株式会社Pleap 共同代表取締役 野村 怜太郎

株式会社Pleapは、「医療現場に存在する課題をテクノロジーの力を使って解決する」ことをミッションに、医療業界の革新に日々取り組んでいます。現役医大生ながら複数の事業経験を持ち、現在はAIによるカルテの自動作成サービス『medimo(メディモ)』の運用に邁進する同社の共同代表取締役の野村怜太郎氏にお話を伺いました。

 

お医者さんの負担を極力減らすカルテ作成サービスを提供

事業の内容をお聞かせください

私たちは医療関係者向けに『medimo(メディモ)』という、AIを使ったカルテの自動作成サービスを提供しています。medimoでは医療従事者と患者の会話音声をもとにAIが自動でカルテを作成するため、医療従事者にとってカルテ作成の負担が減り、時間の削減にも繋がります。

 

medimoの付加価値は主に3つあります。1つ目は時間の削減による回転率の向上です。今までカルテ作成に要していた時間を診察に回し、より多くの患者を診察できるようになります。2つ目が、心理的負担の削減です。一日に何度もカルテを書くことは心理的にも医療従事者の負担になってしまっているため、その負担を減らしたいと考えています。3つ目が、患者としっかり向き合える点です。medimoを利用することでカルテ作成に気を取られずに患者との対話だけに集中できるので、結果として患者の満足度向上にも繋がります。

 

medimoの機能は、基本的に診察時の医療従事者と患者とのやり取りをAIが音声として読み込み、そこから文脈を判断してカルテに情報を落とし込みます。また基本仕様の他にも、医療従事者それぞれの使い勝手に合わせてカスタムできる体制を整えています。このようなカルテを正確に作成するにはやはり医学的な観点が必要で、医学のバックグラウンドが必要不可欠です。medimoには医療関係者により構成される専門チームがいて、理想のカルテに近づけられるような提案を行なっています。

 

皆さまに安心してサービスをご利用いただけるよう、操作性やサポート体制にもこだわっています。年齢に関わらず使いやすいUIを採用したり、面談を行って操作方法の説明や実際のオペレーションへの組み込み方法などを決めたりなどして、万全のサポート体制で臨んでいます。

 

また、情報セキュリティの関係でオンライン端末からオフライン端末にカルテデータを転送するのに一手間かかるイメージがあります。しかしmedimoの場合は端末転送用の『スマートペースト』という独自システムを開発しているため、オンプレミス型の電子カルテをお使いの方でも、送信ボタンを押すだけで端末間の転送を完了させることが可能です。

 

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

私自身が医学部に在籍していて、医者の存在が身近でした。病院から診療所まで様々な現場で働かれている方がいましたが、彼らが口を揃えて言うには「カルテを書くのは大変」とのことでした。そのため医者の一般的な課題として、カルテ記入の苦労があるのだと感じていました。それと同時期に生成AIが世間的に取り上げられ始めていました。

 

生成AIの中でも、会話音声を文字に起こしてカルテ形式にまとめる技術があると知りました。その技術を応用すれば医療従事者の業務改善に繋げられるのではないかと考え、事業をスタートしました。このように身近な人の課題を解決したいと思ったことが一番のきっかけとなります。

 

medimoサービスの着想を得たのはこのような経緯からになりますが、それとは別に、個人的にプログラミングを勉強していました。そのためプログラミングスキルと医療を掛け合わせたサービスを作りたいと考えていました。

 

また、私自身医学部生であることから医療分野にはこだわりがあり、その中でも得意なテクノロジーを活かすことのできるmedimoの事業は性に合っていると感じています。共同経営者の中原も同じように医学部在中で医療とテクノロジーの分野で何かできないかと考えていたので、「それなら一緒にやってみよう」と意気投合し、medimoが誕生しました。

 

すべてはユーザーの声から生まれる。徹底したユーザー目線

仕事におけるこだわりを教えてください。

ユーザーの目線はを大事にすることにはこだわっています。というのも、医療はやはりニーズベースで成り立つものだと強く感じているためです。

 

例えば、新しい技術が開発されたら一律に導入するのではなく、まず現場での困り事や課題などのニーズに真摯に向き合い、そこからどういった技術を導入するべきかを考える。そうすることで初めて本当に良いサービスができてくるのではないかと思います。

 

