株式会社Fivot 代表取締役 安部 匠悟
スタートアップ企業向けの融資事業と個人向けの目標貯金アプリを通じて新しい資金の循環を生み出している株式会社Fivot。大学卒業後は外資系の金融機関で資金調達やM&Aなどの業務に携わった経験を活かして起業した代表取締役の安部匠悟氏に、日本ではまだ少ないチャレンジャーバンクを目指して起業した経緯や仕事をする上で心がけていること、今後の目標などをお聞きしました。
新たな金融サービスを提供し、未来の経済発展に貢献
事業の内容をお聞かせください
我々は、法人向けと個人向けの金融サービスを展開しています。
一つ目の法人向け融資事業「Flex Capital」では、既存の金融機関からの借り入れが難しいスタートアップ企業に対して、データを活用した迅速で効率的な融資を行っています。我々は実績や事業計画ではなく、さまざまなデータから多角的に企業の成長を予測します。データ収集や分析をできるかぎり機械化することでコストを下げ、かつスピーディーに実績の少ないスタートアップ企業への融資をすることを可能にしています。
二つ目の個人向け目標貯金アプリ「IDARE」は、目標の金額や期間を設定し、毎月の積立や節約によって計画的にお金を貯めていくアプリです。貯金を手助けするアプリは多々ありますが、実際にアプリ内で貯金できるアプリは珍しく、大きな差別化になっています。また、貯まったお金に対して年率2%のインセンティブを還元することで、貯めるプロセスを楽しみながら目標達成することができる点も大きな特徴です。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
大学卒業後は外資系の金融機関でM&AやIPOなどの業務に携わっていました。その中で、たくさんの人々の大切なお金を預かり、資金を必要とする企業に届けることで経済発展に貢献する金融機関のインパクトの大きさに改めて気がつきました。しかし同時に、無駄を省いて柔軟に動くことができれば、もっとできることはあるのではないかとも思いました。
その頃、2016年くらいからベンチャー企業がゼロから新しい銀行をつくるチャレンジャーバンクが海外で盛んになり、既存の金融機関をも脅かす存在にまでなっていることを知りました。そしてチャレンジャーバンクを目指して、個人が計画的に貯金ができる仕組みと、資金を必要とする企業に融資をして成長を促す仕組みの2軸を立てました。それらの2軸を通して我々が理想とする資金の流れを生み出すことができれば、これからの日本の経済発展に貢献できると考え起業しました。
金融機関としての矜持を忘れず、フェアに誠実に
仕事におけるこだわりを教えてください。
仕事をする上で大切にしていることは3つあります。一点目はフェアであることです。
たとえば、融資がなければ経営難になるかもしれないスタートアップ企業に融資をする場合、我々は資金を提供する側として強い立場になることができます。しかし資金を提供する側だからこそ、それは絶対にやってはいけないと思っています。常に対等な立場であることを心がけ、こちらに有利な条件を設定することは絶対にないようにしています。それは社内の体制も同様で、社員同士で誰かを贔屓したり業務負担が偏ったりしないよう、フェアな組織であることを常に意識しています。
二点目は誠実であることです。
フェアであることと近いですが、「自分だけが知っている情報で儲けよう」「誰かを出し抜いてやろう」といった考えは、良くないと考えています。短期的な利益にはなるかもしれませんが、誠実に情報を開示し互いに納得して進めてこそ、長期的に考えれば大きな利益に繋がります。
そして三点目は金融機関としての矜持です。
IDAREでは多くの方々の大切なお金を預かっています。そのため、システムエラーや融資のトラブルなどが原因で大切な預金をなくしたり、資金額がわからなくなったりしてはいけません。お金を扱う金融機関として、お金の重みを忘れることなく業務に携わっています。
起業から今までの最大の壁を教えてください
やはり資金調達です。起業当初から、もちろん今も苦しい部分もありますが、金融機関は資金の規模がなければ社会にインパクトを出せません。しかし起業したばかりで信用力のない状態での資金調達は難しいと感じました。
また個人向けと法人向け融資の2軸を手掛けるビジネスモデルは起業当初から考えていました。我々はいろいろな人に事業プランをしっかり説明をして資金調達をし、合わせてIDAREから資金の一部を調達できたことは我々の強みになっています。
“スタートアップ企業のメインバンク”を目指す
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
モチベーションの一番の源泉となるのは、目の前のお客様が喜んでくれることです。
スタートアップ企業に融資させていただいた時に「ここで融資が受けられなかったら潰れていたかもしれない、ありがとうございます」といった感謝の言葉や、「手間を省けて、スピーディに融資が受けられたことに感動しました。」などの言葉をいただくと、我々が提供しているサービスの価値が高いことを実感することができます。
IDAREでも個人の方にお話を聞くことがありましたが、「IDAREの機能を使ってお金を貯めて、念願だった海外旅行に行くことができました」「前から欲しかったバイクが買えました」といった言葉をいただき、我々のサービスがしっかりお客様に届き、役に立っていることを知ることができました。
