株式会社OWNERS 代表取締役 押川 仁哉

起業経験者に特化した転職を支援するサービス「ベンチャーGO」を運営する株式会社OWNERS。代表取締役の押川仁哉氏は「起業の失敗は人生の失敗と捉える固定概念を壊し、挑戦をした人が評価される社会にしたい」と話します。今回は押川氏に、事業を始めたきっかけや起業に失敗した方へのメッセージを伺いました。

 

元起業家に特化した求人サービスを展開

事業の内容をお聞かせください

主な事業として、起業経験者を専門とした転職支援サービス「ベンチャーGO」を運営しています。

 

日本では実際に起業した経験のある人はそこまで多くはありませんが、こうした人材はゼロから事業をつくり、計画の実行と改善を繰り返してきた貴重な経験を積んでいます。当社が目指すのは「挑戦した人が評価される社会」であり、この価値観を共有できる企業と就職したい起業経験者のマッチングを支援しています。

 

応募方法を2つ設けており、一つはベンチャーGOに掲載した企業に求職者が直接応募する方法、もう一つは転職エージェントに相談しながら進める方法です。掲載企業の約8割が従業員数が50人以下のベンチャー企業であり、CxO(Chief x Officer)や事業責任者といった経営者に近い人材を探している場合がほとんどです。企業側からいただく仲介料は一般的な人材紹介会社と同じで、年収の35%に設定しています。

 

当社がこのサービスの提供を始めて半年がたちましたが、想定以上に多くのマッチングが成立しています。ベンチャー企業では経営者層が採用も担当することが少なくなく、果敢に挑戦した求職者の背景やポテンシャルをよく理解できることが理由の一つでしょう。

 

また我々は、元起業家であれば誰でも紹介するわけではありません。当社と面談した上で、審査基準を満たす方を選んでいます。そこで重要視しているのが、会社を畳む際にステークホルダーに対してどんな説明をしたのかです。この場面で誠実に対応できる人間性に優れた人材だけを企業に紹介するため、マッチングがうまくいくのだと思っています。

 

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

現在の会社で3回目の起業ですが、もともと起業をするつもりはありませんでした。宮崎県から上京して自衛隊の幹部を養成する防衛大学校に入り、海上自衛隊のヘリコプターの操縦士として海外で活躍したいと思っていたのです。しかし、諸事情で大学を中退したあとに起業を決意する出来事がありました。

 

輸入会社でアルバイトを始め、時給1000円ほどの梱包作業を担当していたのですが、「これなら全部自分でやった方が効率的」だと感じたのです。仕入れ担当に替えてもらい半年間で事業のノウハウを学んだのち、2019年に輸入・代理店事業を立ち上げました。

 

当時21歳、経営者としてはゼロからのスタートですが、ここで一旗あげないと宮崎には帰れないと覚悟していました。事業に関連する書籍を読んで基礎知識をつけたあと、税制や法務、採用といった実務に必要な知識は実際に動きながら学んでいきました。

 

2021年に1社目の合併・買収(M&A)を進めたあと、もう1社の起業・M&Aを経て、2023年に現在の会社を立ち上げました。それまでの経験から、スタートアップを経営する上での課題として採用が占める割合は非常に大きいと感じていました。そこで元起業家のセカンドキャリア支援として始めたのが、ベンチャーGOです。

 

一般的な採用支援ではなく起業家に目をつけたのは、自分のそれまでの経験からです。起業家同士でつながった仲間であっても、いつの間にか会社を畳み、姿を見せなくなるケースも少なくありません。果敢に挑んだ人が正当に評価されないことが悔しかったですし、挑戦者を応援したい気持ちが大きくなりました。

 

自分がやるべきことを見極める

仕事におけるこだわりを教えてください。

仕事に限らず、日々の生活の中でも「4割の努力で10割の成果を出す」よう意識しています。その6割を上げるためにどう行動すべきかを考えるのが大切で、そのためには自分がやるべきこと、そうでないことをはっきりさせる必要があります。

 

これはエッセンシャル思考と呼ばれる考え方です。本質を見極めて最大限に能力を発揮する方が楽しく仕事ができるので、やらないことの精査にはこだわっています。

 

もちろん、当社の社員にもこの思いを伝えています。ただ楽をするのではなく、成果を保ちつつも労働時間を短くするのが重要で、その空き時間から新しい価値が生まれるのではないでしょうか。

 

また、当社には「満足より感動を」という共有価値があります。この言葉には、顧客に感動を与える瞬間を創出し、その感動が信頼と長期的な関係の基礎となるとの思いがあります。

 

例えば、居酒屋で食べた料理に満足したことはすぐに忘れてしまっても、帰り際に並べてくれた靴の中にホッカイロが入っていたときの感動は、そう簡単には忘れないものでしょう。それと同じで、当社の顧客にも「ここに気づいてくれた」「ここまでやってくれる」と感動してもらえることが、リピートにつながると思っています。