だからこそmedimoのサービスを構築する際も、ユーザーである医療従事者の声を大事にしました。ユーザーが感じていることやフィードバックを取り入れて、今後のサービス改善にも繋げていきたいと思ってます。

 

ユーザーの声を大事にしているため、口コミ紹介でサービスを導入いただけることも多いです。ウェブ検索で興味を持ってくれる方はもちろん、他にも展示会に出展して、その場で導入いただいたりすることもあります。いずれにせよ、ユーザーにとって本当に良いものを提供することで認知度を上げていきたいと思っています。

 

起業から今までの最大の壁を教えてください

事業を始める際、正直壁を感じたことはありませんでした。しかし強いて言うのであれば、「自分が本当にやりたいことを見つけること」に壁を感じていました。

 

実はmedimoの事業を始める前にもいくつか事業をやっていたことがありました。しかしどれも自分が本当にやりたいことだとは思えませんでした。

 

このように自分自身が真剣に取り組むことができ、なおかつ自分の力を活かせると思えるmedimoを始めるまでには紆余曲折がありました。

 

誰かの役に立ててよかったというシンプルな想い

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

私の場合は「medimoを導入してよかった」という医療従事者からの感謝の言葉が原動力になっています。そういった声を聞くと、彼らのためになるのならもっと自分も頑張ろう、とモチベーションが上がります。

 

まだ大学に在学中なこともあり、勉強との両立が大変な部分もありますが、そんな時こそチームの有り難さを感じ、頑張る原動力になっています。

 

勉強は自分だけが頑張るのみですが、何事もチームで戦えるのが会社なのではないでしょうか。例えば自分だけでは期限内に解決できないことも、お互い助け合いチーム一丸となり期限内に解決することができるのが会社である強みだと思います。

 

今後やりたいことや展望をお聞かせください 

ユーザーの裾野を広げていきたいと考えています。medimoは現在医療従事者のみに利用されていますが、薬剤師や看護師などのコメディカルの方にも使っていただけたらと思っています。

 

医療従事者の中でも特にmedimoが役立つと思われるのが、回転率の高い診療科目です。例えば皮膚科、眼科、耳鼻科などは一回の診療時間が短くて診察人数も多いので、それに応じてカルテの記入量も膨大になります。

 

もう一つ、カルテの記入量が多い診療科目にも役立ちます。精神科などは会話をベースとした大量のやり取りをカルテとしてまとめ上げます。今後はさらに、このようなカルテ作成に課題を抱えている診療科目の医療従事者の負担をmedimoで減らしていきたいと考えています。

 

また、ユーザーの裾野以外にも用途を広げていきたいと考えています。今現在medimoの提供サービスはカルテ作成のみですが、医療業務で必要な書類はカルテだけではありません。今後、medimoを使ってその他の書類作成まで幅広く対応できるようにしたいと考えています。

 

少しでも悩んだらやってみる!

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

私自身は自分の決めたことに向かってすぐに行動を起こすタイプなため、悩みは正直ありませんでした。ただ、もし悩んでいる人がいるとしたら、まずは何事もやってみることをお勧めします。

 

私の好きな言葉に”now or never”というのがあって、これは今やるか、さもなければ一生やらないか(だから今やれ!)といった意味合いです。そのような「とりあえず飛び込んでみる精神」は起業する上で重要だと思います。

 

そしてこれまでいくつか事業をやってきて感じるのは、自分の事業に対する想いが続かないと事業も続かないということです。自分が本当にやりたいことをやるべきだと思います。とは言え自分の本当にやりたいことは最初から分かるものでもないと思います。やりたいことが見つかるまで色々挑戦してみて下さい。

 

特に学生の場合はまだ若いので失うものも少ないですし、何事も試すことで経験を重ねるべきだと思います。

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:野村怜太郎

聖マリアンナ医科大学医学部医学科卒業。在学中に大学向けアプリの開発を行うほかに、医療機器、ヘルスケア機器などの設計、開発を手掛ける。2021年慶應健康医療ベンチャー大賞準優勝。2022年に株式会社Pleapを創業、共同代表取締役に就任。

 

企業情報

法人名

株式会社Pleap

HP

https://pleap.jp/

設立

2022年4月

事業内容

AIを利用した医療サービスの開発・提供

沿革

2022.4 株式会社Pleap 設立

2023.6 「medimo」サービス開始

 

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