株式会社アウトラウド 朝澤 隼・松本 悟志

株式会社アウトラウドは、「Pocta」というBtoBの営業活動を最適化するSaaSプラットフォームを開発しているスタートアップ企業です。同社の朝澤隼氏と松本悟志氏は、サービスを通じて世の中をより良くしたいと語っています。今回はそんな株式会社アウトラウドの共同創業者である朝澤隼氏と松本悟志氏に、具体的な事業内容や事業を始めた経緯、今後の展望について伺いました。

 

人や社会がAIを活用して、新しい可能性を見つけられるようなサービスを提供したい

さっそくですが、事業内容をお聞かせください。

朝澤氏:

当社では、「Pocta」というBtoBの営業活動を最適化するSaaSプラットフォームを開発しています。人や社会がAIを活用して限界を乗り越え、新しい可能性を見つけられるようなサービスを当社の事業を通じて実現したいと思っています。

他社と比較したときの「Pocta」の強みを教えてください。

朝澤氏:

当社の強みは、BtoB営業活動における複雑さや難しさをPoctaのAIサービスで最適化することで商談獲得向上や営業工数削減をすることにあります。

創業チームは大手外資系IT企業や国内での代理店側の営業経験に加え、アーリーフェーズの海外IT・SaaS企業におけるビジネス成長の経験があり、これらの経験と業界知識をプロダクトに反映していることが大きな強みの1つです。

 

またPoctaサービス内で検索や資料追加を続けていくことで、どのような事に興味があったり課題があるのかが可視化され、その解決策と合わせてAIとコラボレーションすることで企業独自の営業ノウハウとして蓄積されていきます。このような1次データが活用できる点も強みとなります。

 

私たちは法人営業、特にBtoBエンタープライズセールス領域におけるノウハウ継承や育成の難しさ、人材不足などの課題を解決し、営業活動にイノベーションを起こして最適化することを目指しています。

AIそのものを提供する側から、AIを使ってサービスを提供する側へ

現在の事業を始めた経緯を教えてください。

朝澤氏:

もともとIT業界で20年ほど法人向け営業をしていました。前職のGoogle時代では法人向けにAIやDXの提案・導入支援をしていました。そのような中、Generative AIの進化と発展の波を感じ、AIを使ったサービスを提供する側になりたいという思いが強くなったことが1つのきっかけです。

 

また、私は「日本の失われた30年」の入口の世代で、学生時代から日本の不況が始まりました。社会人として働き出してから、日本経済全体が明るくなっていく状況をあまり経験したことがありません。実際に日本の労働生産はアメリカと比べてこの30年で2.5倍も差が開いているというデータがあります。そのような時代を経験した中で、これまでと同じやり方では世の中は大きく変わらないと感じ、未来を自ら作り社会を少しでも良い世界にしたいと考え、起業に至りました。事業案を検討していく中で松本さんと出会い、共同創業者として正式に事業を開始しました。

昔から独立は考えていたのでしょうか?

朝澤氏:

独立に関しては、強く考えていませんでした。というのも、大学生時代にスタートアップ企業のインターンに参加したこともあるのですが社会人になってある程度は生活ができる環境にいたがゆえに、その気持ちを忘れていたのです。

 

しかし、改めて考えるとインターネットやスマートフォン、クラウドサービスなどのビジネスを大きく変える波を何度も目の当たりにしてきたので、Generative AIの波はちょうど私のキャリアの波とクロスするタイミングなのではないかと思い、起業しました。

 

成功してきた起業家さんからは、「いかに時代の波を捉えて乗っていくか」というアドバイスをいただいていたので、まさしく今乗るべき波だと思いました。

 

松本氏:

原体験となりますが、私は幼少期から10年近く家業の手伝いで、しめ縄や門松といった正月飾りの路面販売を経験してきました。年末限定ですが、親族がモノを仕入れて自分たちで作って販売していました。足腰の悪いご年配の方には自宅まで正月飾りを持っていって、設置まで行っていました。

 

