株式会社Minto 代表取締役 水野 和寛

株式会社Mintoはマンガ・アニメを軸としたコンテンツの新たな可能性を開拓し、テクノロジーを活用しながら多くの人に親しまれるコンテンツを生み出しています。ミッションは、「技術革新や価値観の変容から生まれる新たな機会を通じ、クリエイターと共に、世の中に面白さとインスピレーションをもたらすこと」です。Webtoonをはじめとする新領域出のコンテンツ制作にも積極的に取り組んでいる同社の代表取締役 水野 和寛氏に、詳しくお話を伺いしました。

 

制作、流通、販売の三軸で幅広いエンタメビジネスを展開

事業の内容を詳しくお聞かせください 。            

我々は、漫画、アニメ、キャラクターコンテンツを核としたエンタメビジネスを革新し、SNSやWeb3を利用した新しい領域でのコンテンツ開発に取り組んでいます。制作、流通、販売の三つの柱を中心に、エンタメビジネスの幅広い領域に携わっているのが特長です。

 

制作事業では、オリジナルキャラクターの開発、縦読み漫画の制作、Web3を基盤としたメタバースの構築にも取り組んでいます。自社制作のコンテンツを直接販売することもあれば、他社のクリエイティブの制作をサポートし、収益化することもあります。

 

二つ目の流通事業においては、日本以外にタイ、ベトナム、中国の3か国でも事業を展開しており、自社コンテンツの流通だけでなく、他社のキャラクターやコンテンツの商品化、販売も手掛けています。特にタイでは、キャラクターグッズを扱う店舗を3店舗運営しており、日本のエンタメ文化をタイ国内で広めることに貢献できていると思います。

 

三つ目の柱であるコンテンツ販売事業は主にウェブ広告を収益源としており、漫画やアニメを広告素材として利用したい企業を支援しています。具体的には、SNSで人気の漫画家やイラストレーターと企業をマッチングし、魅力的な広告コンテンツの制作をサポートしてます。現在X(旧Twitter)で目にする漫画広告の大半は、我々が携わっています。この事業はコンテンツのマネタイズとして位置づけ、我々はコンテンツソリューション事業と呼んでいます。

貴社のウェブサイトで「コンテンツを通じた問題解決」というフレーズを見かけました。具体的にどのような取り組みをされているのかを教えていただけますか?                       

「コンテンツを通じた問題解決」が最も当てはまるのはコンテンツソリューション事業の領域で、おもに企業のマーケティング、集客、ブランディングの課題に対して、漫画やアニメを活用した解決策を提供しています。

 

我々の強みは、Xで注目される広告コンテンツを生み出すノウハウにあります。企業の商品やサービスをテーマにした漫画を作り、それを企業やクリエイター自身のSNSアカウントから広告として配信します。そうしたアプローチによって効果的にターゲット層の注目を引くことができ、結果的に企業のマーケティング支援にも繋がっています。

 

Webtoonと漫画の違いを詳しく教えてください。

日本で親しまれてきた紙の漫画は、白黒でページを横にめくりながら読む形式が一般的でした。対照的にWebtoonはスクロールして縦に読むスタイルで、白黒ではなくカラーであることが大きな特徴です。元々はパソコンで読む人が多かったWebtoonですが、近年ではスマートフォンの普及によりスマートフォンのサイズに最適化されたWebtoonが増え、さらに人気を集めています。

 

読者にとって漫画とWebtoonの体験は似ているかもしれませんが、制作側の視点からみると、横に進む白黒漫画と縦にスクロールするカラーのWebtoonとでは、表現方法に大きな違いがあります。我々はWebtoonに特化したスタジオも運営しているため、漫画とWebtoonの制作プロセスの違いを深く理解しています。

 

一般的に漫画は才能豊かな漫画家が1人いて、その方がストーリーの構成から漫画を描くまでの一連の流れを担当します。もちろんアシスタントのサポートもあるのですが、基本的には漫画家がメインのクリエイターとして1つの漫画を完成させるのが従来の漫画の作り方です。

 

一方、Webtoon制作はアニメ制作に似ており、プロセスごとに専門の担当者がいます。原案を作る人とネームと呼ばれる下書きを担当する人、線画や着彩をする人など、作業する人が分かれているのです。

 

韓国では10年以上前からWebtoonスタジオが存在し、既に成熟した市場が形成されていましたが、日本でWebtoonが普及し始めたのはここ数年のことです。我々がスタジオを設立した2022年時点で、国内にはWebtoonスタジオがほぼ存在していませんでした。我々は韓国の企業からスタジオ設立や運営のノウハウを学ぶ機会を得て、現在は日本でのWebtoonスタジオのパイオニアとして独自のスタジオを築き上げています。

