株式会社ALPACA 代表取締役 今野裕樹

EC事業やブランドコンサルティング事業を手がける株式会社ALPACAは、ブランド力を失わず「意味のある」ビジネスを確立させることを目指しています。難しいと言われる輸入販売を主力事業とし、常に市場を見極めたクリエイティブな戦略で売上を伸ばし続けている企業です。

海外での仕事経験豊富な代表取締役の今野裕樹氏に、輸入EC事業を始めた経緯や今後の展望について詳しくお伺いしました。

 

自身のコネクションを活かし輸入販売に挑戦

事業の内容をお聞かせください

韓国の家電を中心としたD2CのEC事業と、海外ブランド代理店事業、D2Cマーケティングなどのコンサルティング事業を行っています。

 

現在は輸入家電などの販売に重点を置いています。輸入家電は、昨今の円安の影響もあり相場よりも高い価格設定になってしまうため、高くても良いものを購入したいと考える30代以上の層をターゲットとしていますが、今後は若年層にも対象を広げて販売できる商品を思案しているところです。

 

弊社の販売する代表的な商品として、生ゴミ乾燥機の「Loofen(ルーフェン)」があります。市区町村が実施している助成金制度があることにも着目し、コンポストよりも手軽に使えてスタイリッシュなLoofenの販売を行うようになりました。こちらは2022年の発売から一年で他の生ゴミ乾燥機を抜き、日本No.1の他Amazon・楽天・Yahooショッピングで売上げ一位を獲得しています。

そして、海外ブランド代理店事業では韓国でメーカーツアーというのを企画しています。日本から30名くらいの社長を連れて行き、韓国のたくさんのメーカーにプレゼンをしてもらい、日本で代理店運営をしたい企業を募ります。

 

契約に至ったものについては私たちも商流に入ることになっていて、卸しのようなことを行っています。

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

私は、新卒で入社した豊田通商で2012年頃から韓国の現代(ヒュンダイ)自動車に向けた製品の売り込みを行っていました。韓国にもよく出向いていたため、韓国側の豊田通商のスタッフとは長らく交流が続いていました。そのご縁で2020年頃にスキンアイロン製品を売らないかというお話をいただき、起業しました。

 

その当時、梨泰院クラスなどの韓国ドラマが流行っていたことや、韓国が最先端をいく美容大国だという情勢もあったことも参入の要因です。

 

実は、私は2回起業していて、先ほど述べた1つ目の会社は失敗して潰してしまったのですが、借金も抱えてどうしようかと思っていた矢先、前職のD2Cシステム会社にオファーを頂き、そこで企画をして商品を売るという業務を行っていました。

 

前職の会社が大きくなるなかで様々なことを学ばせていただいたが、一方で自分の役割や活躍できるフェーズは終わったと感じていたため、まだ何の事業をやるかも決まっていない中でしたが再度独立を決意しました。

 

できないことではなく得意なことに目を向ける

仕事におけるこだわりを教えてください。

色々ありますが、得意なことをするのが一番良いことだと思います。私は特に、考えて創造することが好きです。

 

例えば、ユーザーがページを閲覧した時に感じる真理を分析したり、ポジティブでインパクトのある言葉を熟考しコピーライティングで売上に繋げたりと、クリエイティブ周りのことを自分でやるのが得意です。さらに、ExcelでPLを作成するなど数字関係も得意なのでこだわってやっています。

 

このように、自分の得意分野に全振りして、苦手なことはやらない、というのを心掛けています。

 

 

起業から今までの最大の壁を教えてください

初めての事業で美顔器を販売しようとしていた時に、輸入できないというハプニングがありました。

自分の貯金を全部はたいて輸入まで漕ぎ着けたのに、今までの努力が水の泡になってしまうかもしれないと焦りましたが、試行錯誤の末なんとか輸入することできたのです。これは、輸入に関しての知識不足が招いたことで、輸入の難しさを痛感した瞬間でした。

 

その後、なんとか頑張って輸入した商品はたくさん売ることに成功しましたが、今度は売れすぎたが故にお金が底を突きそうになったことがありました。「仕入れるお金がない」という状態です。

 

海外輸入は前払い制で、先にお金を払ってその1ヶ月後くらいに商品が輸入されてくるシステムとなっています。そのため、商品が売れていると売上げが入金される前に次の分を発注しなければならずキャッシュがかかるので、そのタイミングの調整が非常に難しかったです。嬉しい悲鳴でしたが、銀行残高が無くなりそうになった時は非常に追い詰められ苦しかったことを覚えています。