小学生から中学生くらいまでお手伝いをしていたのですが、自分たちで作ったモノを人に届け、「ありがとう」と笑顔になってもらえたことを鮮明に覚えています。いつか自分が大きくなったときにも、何かしら自分の専門性を軸に事業をつくって、人から感謝されることをしていきたいと思っていました。

 

筑波大学、筑波大学大学院では生物化学工学を専攻し、その後は社会人となってIT業界へキャリアチェンジをしました。その中で、一貫した顧客起点のセールスの実現やIT業界で感じた負の部分などを解決したいと思い、起業に至りました。

 

「この2人が組んだら面白いものができるのではないか」

お2人が共同創業に踏み切った理由を教えてください。

朝澤氏:

当初、私自身はAI×英語という全く異なる事業を手掛けていたのですが、いくつかの起業家育成プログラムに参加していく中で、このビジネスをスケールしていけるのか、ピボットに悩んでいたタイミングでした。そのとき、松本さんが挑戦していたセールステックについて、彼自身も苦しんでいたので、一度話しをする機会を設けました。その結果、自分たちが見ていた世界観が似ており、「この2人が組んだら面白いものができるのではないか」と感じ、共同創業に踏み切りました。

共同創業をして良かったと思える部分はありますか?

朝澤氏:

1人で事業を手掛けていた時期もありますが、前に進むエンジンが2つあるのは全然違うと感じています。自分のことを客観的に判断し、自分がいる状況が本当に適切かどうかは1人だと分かりにくいものです。しかし、共同創業者である松本さんに相談することで、方向性を再確認したり2倍のスピード感で事業を進められたりします。

 

一例でいうと、私は先々週に経済産業省のプログラムでアメリカ・シリコンバレーに行っていました。現地の熱量を受け、自分たちの事業をアップデートしていきたかったのですが、冷静になったときに自分が思う事業の方向性が2人で話し合っていたものと異なっていないか、ちゃんと地に足がついているかということを松本さんに相談しました。事業の成功に向けて独りよがりにならない点や自信をもって前に進める点が、共同創業をして良かったと思える部分です。

 

松本氏:

推進スピードや安心感は、まさに共同創業をして良かったと思える点です。スタートアップに関わる事業を手掛けるということは、新しい領域で新しい製品をつくっていくことになります。最初は順調に進んでいくかもしれませんが、周りを巻き込んで大きくなっていくことを考えると、1人では遅れを取ってしまう可能性があります。

 

私は「僕のヒーローアカデミア」というアニメが好きなのですが、ヒーロー1人が活躍するというよりは、ヒーロー全員が活躍することで社会が成り立っています。朝澤さんと2人でやっていくことで、私1人で描いていた将来の社会像への実現に加え、2人だからこそできる・見える世界観が広がっていくことが共同創業の良いところだと思います。

仕事におけるこだわりや譲れない軸を教えてください。

朝澤氏:

仕事軸では信頼が重要だと思っているので、信頼してもらうために誠実であることを意識しています。お客様だけでなく、社内や業務委託先も同様です。当社はまだまだ小さな会社なので、大きくしていくためにも周りの人との繋がりを大切にしています。

 

松本氏:

私にとってのこだわりは、コラボレーションとエンジョイです。1+1が2ではなく、それ以上の3、4、5という風に、周囲の人を巻き込んで一緒に社会をより良い方向にしていくという意味で、コラボレーションは大事だと思っています。また、大変なときでも常にエンジョイできる仲間と一緒に、社会にインパクトを与えられる仕事をすることがこだわりです。

「こだわり」を持つに至った理由や経験はありますか?

朝澤氏:

私が日本の企業に入社した当時は、まだ旧来型の社会で厳しい労働環境な面もあり、そこで日本独自のビジネスカルチャーを経験しました。その後、外資系IT企業に転職をし、性別や年齢、国籍、宗教・信条、価値観などが異なる多様な人々が共存する環境でイノベーションを起こすには、「respect each other (お互いに敬意を払って人と人で向き合うこと)」が大事だということを体感しました。

 

「respect each other」の文化は、日本の企業においてまだまだ馴染んでいないと思います。世代を含めて敬意を払い合うことが当社の文化にもつながってくると思うので、そういった経験がこだわりを持つ原体験になっています。

