【#348】失われた30年からの脱却、AIによる営業マンの成約増加支援『AIエージェント』|代表取締役CEO 松浦 潔/取締役CTO 神谷 亮平(Shunkan AI株式会社)

Shunkan AI株式会社 代表取締役CEO 松浦 潔/取締役CTO 神谷 亮平
Shunkan AI株式会社は『AIエージェント』で営業担当者が売上獲得に結びつくための支援をしている営業系テック会社です。当社が開発したシステム開発会社向けのAIエージェントである『システムエージェント』は、他社の営業担当であれば2週間かかる要件定義書60ページ以上と画面例20画面程度を、わずか5分で作成可能な画期的システムとなっています。日本の失われた30年の打破に挑むCEO松浦潔氏と、CTOの神谷亮平氏に事業内容や今後の展望などを含めて詳しくお聞きしました。
50字程度の入力でアイデアやビジュアルを提案する『システムエージェント』
事業の内容をお聞かせください
松浦氏:Shunkan AI株式会社では、「AIエージェント」のシステム開発と販売をメインとしています。
代表的なサービスの1つに『システムエージェント』があります。このサービスは、システム開発時のシステム会社の営業担当者と発注者(お客様)とのコミュニケーションギャップを埋めるためのソフトウェアプログラムです。作成できるものとして、営業の際に必要な画面例や要件定義書などが挙げられます。
通常の営業担当者であれば、見積書の提出までに2週間ほどかかりますが、AIエージェントを使用すると5分〜10分で作成可能なのです。手間をかけず短時間で画面例や要件定義書を作成し、発注者に持っていくことで、素早くお客様と深い打ち合わせが可能になります。また、「システムエージェント」は抽象的なイメージを具体的なモノへと落とし込むことの面でも非常に優れています。
よくある例として、システムの受注が挙げられます。営業担当者と発注者との間で、お互いの業界やシステムがわからないなどの理由で、意思疎通やコミュニケーションが難しく、両者が100%のイメージを伝えたり、表現したりすることができない場合があります。具体的には、発注者は、システムを依頼したくてもシステムについて詳しくないため、依頼に必要なものがわからず、作りたいシステムをうまく表現できません。
同様に、システム会社の営業からすると、お客様の業界についての知識を100%理解できていないため、どういったシステムを欲しているかすぐに理解できないのです。それゆえに、お互いの意思疎通がニュアンスに頼ったものになってしまい、両者が満足のいくシステムを作りきれないのです。
そこで、我々のAIエージェントが間に入り、営業担当者がお客さんの作りたいシステムをヒアリングして50文字程度入力すると、AIエージェントが調査まで完了した上で要件定義書を作り上げます。それを元に話し合いをすれば、ほしいシステムについて深掘りができるのです。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
松浦氏:私がこのシステムに出会ったのは2024年6月です。とある交流会で、書類の束を60ページぐらい持って会場を歩いていている神谷と出会いました。
最初に彼を見た時は「なんか変な人がいるな」と思ったのですが、話しを聞いてみると「この60ページの要件定義書が5分でできます」というので驚きました。当時、私はAIをあまり使っていませんでしたし、財務のコンサルタントをやっていたので、AIの業界は全くの畑違いだったのです。
しかし、「この書類は30文字〜50文字ぐらいの入力でできるんですよ」と言われて、大きな衝撃を受けました。この話を聞いた時に、「もう時代は変わるな」と思い、そこから彼と様々な情報交換していくうちに「一緒にやりましょう」と口説き落として、今日に至ります。
神谷氏:次にシステム開発面での経緯についてお話いたします。私は弊社を設立する前までは、自分自身の会社を経営したり、CTOの職に就いたりしていました。それらを経験していく中で、システム開発をする際のお客様とのやり取りについて課題を感じ始めました。
お客様はシステムの提案を求めて相談にいらっしゃいますが、その多くの方がイメージが固まっていないのです。そのため私が自社のアセットを使用し、お互いにwin-winになる枠組みを考え、予算などを含め提案しても、お客様に明確なイメージが無いため、良いとも悪いとも判断ができず決まらないのです。
そして、1年程やり取りさせていただき、結局成約しない時もあり、これでは忙しく人も足りない中で経営に大きなダメージを与えると思いました。こうした状況の中で、お客様とのやり取りを効率化できるシステムがあれば、それを必要とする会社は多いでしょうし、クライアントにとっても、発注物のイメージを明確にすることのできるシステムがあれば、価値提供になると思いました。
