株式会社 PM Agent CEO 梅津 哲豪
株式会社 PM Agentは、タクシー業界に特化した採用支援サービスを展開しています。今までの人材事業で培った独自の採用マーケティングにより、月平均100名もの応募者に対応できる体制を構築し、業界内で注目を集めています。同社のCEOの梅津 哲豪氏に、新規事業の内容やその経緯、今後の展望などを伺いました。
長年のタクシー業界の問題を解決するドライバー採用サービス
現在力をいれている事業内容をお聞かせください
2024年1月から、タクシー業界に特化した採用支援サービス「RIDE JOB(ライド ジョブ)」を展開しています。
有料職業紹介の形で主に未経験者をタクシードライバーとして育成し、タクシー会社とマッチングさせるサービスです。求職者の方々にとっては新たなキャリア形成の機会となり、採用が成立した際にはタクシー会社から採用料金をいただくビジネスモデルです。
この事業を始めたきっかけは、以前のIndeedを活用した採用支援サービスの中で、タクシー会社との取引経験があったことです。その後、Indeedの事業は譲渡しましたが、タクシー業界への興味は持ち続けていました。
近年、ライドシェアサービスの普及により、一般の方の間でもタクシー業界への注目が高まっています。しかし同時に、タクシーの供給不足や、ドライバーの質に関する課題も顕在化しています。私自身も利用者として、こういった問題を経験したことがあります。
調査を進めると、需要と供給のミスマッチが大きな問題であることが分かりました。さらに、大手人材会社があまり参入していない業界であることも分かり、ここにビジネスチャンスを感じました。
そこで、2024年1月にテストマーケティングを実施したところ、タクシー会社側からの反応も良く、求職者の集客もうまくいきました。2〜3月頃から本格的に事業化し、現在は全力を注いでいる状況です。
この事業を通じて、タクシー業界の課題解決に貢献し、業界全体の質の向上につながればと考えています。
新サービスで重視した点を教えてください
当社が最も重視しているのは「ホスピタリティ」です。
その理由は、たった5分や10分の短い乗車時間でも、ドライバーの態度や運転の質によってお客様の1日の気分が大きく左右されるからです。特に日本のおもてなし文化は世界的に注目されており、インバウンド需要も増加している今、おもてなし精神溢れるドライバーを増やすことが私たちの使命だと考えています。
そのため、私たちは求職者との面談の段階から、この仕事が単なる運転業務ではなく「接客業務」であることを強く啓蒙しています。面談時間も平均30分以上と、業界標準をはるかに上回る時間をかけています。
研修の際にも「こうされたら嬉しい」といった乗客の立場に立って考え、行動することの重要性を徹底して伝えています。例えば、急いでいる方、家族連れの方、酔っぱらっている方など、さまざまなシチュエーションに応じて最適なサービスを提供することが大切だと教育しています。正解は一つではありません。
お客様一人ひとりに合わせた体験を提供する姿勢が大切だと考えています。このようなマインドを持ったドライバーを育成することが、当社で最も注力している点です。
ここ1年以内のビジョンや目標に対しての進捗はいかがですか?
「RIDE JOB」では、「おもてなしあふれるドライバーを生み出し、世の中に感動を創り出しています」というビジョン宣言を掲げています。このビジョンに向かって、一歩一歩着実に進んでいるところです。
具体的な目標としては、当社を通じて採用されるドライバーの数を最大化することを目指しています。高い目標を設定していますが、まだまだ道半ばといった状況です。
また、売上は右肩上がりで成長しています。提携企業数も200営業所を超え、売上も最も伸びている状況です。現状は関東や関西、東海がメインエリアですが、北海道から沖縄まで緊急度の高い地方も含めて日本全国にエリア展開することを次の目標にしています。
採用人数に関しては、毎月の目標人数は安定して達成しており、母集団形成では2024年で650名ほど集まっています。ビジョンの実現に向けて着実に前進していますが、挑戦の途中だと認識しています。
経営者としての意識改革で組織力が向上
1年前から現在までの最大の困難を教えてください
最も大きな困難は、ビジネスモデルの変化に伴う資金繰りの対応です。
以前の事業はサブスクリプションに近いモデルで、採用コンサルティング費用を毎月いただいていました。クライアントが増えれば増えるほど、収益が右肩上がりになる構造でした。
例えば、今月の売上がこれくらいあれば、来月も同程度の売上は確実に見込めるし、新規顧客も入ってくるだろうといった予測が立てやすかったのです。
しかし、人材紹介事業は全く違います。売上が月ごとに大きく変動する上に、実際の資金の流れがビジネスの流れと異なります。当社が広告費をかけて求職者を募集・面談をして、企業との面接をセッティングします。中には現職を退職してから入社する方もいるので、企業から実際に支払われるのはかなり後になるのです。
このような資金の流れの違いは、これまであまり意識したことがなかったので、非常に苦労していますし、資金繰りの重要性を身をもって体験していると言えます。
起業してから最大の成功体験は何でしょうか?