 

松本氏:

私の前職である外資系のSaaS企業では、コラボレーションツールを提供していました。国を超えてさまざまな人、職種がある中、チームとして働くうえでお互いが効率よくコラボレーションしていくための基盤をつくることが主な事業でした。

 

そういった製品をお客様に提供していくことで、一部門から全社的へ、はたまた国を超えて普及していきました。コラボレーションツールによって、働き方や人間関係などがより良い方向に向かっていったため、その経験からコラボレーションは非常に重要な要素だと考えています。

起業から今までの最大の壁を教えてください。

朝澤氏:

正直、大きな壁に直面したことはまだないと思います。ただ、強いていうなら資金調達が大変でした。創業したとはいえ始まったばかりなので、自分たちのビジネスに価値を見出していただき、そこに対して投資をしていただく方々に巡り会うのには苦労しました。

 

松本氏:

朝澤さんと出会う前の壁ですが、私は週末起業のような感じで会社の飲み会などを我慢し、平日夜や土日を費やして、勉強や事業案リサーチ、ユーザーインタビュー、プロダクト作り、アクセラレーションプログラムへの参加などを進めてきました。時にはチーム解散したり、強いニーズがなく10回近くピボットしたりしてきました。

 

しかし、自分がつくったものや考えたものは、社会にインパクトを与えられるようなものではありませんでした。思いだけはありましたが、なかなか起業するまでに至らなかったのが壁でした。

良い人材と思える方にチームになっていただきたい

開発中のSaaSプラットフォームに関する壁はありますか?

朝澤氏:

エンジニアを適切なリソースで配置できるかが壁です。当社は現在外部エンジニアの方に支援いただきながら開発を進めています。良い人材と思える方にチームへ入っていただきたいのですが、領域的にフロントエンドやバックエンド、AIなどがあるので、なかなか全てが出来るスーパーエンジニアはピンポイントでは見つかりません。前に進むために工数を調整しつつ、良い人材を見つけることに現在も注力しています。

求めている人物像やアピールポイントなどはありますか?

朝澤氏:

そうですね、まず当社はエンジニアとデザイナーを募集したいと考えています。当社では、BtoBの営業活動をいかに効率化するかに携わっているので、普段あまり見ることのない世界だけど実は使われている挑戦的なテクノロジーであったり、高度化された知見のようなものを知ることができたりします。当該分野にチャレンジする会社はまだ多くないので、当社のアピールポイントの1つです。

 

また、私自身が多様性を重要視しており、性別や年齢、国籍など関係なく、挑戦したい方とコミュニケーションを取りながらビジネスを進めたいと思っています。

 

松本氏:

スタートアップ企業である私たちと一緒にプロダクトを作ったり、お客様のところに訪問したりするなど、苦楽をともにできる人がいたらいいなと思っています。当社の事業内容に共感してくれる方がいたらうれしいです。

進み続けるモチベーションはありますか?

朝澤氏:

お客様に提案書を持っていったりユーザーインタビューをしたりして、「使いたい」「良いアイデアだね」と言ってもらえると、世の中の役に立っていると実感できるので、それがモチベーションになっています。

 

また、事業を進める中でさまざまなスタートアップ領域の方々と出会う機会があります。そういった方々のほとんどが世の中をより良くしたいと思っているので、同志と呼べるような存在に出会えることも面白く感じています。

 

松本氏:

サラリーマン時代は9時17時の勤務後がプライベートとして区切られていましたが、現在は良い意味で仕事と生活が一体化しています。ですので、日常のふとした瞬間に仕事とプライベートの垣根を越えて、「こういう感じのプロダクトを作ってみたら面白そう」と考えてワクワクする気持ちや、その思考の過程から得られる自分の存在価値のようなものを感じれることがモチベーションになっています。

今後の展望をお聞かせください。

松本氏:

1人ひとりが立ち上がり、ヒーローとなれるような社会にしていきたいです。自分自身の諦めや社会・組織の壁などによって踏み出せないこともあるので、それらを当社のプロダクトやサービスによって取り払い、スムーズにしていきたいと考えています。

 

