ギフト株式会社 代表取締役 池戸 裕
ギフト株式会社は、企業理念の確立と浸透を軸としたブランディング支援を行う企業です。「企業がなぜ存在するのか」「どこへ向かうのか」といった本質的な問いから、その企業ならではの理念を言語化。社内外のあらゆる活動に一貫性を持って反映させることで、100年先を見据えた持続的な成長を実現します。今回は代表取締役の池戸裕 氏に、事業内容や今後の展望なども含めて詳しくお聞きしました。
「企業理念」を軸とした企業のブランディングサポート
事業の内容をお聞かせください
当社は、企業のブランディング支援を行っています。
「ブランディング」という言葉は、マーケティングや広告制作など、会社によって定義が異なり正解はありませんが、私たちが考えるブランディングの入口は「企業理念」にあります。つまり、その会社がなぜ存在するのか、どこへ向かおうとしているのかといった根本的な問いに向き合うことから始めます。
そして、理念はどの会社でも言えるような一般的な表現では魅力になりません。その会社にしかない独自の言葉、具体的にはミッション、ビジョン、バリューを明確に言語化します。そして、その理念に基づいて、社内の活動やお客様へのサービス提供、採用活動など、あらゆる企業活動に一貫性を持たせていくことが、ブランディング活動だと考えています。
具体的な取り組みの事例をご紹介しますと、全国で食のセレクトショップやカフェを展開する企業様では、約10年前から企業理念の言語化と社内浸透のプロジェクトをお手伝いしています。理念を言葉にすることから始まり、社内に浸透させるための継続的な取り組み、さらには外部への発信としてホームページの制作まで、一貫したブランディング支援を行っています。
ブランディングで重要なのは、長く愛される状態をつくること。具体的には、定めた理念を中心に据えて、ブレずに一貫性のある経営を進めていくことです。例えば、一時の流行に乗ったお店が一気に増えては蜘蛛の子を散らすように消えてゆく⋯といった現象はブームに便乗して収益のみを追いかけているから起こることだと私は考えています。
一方で、何十年と残っているお店は、自分たちが提供したい価値やめざす未来があるからこそ、継続できているのです。いい悪いではなく経営者の選択の問題ではありますが、この違いは、理念を軸に経営・運営されているかどうかであると思います。
人間は芯となる理念がないと、行動に一貫性が生まれず魅力的な存在にはなれません。「法人」と言われるように法律上は人間として扱われる企業もまた、理念があってこそ一貫性のある魅力的な存在になれるのです。
また、企業理念の浸透については多くの企業が課題を抱えています。特に新入社員にとって、これまでとは異なる文化や価値観を理解・納得し、さらに自分の価値観とすり合わせていくのは簡単なことではありません。私たちは、理念の理解から納得、そして個人の価値観との調和まで、段階的な浸透のサポートも行っています。
お客様の業界については、偏りはありません。なぜなら、企業理念はすべての会社に必要不可欠だからです。ただし、情報感度が高く、理念経営の重要性への理解が進んでいる会社が多い業界がある一方で、まだまだこれからの業界もあるように見受けられます。ですが、本質的にはどの業界でも必要とされる取り組みだと考えています。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
もともとは、リクルート出身者が立ち上げた採用支援の会社で、中小企業向けに新卒採用のコンサルティングをしていました。その後、文章を書くことが好きだったので、コピーライターをめざして社内の制作部門に異動。求人媒体の制作や制作物の制作ディレクションを担当しながら、一貫して経営者と膝を突き合わせて取材し、記事制作や広告制作を行っていました。
その過程で実感したのは、採用成功の鍵は「企業理念」にあることです。キャリアの始まりは愛知県勤務だったのですが、愛知県といえば採用上は最強の自動車メーカーやそのグループ会社が君臨しています。そこで小規模企業が選ばれるためには、強固な理念と大きな夢を語る必要がある。逆を言えば、しっかりとした理念があれば、中小企業でも採用で大手企業に勝つことができるという事実でした。
