【#178】「モノと心を通わせる」明確なビジョンをもとに生成AI技術を活かしAI活用の可能性を広げる。|代表取締役 酒井 拓(ユニロボット株式会社)
ユニロボット株式会社 代表取締役 酒井 拓
『「モノと心を通わせる」を当たり前にする。』というミッションを掲げるユニロボット株式会社。ロボットやモノとの関わりによって、人々がより幸せでいられることを目指し、事業を展開しています。今回は代表の酒井拓氏にインタビューしました。事業の内容や事業を始めた経緯、これまでの壁、今後の展望などについて詳しくお話をお伺いしました。
AIコミュニケーションサービスやオーダーメイドAIの相談・開発プラットフォーム
事業の内容をお聞かせください。
AIやロボティクスを扱うスタートアップとして、対話型AIの総合プラットフォーム事業を展開しています。現在は大きく分けて4つのサービスを提供しています。
コミュニケーションロボット「unibo(ユニボ)」、AIによる電話の自動応答を可能にする「unirobot cloud-AI電話サービス」(ボイスボット)、オーダーメイドAIの相談・開発プラットフォーム「U-BiZ」、そして、国内最先端の「AI議事録作成ツール」の提供です。その中で今注力をしている2つのAIサービスについてご説明をさせてください。
弊社の「unirobot cloud-AI電話サービス」(ボイスボット)については、人の代わりに、AIオペレータが電話応答するソリューションです。
人と同じように自然な会話ができるため、ホスピタリティを保持できる一方で、人件費の削減や売上UPなど、業務効率化に大きく貢献します。また、24時間365日対応可能で、従業員の不在時や夜間の問い合わせに対する一次対応もAIが行うことが可能です。これまで飲食、保険、人材派遣などのサービスで幅広く導入頂いており、月間10万コール数をAIで対応しています。今はAIによるアウトバウンドコールにも注力をしています。
また、今年の4月から新規事業としてオーダーメイドAIの相談・開発プラットフォーム「U-BiZ」の取り組みを始めました。国内トップクラスのAIエンジニアが、AI開発について、無料の壁打ち相談から始めて、コンサルテーション、PoC開発、受託開発などを一気通貫で提供できる新サービスです。
AIを使ってDX化を促進したい、AIを活用して事業を加速させたいなどのご要件に対して、どこに相談したら良いか迷っている、費用をかけずに気軽に相談したいなどといった様々なニーズに対して、総合的な受け皿になりたいと思い構想したサービスです。
そもそも何故こうしたAIのプラットフォームを作りたいと考えたかについては、日本のデジタル化に対する危機感からです。
スイスに拠点を置くIMD(国際経営開発研究所)が、2021年に発表した「世界のデジタル競争力ランキング」では、1位アメリカ、2位香港、3位スウェーデンに続き、日本は28位という結果でしたが、更に最新の2023年12月時点のデータでは、日本は32位になっています。つまり、日本は毎年ランキングがダウンしており、他の先進国と比べても、DX化に対し大きく遅れを取っていると言えるのです。加えて、ご承知のとおり、未曾有の少子高齢化で、労働生産力が顕著に低下しています。
こうした中で、生成型AIを普及させていく社会的意義はとても高いと考えています。どこの企業も生成型AIの取り組みを開始したばかりだったり、また生成型AIのそもそもの技術進歩が速すぎてついていけていないといったことが起きていると思います。そこに存在価値を見出したのが、先ほどお話しました「U-BiZ」です。
「U-BiZ」にアクセスさえできれば、いち早く最新の生成型AI情報を入手できたり、「生成型AIで何ができるか」の壁打ち相談が無料でできます。開発についてもオーダーメイドで独自のAIモデルを作り上げ提供可能ですし、気軽に相見積からできるなど、非常に価値の高いプラットフォームを目指しています。
いつの日か「日本の労働生産力を高めるための社会貢献事業として、意義の高いプラットフォーム」にしたいと構想しています。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
起業前、週末にゴミ拾いのボランティアや、NPO法人支援など、社会貢献に携わることに情熱を持って取り組んでいました。そのような中で、自分が興味を持つテクノロジーの分野で社会に貢献していきたいという思いが生まれました。ちょうどその頃、少子高齢化社会の進展や、核家族化などの問題があり、「いつかドラえもんのようなパートナーロボットが、家族の一員にいる世界観」を実現したいと考えるようになりました。
また、世の中にない新しいコミュニケーションスタイルをテクノロジーの力で生み出したいという思いから、コミュニケーションロボットの「unibo(ユニボ)」を開発することに至りました。「unibo(ユニボ)」は、ユーザーの趣味・嗜好・生活習慣などの個性を学習することができるところが特徴で、感情解析も盛り込みながら、双方向のコミュニケーションを可能としたロボットです。勿論、この領域にはAIが必要でしたので、会社としても、早い段階からAIを開発し、取り組んできました。
さて、その延長線上で、2020年のコロナ禍で誕生したのが、AI電話サービスになります。出社しなくてもAIが電話応対できれば、大きな社会貢献につながる。そう考えたのと、テック企業らしく、とにかく時代を先取りして、研修開発をしていくことをモットーにしていましたので、ちょうどその頃パートナー企業と良いご縁もいただいたことが重なり、一気にAI電話サービスの開発もスピードアップして対応することになりました。
ミッションやビジョンに立ち返り、ご縁に感謝して生きること
仕事におけるこだわりを教えてください。
自分の信念をもち、生き様を示し続けることです。情熱を燃やしながら動き続けるには、自分なりのミッションやビジョンを明確に持っておくことが大切です。これができている人は案外少ないように感じます。
