ファシリティジャポン株式会社 カントリーマネージャー 長井 早和子
「デジタルインクルージョン」をミッションに掲げるファシリティジャポン株式会社では、視覚・動作・認識における症状を持った方が、より快適なウェブサイト閲覧体験をするためのソリューションを提供しています。カントリーマネージャーの長井和子氏は、社会的な課題を解決できるこのビジネスに、大きなやりがいを感じているといいます。事業内容や今後の展望も含めて、お話を伺いました。
誰にとっても見やすいWebサイトにできるソリューションを提供
事業の内容をお聞かせください
メインは、Webサイト向けのファシリティソリューションを提供しています。
具体的には、ウェブサイトを見ている方が、自身のニーズに合わせて表示をカスタマイズ、パーソナライズできるソリューションです。
例えば、色や文字、フォント、文字・行の間隔の変更、クリックの反応範囲を広くするなど「細かい設定ができるソリューション」になっています。
これらのサービスは、Webサイトを利用する際に「ちょっと困っている」「不便に感じている」方が、少しでもWebサイトを快適に使用するためのソリューションです。
高齢者向け・障がい者向けと勘違いされるケースが多いですが、弊社では「デジタルインクルージョン」をミッションとして掲げており、Webサイトを使用するすべての方を対象に、サイトやデジタルを快適に使用してしていただきたいと考えています。
そのため、快適モードやナイトモード、ダークモード、ブルーライト軽減モードなど、すべてのお客様が自分のニーズや好みに合わせて設定可能です。
現在、グローバル全体では1000サイト以上に提供しており、600万人以上の方が利用しています。日本でも少しずつ導入サイト数や利用者が増加しており、自治体・官庁・大手企業を中心に、40サイト程度に提供しています。
サイトへの導入は非常に簡単になっております。ただし、利用した時に表示崩れが起きないようサイトごとに弊社側で作業を行うため、約1ヶ月、規模の大きいサイトや複雑なサイトでは、半年から1年程度作業の時間をいただいております。
弊社の強みとして、利用できる機能の多さが挙げられます。ワンクリックで簡単に設定できるもので24パターン、自身で設定を複数の機能を組み合わせて設定を作成する場合は、1,000以上のパターンがあります。
現在の仕事を始めた経緯をお伺いできますか?
私は紹介にて、弊社に入社しました。以前は大手外資系IT企業にて、6年間営業に従事していました。その時の先輩の紹介で現在の会社を知り、入社を決めました。
FACIL’itiに入社を決めた理由は大きく2つあります。一つ目は、FACIL’itiが取り組んでいる「デジタルインクルージョン」に大きな驚きと感銘を受けたからです。
世の中には、年齢や障がい、また一時的な制約などによって、デジタル環境にアクセスするのが難しい方がたくさんいらっしゃることに今まで気づくことも、考えたこともありませんでした。
しかし、スタートアップがその方々の障壁を取り除くための仕組みを提供し、それをビジネスとして成立させていることにとても感動したことを覚えています。そして私もこんな仕事に携わってみたいと強く思いました。
もう一つは、こうした取り組みが単なる「社会貢献活動」にとどまらず、実際に多くの企業や個人に価値を提供しながらビジネスとして成り立っているという点です。社会課題の解決を事業の軸に据えることは簡単ではありませんが、それを実現しているFACIL’itiの姿勢に心を動かされました。
この二つの理由から、私はこの会社で働きたい、このビジネスに携わりたいと強く思い、入社を決めました。
ユーザーとともに作り上げる快適なデジタル社会の実現
仕事におけるこだわりを教えてください。
会社としては、要望や改善点などの利用者の生の声を聞くことにこだわっています。
「デジタルインクルージョン」をビジョンとしており、デジタルサービスをすべての人にとって使いやすいものにし、快適なデジタル社会を実現するために取り組んでいます。
ソリューション開発のきっかけは、「日常生活ではスロープを付けるといったさまざまな工夫があるのに対し、Webではありませんよね?」という、フランスのインターン生の言葉から生まれました。この意見にフランス本社の代表が共感し、現在の事業が始まりました。
起業から今までの最大の壁を教えてください
入社時の業務の引継ぎに苦戦しました。
新型コロナウイルス感染症の感染が拡大し始めたことに加え、前任者が辞めてから少し期間が空いていたため、業務やスキルを引き継いでくれる方が誰もいませんでした。
