【#134】女性の自立を叶える、ITエンジニアの育成プログラムを提供。人材不足解消やダイバーシティー実現にも寄与する、実践力を身につけられるサービスを。|代表取締役 やまざき ひとみ(Ms.Engineer株式会社)
Ms.Engineer株式会社 代表取締役 やまざき ひとみ
ITエンジニアとして長年活躍されてきた実績を持つ、Ms.Engineer株式会社の代表の山崎氏。業界の人材不足の問題を認識するとともに、ITエンジニアは女性が能力を発揮できる職種として魅力があることに着眼し、女性向けの育成プログラムを提供しています。
今回は、そんなMs.Engineer株式会社の事業内容や、やまざき氏が事業を始めた経緯、今後の展望などを詳しくお伺いしました。女性のキャリアアップの選択肢の1つとしてITエンジニアがいかに魅力的か、そして、社会にいかに貢献できるのかについて、とても情熱を込めて語ってくれました。やまざき氏や事業に魅力を感じている方はもちろん、女性の自立やダイバーシティーの実現に興味のある方も、ぜひ最後までご覧ください。
女性がスキルや自信を身につけて社会に羽ばたき、能力を発揮して人生を変えるためのプログラム
事業の内容をお聞かせください。
女性のITエンジニアの育成事業です。社会人女性のスキルアップを目的としており、転職につながる実践的なプログラムを提供しています。
他社との大きな違いは、コーディングブートキャンプ形式を採用していることです。コーディングブートキャンプ形式は、アメリカやヨーロッパではメジャーな方法です。短期間で、難易度の高い知識の習得や開発演習を重ねることで、優れた技術を習得できることが実証されています。
弊社は、女性向けのコーディングブートキャンププログラムを取り入れている、日本では唯一の企業です。コーディングブートキャンプ形式を取り入れることで、未経験の方も高いレベルの技術を習得できます。
ITエンジニアといえば、女性にとっては縁遠く、特別な人が就く職業というイメージを持っている方も多いです。しかし、実際の受講生は、女性ということぐらいしか共通点がないくらい、バックグラウンドも個性も千差万別です。それでも、皆さんITエンジニアの転職を成功させています。
未経験の女性に難易度が高く実践的なスキルを身につけてもらうためには、もちろん、勉強時間をしっかり確保してもらわなければなりません。そこで、弊社のプログラムでは、受講生にはあらかじめ決められた時間に授業を受けてもらい、宿題を提出してもらっています。空き時間に勉強する、というやり方は採用していません。
その結果、最終的には9割の受講生はスキルを習得して卒業し、転職を成功させています。もし勇気を持って入ってきてくれれば、勉強に集中できる環境を提供しスキルを身につけられるようサポートします。
世の中ではITエンジニアが不足しており、未経験のITエンジニアを採用する企業も多いです。だからこそ、レベルの高い女性を採用してもらえれば、企業や社会の成長にもつながる上に、女性が活躍できる場を作れます。こうした世の中の流れを構築していくことも、事業の一環だと考えています。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
女性の高い失業率と、ITエンジニアの人材不足の両方の問題を解決したいと思ったことが出発点です。
弊社は、コロナ禍の時期に創業しました。ステイホームをしていた時に女性の失業率や自殺率が高いことを耳にし、とても衝撃を受けました。働き盛りの女性の8割は就労しているものの、非正規雇用の割合は55%と半分を超えます。
また、コロナ禍のように社会が不安定になって皺寄せが最初にくるのは女性です。とても理不尽だと思いました。さらに、労働人材が少なくなる中で、女性が力を発揮していかなければ社会全体が困るため、何か良い解決手段がないかと考えました。
ちょうど同じ時期に、ITエンジニアである知人の男性はコロナ禍の影響で仕事が増えている、という現実を目の当たりにしました。しかも、リモートワークになり、ずっと家にいて仕事をしていたのです。
彼の働き方を見て、ITエンジニアは女性にとって働きやすい職種に変化したことを確信したのと同時に、IT業界が抱えていた人材不足の問題の解決にも繋げられそうだと考え、女性のITエンジニアを育成する事業を始めました。
ちなみに、もともと起業を考えていたわけではありません。スタートアップやエクイティファイナンスにもほとんど興味はありませんでした。
ただ、事業を何かやりたいということや、人口減少していく中で、女性がスキルアップしてキャリア形成し、活躍していく必要性を感じていました。その後、使命感を持ってやろうと思えたことに出会ったタイミングで、実際に事業を始めました。
男性も女性も同じように活躍できて、働きやすい業界だと知って欲しい
仕事におけるこだわりを教えてください。
一つは、男性との対立構造をつくらないようにすることです。ダイバーシティーの実現を目指す企業として、男性と女性がそれぞれ活躍するための事業を推進しています。
女性の社会進出や、女性の活躍というと、椅子取りゲームのようになり男性と衝突してしまう問題が生じる危険性があります。しかし、ITエンジニアが不足している今の社会に置いて、女性のITエンジニアが増えることは、男性の活躍の場を奪うことには繋がりません。
皆が将来の不安を抱かずに働くため、そして、日本のより良い未来を実現するためには、男性と女性のITエンジニア、お互いが協力し合える関係性でいられるように、我々も事業を進めていきます。
