palplat株式会社(palplat Inc.) 代表取締役/CEO 松田 拓也

palplat株式会社は、BtoCのパーソナルメイクレッスンとBtoBの人材プラットフォームを展開する企業です。美容業界で働く人材には新しい活躍の場を、一般消費者には個性が輝くメイク方法を提供することで、業界全体の価値向上を目指しています。同社の代表取締役/CEOの松田 拓也氏に、事業内容や今後の展望なども含めて詳しくお聞きしました。

 

個人メイクレッスンと美容人材プラットフォームで業界に変革を

事業の内容をお聞かせください

当社は美容領域のスタートアップとして「化粧品・美容領域の労働市場の流動化」をテーマに掲げています。「一人ひとりの価値を最大化し、誰もが自分らしく、輝ける世界を」というテーマのもと、スキルに見合った報酬体系かつ、ライフスタイルに合わせた働き方を提供しています。

 

事業は大きく2つの柱があります。1つはBtoCのパーソナルメイクレッスンです。もう1つは現在開発中のBtoB向け人材クラウドで、化粧品メーカーや店舗への人材派遣や教育を実施する事業です。つまり、フリーランスやギグワーカーの方々がBtoCとBtoB両方で活躍できる環境作りを行っています。

 

パーソナルメイクレッスンでは、2つのサービスを展開しています。1つは全国展開している単発のメイクレッスン体験です。プロのメイクアップアーティストから、お客様一人ひとりの悩みに合わせたメイク技術を学んでいただいたり、最適なコスメをご提案したりしています。

 

もう1つは、より確実にメイク技術を習得していただくためのサブスクリプション型サービスです。月1回のメイクレッスンに加え、レッスンで使用したコスメをご自宅までお届けするサービスも提供しています。

 

当社のサービスの特徴は、YouTubeやSNSを見るだけでは、自分でメイクを再現することが難しい方に、パーソナライズされた提案ができることです。特に結婚や出産を機に肌質が変わったり、ファッションや髪型が変わってきた方々に向けて、パーソナルカラーや顔タイプ、骨格診断まで含めた総合的なアドバイスを提供しています。

 

メインのユーザー層は20代後半から30代前半の女性で、特に自己投資に意欲的な方々に多くご利用いただいています。ユーザーが多い地域は主に地方が7割を占めており、百貨店やメイクスクールが少ない地域でより強いニーズがあることを実感しています。

3,000人のメイクアップアーティストが登録しているとお聞きしました。どのような方が多いですか?

現在、登録者ベースで約3,000名、その中で常時活動していただいているのが全国で120名ほどいます。

登録いただいているアーティストは、大きく分けて2つのタイプがいます。1つは、メイクアップアーティストの方です。美容部員として15年、20年のキャリアを持つベテランの方々で、日本でもそれほど数が多くありません。こういった方々は口コミや紹介などで私たちのプラットフォームを見つけ登録してくださっています。

この方々は、芸能人のメイクやCM撮影など、BtoB領域での仕事は個人でも請け負えますが、一般のお客様向けのBtoC領域では活躍の場が限られてしまっています。そこで、私たちのプラットフォームを通じて新しい活躍の場を提供させていただいています。美容サロンやメイクサロンを開く初期コストもかからず、すぐに活躍できる点を評価いただいています。

 

もう一つは現役の美容部員の方々です。InstagramなどのSNSを通じて副業として参加してくださっている方が多く、化粧品メーカーに勤めながら勤務時間外に活動されています。

 

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

ITコンサルタントとしてキャリアを歩んできた中で、多重下請け構造による低賃金や長時間労働、やりがい搾取などの問題を目の当たりにしてきました。

 

金融、不動産、建設など多くの現場に携わる中で、実際に価値を生み出している方々が十分な対価を得られていない状況を目の当たりにしてきました。特に建設業では、高い専門性を持って一筋で尽力されてきた職人さんが多く、そういった方々の力になれる事業をしたいと考えていました。

 

そして、28歳の時に「30歳になる前に挑戦してみよう」と思い起業を決意しました。共同創業者の3名は、高校のサッカー部からの付き合いです。お互いにビジネスアイデアを出し合う中で、美容業界で事業を始めることを決めました。

 

その理由は、日本の化粧品マーケットが大きいこと、そしてまだDX推進が他の領域と比べて進んでいなかったからです。テックを使って新しい価値を生み出せるチャンスがあると考えました。

人生が豊かになる働く環境を作る

仕事におけるこだわりを教えてください。

私自身、会社員時代にかなりの残業を経験しており、人生において仕事が占める割合は非常に大きいと感じています。一般的には週5日は仕事をしますが、やりがいだけではなく、一人ひとりのライフスタイルに合わせた働き方ができる環境が大切だと考えています。

 

人生を豊かにしていくためには、仕事と生活のバランスが必要不可欠です。だからこそ、社内のみんなが生き生きと働ける環境作りにこだわっています。具体的には、スタッフの意見をしっかり聞きながら、組織づくりや事業の施策を考えています。

 

起業から今までの最大の壁を教えてください

創業時はほぼ全てが壁の状態だったのですが、一番大変だったのは資金調達です

 

昨年、プレシリーズAで1.6億円の調達を実現できましたが、そこに至るまでが本当に大変でした。当初の予想では半年程度でクロージングできると思っていたのが、実際には10ヶ月もかかってしまったのです。その間、会社の売り上げを伸ばすために、個人で1,500万円ほどの借り入れをしました。

 

また社員には、会社が潰れる不安を抱えさせたくなかったので、資金繰りの苦しさをほとんど言えませんでした。共同創業のメンバーにだけは打ち明けていましたが、メンタル面でかなり疲弊してしまっていました。

 