また、会社を始めた時は少人数でのスタートでしたが、現在は30名ほどの規模にまで成長しています。さらに価値を高めてチームや会社の成長に繋げていきたいという想いもモチベーションのひとつになっています。
チームや会社だけではなく、個人としての成長もモチベーションに繋がっています。起業してたくさんの苦しいことや嬉しいことを経験し、タフさや多角的な視点を身につけることができ、起業した当時の自分と今の自分を比べてみると成長できたのではないかと思います。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
我々は、資金を必要とする企業に必要なお金を届けることで、その企業がさらに成長して事業拡大や人の雇用につながっていくことを期待しています。我々が運営するチャレンジャーバンクがあったからこそ、スタートアップ企業が大きく成長したり、その産業が発展したりすることが目標です。
また最近は起業当初より社員数が増え、融資事業の規模も大きくなってきたことからマネジメントをお任せできる人材が不可欠だと感じています。私が以前働いていた外資系の金融機関は、優秀な人材がそれぞれのスキルを存分に発揮できる環境はありましたが、大規模なチームや組織としての複雑なマネジメントが必要とされる場面は多くありませんでした。私自身が1人で走り続けることはできますが、大手企業やメガベンチャーなどでマネジメント経験を持ち、組織を体系立ててチームを効率よく率いていくことができる人材が必要だと思っています。
特にIDAREの事業はモバイルアプリの金融プロダクトのため、プロダクトに関する知見が必要となり、お金に関する責任も発生してきます。金融庁や取引先、顧客、社内エンジニアなど複雑なステークホルダーをまとめ、ひとつの方向性に導く事業責任者が必要な時期になっています。こうした人材を採用し、事業の安定・拡大へつなげていきたいと思っています。
実際にその時代を体験をしていない私が言うのも変かもしれませんが、金融機関として我々は、高度成長期時代の金融機関と同じことをやりたい、やる必要があると考えています。現在日本の産業は、少子高齢化による人口減少などが原因で衰退傾向にありますが、スタートアップ企業には衰退を止めて成長させる可能性があると思っています。スタートアップ企業に融資し、当社が「起業したら資金調達はここに相談するのが当たり前」と言われるほどの“スタートアップ企業のメインバンク”になれれば嬉しいですね。
これらの考えに賛同してくださる方がいましたら、ぜひ一度お話をしたいです。
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現在(2024年10月1日)実現に向けて邁進中
参考記事:株式会社Fivot、スタートアップ・中小企業向けデットファイナンス「Flex Capital」の支援先が150社突破
迷うくらいなら一歩踏み出してチャレンジを!
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
我々の会社もまさに目標に向かって進んでいる段階で、まだ何かを成し遂げたわけではありませんが、私が唯一成し遂げたことは起業へチャレンジできたことです。「新たな金融機関をつくるなんてできるわけがない」と言われたことは何度もありましたが、それでも私はそこにチャンスがあると思いましたし、自分の信じた未来に向かって一歩踏み出したからこそ今があります。
だから、もし起業しようか迷っている方がいれば、迷うくらいならやってみればいいのではないかと助言したいです。後戻りできないことはほとんどありませんが、何かの事情でチャレンジできなくなってしまう可能性はあると思っています。だから少しでもやりたい気持ちがあるなら、一歩踏み出してみてもいいのではないでしょうか。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:安部匠悟 氏
一橋大学経済学部卒業後、2015年メリルリンチ日本証券入社。同社投資銀行部門の金融法人グループにおいて、主に銀行・保険会社による資金調達やM&Aに関する引受・助言業務に携わる。その後、新しい金融サービスを創るという想いから株式会社Fivotを創業。
企業情報
法人名 |
株式会社Fivot |
HP |
https://fivot.co.jp/ |
設立 |
2019年10月 |
事業内容 |
法人向け融資事業「Flex Capital」、個人向け目標貯金アプリ「IDARE」 |
沿革 |
2019年10月 創業 2020年2月 オフィス開設 2020年7月 オフィス移転 2020年10月 貸金業登録 2020年12月 前払式支払手段登録 2021年2月 初の融資実行(Flex Capital) 2021年4月 プロダクトローンチ(IDARE) 2022年2月 オフィス移転 2022年9月 シリーズA資金調達(約10億円) 2023年12月 「Flex Capital」の支援先100社突破 |
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