正直、成功体験はたくさんあります。「RIDE JOB」の事業を立ち上げて最初の採用が決まったときや、駆け出しの会社にも関わらず大手のタクシー会社と契約できたことなど、それぞれが大きな喜びでした。
ですが、一番うまくいったと感じているのは組織づくりです。現在、僕を含めて7人のフルコミットメンバーがいるのですが、そのうち5人は今年に入ってから加わった人たちで、全員がリファラル採用です。以前は採用や組織づくりの難しさを痛感していましたが、現在はこれまでの経験が活かしスムーズに良いチームをつくることができました。
変わった理由は、私が経営者や人としての「あり方」を変革できたことです。これを強く意識し、社員全員にも研修を実施しています。
例えば、ミスをしたときに自分を責める必要はありません。「やってしまった」と認識するのは必要ですが、「今後どうするか」と前向きに考えることが大切です。自分自身を認め、承認することが重要なのです。
そうすることで、社員も生き生きと働くことができますし、私自身にも余裕が生まれます。自分に余裕ができると問題に直面しても冷静に向き合えるようになります。
以前の取材時の私は人に対しては全く向き合えておらず、むしろ問題から目を背けるような態度でした。私のあり方を変えたことで組織づくりが成功し、今の事業成長につながっていると考えています。
社員育成に関する新たな取り組みについて教えてください
当社では、人材の成長にコミットしています。人が会社をつくっているとの考えに基づいて、以前と比べて大きく変わったのが社員研修の充実です。今では月に2回の研修を3ヶ月連続でおこなっています。
研修の内容は多岐にわたります。まず、先ほど触れた「あり方」に関する研修で、人としての在り方、仕事への向き合い方を深く考える機会になっています。また、実践的な営業研修も開催しています。
それに加え、私が考えていることを率直にアウトプットして、メンバーで議論する場も設けています。これは研修というよりは、オープンな対話の場といった感じです。社員一人ひとりの成長が、そのまま会社の成長につながると信じているからこそ、このような研修を実施しています。
多様性と活力が溢れるタクシー業界へと変革する
今後の展望や挑戦したいことをお聞かせください
現在、ライドシェア業界が注目を集めており、当社としても関連するサービスに挑戦したいと考えています。当社が直接プラットフォームになるよりは、既存のプラットフォームと連携しながら、ライドシェアのドライバーを増やしていく取り組みやサービスをつくっていきたいです。
それに加え、人材育成や求人、採用コンサルティングに携わってきた中で、労働人口の減少による人材の重要性を強く感じています。
個人的な見解ですが、これからは外国人材を活用することが必要になるでしょう。大手企業ではある程度進んでいますが、中小企業ではまだまだこれからといった状況です。そこに取り組んでいきたいと考えています。
特にタクシー業界では、現状、永住権や定住権を持っていない外国人は運転手になれません。正直なところ、業界内でも外国人ドライバーに対して抵抗感がある会社もあります。
ですが来年以降、タクシー運転手に従事できる在留資格ができる見込みです。この規制緩和に向けて、新しいチャレンジをしていく予定です。社会にインパクトを残せる事業をしていきたいと考えています。
困難をどう捉えるかで人生は変わる
事業転換や起業しようとしている方のアドバイスをお願いします
私も頑張ってる最中で、偉そうなこと言える立場ではないですが、重要だと思うのは、お客様や一緒に働いてるメンバーのことを第一に考えることです。私は以前の事業を生き残るためにも事業譲渡という道を選びましたが、結果的に正しい選択だったと思っています。
本当に大変で辛い日々を過ごすこともありましたが、諦めずに前に進み続けることで道が開けていきました。今では良い経験をさせてもらえたと思っていますし、そういった大変な経験こそが、人生においてかけがえのない財産になると感じています。
困難に直面したときは、単なる障害としてではなく、大きな学びの機会として捉えて、ぜひ前向きに取り組んでみてください。
採用を強化されているそうですね。どのような人材が理想でしょうか?
責任感を持ちながらも自由な発想で仕事に取り組める方です。具体的に言うと、当社ではお歳暮を顧客に送りたいと提案したり、自由に営業手法を編み出して行動できるメンバーが多いです。
また、創造性も重視しています。実際に、求職者向けのホスピタリティブックをnoteで作成したり、notionを活用したデータ管理やノウハウ共有などのアイデアは、全て社員からの提案です。こういった取り組みに必要な経費も惜しみなく出しており、裁量権が高く自分のアイデアを形にできる環境を整えています。
現在のメンバーのほぼ全員が人材業界未経験です。ですので、業界経験の有無は重視していません。「この業界を盛り上げていきたい」という熱意を持った方を歓迎します。
▼採用情報はこちら
https://pmagent.jp/careers
▼過去記事もご覧ください
【#012】いきいきと働く人を増やしたい。人とテクノロジーの力で採用課題を解決|梅津 哲豪(株式会社 PM Agent)
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:梅津 哲豪氏
青山学院大学を卒業し、株式会社Speeeにて新規事業のセールスに従事し、全社新人MVPを受賞。その後Indeed Japanにて人材系サービスを営む企業様向けのマーケティング支援に従事した後、2019年11月に当社創業。これまでに300社以上の企業様の採用支援を行い、ビジョンである「中小零細企業の採用できないをなくす」を達成するべくサービス展開中。
企業情報
法人名 |
株式会社 PM Agent |
HP |
https://pmagent.jp/ |
設立 |
2019年11月22日 |
事業内容 |
・人材採用コンサルティング事業 ・有料職業紹介事業 ・海外人材サービス事業 ・コミュニティ事業 |
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