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

株式会社Mintoのルーツは、それまで約10年間経営していた株式会社クオンに遡ります。クオンを立ち上げる前は、私は携帯コンテンツのプロデュースや「DTMマガジン」というコンピュータミュージック関連雑誌の編集を担当していました。携帯コンテンツプロデュースでは、iモード用デコメール、着メロ、電子書籍、占いなどの人気コンテンツの制作に関わり、なかでもデコメールのサイトは国内最大級の規模(有料会員数約100万人)にまで成長しました。

 

当時デコメールや絵文字は日本や他のアジアの国々では人気だったのですが、グローバル市場での認知度は限られていました。これらのコミニュケーション・コンテンツはもっと海外に広がるのでは?という仮説から起業したのがクオンです。

 

クオンでは当初は自らチャットアプリ、その後、世界中の様々なチャットプラットフォーマー(Facebook、Wechat、Kakao、Zalo等)と提携して、スタンプをグローバル向けに展開しました。チャットアプリの発展ともに、スタンプのダウンロード数は数千万DL、数億DLと伸び、日本や韓国などではスタンプの売上が大きく伸びました。一方で日本や韓国以外では、スタンプは無料で配信、スタンプキャラクターで認知を得たキャラクターをライセンスビジネスで売上を作っていくという手法でビジネスを広げました。

 

ライセンスビジネスを広げていく中で、企業向けのBtoB事業も同時に広げて行きましたが、自分自身が元BtoCのコンテンツプロデューサーだったこともあり、コンテンツ×BtoB領域は、もっと得意な会社と組んで一緒にやるほうがいいのでは?と思い、昔から仲の良かった経営者仲間でもあった中川が率いる株式会社wwwaapとの経営統合に至ったのです。

 

wwwaapはSNS漫画家・イラストレーターと企業の間に入って広告事業を展開していました。BtoBの課題解決を強みとしながらも、エンタメやクリエイティブにおけるBtoC事業の拡張にも意欲的でした。彼らが得意とする問題解決型のBtoB事業と、我々が得意とするヒット型のBtoC事業を組み合わせることで、さらなる事業展開の可能性を見出せるのでは?と考え、このシナジーを最大化するために、我々は経営統合を決定し、株式会社Mintoを立ち上げたのです。

 

日本発エンタメのグローバル人気を活用しながら事業の拡大を目指す

仕事におけるこだわりを教えてください。          

こだわりは2点あります。

 

1点目は、さまざまな価値観や需要を受け止め多様性を重視しながら事業を推進することです。それはコンテンツ制作のみでなく、事業モデルにも当てはまります。私は長い間、コンテンツプロデューサーとして働いてきたこともあり、これまではコンテンツ制作に重点を置いてきましたが、今後は事業の多角化を意識しながら会社全体として成長していくことが重要だと感じています。

 

2点目は、グローバル市場における日本のエンタメ人気をしっかりと活用しながら事業を加速させていくことです。特にここ数年で日本発のエンタメの人気は非常に高まっており、多くの人が事業としてのエンタメの価値に気付き始めたのではないでしょうか。我々はこの流れに乗り、事業のさらなる成長を目指したいと思っています。

起業から今までの最大の壁を教えてください。

資金に関する壁はこれまで何度もありました。

特にヒットを狙ったゲームなどのコンテンツ開発には、大きなリスクが伴います。我々は以前、2億円を投じて1年かけて2つのゲームを開発しましたが、リリース後に予想通りのヒットとはならず最初の1ヶ月で両サービスを終了することにしました。

終了するのにも時間がかかり、2億円を先行投資したにもかかわらず最終的に200万円ほどしか回収できませんでした。その時は本当に大変だったため、それ以降ゲーム開発は控えています(笑)。

 

2022年に経営統合した際に、何か壁は感じましたか?     

2社の事業モデルがBtoBとBtoCに分かれていたため、それぞれの会社に在籍していたメンバーの特長も少し違いました。

 

BtoC事業にいたメンバーはコンテンツ制作を主軸にするプロデューサーやディレクターが中心で、BtoB事業には営業職のメンバーが多く在籍していました。当然ながら両者では働き方や目標設定において大きな違いがありましたので、経営統合時には無理に混合させることなく、それぞれの特性を生かす形で部署を維持しました。

しかし、2022年1月時点ではコロナウイルスの影響でリモートワークが主流だったこともあり、違う部署のメンバー間のコミュニケーションが希薄になってしまいました。そのため、社内コミュニケーションを活発化させるため飲み会などのイベントを企画し、部署間の壁を取り除く取り組みを行いました。


もともとエンタメ、アニメ、漫画を好むメンバーが多かったため、共通の関心事を通じてすぐに相互理解や結束を深めることができると考えていましたが、初期は十分な配慮が足りず、社内のコミュニケーション不足が生じてしまいました。約1年かかりましたが、今では部署間の垣根は低くなり社内の一体感を高めることができています。

 

進み続けるモチベーションを教えてください。

モチベーションはいくつかありますが、いま最も大きな原動力になっているのは経営統合を通じて事業が成長できていることです。

 