そこで、2023年にこの『システムエージェント』の前身である『 AI要件定義 』のシステムを開発するに至ったのです。
ただスピード感を重視するだけではない。短時間でAIエージェントが作った資料で打合せをさらに深い話し合いの場にするために
仕事におけるこだわりを教えてください
松浦氏:弊社では、ミッションに「10倍スピードで勝つ瞬間を」を掲げており、スピードを重視しています。
しかし、スピードだけを重視するのではなく、素早く要件定義書を作ったことでできた時間で、お客様と深い話し合いをしてほしいと思っています。また、このAIエージェントを使えば、要件定義書などは同時に3パターン作成することも可能です。
要件定義書を1パターンだけ作って持っていくと、お客様は「他にもいいのあるんじゃないかな?」と思い決断できませんが、3パターン作成して持っていけば「どちらの提案が近いですか?」と方向を探れます。
神谷氏:ただ、こうしてAIエージェントについてお話をすると、「AIエージェントで作りあげた提案を、そのまま使わなければならないのではないか」と誤解されることがあります。
私は、このAIで出力したものをそのまま使って欲しいわけではなく、あくまでもたたき台として使ってもらいたいと思っています。具体的なイメージを出力すれば「これはいいね」「これはちょっとイメージが違うから別のものにして」などと、意見を交換してイメージを固めていくことが可能です。
「AIは間違うから怖くて使えない」という意見をよく耳にしますが、人も間違います。それこそ「何を作るか」「何をやるか」が定まっていない中の、人同士のコミュニケーションこそ、「言った、言わない」「勘違い」「言い間違い」などの間違いのオンパレードです。
そこに多くの人の貴重な時間を割いている現状があります。多くの人が数日から数週間かけて議論しても間違う仕事を、AIエージェントは数分でやってのけます。もちろん間違いは含まれますが、「関係者の皆が言いたいことを言って収束しない状態」から早期に抜け出すための方向づけが数分でできます。ここに『 AIエージェント 』を利用する価値があります。
起業から今までの最大の壁を教えてください
松浦氏:この 『AI エージェント』の概念が、なかなか理解いただけないのはある意味最大の壁です。
神谷氏:というのも私は、AIエージェントを2023年には作っていたのですが、当時はAI エージェントという言葉がなかったため、言葉がない中で説明しなければなりませんでした。そして説明したとしても、理解をしていただけなかったです。
また、2024年の夏ぐらいまでは、国内のどのメディアもほぼ取り上げていない状態でした。「AI エージェントとは何か」「生成AIやChatGPT の違いとは何か」という話から始めて、やっとAIエージェントと生成AIの違いについてご理解いただいても、そこからやっとプロダクトの紹介が始まるため、前提知識の説明に時間が取られてしまう状態だったのです。
私は自らAIエージェントを使うことで、これを使えば生産性が何百倍にもなると分かっていました。だからこそ、本当にこれを世に広めないと、また『失われた30年』が40年、50年と延長されて取り返しがつかなくなってしまうと思ったのです。
今はこうしてプロジェクトが動き、仲間ができ、そしてメディアに取り上げられ始めて、ようやくAIエージェントを売りやすくなったと実感しています。しかし本音を言えば、「なぜ広めるのに1年もかかってしまったのだろう」という思いがあります。アメリカでは、2024年は『AIエージェント』の年になると言われていました。
しかし、日本ではやっと認知されてきたというタイミングです。今の時点で既に1年も遅れています。海外の先行企業は、この1年のうちに生産性を何百倍と高めています。この世界的に大きな変化のトレンドに対し、無関心や現状維持志向でモタモタしていると、取り返しがつかないほどの競争力の差になります。だからこそ、もっと広めるために頑張らなければと思うのです。
AIエージェントを理解、共感していただける方々が我々の活力
進み続けるモチベーションは何でしょうか
松浦氏:神谷にとっても僕にとっても、モチベーションは弊社に賛同してくれる方々です。
例えばLinkedIn で多数の経営者と繋がっている方が、「AIエージェントを俺も広げる」と言い、交流会や経営者クラブなどに広めてくれたことがありました。そこから、40社の方々がうちの商材を扱いたいと言ってくださったのです。
もちろん広めていただいたことで売り上げも上がりますが、それ以上にAIエージェントを理解していただける方、共感していただける方々がいると、僕らの活力になります。もちろん買ってくれるお客さんに対しても、テンションは上がります。しかし、弊社のシステムに共感いただくことが、我々のモチベーションになるのです。
