港区ウェルネス推進研究所 代表 山田 航司
港区ウェルネス推進研究所は「港区を世界一健康で幸福な街にする」ことをビジョンに2023年から活動しているNPOで、東京都港区健康づくりサポーターに登録されています。自らの健康診断の結果をきっかけに、発病には至らないものの健康な状態から離れつつある未病段階からの予防の重要性に気づき、地元、港区民のウェルネスを追求しはじめた同団体の代表、山田航司氏にお話を伺いました。
未病の段階で、生活を見直し病気を予防
活動の内容をお聞かせください
ウェアラブルデバイス健康データを活用した未病検知の研究や無償睡眠コンサルティング、健康イベントの開催やYouTubeでの情報発信などに取り組んでいます。
無償睡眠コンサルティングでは、睡眠に問題を抱えている方々に対して、不眠症認知行動療法を用いオンラインでコンサルティングを行います。1日の生活の様子をグラフにして問題点を見つけ、不眠の原因への対策を分析、アドバイスしています。現在、20人ほどの方の悩みを伺っていますが、対策をし始めてから約3カ月で睡眠の質が改善した方もおり、効果を出しています。
また、顔まわりの快眠環境が整っていない課題を解決するために、「安眠洞窟」というプロダクトを開発中です。顔まわりを洞窟のように囲む作りで、睡眠環境の基本4要素である安心感のあるプライベート「空間」、覚醒を促進しない「遮光」と「遮音」、冬場は断熱で暖かく適度に湿る「温度・湿度」を安価に満たすことができるプロダクトです。まだプロトタイプの段階ですが、日常使いだけではなく、災害時の避難所でも活用いただけると考えています。
ダンボールで簡単に出来る作り方をWebページに掲載しています。
「安眠洞窟」作り方▼
https://sites.google.com/view/minatokuwellness/home/research/sleep-environment-improvement
活動を始めた経緯をお伺いできますか?
人間ドッグで、くも膜下出血のリスクがあると判定されたことがきっかけです。
再精密検査の結果、幸いにも誤診で問題はなかったものの、大きな病気になってから後悔するのでは遅い、未病段階からの予防が重要であることを身をもって知り、社会的にも予防を浸透させるチャレンジをしたいと思いました。
そこで、社会課題解決などに取り組むコミュニティで出会い、私の考えに共感してくれた他のメンバー2人とこのNPO団体を立ち上げ、ウェアラブルデバイス健康データを活用した未病検知の研究を始めました。
最近、特にフォーカスしていることが「睡眠」です。食事と運動と共に健康の3大要素ですが、約50%の日本人成人が6時間未満睡眠というデータもあり、不眠が大きな社会課題になっています。
7時間睡眠と比べて6時間睡眠は死亡リスクが1.12倍になり、6時間睡眠を10日続けると徹夜明けと同程度の認知機能になるという研究結果もあります。睡眠不足による日本の経済損失は、年間約15兆円にのぼるとも言われています。私自身も長年、不眠症に悩まされてきたこともあり、睡眠コンサルタントの資格を取得し、睡眠関連の活動に注力するようになりました。
ウェルネスの追求、まずは自分たちの健康と幸福から
活動におけるこだわりを教えてください。
団体名に含まれる「ウェルネス」とは、「心身の健康と幸福を追求する生活態度」という意味という意味があります。
そのため、自分たちが健康や幸福でない状態であるにも関わらず、接する人たちにはそれらを無理して提供して何とか頑張る、というような状態にはしたくないと思っています。
活動が楽しいからといってのめり込み過ぎると、多忙になり体調を崩してしまいがちです。私も若いころにそのような経験をしてきているため、意識的に休養する時間を確保し健康第一を心掛けています。
また、興味が薄く、やりたくないことに関しては無理強いはしません。私は趣味の登山でアルプスの名峰マッターホルンに登頂するなど、好奇心旺盛な人間です。主体的に、興味の赴く対象にチャレンジできている時に幸せを感じます。そうした気質もあり、メンバー全員が好奇心を持って団体の活動に取り組めているかどうかも重要視しています。
団体の立ち上げから今までの最大の壁を教えてください
団体を立ち上げて間もないころ、人や組織を巻き込んでいくことに苦戦しました。
ヘルスケア現場への課題インタビューや健康イベント開催の協力などで、多くの方々に声をかけたり、電話をかけたりしました。しかし、向こうからすると得体の知れない団体です。全く相手にされないことがほとんどでした。拒絶されることが続くと、やる気も低下していきます。
