Trash Lens株式会社 代表 山本 虎太郎

誰もが意識することなく環境に配慮した行動ができる社会の実現をめざすTrash Lens株式会社。ゴミや手放すものをアプリで撮影するだけで、捨て方や活用法などを提供し、新たな価値を生み出すゴミ分別アプリ「Trash Lens」の開発・普及をおこなっています。同社の代表・山本虎太郎 氏は、大学時代のインターンでビジネスとして環境問題に取り組む経験を積んだ後、22歳の若さで事業を立ち上げました。今回は事業内容や今後の展望などを伺いました。

 

ゴミ分別アプリ「Trash Lens」でゴミを価値あるものに

事業の内容をお聞かせください。

当社は、ゴミ分別アプリ「Trash Lens」の開発・普及をおこなっています。

 

このアプリでは手放そうとしているもの、例えばペットボトルや乾電池などをスマホで撮影するだけで、AIが対象物を自動認識します。そして、お住まいの自治体における適切な分別や処分方法をアプリ上で最短5秒で案内します。

 

処理に困る家具や家電製品の場合は、近隣のリサイクルショップの買取情報や相場価格なども表示されます。アプリ内で店舗への問い合わせができ、見積もりや売買取引がアプリで完結する点も便利です。それに加え、直近で開催されるエコロジー関係のイベントでペットボトルを収集しているなどの情報も得られます。

 

このように単に分別方法を知るだけではなく、捨てるか活用するかの選択肢を幅広く提示し、ものの新たな価値を見出せるよう促します。

 

またイベントなどに参加し、「価値がないと思われがちなゴミでさえ、新たな可能性や用途を見出せる」ことを実体験できる場所も提供しています。

 

ゴミから新たな価値を見出す体験を提供することで、アプリの認知度向上とリユース・アップサイクルの意識啓発を図っています。また捨てようとしていたゴミからアップサイクルしている人とつながっていく感覚も体験してもらいたいです。

 

捨てるだけではなく、ものに新しい命を吹き込む素晴らしさを伝えていきたいと考えています。

 

従来のアプリとの違いは何でしょうか?

従来のゴミ分別アプリや商品の購入・売買アプリとは異なり、「Trash Lens」は捨てる際の分別方法だけでなく、リユースやアップサイクルの情報についても把握できます。

 

捨てる前に価値に気づく方も増えるでしょうし、AIを活用することで、簡単な操作ながら豊富な情報にアクセスできます。

 

例えば、ユーザーが撮影した画像は、アプリ内で蓄積され一覧で確認できます。ユーザー同士が、アプリ内で他のユーザーのリユース方法などを閲覧することも可能なため、お互いに情報交換しながらさまざまなリユース方法を確認できます。

 

このように、手間をかけずにものの価値を再認識し、適切な処分・活用方法を選べるのが「Trash Lens」の大きな特徴です。

 

Trash Lensで実現したい未来を教えてください。

私たちのめざす未来は、誰もがほぼ意識することなく環境に配慮した行動ができる社会です。「Trash Lens」のユーザーが増えれば、資源の有効活用が一層進むでしょう。

 

現在は資源活用するには手間がかかったり、利便性が下がるイメージがあると思います。

 

「Trash Lens」もアプリを使用するので少しの手間はかかりますが、サービスの向上を重ねることで、ユーザーがストレスなく気軽にリユース・アップサイクルができるプラットフォームを実現したいと考えています。

 

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

幼少期からゴミを活用して工作をしていました。資源活用しようとの思いは特になかったのですが、「ゴミは活用できる。何かいい方法はないだろうか」と考えていました。

 

中学時代には、教室のゴミを自主的に分別していたのですが、友人から「世界のゴミ問題は、教室のゴミを綺麗にしても解決しない」と指摘され、根本的な解決が必要だと気づかされました。

 

その後、大学時代に3年間インターンとして携わった環境スタートアップの企業で、ゴミ拾いを通じ環境問題にビジネスの手法でアプローチできることを目の当たりにしました。

 

この経験が、今の事業を立ち上げる大きな動機となっています。また、当時は少数のエンジニアとして実務を任され、技術面でのスキルアップにもつながりました。

 

2022年にインターン先の代表からアドバイスされたことをきっかけに、本格的に独立し事業化を考えはじめ、会社の設立を決意しました。

 

幼少期の体験から環境問題への関心を持ち、大学時代のインターン経験が強い影響を与え、さらにインターン先の代表からの助言で本格的な起業に踏み切った経緯があります。

 

事業を立ち上げた思いを貫く 

仕事におけるこだわりを教えてください。

現時点では、仕事に対する明確なこだわりや軸はありません。23歳という年齢もあり、仕事のやり方についても未だ模索中の段階にあります。

 

しかし、事業を立ち上げた当初の想いを大切にすると決めています。

 

現在の事業はBtoC向けサービスとして始めましたが、ビジネスとして成り立つかどうかの見通しが立ちにくい面もあります。一方で、BtoB領域であれば、事業化をイメージしやすく、具体的なニーズも見えやすいのかもしれません。

 

このように揺れることもありますが、「自分は何のために起業したのか?」を常に意識し、自分の軸をぶらさずに取り組むことを心がけています。

 

