの一番の目的は、お金を稼ぐことだったのです。歩合を稼ぐために、商品を高価格で売り出す人までいました。まるで私が問題視しているボッタクリ業者のような行動です。私はお客さまに高額で商品を売りつけるために会社を立ち上げたのではありません。
むしろそういった会社には絶対になりたくないという信念を持って、起業しました。創業メンバーはその想いに共感してくれていると思っていたのですが、実際はそうではありませんでした。
それから私の考えをしっかりと示そうと思い、理念を掲げる経営に方向転換をしました。私の考え方に共感してくれる社員は残ってくれましたが、残念ながら大半がその時に会社を去ってしまいました。
大変な時期でしたが、会社の方向性がしっかりと定まった時期でもありましたね。
今もまだその壁を乗り越えている最中ですが、残ってくれたメンバーと朝礼・終礼をやっていますし、会社のミッションとビジョンを皆で唱和するなど、社内文化を構築しているところです。
そういった文化が、不当な金額でお客さまに商品を売らないための抑止力にもなっていると思います。
退路を断ったからには成功をつかむ
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
私は警察一家に生まれました。父も警察官でしたし、いとこもそうです。
私が警察を辞める時と言った時、周囲からは猛反対を受けました。せっかく警察でも一番の成績を取り、エリートコースを進んでいるのにと。
そうした反対を押し切って、自分の信念を曲げずにこれまで進んできました。退路を断って事業をしているからには絶対に成功して、あの時反対した人達を見返したい。成功しないと父にも顔向けできません。そういった想いがモチベーションになっています。
もうひとつのモチベーションは、太陽光の詐欺被害に遭う人を1人でも減らしたいという想いです。現在の日本では利益重視の会社が多く、私のような考えを持っている経営者は少ないのではないでしょうか。
太陽光は北面に設置しても発電しないのですが、実際のところ北面に太陽光が設置されている住宅をよく見かけます。情報を持っていないお客さまをターゲットにし、お金を稼ぐ業者がいるのです。
我々は胸を張って仕事をしたい。我々が妥当な金額で商品を提供することが、お客さまを騙そうとする会社の撲滅にも繋がるはずです。そうした正義感を燃やしながら進み続けています。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
現在、我々が持っているノウハウを開示し、他社にコンサルティングをおこなっています。ノウハウを開示する代わりにそれらの企業には我々の傘下に入ってもらい、同じミッションとビジョンを持って事業を展開していただいています。
弊社は創業2年で年商が10億円を超えたこともあり、他社から「売り方を教えて欲しい」というお声をいただくようになりました。実際に我々のノウハウを学ぶために、神奈川と東京の会社の方々が関西まで来てくださっています。
我々は関西で事業を展開していますので、関東や九州の会社は直接の競合には当たりません。そのため、こうした支援をおこなっているのです。
太陽光は「売って終わり」ではなくメンテナンスも含めて、売った後のほうが大切なんです。したがって我々は他の地域に進出するより、既存のお客さまを守るために関西の基盤をしっかりと作っていきたいと考えています。
何より私は関西で育ったため、関西から離れて生活するのは現実的ではありません。
他にも、工務店向けの勉強会も開催しています。補助金は半年に1回の頻度で変わりますし、商品知識についても工務店の方々が常に最新情報を把握し続けるのは難しいのが現状です。
そこで、我々が勉強会を開いたり工務店の代わりに営業をおこなったりもしています。
迷っているならすぐにチャレンジ
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
迷っているのであれば、すぐに行動して欲しいですね。たとえ失敗したとしても、軌道修正できますから。若い人であれば尚更です。
まずは行動してみないと結果も出ません。失敗を恐れず、チャレンジしてみてください。
私は警察官としての社会人経験しかない中で起業しましたから、私にも不安がもちろんありました。それでも周囲の反対を押し切り、ゼロから事業を作りました。今でこそ「成功したね」と言っていただけることも増えましたが、それは退路を断って行動したからこその結果です。
起業するなら、腹を括ってチャレンジするのみです。失敗したとしても死ぬわけではありません。もしもの時は生活保護に頼っていいと思います。
採用を強化されているそうですね。求める人物を教えていただけますか?
求める人物像でいうと、負けず嫌いで笑顔が素敵な人ですね。
どの会社もそうだと思うのですが、営業チームは成績の順位が発表されます。たとえ同僚に負けたとしても、笑って乗り越えられる明るさが大切です。お客さまの前で暗い顔をしていたら、商品は売れませんから。
賢さや学歴は関係ありません。明るく負けず嫌いで、ポジティブ、真面目、そして嘘を付かない人を探しています。私は嘘を付く人を見抜けますし、嘘を付く人をわざわざ育てようとも思いません。素直に学べて、胸を張って良い商品をお客さまに提案しようという姿勢を持っている人が理想です。
これからは女性がさらに活躍する時代だと思いますので、女性にもぜひ入社していただきたいです。
また、採用を強化するために学生インターンも受け入れています。
インターン生にはお客さまにアポイントを取る業務や、先輩に同行しての飛び込み営業をお願いしています。朝礼や終礼にも出席してもらい、会社のことをできるだけ深く理解してもらうようにしています。
営業で一番大変なのは飛び込み営業ですから、それができる度胸やトーク力を学生のうちに身に着けられたら無敵だと思います。飛び込み営業はしんどいのですが、そうした経験が社会に出たときに必ず役に立つはずです。
我々としてもインターン生を社員として採用できたら会社説明会を開かなくて済むため、お互いにとってメリットがあるといえます。弊社はまだ2期目なのですが、新卒社員をすでに3人も採用しました。
一人ひとりの意見が通りやすいオープンな社風ですので、インターン生も働きやすいと思います。
私は時流に乗ることが大切だと思い、太陽光事業を始めました。その考えで、最近TiKTokも始めました。TiKTokでは営業マン向けのノウハウや、警察官時代に学んだ心理学などを紹介しています。
時流に乗った事業に挑戦したい人や営業力を鍛えたい人にとっては、働きがいのある環境が整っています。
採用情報はこちらから▽
URL:https://truach.co.jp/recruit/
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:稲場 基泰
1987 年 2 月 12 日 奈良県出身。双子の兄。警察一族に生まれる。
大学卒業後、父と同じ警察官の道へ。30 歳という若さで、警部補に昇格。その年齢での昇格は、同期約700 人の中で最年少という偉業を成し遂げた。その後、32 歳のときに未経験で住宅用太陽光発電のシステム販売営業の道へ飛び込む。そこでスタートして1か月で営業成績ナンバーワンという結果を出した。2021年8 月には独立し住宅用太陽光発電・蓄電池システムの販売会社、株式会社トラ―チを設立し、創業2年目で年商10億円を達成。現在は双子の弟とともに、36 歳の若手経営者として注目を集める。
企業情報
法人名 |
株式会社トラーチ |
HP |
|
設立 |
2021年8月2日 |
事業内容 |
|
関連記事