 

起業から今までの最大の壁を教えてください

ベンチャーGOはマッチング事業ですので、求職者と掲載企業の両方の数が集まらないと収益が見込めません。当初から企業側からのニーズは高かったものの、それに見合うだけの求職者(元起業家)を集めることが難しく、最初の1〜2カ月は集客の面で苦戦しました。そもそも母数が少なく、我々の試算でも元起業家の集客は年間で8〜900人が上限ではあると考えていましたが、その層にいかに効果的にメッセージを伝えるかが最初にして最大の壁でした。

 

やはり、元起業家に一番刺さるメッセージは「挑戦する人が報われる社会」でした。求職者はほとんどX(旧Twitter)からの流入なので、経営者層に刺さるメッセージをXに投稿しているアカウントとのタイアップは非常に効果がありました。こうしたアカウントのフォロワーには、顧客となり得る求職者が多くいらっしゃいます。この層に我々の思いが届き、60人の申し込みがあった月もありました。

 

さらに、ベンチャーGOを利用する人の属性も徐々にわかってきました。起業してすぐに当社のサービスを使う方は3〜4割程度しかおらず、利用者の6割は事業に失敗した後に企業に勤め、そこからの転職を考えている方だったのです。集客に関しては今も試行錯誤が続いてはいますが、利用層が明らかになってきたこともあり、一山越えたと感じています。

 

社会から評価される事業を作りたい

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

一言で言うと、快感です。事業をつくり、構想し、それを収益化する。自分の仮説を検証でき、なおかつ市場から評価されることに喜びを感じます。

 

そこに対していくら収益を出したのかは関係ありません。世の中に評価される事業を作れたこと自体が嬉しく、そこに大きなモチベーションを感じています。

 

今後やりたいことや展望をお聞かせください

起業経験者を専門とした転職支援サービスは、現時点で当社だけが扱っているものです。開始から6カ月がたちましたが、ポテンシャルがある分野だと確信しています。

 

まずはシェアをどんどん広げていくことが第一の野望です。先ほども言った通り、求職者の数に比例して収益が生まれる仕組みなので、Xを中心にさらなるチャネルを構築したいと思います。

 

リスクを考えるより、まずは行動

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

お伝えしたいことは一つ、「今すぐ法務局に行って登記しよう」。今やりたいのであればやるべきであるし、思っているだけならやらない人と同じです。すぐに会社を立ち上げるくらいの実行力がなければ、起業してからも厳しい局面が多くなるとも思います。

 

正直、起業するだけなら何の準備もいりません。もちろんアイデアがないと続きませんが、それを半年や1年かけて準備するのも違うと感じます。脳科学的にも1カ月考えたものと1日考えたもので、さほどのクオリティーの違いはないとされています。

 

起業のリスクを考えて踏み出せなくなる方も少なくないと思いますが、実は起業にそこまで大きなリスクはありません。今はそのリスクをコントロールできるのです。創業初期に赤字を出し、そこから急成長する一般的なベンチャーのモデルとは異なり、創業の初期段階から収益を実現する事業を作るソリッドベンチャー(堅実的なベンチャー)と呼ばれる新たなモデルも生まれています。

 

さらに、万が一事業に失敗したとしても、そのときは当社のサービスを使っていただければと思います。元起業家のセカンドキャリアは日本の土壌でもできあがってきていると、声を大にして伝えたいです。

 

起業を経験しセカンドキャリアを考えている方に一言お願いします

起業の失敗=人生の失敗と捉える固定概念も存在するかと思いますが、その経験を評価する企業は思っているよりもたくさんいらっしゃいます。その失敗をネガティブに捉えず、まずは我々に一度ご相談ください。好条件での転職が実現できます。

 

元起業家は転職の経験がない方も少なくありませんが、心配はいりません。当社が蓄積してきたノウハウを全て盛り込んだ起業家転職ガイドラインがあるので、安心して転職活動を進められます。

 

起業経験者は経営者として必要な能力を持っており、その貴重な人材に出会える求人サービスは当社独自のものです。ありがたいことに現在は多くの求職者が登録している状況ですので、企業側からしてもマッチングが実現する可能性が高いと思います。少しでも気になる方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:押川仁哉

1996年生まれ。防衛大学入学後、21歳で輸入事業・代理店事業を起業。

2019年に世界初のEC販売事業者向け保険型SaaSを立ち上げ、特許取得。テレビ東京地上波CM放映など成長させ2021年にМ&A。

2021年、SNS×NFTプラットフォームを立ち上げ。著名人が参加し最高140万円で落札されるなど賑わい、2022年には旅行会社へM&A。2023年より、起業経験者特化型転職・採用サービス「ベンチャーGO」を立ち上げ。

 

企業情報

法人名

株式会社OWNERS(オーナーズ)

HP

https://www.owners-inc.com/

設立

2022年1月20日

事業内容

起業経験者専門転職サービス

 

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