AIエージェントを知るだけではなくて、それを良いと思い、さらに広げようと行動を起こして下さる人、私はそうした人々こそが、進み続けるためのモチベーションの源だと思っています。そして、会社の仲間も大事なモチベーションです。今はまだ3人しかいませんが、進み続けるためにはなくてはならない存在と言えます。
神谷氏: 私はずっと AI をやってきた人間でしたので、AIエージェントで自分も日本に貢献できるのではないかと思いこの開発をしました。
しかし、一人ではできません。皆で声をかけあい行動することで、前へ進めているのだと思います。同じ気持ちを持っている人、新しくやりたい思いがある人、今を変えていきたい気持ちを持っている人、そんな人たちと、私は一緒に組みたいです。
そういう仲間が集まっていることが、進み続けるためのモチベーションに繋がっていると思います。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
松浦氏:現在、やりたいことを3段階で考えています。
1段階目が、仲間集めです。この事業の考えや情熱に賛同してくれる人を集めたいと思っています。2段階目が、このAIエージェントを使って、関わる人皆で稼げる状態にすることです。我々だけではなく、代理店の方も、AIエージェントを使ったお客様も稼げる状態にします。その上で、3年後にはAIエージェントで1兆円の新たな市場を作りたいと考えています。そのためにも、さまざまな企業とスクラムを組み、市場を広げたいです。
そして、3段階目は海外進出です。我々が扱っているサービスであれば、海外の壁も取り払い、海外の企業にも販売できると考えています。実は現時点でも、既にオフショアの企業や、ベトナム、インド、中国など海外の企業から問い合わせが来ています。海外からの反応は本当に早いです。
また、1月17日には、150人ほどの「AI活用」に興味を持つ感度の高い人たちを集めた交流会を開き、そこで新しいサービス「 Panacel(パナセル) 」の発表をしました。 正式リリースの前に先行してご利用可能な100名の枠に対して、 現時点で 80 人ほどのお申し込みをいただいています。
Panacel(パナセル)は、交流会などで名刺交換をした際に、OCRなどを使って名刺交換を読み込むと、相手と話した内容などについて掘り下げたパーソナルなメールが送れるサービスとなっています。名刺交換後に一斉配信で送られてくるメールは見ないけど、私だけに書いてくれたパーソナルなメールなら見るよ!という受け手のご意見も多く頂きました。また、協業の提案も作成できることから、売込みではない自然なメールが送れるテンプレートも喜んで頂けました。
▼Panacel(パナセル)の詳細はこちら
大事なのはお客さんの意見に耳を傾ける、そして自分の想いを伝え行動すること
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
松浦氏:お客様の声を、しっかり聞くことが重要です。本当にお客様の声は大事ですが、聞き方を間違えると「欲しい、あったらいいな」という言葉に惑わされることがあります。本当に、ここに気付くまでが大変でした。
さらにサービスを構築する際にも、「そのサービスはお客様がお金を払ってくれるサービスですか」と考えるのも重要だと思います。
神谷氏:私は「思い」も大切であると考えています。しっかりとした「思い」がないと、仲間も集まってきません。そして、いくら「思い」を持っていても、心の中で思っているだけでは伝わらないので、ちゃんと行動を起こすのが大事です。
今日も思いを伝え行動し続けたからこそ、こうやって記事を通してより多くの方々にお伝えできるのだと思います。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:松浦 潔氏
立教大学卒業後、会計事務所系コンサルティング会社、ITベンチャー、金融機関、世界一周を経て財務コンサルタントとして独立。2024年6月にAIエージェントに出会い、2024年10月にShunkanAI㈱を設立
起業家データ:神谷 亮平氏
東京大学大学院学際情報学府を修了。精密機器メーカーやビッグデータ分析会社で技術開発に従事。2013年より、IoTスタートアップでパターン認識・機械学習の応用開発、国立研究所で音声認識技術の研究開発に携わる。2018年、不動産スタートアップにCTOとして参画し、当社のAI技術活用製品の金融機関への導入を主導。2016年にLABBIZを設立し、2023年から現職。2024年Shunkan AI株式会社を設立。
企業情報
法人名 |
Shunkan AI株式会社 |
HP |
|
設立 |
2024年10月4日 |
事業内容 |
|
関連記事