起業すると、うまくいかないことも多く、厳しい現実を突きつけられることは日常茶飯事です。そんな中でも、沢山の方との出会いやご縁もあり、人とのご縁を大切にし感謝すること、そして、自分の哲学に従った生き様を見せていけるかどうかにこだわってきました。今振り返っても、沢山の方に助けられ、応援されてきましたので、本当にご縁を大切にできるかは大切です。
ちなみに、お金はツールに過ぎないため、お金を追った段階で途端に軸がぶれて自分を見失ってしまうように思います。社会性を持って、ぶれないビジョンを持ち続けること、正しい行動をし続けることが重要です。
進み続けていくうちに、自分のビジョンやミッションを描きなおすことは良いと思います。ただ、何かあったときに目先のことに目がくらみ、軸がぶれてしまうことは避けなければなりません。軸がぶれていては、人はついてこないため、自分の軸をもって、それに沿った生き様を示し続けられるように心がけています。
起業から今までの最大の壁を教えてください。
これまで、さまざまな壁に日々ぶつかっていますが、現在に至るまで大きな壁に二度ぶつかりました。
一度目は会社の立ち上げ段階です。資金調達と「unibo(ユニボ)」の量産化の成功に苦戦しました。創業して最初の2年間は、プロダクトを量産できず売り上げがたっていなかったため資金がどんどん枯渇していき、とても苦しみました。その頃、量産フェーズでいわゆる死の谷というものを渡り歩いていました。なんとか資金調達に成功し、「unibo(ユニボ)」を量産化できたことが会社としての1つ目のターニングポイントでした。
二度目はコロナ渦です。コロナウイルスをきっかけとした半導体不足や、円安により、新しいロボットの開発が遅れ、営業活動もかなり制限されましたので、とても痛かったです。これからどうなっていくんだろうと、目先が真っ暗になったのを覚えています。
ただピンチは最大のチャンスとも言いますよね。そこでAI電話サービスが誕生したので、あのタイミングで新規事業に振り切れたことは、今振り返っても、本当に良かったと思っています。
(写真は「unibo(ユニボ)」量産成功時)
ともに闘ってくれる仲間の存在と社会貢献への使命感に突き動かされている
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
1つ目は、取り組んでいる事業で社会貢献をしていきたいという信念です。自分たちが思い描く世界観が、社会実装していけるかどうかへの挑戦でもあります。社会のために達成すべきことだという前提のもと、一致団結して事業を展開していきたいと思っています。社会に還元することで、我々のやってきたことが結果的に正しかったと証明できたら、なお嬉しいですね。
2つ目は、頑張っている役員や社員の存在です。これまで苦しい思いをして取り組んできた姿を知っているため、みんなで成長して、目標を達成していきたいという想いが強くあります。これまで0→1を多くやってきましたが、今後は、1→10へと各事業を広げていくための挑戦も一つずつクリアーしていければなと願っています。
そして今、会社についてきてくれるメンバーが、30人弱います。みんながよりハッピーになれるように給料面でも頑張らなければならないという使命感が、モチベーションの源泉です。
大変な時もありますが、みんなで頑張り抜いた結果今があるので、もっと良い景色を見られるように、関わってくれている人たちの思いを大切にして、進み続けていきます。
今後やりたいことや展望をお聞かせください。
これまで企業レベルで労働集約的に取り組んできた業務を少しずつ、AIやテクノロジーを通じて開放していけるような取り組みをしていきたいと考えています。いわゆるDX化の促進や、AIの普及に関する活動です。それが今当社が取り組んでいる事業そのものですが、中長期的には、自動化が進む中でドラえもんの世界のように、ロボットなどと日常的に会話をする時代が必ずくると考えています。一家に1体ロボットがいる世界観、モノと心を通わせることができるような世界観を、将来像として描いています。少子高齢化によって労働人口が減ってきたときに「AIやロボットがあって助かった」と思ってもらえるように、今後もAIやロボット技術を益々磨いて、世の中に還元できたら嬉しいです。
自分の夢を語り、理解してくれる人に出会ってください
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします。
自分の言葉で話し協力してくれる仲間を見つけることが大事です。
最初は自分一人の夢だったとしても、他の人と共有して仲間が増えていくうちに大きく膨らんでいきます。日本人は繋がりを大切にする文化があるので他の人と協力し、成し遂げていくのが良いのではないかと考えています。
いずれ、離れることになっても出会いは財産になります。もし一人で悩んでいたり一人で走り切ろうと思っている方がいたら、ぜひ参考にしていただけたらと思います。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:酒井拓 氏
慶応義塾大学経済学部卒業。
住友商事株式会社に入社し、経営情報や基幹系システム等のプロジェクトマネージャー等を歴任後、ユニロボット株式会社を創業。
創業後、2015年に アジア最大級のオープンイノベーションの式典「ILS」で500社のベンチャー企業の中から、グローバルイノベーションの分野でTOP10企業に選出。
2016年に富士通アクセラレータプログラムで最優秀賞を受賞。2017年にはスタートワールドカップの日本ファイナリストTOP10社に選出され、直近では2年連続で日本経済新聞が選ぶNEXTユニコーン108社に選出される等、受賞歴多数。
企業情報
法人名 |
ユニロボット株式会社 |
HP |
|
設立 |
2014年8月 |
事業内容 |
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