社員間の絆を深めることももちろん大切なのですが、そこのみに焦点を当てていると事業の持続的な成長を達成するのは困難だと考えています。

 

経営統合の初期段階では、経営陣が数字を追うことに集中し過ぎて社内コミュニケーションがおろそかになってしまったという反省点があります。しかし現在は、業績の追求と社員間の関係強化に良いバランスを見出せていると感じています。今後は会社のミッション・バリューの再整備と組織強化にも注力する予定です。

 

会社の成長を肌で感じられることは、社員にとっても大きなモチベーションとなっているはずです。たとえ日々の業務自体は経営統合前と変わっていなかったとしても、目に見える形で会社が発展しているのは全員にとって心強い事実です。

ヒットコンテンツ作りと更なる海外進出を目指す

今後やりたいことや展望をお聞かせください。

 

経営統合後、コンテンツの制作・流通・販売のいずれもBtoB事業を伸ばすことができているので事業の基盤でできつつあります。今後は我々が培ってきたコンテンツ制作・流通・販売力をさらに強化し、ヒット作を生み出すことを目指しています。

 

Webtoonなどでの自社ヒットコンテンツや、アジア及びアジア以外の地域の海外展開も視野に入れています。現在は中国、タイ、ベトナムに拠点がありますが、将来的にはアメリカやヨーロッパ市場への進出も検討しています。

 

我々は国内外で事業を展開するにあたり、それぞれの市場の特性に合わせた戦略を採用しています。国内ではSNSやWeb3を駆使した漫画やアニメキャラクターの展開に力を入れており、新しいテクノロジーを取り入れながら、さまざまな事業を展開しています。一方、他のアジアの国々をはじめとする海外市場では、テクノロジーが進んでいるにもかかわらずスマホ決済やデジタルコンテンツの購入がまだ一般的ではないのが現状です。

 

たとえば、アニメファンはデジタルコンテンツよりも物理的なグッズにお金を使う傾向があります。そのため、我々もグッズ販売や映画の配給など、リアルな接点を通じたコンテンツ展開を軸にしています。リアルな場でのコンテンツ展開の方がファン層に効果的にアプローチできますし、収益化にも繋がるのです。

 

起業するなら深く考えるよりまず行動を

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします。     

起業する際は深く考えるよりも、実際に行動を起こすことが非常に大切です。10年以上にわたる経営経験から私が学んだことは「失敗したら他の方法を試したらいい」くらいの気持ちでトライした方が、結果的に成功につながるということです。

 

私は新しいジャンルに挑戦するときに3年間の試行期間を設け、上手く行かなければ他のジャンルへアプローチを試すようにしています。新しいジャンルでプロダクト、サービスを市場に投入し、その成果を判断するまでに3年は必要です。3年経っても成果が見られない場合は、自分たちのアプローチまたは市場に問題があると考えられます。

 

一度事業を始めると周囲が見えにくくなることも多々あるため、上手くいかないと感じたら3年で一度立ち止まり、ゼロベースで状況を見つめ直すようにしています。

 

今後は我々と同じく、エンタメ領域での起業家がさらに増えることを期待しています。日本にはさまざまな産業がある中で、エンタメとコンテンツ分野が国内外からより一層の注目を集めています。一緒に盛り上げてくれる起業家がさらに増えると嬉しいですね。

採用を強化されているそうですね。どのような人材を募集されていますか?                          

 

大前提として、エンタメやコンテンツに興味がある人材を求めています。必ずしもオタクである必要はなく、ビジネスとしてこの領域に魅力を感じている人も歓迎します。

エンタメやコンテンツが好きであっても、それをビジネスにしようと考える人はまだ多くありません。我々はそうした視野を持った人材と共に、この産業のビジネスポテンシャル広く世の中に打ち出していきたいと考えています。

 

採用情報の詳細はこちらから▼

URL:https://herp.careers/v1/mintoinc

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:水野 和寛氏

株式会社寺島情報企画でDTMマガジン編集者とコンテンツプロデュースに従事。有料会員100万人のデコメNo.1サイトのプロデュース等で年商30億円まで導き、同社の執行役員に就任&ゲーム会社(株)テクノードを設立し代表取締役に。「Touch the Numbers」等1,000万DL以上のヒットに。2011年に株式会社クオンを設立。2022年のクオンとwwwaapの経営統合により株式会社Mintoの代表取締役に就任。

 

企業情報

法人名

株式会社Minto

HP

https://minto-inc.jp/

設立

2022年1月

事業内容

コンテンツソリューション事業、IPプロデュース事業、Web3事業

沿革

2011年8月株式会社クオン設立

2014年1月タイ支社を設立
2017年7月中国支社を設立

2022年1月株式会社wwwaapと株式会社クオンが経営統合し株式会社Mintoが誕生
2023年2月株式会社Futurizeをグループ化

 

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