 

「とにかくやる」精神で推進力を伸ばす

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

私はあまりモチベーションという概念がなくて「やるのが当たり前」という考え方の方が近いです。これは、こだわりの部分で述べた「得意なことをやる」に繋がると思います。

 

自分の得意なことや好きなことをやっていれば、多少辛くても乗り越えられるものです。私は考えることは好きですが、資料作成や長い会議はすごく苦手なので、このように自分の得意不得意を自覚し我慢しないことが私の原動力となっています。

 

また、社員に対しても基本的に得意なことをしてもらうというスタンスは変わりません。

 

例を挙げると、出社が苦手な社員にはリモートワークをしてもらうとか、喋ることが好きな社員には他社との絡みが多いような位置でコミュニケーション能力を発揮してもらうといった工夫を行っています。

 

そのように適材適所に配置したおかげで、社員の働き方がとても良くなりました。自分自身も得意不得意があるので、社員にも同じように無理なことを強制しない形で働いてもらっています。

 

今後やりたいことや展望をお聞かせください 

今後の展望としては、大きく分けて3つあります。

 

1つ目は、海外に関わる仕事をもっとしたいと思っています。現在は国内向けがほとんどですが、これからは外国の消費者向けに商品を販売して特にアメリカ市場に販路を拡大させていきたいというのが願望です。

 

現在検討しているのはエンジニアの方向けのキーボードです。結構変わった形の分割キーボードで、人間工学的なデザイン性もありエンジニアの人たちの間で流行っています。これをアメリカで売るために許可を取り販売を仕掛けている段階です。

 

2つ目は、インバウンド向けのインフルエンサー事業です。韓国人のインバウンド人口は非常に多く、訪日外国人のうち25%が韓国人だと言われています。インバウンド向けのインフルエンサーは現状あまりいないためニーズがあると思っており、今後成功させたいと思っている事業の一つです。

 

3つ目は、現在取り扱っている生ゴミ乾燥機Loofenの販売活動の拡大です。

具体的には、自治体・企業等と連携してゴミ処理がしやすくなるLoofenの良さを発信していくこと、法人向けにサブスクやレンタルプランを設けることを検討中です。

 

実際に現在は地域の新聞屋やウォーターサーバーの会社と提携し、Loofenを取り扱ってもらっています。様々な企業や市区町村と協力しながら、ゴミを減らすことの大切さも含めて私たちの商品を普及させていきたいと思っています。

 

全ては自分次第。周りの意見よりも自己分析が大切

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

とにかく自分を見つめて、きっかけや流行りなどの外部要因に悩まされず、自分が一番得意だと思うことで起業するべきです。そして、得意なことが見つかった時はたとえ一人でも躊躇う必要はありません。

 

実際に私も一人で起業しましたし、会社内のパワーバランスなどに悩まされることがないので一人起業は気楽でいいです。是非一人でもチャレンジしてみてほしいと思います。

 

人員の確保や資金繰りについてもアドバイスいただけますか?

人員は、友人やX(旧Twitter)を使って集めました。Xは起業してしている方はよく見ているので、SNSは頑張って運用することをお勧めします。実際にそこで仕事が決まった経験もあります。

 

資金繰りに関しては、融資の際、事業の計画がきちんと練られているかをよく見られるので、しっかりExcelで数字を具体的に表しておいた方が良いです。融資を代わりに通してくれるような専門機関に頼らなくても、きちんとやれば審査が通る可能性は大いにあります。積極的に融資を行っている銀行などを友人や知り合いから紹介してもらうというのも選択肢の一つです。

 

また、初めて融資を受ける場合は金融公庫に行ってほしいと思います。金融公庫は公庫自体の利益よりも企業の経済的な課題解決を優先してくれるため、初手でも貸してくれやすくおすすめです。

 

もし資金調達したいと思ってもうまくいかない場合は、一度受託の仕事などで安定した売上げを半年程出してからの方が融資を受けられる確率が上がります。

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

 

起業家データ今野 裕樹 氏

2009年東北大学卒業。新卒で豊田通商で自動車用化学品業界での事業開発に従事。ドイツ系戦略コンサルティングでの製造業支援を経て、楽天に入社しECの道へ。その後、D2C支援企業で3年間事業部長を勤め、2020年に独立。

企業情報

法人名

株式会社ALPACA

HP

https://alpc.tokyo/

設立

2020年8月

事業内容

  • D2Cブランド開発事業
  • 海外ブランド代理店事業
  • コンサルティング(D2Cマーケティング/新規事業/採用広報等)
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