起業から今までの最大の壁を教えてください

今も壁だらけではあるのですが、環境問題に特化したビジネスモデルを成り立たせる難しさを感じています。

 

まわりから「NPOとして活動した方がいいのでは」と言われることもしばしばあります。

 

しかし、インターンでお世話になった企業で、環境問題にビジネスとして取り組む様子を目の当たりにした経験があります。多くの社員がフルコミットで取り組む環境を整えることで、環境問題に大きなインパクトを与えられると感じました。

 

環境問題を事業化させるには並々ならぬ努力が必要ですが、壁を乗り越えた先にこそ、大きな変革をもたらせると確信しています。

 

壁を乗り越えるには、現状に満足することなく、とにかく前に進み続けることが不可欠だと考えています。

 

実際、2024年4月に「Trash Lens」をリリースした後、自分の視座も大きく変わりましたし、アプリを体験できる場所を増やすことで問い合わせが増えるなど状況が好転してきたことから、行動を重ねる大切さを痛感しています。

 

価値あるものが廃棄される悔しさが原動力 

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

モチベーションになっているのは、まだ価値があるにもかかわらず、多くのものが廃棄されたり、焼却処分されている現状に対する悔しさです。

 

先ほどお話しした中学時代の友人からの「世界のゴミ問題は、教室のゴミを綺麗にしても解決しない」との言葉が今も心に残っています。その悔しい思いを何とかして跳ね返したい気持ちが、原動力のひとつです。

 

そして高校時代には、思いを形にするため「Trash Lens」の元になるアプリを開発しました。

 

価値のあるものが捨てられている状況に直面し、何かしらのアクションを起こしたいと切実に感じているからこそ、今の取り組みにつながっていると思います。

 

今後やりたいことや展望をお聞かせください 

ゴミを捨てるときやものを手放すときに、「Trash Lens」を信頼して使用できる環境をつくりたいと考えています。

 

当社のアプリでは、現在259種類のゴミを識別できます。しかし、まだ識別できないものもあるため、今後もさらに識別の対象を増やしていく予定です。

 

そのために、各自治体との協力体制を強化することで、より多くの識別を実現し、地域ごとの分別ルールに沿った情報を提供したいと考えています。

 

また、リユース・アップサイクルなど、ものに新たな価値を見出す活動を支援する場を提供することも重要な目標です。当社のサービスを通じて活動が広く認知され、多くの人々に利用されることをめざしています。

長期的には、新しい技術を取り入れながら、資源活用へのハードルを最小限に抑える努力を重ねていきます。

現状ではアプリを立ち上げてカメラをかざす必要がありますが、できる限りそうした手順を省き、より簡単に使用できる環境を実現できればと考えています。ユーザーの負担を軽減することで、より多くの方に資源活用に参加していただきたいと願っています。

 

人のアドバイスを鵜呑みにしない

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

起業の道を進むのならば、他者のアドバイスを鵜呑みにし過ぎないでください。

 

起業初期の頃は、頼れる人も少ないため経験者からのアドバイスは参考になります。一方で、さまざまな人の影響を受けて自分の軸を見失うことにつながりかねません。私自身、人のアドバイスを重く受け止めてしまうことが多かったです。

 

私も起業して日が浅く偉そうなことを言えませんが、自分の信念や思いを曲げてまで、他者のアドバイス通りにしようと思う必要はありません。

常に柔軟な姿勢を持ちつつ、自分の信念を貫くことが成功への鍵になります。他者のアドバイスはひとつの指針にはなりますが、過度に依存せず、自分自身で熟考し、判断する習慣を身につけることが何よりも重要です。

 

貴社に興味を持たれている方へメッセージをお願いします。

当社の取り組みに共感し、共に歩んでいただけるメンバーを募集しています。

 

現在は、私を含め3名の小規模なチームで活動をしています。

 

必ずしも環境問題に詳しい人材を求めていません。むしろ純粋に当社の取り組みに興味を持ち、思ったことをすぐに行動に移せる実行力がある方を歓迎します。

 

働き方は基本的にリモートワークです。ただし、地方自治体や海外に出向く機会もあります。新しい環境に触れながら、フレキシブルに働くことができます。

 

当社と共に環境問題の解決に取り組みたい方からのご応募をお待ちしております。

 

【採用ページ】

https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLScaICEr_AmMxTBiQNjNhdpK8xHDkQkwg2mvDofX6lIVClULlw/viewform

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:山本虎太郎氏

2001年東京都生まれ。大学入学後3年間、環境スタートアップの株式会社ピリカで三年間インターンのエンジニアとして従事。Flutterを用いたフロントエンド開発が得意。ボーイスカウトでカブ隊の副長をしていた。幼い頃からゴミに関心があり、捨てずに活用できる方法を考える一方で、独学で習得したスマホアプリ開発の技術を使い、高校生の時にゴミの分類方法が分かる「Trash Lens」の前身となるアプリを開発。

 

企業情報

法人名

Trash Lens株式会社

HP

https://trashlens.com/

設立

2023年7月

事業内容

ゴミをスマホにかざすだけで捨て方や活用法がわかるゴミ分別アプリ「TrashLens」の提供

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