株式会社KINS 代表取締役社長 下川 穣

 

株式会社KINSは、体内に棲む約1,000兆個の常在菌(マイクロバイオーム)の研究開発を中心として事業をスタートしたヘルスケア企業です。独自の菌テクノロジーを基に、人間だけではなく動物の健康にも貢献する革新的なプロダクトを開発・提供しています。


医療法人での経験を持ち、科学的データを重視する代表取締役の下川穣氏に、事業内容や今後の展望なども含めて、詳しくお聞きしました。

 

「菌」を使った革新的アプローチで慢性疾患・症状を予防

事業の内容をお聞かせください

当社は、常在菌を活用して慢性疾患や慢性症状の予防・治療に取り組んでいます。基本的に、ビジネスモデルは3つの柱で成り立っています。


一つ目は、BtoCのプロダクト事業です。化粧品や健康食品、ペット用品などを販売しています。これは主に予防の領域です。敏感肌で悩む人や、肌がガサガサして困っている人向けに、常在菌をケアすることで改善や予防につなげています。


また、提供しているダイエット商品なども美容目的だけでなく、生活習慣病予防の観点から腸内環境を整えるという意味合いがあります。


二つ目は、動物病院とクリニックの運営です。特に治療後の再発予防に菌の力を活用しています。現在、立川と二子玉川に動物病院があり、シンガポールにあるクリニックは皮膚科が強みです。


三つ目は研究開発をおこなうラボの運営です。こちらでは、常に新しい菌のソリューションを探求しています。


当社の事業を一言で表すと、「予防と治療のために、菌のソリューションを自社で開発して提供している」となります。


特に当社が注目しているのは、現代人の生活習慣が菌のバランスを崩しやすい点です。昔の食生活と比べると、現代の食事は菌のバランスを乱しがちです。現代人は、意識しないと当たり前のように菌のバランスが崩れてしまいます。そこで私たちは、現代人の菌のバランスを整えるアプローチを目指しています。

 

 

今後展開するBtoB事業について教えてください

これまでのBtoC事業の中で、多くのお客様から検体やデータをいただいてきました。そのおかげで、当社の独自の菌原料が磨き上げられ大量培養にも成功し、原料化のフェーズに入ってきました。


弊社のBtoC事業だけでは当社のミッションである「菌をケアすることを世の中の当たり前にする」を達成できません。


現在、KINSを利用していただいているコアユーザー層である30代40代の女性以外の層にも、ソリューションを提供していく必要があります。そこで考えたのが、それらの新たなターゲット層に広く届けられる企業とタッグを組む形です。


当社には、食品に使える菌原料と化粧品の原料の両方があります。例えば、直近で大手家電メーカーに出資いただいたのも、共同での商品開発を念頭においてのことです。美容家電で日本有数のリーチを持つ企業の製品に、当社の原料とソリューションを組み込んでもらえれば、より多くの人に常在菌ケアを届けられると考えています。


他にも、食品メーカーとも話を進めています。彼らの製品に当社の原料を混ぜてもらって、より大きなインパクトを出していくサポートができればと思っています。

 

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

元々、私は医療法人の理事長をしていまして、6つほどのクリニックを経営していました。慢性疾患を抱える患者さんが多く来られていて、現代医療だけでは治りきらない方も多かったです。


そのような患者さんを何とか助けたいという思いから、大学の先生たちと新しいソリューションを探す共同研究を始めました。その中で出てきたのが「マイクロバイオーム(常在細菌)」という概念だったのです。これが非常に面白く、すぐに本格的な研究を始めました。


その頃、私は医療法人の経営者として、クリニック数を6から8に、8から10に増やしていく過程にいました。しかし、マイクロバイオームの可能性を知ってからは、自分や社会へのインパクトを考えると、どちらがより大きいのだろうと考えるようになりました。


結局、マイクロバイオームの方が世界は広いですし、影響を与えられる範囲も大きい、やりがいを感じる、自分のインパクトも大きいと思い、起業を決意しました。

 

目の前の人を超えて広範囲の人々の幸せを考える

仕事におけるこだわりを教えてください。

仕事へのこだわりは、柔軟性を保つことと、常に大きく考え続けることです。


フェーズが変わるときは、過去の経験や考え方に縛られがちです。そうすると、小さくまとまってしまいます。ですから、常に自分の殻を破る、思考の一段上を目指すといった意識を持ち続けることを心がけています。


例えば、医療法人時代を振り返ると、6つくらいのクリニックで月に400〜500人の新規患者が来ていました。当時はその人数を助けることが全てでした。ですが今は、その先を見据えて、500人が5,000人になり、さらに100万人、200万人と、どうやったらそこまで届けられるかといった発想が重要です。


正直、目の前の人の幸せだけを求めるなら、医療法人の理事長の方が安定した職だと思います。。それを捨ててまでスタートアップの道を選んだのですから、目の前のことだけに囚われてはいけないとの想いは自分の中でかなり大きいです。


