コクー株式会社 代表取締役 入江 雄介
少子高齢化による労働人口減少の社会問題を解決し、日本を元気にしたいという強い意思を持つ「コクー株式会社」。テクノロジーやデジタルの力で生産性を上げ、DX分野で活躍する人財を増やしていく事業に取り組んでいます。代表取締役CEOを務める入江雄介氏に、今回は事業内容を中心に起業の経緯、今後のビジョンについて詳しくお伺いしました。
少子高齢化による労働需給ギャップを埋め、社会問題を解決したい
事業の内容をお聞かせください。
我々は「人財」×「デジタル」を事業の基盤として、社会問題解決企業という位置づけをしています。
具体的にはテクノロジーを駆使した人財を育成して、クライアントニーズに合わせたサービスを提供しています。ITインフラ事業、EXCEL女子事業、デジタルマーケティング事業、またRPA(Robotic Process Automation:ソフトウェア上のロボットを利用して業務を自動化するシステム)事業があります。
「人財」×「デジタル」を事業のベースにした理由は何でしょうか?
少子高齢化による労働人口減少の問題を解決し、日本を元気にしたいという強い価値観から生まれました。
ある調査によると、2030年までに人手が644万人不足すると推計されています。一方で労働人口は減っているなか、働きたくても様々な理由で働けない人がたくさんいます。例えば女性は結婚や出産、育児などのライフステージの変化で同じ職場で同じ様な職務に就くのが難しい場合もあります。
また新型コロナウィルス感染拡大の影響でこれまでの仕事を継続するのが難しくなった方もいらっしゃいます。
この労働需給ギャップを埋めていかないと、日本はどんどん衰退してしまいます。ではどうやって埋めていけばいいかというと、我々は大きく2つの解決方法があると思っています。
1つめは「一人当たりの生産性をテクノロジーやデジタルの力で圧倒的に上げていく」方法です。
2つめは「DX分野で活躍する人たちを増やしていく」既存人財の活躍です。
今は特に女性活躍にフォーカスをしていますが、我々のゴールはすべての属性の人たちがテクノロジーを身につけて、活躍する場を増やすことです。「EXCEL女子」「デジマ女子」も「RPA事業」「ITインフラ事業」もすべて手段で、目的は社会問題の解決のためなのです。
「人財」×「デジタル」で日本を元気にするという意味では、手段は無限大にあると思っています。お客様のニーズによって新規事業も立ち上げていきますが、いきなり全然違う方面からアプローチするということはなく必ず目標を実現する手段として、我々は事業を展開していきます。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
私は20歳からSI企業で全く未経験でエンジニアとしてキャリアをスタートしました。その後2008年に前身の会社を立ち上げ、2019年にコクーを創業しました。
事業内容の大枠は先程お話ししましたが、女性にスポットをあてた事業を始めたきっかけは、前身の会社の時にお客様からいただいた「あったらいいね」でした。
お客様から言われたのは「エンジニアまでのスキルはいらないが、一般事務よりはもう少しITスキルのある人がほしい」ということでした。他のクライアントにもアンケートを取ると、なんと企業の7割が同じニーズをもっていたことがわかりました。
一方で女性200人にもアンケートをとりました。すると9割の女性が「手に職をつけてスキルアップとキャリアアップして働き続けたい。しかしどうやっていいのか分からない」と答えました。
女性はライフステージが出産や育児でいつ変わるかわかりませんし、出産後に職場に戻りにくいというような様々な問題を抱えています。
クライアントのニーズもあり、一方で手に職をつけてどんなライフステージでもイキイキと働きたい女性もたくさんいることがわかったので、この領域を事業にしようと決めました。これが「EXCEL女子」のはじまりです。
EXCEL女子事業をスタートした2013年は当時の安倍首相が「これからは少子高齢化がさらに加速するので、女性の活躍の時代だ」と言い始めた頃です。今では当たり前のように企業も女性活躍推進に取り組んでいますが、我々は一足早く取り組みを開始していたことになります。
「EXCEL女子」事業を始めて起こった変化は?