80社ほど個別にピッチを続けている中で、最終的にリードVCと出会い、一段とスムーズに調達が進みました。

美容業界の深刻な人材不足を解消する

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

「この市場でインパクトを残せる事業を作るまでは、死んでも諦めない」と創業時に決意しました。そしてこれがモチベーションとなっています。

 

資金調達が辛かったとお話しましたが、「資金調達できなかったら、それまでの人間だった」と受け止めて、自己破産してしまえばいいと思っていました。

 

もちろん周りには迷惑をかけることになりますが、リスクに対する許容度はありました。このままではダメだと心の中で思っていても、創業時に定めた目標が揺らぐことは一度もありません。

 

今後やりたいことや展望をお聞かせください 

現在、人材クラウドのプロダクト開発を進めており、2025年5月のリリースを予定しています。

 

最近上場した、某スポットワーク企業のプロフェッショナル版のような形を目指しています。現状はアナログな形での人材派遣にとどまっていますが、クラウド化することで、より多くのブランドを支援できるプロダクトへと発展させたいと考えています。

 

特に注力しているのは、百貨店などの美容部員の人材不足への対応です。現在、大手ブランドの多くで人員が不足している状況です。本社の採用担当や人事、トレーナー、アーティストまでもが店舗に出払っており、教育が滞るといった負のスパイラルに陥ってしまっています。

 

当社では、現在約120名のアーティストを抱えながら美容部員育成のカリキュラムも確立しています。このノウハウを活かし、人材派遣にとどまらず、各ブランドの採用から教育までのビジネスプロセス全体をサポートできる体制を整えています。

 

他の派遣会社から美容部員の教育や、ブランドの社員教育まで包括的に支援することで、業界全体の課題解決に貢献できるでしょう。

 

個人的な目標としては、2028年6月のIPOを見据えています。組織の拡大とともに、社員が自然とついてきたいと思えるような経営者として成長することを目指しています。

過去の経験は一切無駄にならない

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

さまざまな壁にぶつかることがあっても、諦めずに行動し続ける気力があれば、自ずと成功に繋がります。もちろん、時には間違った方向に進むこともあるでしょう。しかし、諦めずに行動を続けることで、点と点が繋がり線となり新しい可能性が開いていきます。

 

また、過去の経験は決して無駄にならないと最近感じています。最初の職場であるマルイグループでは商業施設の空間プロデュースを担当しました。そこで技術や経験に見合った報酬を得られていない職人さんたちの現状を目の当たりにし、現在の事業における「待遇改善」の原動力になったのです。

 

その後、SBIでブロックチェーン領域のIT技術を学び、アクセンチュアでは300人規模のエンジニア組織のマネジメントを経験しました。アジャイル開発の知識も習得しましたが、当時は「これが何の役に立つのだろう」と思っていたのです。しかし今、自社でプロダクト開発をアジャイル手法で進めている中で、これらの経験が活きていることを実感しています。

 

会社員として働いていると、必ずしも自分の希望する職種に就けるとは限りません。しかし、振り返ってみると、会社員時代に積み重ねた一見無関係に思える経験のすべてが、今の事業に確かな形で結びついていると感じています。

 

貴社の事業に興味があるVCとフリーランス向けのメッセージをお願いします

さまざまな壁にぶつかることがあっても、諦めずに行動し続ける気力があれば、自ずと成功に繋がります。もちろん、時には間違った方向に進むこともあるでしょう。しかし、諦めずに行動を続けることで、点と点が繋がり線となり新しい可能性が開いていきます。

 

【VC向け】

化粧品・美容領域でイノベーションを起こしていきたいと考えています。この領域のスタートアップで、大きな成功を収めた例はまだ多くはありません。

 

5年ほど前までは、D2C系の企業が注目を集めていましたが、その多くが上場延期や中止を余儀なくされ、思うような成長を遂げられていない状況です。

 

しかし、私たちは従来とは異なるアプローチで、この市場に新たな価値を創造していきたいと考えています。だからこそ、皆さまのご支援をいただき、共にこの領域を変革していければと思っています。

 

【フリーランス向け】
化粧品・美容の領域には、潜在的な労働力があると考えています。特に、結婚や出産を機に一度退職された方々の中には、技術や経験を活かして、また業界で働きたいと考えている方が多いのではないでしょうか。

 

ただ、従来の美容業界では、百貨店の営業時間に合わせた勤務が求められるなど、ライフスタイルに合わせた働き方が難しい状況でした。当社では、週に1日、2日からでも、ご自身のペースで働ける環境を用意しています。

 

ITやデザインなどの他の業界と同じように、美容業界でも一人ひとりが自分らしい働き方を選べる未来を作っていきたいと考えています。

 

独立を目指される方はもちろん、少しでも美容業界で働きたいと思う方が生き生きと働ける環境づくりを、全力でサポートいたします。

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:松田拓也 氏

明治大学理工学部建築学科 卒業。

新卒で丸井グループへ入社後、SBIホールディングスにてエンタープライズ向けのブロックチェーン/分散台帳技術を活用した新規事業企画を担務。

その後、アクセンチュアのJapanにおけるブロックチェーンSMEとして、金融/貿易/製造/不動産/建設など様々なインダストリーのトップ企業に対する経営コンサルティング及びデジタルトランスフォーメーションに従事。

2021年にpalplat株式会社を創業し、代表取締役社長/CEOに就任。

 

企業情報

法人名

palplat株式会社(palplat Inc.)

HP

https://www.palplat.com/

設立

2021年 6月 1日

事業内容

【美容プラットフォーム事業】

化粧品・美容業界におけるパーソナライズ統合型美容プラットフォームの開発・運営

【人材プラットフォーム事業】

化粧品・美容業界に特化した人材請負及びクラウドサービスの開発・運営

 

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