また、前職ではBtoBtoCのコンシューマー向け営業だったため、現職の完全なBtoB営業は初めての経験でした。
右も左も分からない中で、模索しながら少しずつ前進してきました。
売上目標や利益だけではない「やりがい」が大きな仕事
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
会社のビジネスや提供しているサービスの成長を肌で感じられることです。
会社の規模こそ小さいですが、だからこそ自分が取り組むことで会社の顧客や売上が増えることを実感しやすいです。また、非常にフレキシブルな職場環境で働きやすく、自分からやりたいといって提案したことのほとんどをやらせていただける環境にあることも、この仕事を楽しめている理由です。
さらに、事業内容がソーシャルベンチャーで、社会的な課題をビジネスで解決していくといったコンセプトが根底にあるため、売上や利益以外のところにも、大きなやりがいを感じています。
今までの会社では、売上目標があり、利益はどれくらいかをチェックされ、目標を達成していない場合はもちろん、目標を達成していてもその上振れの原因をレポートするような社内にばかり目を向けているような環境でした。
また、会社の規模が大きくて所属する社員の人数が多ければ、自分がやったことが会社やお客様にどのように役に立っているかがわからなくなることも多かったです。
このような違いが、一番のやりがいとモチベーションになっている要因です。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
会社としては、サービス認知をもっと広めていきたいです。また、私たちの行っているような取り組み自体が日本社会でもより広まってほしいと考えています。取り組みが広まり、そこに付随して国内で私たちの会社も「ロゴを見たことある」「社名を聞いたことがある」といった状態になることが一番の理想です。
来年度には、日本でも新しいアプリケーションソリューションを出す予定があり、こちらも広めていきたいと考えています。このアプリは、現在提供しているWebサイトのソリューションがきっかけで誕生した学習障害の一つ、読字障害/ディスレクシア向けのアプリです。
読字障害/ディスレクシアの方は、人によって様々な症状があります。例えば、文字が曲がって見える方もいれば、動いて見えたり、重なって見えたりするなど。そのため、ニーズも人それぞれ異なります。
その人それぞれ異なるニーズに合わせて文字の表示をパーソナライズできるアプリを開発しています。アプリからテキストをキャプションするとキャプションしたデータを文字を認識し、認識された文字を自分が読みやすくなるようにカスタマイズしてアプリ上で表示させることができます。
例えば、活字が苦手だったり、フォントの種類によっては読みにくさを感じる場合、手書き風のフォントに変更したり、文字の大きさや文字同士の間隔、色の変更なども行えます。また、読み上げ機能も搭載しています。
今後、小学校での実証実験を予定しており、実証実験結果をもとに改良、改善を行い、本格的に日本でもリリースしていく予定です。
企業もユーザーも使いやすく、活用しやすい
御社のサービスを利用している方へのメッセージをお願いいたします
弊社のサービスを導入していただいている企業様は、顧客、ユーザーへの配慮とその取り組みが企業価値自体をも高めるといった観点で利用されています。
サービス自体は活用しやすく、企業の社会貢献にもつながるため、ぜひこれからも活用していただきたいのが弊社の想いです。
また、実際に使用されるエンドユーザーの方からは、使っていて「もっとこのようにしてほしい」、「このような機能が欲しい」など、要望があれば気軽にコンタクトしていただけたらうれしいです。
これからもユーザー視点で、より良く、使いやすいソリューションを提供していきたいと思います。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:長井早和子 氏
実践女子大学にて幼児保育を専攻。卒業後は、国内大手通信事業者、大手外資系IT企業にて営業に従事、2020年から現在のファシリティジャポンに入社。
企業情報
法人名 |
ファシリティジャポン株式会社 |
HP |
|
設立 |
2018年9月25日 |
事業内容 |
デジタルインクルージョンのためのソリューションの研究、開発、提供。 |
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