EXCEL未経験の方が我々の研修を受け、資格を取ったり関数やVBAを使えたりするようになっていきました。するとお客様からも好評でどんどん増員という形で採用も増えていきました。
さらに次は「BIツール (ビジネスの意思決定に関わる情報)を使ってほしい」「デジタルマーケをやってほしい」という要望が出てきました。そこから「BI女子」が生まれ、デジタルマーケのツール、広告代理店でインターネット広告運用をする「デジマ女子」のニーズも増えていきました。
このように企業からニーズがたくさん出てたきたことで、我々も「EXCEL女子」だけではなく、掛け算スキルとして「EXCEL」×「BI」、「BI」×「デジタルマーケ」などより強いスキルが身につくように研修を充実させていきました。
女性はスキルアップすることで安心して出産や育児もでき、不安なく復職できます。そして就労人口も増え付加価値があることで賃金もアップし、夫婦が両立しながら子育てできる環境になるので、少子高齢化対策にもつながっていきます。
また特に新型コロナウィルスの感染拡大を教訓に企業は「専門分野はそのプロに任せる」という流れになっていきました。その影響もありお客様からの需要も増え続けています。採用の応募者もコロナ前までは月に700名ぐらいの方でしたが、コロナの4年間では月に1300名ほどに増えています。応募者の前職はブライダルやエステ、飲食やアパレルが多く、やはりコロナで厳しくなった業界ですが、手に職をつけてずっと働いていたい方ばかりです。そういうコミュニケーション能力の高い優秀な方たちが転職し、スキルアップするきっかけになりました。
社員自身が幸せではないといいものは提供できない
事業において意識していることやこだわりを教えてください。
我々は理念共感型経営です。ですので仕事におけるミッションは「一人ひとりが、会社をつくる。一人ひとりが、未来をつくる。」で、この理念はぶれないでいます。
SI業界でエンジニアとして働いていた際に業界の課題である帰属意識の低さを切に感じるようになりました。ビジネスモデル上、客先常駐になり、自分の属する会社のメンバーと会話をすることはほとんどありません。自分の会社が行っていることやその方向性も分からなくなります。「自分はどこの会社に属しているのだろう」と思うことが多々ありました。
その道のプロフェッショナルが集まり、成長していける良い業界なのだから、みんなが当事者意識を持ち、ハッピーに働けるような会社をつくれたら業界も変わると思いました。
そこで社名のコクーは、個「CO」が、会社を担う最高執行責任者「COO」として、圧倒的な当事者意識を持って取り組んでいくという基本的な姿勢を表現しました。
一人の本気・一人の行動が会社を作りますし、チームでやることが未来を変えていくことになります。一人でできることは限られているからこそ、組織で進んでいくことを我々は大切にしています。まずは自分たちが当事者意識を持って働くことが真の顧客満足につながり、初めて会社が成長すると思います。
理念をみんなで共有し、その結果いいサービスも生まれ、会社の成長につながり、我々はとにかくぶれない軸を大切にしています。
起業から今までの最大の壁を教えてください。
起業した年の2008年秋にリーマンショックが起きて、好調だった発注が一気に下がった時です。それまではどちらかというとITの業界は昇り調子で、とても伸びていたので、余計にその反動が大きいものでした。
当時我々はIT関連の事業を幅広く何でもしていましたが、このままでは生き残れないと思い、「ITの何でも屋」ではなく、我々にしかできないこと、ここだけは任せられることを事業にしていこうと決めました。
そこでサーバーやネットワーク、クラウド、そのようなITインフラの基盤領域に特化することにしました。すると発注も増え始め、それを仕事にしたいという人たちも集まり、問い合わせも増えました。
発注が一気に下がったときは苦しかったですが、事業を特化させることに集中してなんとか壁を乗り越えました。
地元の雇用創出を通じて地域経済の活性化を高めたい
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
経営者の私の立場では、モチベーションは当たり前にあるものだと思っています。志や「何を成し遂げたいか」という事自体がモチベーションです。
その考えを前段階に置いた上で、モチベーションとは一緒に目標に向かっていく仲間がいることです。一度きりの人生で、仕事や組織が幸せに感じるために大きな影響を与えると思っています。仕事をしている期間は20歳前半ぐらいから60歳までなら40年間です。人生80年だとしたら人生の半分は仕事をしています。
