株式会社My Fit 代表取締役 山田真愛 

株式会社My Fitは、オンラインの更年期診療サービス「MYLILIY」と、パーソナルプロテインの提供を行うヘルスケア事業を展開しています。「私にフィットするヘルスケアを」を軸に、個別化された健康を当たり前にし、誰もが心身ともに健康的な生活が送れるよう一人ひとりに合ったサービスを届けています。

 

更年期に特化したオンライン診療サービスは日本では珍しい事業でありながら、これまで提携クリニックによる診療実績40,000件以上、顧客満足度95%を達成し、多くの女性の悩みを解決させています。

 

今回は、代表取締役の山田真愛氏に事業の内容や今後の展望などを詳しく伺いました。

「更年期」の悩みに着目したオンライン診療サービス

事業の内容をお聞かせください

当社は、更年期女性を対象としたオンライン診療事業と、パーソナルプロテインの販売事業を行っています。

 

まず、更年期のオンライン診療事業ですが、更年期の方々に医療ケアからセルフケアまでを一貫して提供する「MYLILY」というサービスを展開しています。

 

サービス内容としては更年期障害を熟知した産婦人科医師による20分間の丁寧な診療の後、症状に合わせた医薬品を処方、その後、2週間ごとに症状の変化を追跡することで症状の変化があるかを把握しているので、患者さんの症状軽減までしっかりサポートいたします。24時間いつでもチャットで医師に相談できたり処方薬が郵送で自宅に届いたりと、全てがオンラインで完結する点が大きな特徴です。

 

更年期症状の治療は産婦人科の専門領域で、「ホルモン補充療法」(Hormone Replacement Therapy、略してHRT)という、更年期に伴うエストロゲン(女性ホルモンの1つ)の減少に対処するための治療があります。この治療は欧米や北欧を中心に世界でも安全性と有効性の高い治療法として15年〜20年の実績を持ち、海外では常識化しつつあります。

 

しかし、このような治療法を知らない方も日本ではまだまだ多く、治療することを諦めてしまう方も多いです。だからこそ更年期障害特化の医療窓口をオンラインで作ることで、診察をまずは気軽に受けていただきたいという思いがあります。

 

また、更年期障害の診断は非常に難しく、しっかり患者さんのお話を伺い、他の病気ではないか、どのような治療法が適しているかを判断することが大切になります。そのため当サービスでは診察に20分の時間を設け、症状の原因が他の要因によるものではないか鑑別診断した後、それぞれに合ったケアを提案しています。

 

もう1つのプロテイン事業は、オンライン上で簡単な質問に答えるだけで成分・タンパク質量・味を全て個人に合わせて提供するものです。東京大学教授の監修かつ最新の論文に基づいたパーソナライズで、その方に適したプロテインを届けています。

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

大学在学中に完全栄養食を手掛ける企業に参画しており、健康ケアへのアプローチを模索していました。当時は起業は考えていませんでしたが、自分のアイデアを試してみようとクラウドファンディングを立ち上げたことが起業のきっかけです。

 

まず個別化されたヘルスケアを提供するべく、身近な食品にこだわりたい思いでパーソナライズプロテイン事業を始めました。しかし、人々を健康にしたいと思うなかで目的が徐々にぼんやりとしてきてしまったのです。

 

自分が一番健康にしたい人は誰なのか、人生をかけれる領域を考え直した時、母親世代の健康ケアの課題に取り組みたい思いが明確になり、更年期に特化した「MYLILY」を立ち上げました。

 

「更年期」に注目したのには、高校生で母親を亡くした個人的な背景が関係しています。私たちの母親世代は、更年期症状によって離職する方もいるほど、多くの方が悩みを抱えています。

 

実際に「更年期」関連の検索ワードは「薄毛」の2倍以上あり、たくさんの方が更年期について調べていたり改善を求めていたりすることがわかります。その一方で、更年期症状をケアする場所がなかなか無いのではないかと当時は子どもながらに思っていました。

 

また、40〜50代は自分のことのみならず子どもの思春期や介護も被ってくる時期です。つまり、子育てと介護、仕事と家庭に追われ自分のことを後回しにしてしまう時期だと言えます。ヘルスケア業界の中でも、特に40〜50代女性へのサービスが不足している現状に課題を感じており、更なるサポートが必要であると考えました。

 

立ち上げ当初は、果たして40〜50代の方々がオンライン診療を使ってくれるのかなどの不安はありましたが、あまり問題なく利用していただけているように思います。

顧客が求めている健康を第一に考える

仕事におけるこだわりを教えてください

絶対にユーザーファーストであることが私の軸です。

 

つまり、40〜50代女性にとって価値のあることしかやらないと決めています。儲かる儲からないという軸で意思決定をするのではなく、本当に40-50代女性の健康に貢献できているかという軸で意思決定するようにしています。40-50代女性を幸せにするために起業しているのでここだけはブラしてはいけないと考えています。

起業から今までの最大の壁を教えてください

いくつかの困難が同時に重なった時がとても辛かったです。資金調達がまとまらず調達破棄、重要メンバーが急に辞めることになり業務破棄、そして個人的な話ですが婚約破棄というトリプル破棄になった時は、なかなかきつかったです(笑)

 

ただどれも期待値調整の問題で、自分の読みが甘かったりするだけなんですよね。私の好きな、さんまさんの言葉の1つに「落ち込むほどの能力はない」という言葉があるんですけど、本当にその通りだなと。落ち込むほど自分に能力はなくて過信しすぎていた結果だと感じました。

 

自分を過信しすぎない、ということの他にもそれぞれの失敗から学んだことは多くあります。

 