そこで「なぜあなたの会社は世の中に必要なのか」「どのような志を持っているのか」といった対話をするようになり、今思えばその仕事は、現在のブランディング事業の原点でした。
人生を左右する仕事をしている責任を持つ
仕事におけるこだわりを教えてください。
「クライアントの人生に深く関わらせていただく」という責任感にあります。
企業理念とは、その人の生き方そのものに直結するものです。私たちのアプローチは「何のために生まれてきたのか」という根源的な質問から始まります。生まれ育った環境、ご家族との関係、学生時代の経験など、その方の人生を丹念に紐解いていきます。
例えば、「小学校時代はどのような友人関係でしたか」「部活動では何を学びましたか」等の質問を通じて、「過去の困難な経験が、現在の自分を形作っているかもしれない」という新たな気づきが生まれることもあります。
このように人生の道筋が見えてくると、「将来どのような存在になりたいのか」という未来への展望も自然と浮かび上がってきます。つまり、私たちは一人の人間の人生を再定義するという重要な転換点に立ち会わせてもらっているのです。
さらに、企業の理念を考える際には、従業員の未来にも大きな影響を与えることになります。だからこそ、この仕事には妥協は許されません。私自身も決して妥協せず、クライアントにも同じ姿勢で向き合ってもらいます。ただ、緊張感のある関係性ではなく、お互いが本気で向き合い、真摯に取り組んでいくという意味です。
起業から今までの最大の壁を教えてください
人材の成長速度との向き合い方でした。
当社の仕事は、30代、40代、50代と百戦錬磨の経営者の方々に対して、若ければ20代のメンバーが企業の存在意義を問いかけ、対話を重ねていく必要があります。
経営者と対等に渡り合えるレベルに到達するまでには、時間もかかりますし勉強も必要です。何より、強い覚悟を持って仕事に向き合う姿勢が求められます。人材の成長には一定の時間が必要で、簡単には短縮できません。そのため、会社の成長スピードを思うように加速できないという課題に、常に直面してきました。
この課題に対して、成長に時間がかかることを前提とした上で、外部の優秀なパートナーとの連携を進めています。社員だけでなく、経験豊富な外部の人とチームを組むことで、必要な専門性を補完する体制を構築しています。
同時に、社内での人材育成にも注力しています。体系的な研修プログラムの実施に加え、若手メンバーには早い段階から実践の機会を提供し、失敗を恐れずにチャレンジできる環境を整えています。
進むための軸になる「動機」を明確にする
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
「モチベーション」という言葉をよく耳にしますが、本来これは「動機」という意味を持っています。私は、この「動機」とは会社の理念そのものだと考えています。
例えば、いい話を聞いて「仕事を頑張ろう」と思っても、帰宅途中に個人的な悪い知らせが入れば、気持ちは一気に下がってしまいます。人間とはそういうものなのです。
しかし、そういった感情の浮き沈みに左右されるのではなく、「自分は何のために仕事をしているのか」「この会社は何のために存在しているのか」等の動機が明確であれば、モチベーションは大きく揺らぐことはありません。
めざすべき方向が明確であれば、着実に前に進むことができます。「なぜそれほど頑張れるのですか」とよく質問されますが、特別頑張っているわけではなく、ただ決めたことを実行しているだけなのです。
筋トレのように決めたことを習慣化できれば、自然と日常の一部となります。仕事においても同じで、確固たる理念があってこそ、持続的な推進力が生まれるのです。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
企業理念から始まるブランディングの普及です。この考え方について話すると、多くの方が「確かにそれは大事ですね」と共感してくれます。
ただ、私が危機感を感じているのは現代の日本の状況です。電車に乗ると朝からみんなが下を向いて歩いている。社会人になりたくないと思う学生が増えている。このような生活では、本当の意味での充実は得られないのではないでしょうか。多くの方が、自分の人生の目的や意味を見出せていないように感じます。