もちろん、全てがうまくいくことはほぼないです。波があって、弱気になることもありますが、無理矢理にでも大きな視点に戻るようにしています。


事業に関しても、限界をどう突破していけるかにこだわっています。当社の事業モデルは、菌と同じで複雑性が増すほど強くなるため、複雑性にチャレンジし続けることも意識しています。

 

起業から今までの最大の壁を教えてください

最初の大きな壁は、BtoCブランドを立ち上げたときです。


マーケティングには自信があったのですが、まったく通用しませんでした。しかし、自分の辞書にないやり方にチャレンジすることでうまくいき、自分の中では一つのイノベーションになりました。


次に直面したのは「組織の壁」です。医療法人時代は、人事部門があり、採用をしてくれていましたが、スタートアップではそうはいきませんでした。スタートアップは自分自身でカルチャーを考えそれに見合う人を採用し、組織作りをしていくなど、本気で考えながらアクションを取る必要がありました。


特に社員が30人を超えた頃から、本当に大変でした。当時のマネージャーたちに、彼らの役割を言語化できていなかったので、かなり苦労をかけたと反省しています。


セオリー通りにやっても、うまくいかないことがほとんどでした。そのたびに新しい方法を探し、誰かに相談し、今までとは違う選択肢を見つけて解決してきました。

 

 

仕事の醍醐味は難度の高い挑戦を楽しむこと

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

慢性疾患への強い興味と、解決したいという想いです。単にお金を稼ぐためだけなら、この道は絶対に選ばなかったでしょう。


私は元々「探索欲求」が強いタイプです。人がまだできていないことに挑戦したいといった気持ちが常にあります。


また、人を助けることで得られる一種の承認欲求も原動力です。医療法人で働いていたときに、人を助けて感謝される喜びを味わいました。その経験をより大きなスケールで実現したいという想いが、私を前進させてくれています。


さらに、挑戦の難度が上がっていくことも、大きなモチベーションです。視座が上がり、できることが増えていくにつれて、より大きな課題に取り組めるようになります。「どうやってこの難題を乗り越えよう」と考えること自体が、私にとって純粋に楽しいのです。

 

 

今後やりたいことや展望をお聞かせください 

これまでの5年間で、当社のビジネスモデルはかなり確立されました。しかし、まだ一つ足りないピースがあります。それは、原料化や製品化までの全工程を自社で完結させることです。


現在、菌の探索機能は自社で持っており、継続的に新しい原料を生み出せる体制が整っています。しかし、原料を実際に大量培養し製品化する製造プロセスは外注に頼っており、かなりの時間とコストがかかっています。そこで、自社内での一貫した体制を構築したいと考えています。


また、医療分野においても展開を広げる予定です。現在、動物病院とクリニックを運営していますが、マイクロバイオームの観点から見ると、重要なのは皮膚科、消化器内科、婦人科、そして歯科の4分野です。これらの分野は全て菌が深く関与しており、さまざまな慢性疾患と密接に関連しています。


医療分野でのサービス拡大を進めることで、ブランドの認知度も高まっていくでしょう。この成長戦略を強化するためにクリニック事業の領域も拡大していく方針です。

 

ハイリスクな起業をする必要はない

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

死ぬか生きるかのような大きなリスクを取って、起業する必要はありません。


現在は、起業のハードルが非常に低くなっていますし、週末起業や副業からスタートすることが可能です。私自身は、最初からフルコミットで会社を登記し、1億円の資金調達をしましたが、これは私が歯科医師というバックグラウンドを持っていたからこそ可能だったリスクの取り方です。これから夢をもって起業をする方には、そこまでのリスクを取ることはおすすめしません。


起業を考えながらも踏み出せずにいる時間は、実は無駄になりがちです。失敗してもリスクを最小限に抑えつつ、自分のペースで進めてみてください。

 

「菌ケア」を始めたい方におすすめ商品を教えてください!

手軽に始められる商品として、ファスティングドリンクがおすすめです。最近発売したばかりなのですが、とても好評いただいています。


多彩な栄養とKINS独自の成分をバランスよく配合していて、1本で菌ケアができます。さらには、ファスティングのお供としても最適です。乱れた食生活で疲れた内臓を休ませながら、必要な栄養も取れる点がお客様に支持されています。

 

▼BIO DRINK

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一番売れているのはクレンジングです。使い心地の良さや肌への優しさを評価してくれているお客様が多いです。

 

▼CLEANSING OIL

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本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:下川 穣氏

福岡県出身。岡山大学歯学部卒業。その後、都内医療法人の理事長を務める。

様々な経験から菌による根本治療の可能性を感じ、2018年12月に株式会社KINSを創立。

 

企業情報

法人名

株式会社KINS

HP

https://corporate.yourkins.com/

設立

2018年12月

事業内容

マイクロバイオームを活用したヘルスケアプロダクトの販売、クリニックや動物病院の運営、独自の菌原料シーズの開発

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