組織づくりでいうとどのような人材を採用するかは、とても大事な要素です。いくらスキルや経歴があっても自分たちの事業の方向性に興味がなくユーザー目線に立てない人を採用してはいけないなと。当たり前のことですが目指す未来・事業への共感は重視するべきだと学びました。

 

また、資金調達の時に感じたのは起業することや発信することなど1人でもできることは簡単ですが、女性起業家としてマイノリティである以上、仲間や投資家など、他者巻き込むことはまだまだ難しい現状があるということです。

 

資金調達云々の前に、女性の場合は特に人間関係構築には時間をかけることが非常に大切だと感じました。そもそも男性女性関係なく、初対面の方と画面上で仲良くなることはあまりありませんし、初期のシード・アーリーステージにおける投資は人を見て投資されるケースが多いと思います。

 

スタートアップ界隈においてマイノリティである以上、女性は特に時間をかけて自分のやりたいことや目指したい世界・人間性について相手方に知ってもらう必要があるのではないかなと。これは今後、私個人としても意識して取り組んでいきたいと思うことの一つです。

ヘルスケア業界を盛り上げ、唯一無二の愛されるブランドを確立したい

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

モチベーションという感覚は自分の中にはなくて、自分の人生をかけて”やる”と決めたので進み続けることに迷うことはないです。母も祖父も50歳で亡くなっているので、人生迷ったり悩んだりして進み続けることを止めているほどの時間はないと思ってます。私も母の年齢までしか生きれないとしたら今25歳なので、もう半分まで来てしまっている。

 

今はマイリリーというサービスを広げて、必要とすべき人に届けることにとにかく迷いなく取り組んでいきたいと思っています。

 

また実際、自分が立ち上げたサービスで社会を変えることができる、救いたい相手に価値を届けられるということが実感できると、これ以上に嬉しいことはなくて何よりも原動力になります。早く自分たちの会社の力をつけて、40-50代女性、またその周りの人にとって価値のあるサービスにしていきたいです。

今後やりたいことや展望をお聞かせください

更年期の領域は開拓し始めたばかりですが、影響力を持ってこの市場を盛り上げていきたいです。当社が更年期症状に悩む方々から一番愛されるブランドになるため、多方面からサービスを充実させていきたいと思い、主に2点のことに注力しようと考えています。

 

まずは便利だけど愛着の持てるサービス設計への取り組みと、提供サービスの拡張です。サービスを使う上で、ストレスなく簡単・便利に使えるUXはもはや当たり前の条件ですが、ただのツールではなくマイリリーだから使いたいと思ってもらえるブランド力は今後注力して築き上げていきたいです。

 

最近はマイリリー独自のキャラクターを作ったり、言葉の隅々から世界観を統一したりと、オンラインだけど安心して使ってもらえる場作りに積極的に取り組んでいます。

 

また更年期症状は100種類以上あり、現状の解決策だけでは解決できていない症状も多いため、より多くのお悩みに対応できるよう解決策の幅の拡張は急務で取り組んでいきたいと思っています。

 

2点目としては企業向けのサービスの展開です。企業における女性役員比率3割を目指す国の方針や少子高齢化の影響から、この先40〜50代女性の活躍の場が増えると予想され、更年期に対するケアは必須であると考えています。そのため、少しずつですが現在企業向けのサービスも始めており、他社を巻き込みつつ時代の流れに沿って当社が貢献できることを模索しています。

 

更に、更年期症状に対応できる医師の確保も非常に大切です。そもそも全国のクリニックのうち3%ほどしか産婦人科のクリニックはないのですが、産婦人科ではお産やがんをメインに診る必要があり、更年期領域をしっかり診療できるのは3割ほど。

 

この医師の少なさが、患者さんが病院に行きたくても行ける場所がない、または複数の医療機関を転々するドクターショッピングを引き起こしやすい要因の1つになっていると思います。

 

医師が増えない背景には、更年期障害の診療報酬が低く、長く時間をかけた診療ができないという実情も関係しています。

 

当社はそんな状況を改善すべく、診療前後の様々なデータを取得しAIや医療従事者を活用して医師依存をなるべく減らそうと取り組んでおり、更年期医療のDX化を図った効率化を目指しています。

 

話を聞くのは医師または医療従事者、そしてAIが判断のサポートをする、このような仕組みづくりによって人の負担を軽減させ医師不足を補っていくような改革を実現させたいです。

理想の社会を形にできるのが起業

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

やりたいことがある時は早く行動するべきだと思います。辛いことやうまくいかないことはありますが、自分が100%の権限を持ってやりたいことをやれるってとても幸せなことですし、起業しようと思ったら早く始めた方がいいと間違いなく言えます。

 

初めからうまくいくかはわかりませんが、私も今までやってきて全く後悔はありません。起業しようと思ったタイミングで動き出せば確実に角度も上がると思うので、是非チャレンジしてください。

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:山田真愛氏

山田真愛/株式会社My Fit 代表取締役CEO 1998年生まれ

高校生で母親を乳がんで亡くしたことがきっかけで、女性の健康・未病領域に課題感を抱きヘルスケア領域に人生を賭けることを決意。東京農工大学工学部生命工学科にて遺伝子工学を専攻。在学中には完全栄養食のスタートアップの(株)BASEFOODに参画し、大学4年次に内定を辞退し株式会社My Fitを設立。その後、東京大学大学院農学生命科学科研究室に所属。Forbes Japan主催の創業3年以内のスタートアップ起業家・経営陣を対象としたイベント「RISING STAR」に選出されるなど注目を浴びている

企業情報

法人名

株式会社My Fit

HP

https://my-fit.co/

設立

2021年3月

事業内容

株式会社My Fitは、更年期の女性を対象とするオンライン診療サービス『MYLILY』や、プロテイン定期便サービス『my fit』などの開発・運営

 

送る 送る

関連記事