仕事は手段ではありますが、どんな人と、どんな思いで、何に向かっていくかを共有し合える仲間の存在が人生の幸せに影響すると思っています。当事者意識を持った仲間と楽しく働けることが大切なモチベーションです。
コクーでは部活動がとても盛んで、自発的に社員が作っている部活動が約50部ほどあります。ヨガ部やテニス部、もくもく自習部など、どの部も活発に活動しています。私もお酒系の部活には全部入っていて社員とコミュニケーションをとるのが好きです。その時に「こんなこと頑張っています」と聞くと、何よりも元気がもらえます。
今後やりたいことや展望をお聞かせください。
社会問題の解決の実現です。直近の目標としては「VISION2030」として策定しています。「DX人財輩出企業No.1」を目指し、定量目標としてDX人財を33万人輩出していくことと定義しました。
それを実現していくための重点的なテーマは大きく3つあります。1つめが「ダイバーシティ&インクルージョン」、2つめが「地方創生」、3つめが「業務提携」です。
1つめの「ダイバーシティ&インクルージョン」は、男性・女性に加え、障がい者やLGBTQ、外国人やシニアなどの雇用や環境整備を促進していくことを掲げています。
2つめの「地方創生」をテーマとして設定した理由は、少子高齢化が加速して東京に雇用が流出し、地方が過疎化していることを食い止めたいと思ったためです。東京への流出を防ぐためには、地方に雇用がないといけません。そこで地方銀行と提携し地方企業のDX化を進めています。2030年までには30拠点の支社を立ち上げて、地元で雇用を生んで活性化させる計画です。
またコクー社員でも地方出身者も多くいる中、今後介護などでのUターンや転勤など転居における選択肢の拡大や、社員のワーケーションとしての働きかたの柔軟性など新しいカルチャーを醸成していくためにも重要なテーマとしています。究極は「地方創生」という言葉をなくすことがゴールだと思って活動しています。
3つめの「業務提携」はDXツール導入後の問題として多かった「運用に対する課題」があることが調査から分かったため、テーマとして掲げました。
これからはDXの進化が進むほど、ツール機能の進化に対してユーザのリテラシーの乖離がさらに大きくなっていくと思います。我々はデジタルリテラシーの高い人財が、安定的な供給力と伴走型で柔軟な対応力をパッケージ化したサービスを提供していきます。そしてお客様の安定収益になり、他社との差別化にもつながります。
ゼロの状態からとにかくイチにしよう
起業しようとしている方へのメッセージをお願いします。
起業したいと思っているなら、やはり実際に行動していくのがいいと思います。結局頭で考えているだけだと、ゼロにゼロかけてもゼロのままです。とにかくゼロをイチにしていけば、小さな一歩でも掛け算すればするだけ増えていきます。
「あの時起業しておけばよかった」と後悔するのであれば、失敗してもチャレンジした方が絶対にプラスになります。むしろ私は失敗経験がある人の方を「チャレンジしてきたんだな」と感じ信頼できます。
私の座右の銘の1つに「死ぬこと以外はかすり傷」というのがあります。死ななかったらすべてかすり傷でいつかは治ります。そしてまた立ち上がって前向きに生きていければいいのです。起業することは、別に大したことではありません。一度きりの人生です。悩んでいるほど人生は長くないので、失敗も自分の肥やしになると思ってチャレンジしてほしいです。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:入江雄介 氏
1979年10月生まれ、神奈川県川崎市出身。19歳で起業、 20歳で某SI企業にてエンジニアとしてキャリアをスタート。 2008年に第二創業としてIT事業を創業。その後、EXCEL女子、RPA、デジタルマーケティング事業など、人財×デジタル領域の事業を立ち上げ、2019年2月に自分たちがイキイキと働くこと(for me)が、真の顧客満足(for you)につながるという考え「for me, for you.」をスローガンにコクーを創業、代表取締役CEOに就任。
企業情報
法人名 |
コクー株式会社 |
HP |
|
設立 |
2019年2月6日 |
事業内容 |
|
沿革 |
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