そこで私たちは、「何のために生きているのか」「何のために仕事をしているのか」といった本質的な問いに向き合える会社をもっと増やしていきたいと考えています。これが当社のブランディング事業がめざすゴールです。
企業には必ず理念があるべきです。経営者がしっかりとした理念を持ち、従業員も共感して、同じ方向に進んでいける会社はハッピーです。このような会社が増えれば、やりがいを持って、楽しそうに働く大人が増える。そうすれば、子どもたちにも夢が生まれる。元気がない日本も変わっていけるはずです。だからこそ、私たちはこのブランディングの考え方を、世の中に広めていきたいと考えています。
後悔したくないなら今すぐ「やる」と決める
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
「やりたい」との思いがあるなら、今すぐ行動に移してください。人生はいつ終わるかわかりません。「あのとき、起業していれば良かった」という後悔を残さないためにも、思い立ったら即実行することをおすすめします。
私自身、ある方に「独立しようと思っている」と相談したところ、「そう言っているうちは一生しない。今すぐ起業しなさい。最初の仕事は私が出す。」と言われました。その言葉に後押しされ、即決断して独立の道を選びました。「なんとかなる」という気持ちで一歩を踏み出してください。「起業する」と決断することから、すべては始まるのです。
貴社のサービスに興味がある企業へのメッセージをお願いします
企業が存続し続けるためには、必ず企業フェーズに応じた変化が求められます。5年、10年、そして100年と永続的に発展していくためには、変わらない幹となる軸が必要ですが、時代に応じたチューニングも必要です。現実に方針が定まらない、チームの方向性がバラバラ、組織でトラブルが起きるなど、さまざまな課題に直面すると思ったときは、理念を始め自分たちのあり方が揺らいでいるのではないか、見つめ直すタイミングに来ているのではないか、と立ち返ってみてほしいと思っています。
企業で起こるほとんどの問題には、根本的な原因があります。人間関係の不和、計画の頓挫など、これらの問題の根っこを探っていくと、多くの場合、考え方や価値観に行き着きます。
だからこそ、すべての企業に一度は理念と向き合っていただきたいと考えています。すでに理念をお持ちの企業も、本当にそれで良いのか、見直してみる価値はあるのではないでしょうか。
自分の会社のことは自分たちだけでは見えづらいものです。誰かに話を聞いてもらって、「御社はこういう会社ですよね」と言ってもらうことで、初めて「そうだったのか」と初めて見えてくるものがあります。
「自分たちの会社のビジョンや理念が、組織の中で生きた言葉として機能しているのか」を、確認する意味でも相談していただければと思います。現状の課題についてお話しいただくことで、本質的な解決への糸口が見えてくるはずです。「このままで良いのだろうか」という思いを少しお持ちでしたら、ぜひご相談ください。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:池戸裕 氏
ギフト株式会社 代表取締役。
2005年、採用・組織コンサルティングを手掛けるベンチャー企業に入社。名古屋支社において中小企業の経営者を対象に母集団形成から内定/入社まで一気通貫した採用コンサルティングと組織活性コンサルティングに従事。後に東京本社制作部へ異動。クリエイティブのディレクター兼コピーライターに。
2010年、ブランディング企業へ転職。採用領域だけでなく、会社の根幹に入り込んだ企業理念構築やブランディング実績を残す。
2015年、新卒での就職から一貫して中小企業の経営者と直接膝を突き合わせ、ブランディングによって100社以上の課題解決をしてきた経験を持って、ギフト株式会社を設立。すべての人や企業が持つ意義や必然性をストーリーで発信し幸せを実現する“ブランディングパートナー”を目指している。
企業情報
法人名 |
ギフト株式会社 |
HP |
|
設立 |
2015年3月 |
事業内容 |
企業ブランドの開発・制作 |
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