そうすることで、1人ひとりが自分自身はどうしたいのか、またその内向きのベクトルを外に向け、どう解決していくかという風に手を差し伸べられるような社会を実現したいです。

 

朝澤氏:

人や社会の限界を越えられるようなサービスの提供を通じ、挑戦することが楽しい世の中にしたいと考えています。人々の行動変容を当社の事業を通じて実現したいですね。

 

事業としてはもちろん上場を狙いたいですし、日本発のBtoBサービスとして海外展開も実現したいと思っています。

 

まずは行動してみることが大事

共同創業者として「起業したいけれど一歩踏み出せない」という方にメッセージをお願いします。

朝澤氏:

政府のスタートアップ5カ年計画などによって、ここ1〜2年でさまざまな支援制度が充実してきました。起業支援プログラムなどを調べて参加し、行動してみることをおすすめします。

 

また、起業するのに不安を感じる方も多いと思います。挑戦することが自分自身にも、そして周りや次の世代にも勇気を与えるきっかけになると思いますので、応援しています!

 

松本氏:

私自身、社会人生活をしながらの起業でしたので、社会人向けのメッセージになります。

何かしら動き出すときに時間的制限はありますが、自分の身近な課題を落とし込むことが重要です。手作りでも作ってみたらいいですし、クラウドサービスでデザインをやってみるなど、勉強できるコンテンツはYouTubeを含め数多くあるので、まずは目に見える形に行動してみることをおすすめします。

 

そのうえで「一緒にやってくれる仲間が必要だ」と感じたら、身近な人に声をかけてみることが重要です。

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

 

起業家データ:朝澤隼 氏

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大学卒業後、伊藤忠テクノソリューションズ株式会社へ新卒入社。主に通信業界を担当し、海外IT製品のシステム導入、構築、パートナービジネスを通じ、国内インターネット通信・クラウド市場の立ち上げを経験。2011年にヴイエムウェア株式会社へ入社。製造・通信/ISP企業を担当し、VMware仮想化技術を中心に国内最大の初導入案件などを多数導入。その後Global Account Managerとしてグローバル企業のDX活用に向け、各国の営業活動を推進。

2020年にグーグル・クラウド・ ジャパン合同会社へ入社。法人向けAI、DX導入提案を始め、国内事業立ち上げのBizDev、アライアンスなどを実施。Google社内ではDEIやIamRemarkableイニシアティブのファシリテーターなどダイバーシティ推進活動もリード。2023年にGoogle退職後、株式会社アウトラウドを立ち上げ、共同創業者の松本と事業を開始。

 

起業家データ:松本悟志 氏

 

 

 

 

 

 

 

 

 

筑波大学、筑波大学大学院(修士)では生物化学工学を専攻。「人とテクノロジーで社会課題を解決したい」をモットーに研究の傍ら、スタートアップにてDeep Techリサーチの長期インターンなどにも注力。株式会社マクニカに新卒入社。法人営業としてUSスタートアップのネットワーク/セキュリティ製品の国内拡販に従事。ハイタッチセールス、パートナーセールス、プロダクトマーケティングを経験。外資SaaS企業のWrike Japanへ転職。主にミッドマーケット・SMB向けの新規顧客獲得から既存顧客向けアップセル/クロスセル、カスタマーサクセスを経験。その後、共同創業者の朝澤と共に株式会社アウトラウドを共同創業。

 

企業情報

法人名

株式会社アウトラウド

HP

https://out-loud.net/

設立

2023年7月

事業内容

BtoB営業活動の購入者、販売代理店、メーカー間をつなぎ最適化するSaaSプラットフォーム、Poctaを開発・提供。

社内稟議、決済プロセス、購買・販売者間コミュニケーション、メーカー・代理店の営業活動など複雑化しているBtoB営業プロセス全体をスムーズに行えるサービスを購買、営業、行動データと適材適所のAI活用により解決を目指しています。

Poctaサービスにより人や社会の可能性の限界を越え、労働生産性の改善、人や企業の価値が向上し「八方よし」の社会の実現が目標です。

採用ページ

沿革

2023年7月に設立

 

送る 送る

関連記事