そんな中、港区の健康づくりサポーター事業の存在を知りました。すでに個人や仲間とともに健康づくり活動をしている団体を区に登録して、区から支援をいただく制度です。当団体も申請して、健康づくりサポーター登録団体として認定を受けました。金銭的な支援はありませんが、区の施設で健康イベントのチラシを配布してくださるなど非常に助けられています。何よりも、港区という大きな自治体の後ろ盾があることで、得られる信頼感が全く違ってくることを実感しました。
多くの出会いがサービスの充実につながる
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
チャレンジする楽しさがあることです。この団体でのチャレンジはとにかく楽しく、私の幸福の源になっています。さらに、健康関連の知識をインプットし、アウトプットすることによって、自分自身が健康になっていっています。まさに団体名の通り「ウェルネス」です。
活動を通してたくさんの人と関わることで、楽しさが増しています。昨年、経済産業省が主催する次世代イノベータ育成プログラム「始動 Next Innovator」第9期に採択いただいたことを皮切りに、多数のアクセラレータプログラムに採択されるようになり、コミュニティネットワークがどんどん広がっていきました。
このようなコミュニティにいる方々には多様性があり、みんなチャレンジしている人たちなので、学ぶことだらけです。そのため、切磋琢磨して共に成長していくことができます。ディスカッションから、ソリューションのアイデアが生まれたこともあります。
先日参加したイベントでは、東京芸術大学を卒業され、CMソングも手がける、とある作曲家の方とお話しする機会に恵まれたのですが、ご自身が作曲された熟睡音楽の曲を当団体のYouTubeで配信する許可をいただき、音源を提供してくださいました。
こうしたつながりを通してサービスが充実し利用者の方から感謝の声をいただけることも、進み続ける大きなモチベーションになっています。
提供いただいた熟睡音楽▼
https://www.youtube.com/watch?v=Jod60_4ZUus
今後やりたいことや展望をお聞かせください
目指すは「港区を世界一健康で幸福な街にする」ことです。
「3.5%の法則」をご存知でしょうか?人口の3.5%を動かすことができれば社会を変えられると、ハーバード大学の政治学者エリカ・チェノウェスが提唱する法則です。
港区の人口は約26万人です。3.5%に相当する約1万人の方々に、小さくてもいいので各々に合った形のウェルネスに取り組んでいただき、港区を世界最高の街に変革するムーブメントを興していくことを目標としています。
港区は、私自身が長く住んでいる地元です。まずはローカルで小さく初めて成功モデルを作り、将来的に世界に向けて横展開していきたいとも考えています。
また、現在は睡眠に注力していますが、興味範囲は広いので、将来的には運動や教育などの分野にも着手していく予定です。
実は、もうすぐ第一子が生まれます。子どもには自ら育つ「自己教育力」が備わっていると考えサポートしていく教育法:モンテッソーリ教育のトレーナーの資格を取得しました。近い将来、新たな資格も活かして、モンテッソーリ教育イベントも開催したいと思っています。
夢中になる時こそ、意識的に休養を
団体設立などしようとしている方へのアドバイスをお願いします
おこがましいですが、多忙になりがちだと思いますので、前述の通り夢中になり過ぎず意識的に休養する時間を確保していただきたいと思います。
それを前提とした上で、行動することが大事だと思っています。行動した結果上手くいかなくても、人からのフィードバックで気づきが得られて、頭の中でイメージしていたものが洗練されていくことを体験してきました。小さくても行動を続けていると、道は開けると思います。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:山田航司 氏
代表。東京工業大学大学院修了。
企業情報
団体名 |
港区ウェルネス推進研究所 |
HP |
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設立 |
2023年8月 |
事業内容 |
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沿革 |
2023年8月 設立 |
規模・人数 |
3名 |
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