起業から今までの最大の壁を教えてください。
日々、大きな最大の壁にぶつかっています。例えば、将来に不安を持ちながら働く女性が多いにも関わらず、ステップアップの方法として、ITエンジニアとしての転職をすぐに想起してもらえていない、という壁があります。
スタートアップとして、資金力などを含めて制限がある中で、社会課題へいかにアプローチしていくかという大きな壁にぶつかっています。将来に不安を抱いている女性たちに、ITエンジニアという選択肢に気がついてもらえるように、ありとあらゆる手段を取っています。
ちなみに、ありがたいことに、資金調達にはそれほど大きな苦労はしていません。社会的アジェンダと事業ドメインが合致しており、投資家さんが私たちが叶えたいビジョンやアプローチに共感してくださっている方々ばかりであるため、資金調達をし続けられています。もちろん、大企業と比較すると限界はありますが、多くの方々の助けがあり、日々の壁に立ち向かうことができています。
女性がいかんなく能力を発揮し、スキルアップに集中できる環境を提供
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
現在行っている事業は日本の未来をより良くするために必要であり、私以上に一生懸命に取り組む人はない、という使命感がモチベーションの源泉です。
もともと、エクイティファイナンスをしてスタートアップすること自体、やりたいと思っていたわけではありません。ただ、事業自体が持っている使命感に引っ張られて日々動いています。
また、女性は男性と同じように社会で活躍できる、という確信を持っていることも、モチベーションに繋がっています。
私は、小学校から高校まで女子校に通い、その後も女子大へ進学しました。例えば、リーダーといえば、男性を想像する方も多いかもしれませんが、女性も集団をまとめ上げ、大きな何かを成し遂げることが十分にできるのです。
そして、女子が集まった時の特有の雰囲気は、成長して何かを成し遂げるための環境としてとても合理的だということも肌で感じ、今の事業に活かしています。
社会に出ると、「リーダーは男性」というジェンダーバイアスがどうしてもかかりがちです。しかし、私は学生時代に培った経験から「私たち女性も男性と同じ役割も全うできるし、活躍できる」という自信と確信を持てていることも、今の事業のモチベーションに繋がっています。
今後やりたいことや展望をお聞かせください。
女性がITエンジニアとして活躍して、人生を変えていけるような社会を実現することです。
ITエンジニアは、他の職種と比較しても給与水準が高いです。例えば、プログラムの卒業生で、未経験転職で年収100万円アップした事例もあります。その後も給与は上がり続けるので、経済的な自立を目指せます。
他業種で働いていた方も、卒業する頃には別人のようになり、これまで叶えられなかったことを、叶えられるようになります。また、働き口がたくさんあるため、精神的安定にも繋げられます。
そして、女性一人ひとりの幸せを実現することはもちろん、ひいては日本のデジタル化推進に貢献していきたいです。女性のITエンジニアが増えて、もっと浸透してきたら、人材不足が解決し、もっとみんなが幸せになれると思います。今後も、女性がスキルアップして自立して、活躍できるようにサポートしていきたいです。
また、2023年12月には、経済産業省「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」に採択されました。これは創業当時からの悲願です。金銭的な援助を受けながら受講できるため、これまでよりも多くの方に選んでいただきやすくなりました。将来の不安を抱くたくさんの女性たちが望む未来を手に入れられるように、我々もますます身を引き締めていきます。
ジェンダーや年齢に左右されず、考え尽くして行動を
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします。
働きやすさを追求していくと、起業家かITエンジニアになることが良いと考えています。
もし、起業家になりたかったとしても「失敗したらどうしよう」という不安を抱く方もいらっしゃるかと思います。しかし、起業家は仕事上、資本主義システムのコアな部分に触れることができます。全ての経験が、今後の人生にとっての財産です。
起業して得られる失敗も糧とすることができるため、どうか怖がらずに一歩踏み出していただきたいです。
私は、37歳で初めて起業しました。男性はもちろん、女性の起業家も社会に受け入れられますし、求められています。もし、志を持って、一生懸命に考え尽くしたのであれば、ステークホルダーや投資家の方々も、寄り添ってくださいます。
挑戦しやすい社会に生きているため、ぜひやりたいことがあるのであれば、ジェンダーや年齢にとらわれずにぜひ行動してみると良いのではないかと思います。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:やまざき ひとみ 氏
企業情報
法人名 |
Ms.Engineer株式会社 |
HP |
|
設立 |
2021年11月1日 |
事業内容 |
女性向けエンジニアスクール |
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