MIRAERA株式会社 代表取締役 ​​前田 美里

ベンチャーやスタートアップ、中小企業向けの産業医サービス「産業医NEO」を展開するMIRAERA株式会社。半数以上が従業員数50人未満の企業という同社の顧客構成には、代表取締役・前田美里氏の一貫した理念が表れています。自身も産業医として積極的にカウンセリングの現場に入る前田氏に、仕事へのこだわりやモチベーションについてお聞きしました。

 

若手経営者に寄り添う産業医サービスを実現

事業の内容をお聞かせください

当社ではベンチャー・スタートアップ・中小規模の企業向けに産業医サービス「産業医NEO」を提供しています。具体的には、基本となる職場巡視や産業医面談などを通じて、従業員および経営者の方々の健康促進をサポートさせていただくサービスです。主な顧客はベンチャーやスタートアップ、中小企業の方々で、特にメンタルヘルス対策を重点的にサポートさせていただいております。

 

現状、当社のサービスをご利用いただいている半数以上は、従業員数50名に満たない企業や産業医が初専任となる企業です。ベンチャーやスタートアップ企業をメインターゲットとした当社のような産業医サービスというのは、業界全体を見渡してもかなりレアではないかと思います。

 

今の事業内容を選んだのは、私自身が2度の起業を経験して、ベンチャーやスタートアップ企業の経営者の方々に近い立場にあったことが大きな理由です。大きな重圧やストレスにさらされている経営者の方々のお気持ちがよく分かり、その経験を活かして皆さまのお役に立ちたいと考えて、産業医サービスを提供しています。

 

業界最安値でサービスを提供している理由も、できるだけコストを抑えなくてはならないという経営者の方の気持ちに寄り添うためです。

 

それぞれの企業様の状況を考慮して、本当に必要なサービスだけを無駄のないプランでご提案することで、リーズナブルな価格を実現しています。例えば、職場巡視の時間を短縮しセミナーに力を入れたり、他の産業医が入っている企業でも面談だけを請け負ったりと、企業様のニーズに応じて柔軟にプランをご提案しております。

 

本来、産業医の専任が義務付けられているのは、従業員数50名以上の企業だけです。それでも多くのベンチャーやスタートアップの企業様に当社のサービスをご利用いただけているのは、今の若い経営者の方々は従業員のメンタルヘルスへの関心が高く、今後の企業成長を考えた際に早めに産業医を専任する必要性を感じていただけているからだと思います。

 

そのような経営者の方々を応援したい一心で、ベンチャーやスタートアップ企業には、できるだけ私自身が産業医として現場に入ることにしています。同年代の方が多いため「話しやすい」「相談したくなる」という多くのお声をいただきます。

 

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

私は大学で医学部に在籍していたのですが、医師という職業に魅力を感じる一方で、病院に来る前の方々がより幸福を感じられるような社会にしたいという思いもありました。そして大きなインパクトを創造できる経営に興味を持ち、人の夢を応援したり、自己実現を支援できる事業を実現したいと考えるようになりました。

 

そのため学生時代に最初に起業したのは、個人のブランド立ち上げを支援するサービスでした。ブランド立ち上げに必要なチェック項目などをアプリ化したサービスで、スタートアップとして資金調達も経験しました。

 

結果的にその事業は1年半程で売却したのですが、その後1年ほど、次に何をすればよいのかが分からずに苦しい時期が続きます。次はもっと大きな事業をしたいという思いが強い分、どのような事業をすべきか分からなくなっていました。

 

そして、自分にある強みを改めて考えた時、ベンチャーやスタートアップをメインターゲットに定め、現在の「産業医NEO」のサービスがスタートしました。

 

「自分の特性を活かせることは何か」で見つけた、新事業への道

仕事におけるこだわりを教えてください。

シンプルですが、常に意識しているのは「出来るまでやる」ことです。あとは、人から見てどれだけみっともなくても、泥臭いと思われようとも、自分が納得できるまでやりたいとも思っています。

 

実は、私は本来かなり自分に甘い性格です。他の人から怒られたり、数字として突きつけられたりすることで、自分の頑張りが足りなかったと反省することも少なくありません。そんなときには他の経営者の方々の「当たり前レベル」を意識して、自身の行動を省みることにしています。

 

尊敬する経営者の方々にお話をお伺いすると、「当たり前」と認識している仕事量が非常に多いのです。積み重ねられた仕事の質と量の圧倒的な差を感じます。

 

つい努力を怠ってしまいそうなときはそれを思い出して、決して動きを止めないように自分を律しています。

 

起業から今までの最大の壁を教えてください

今までで一番苦しかったのは、最初の事業を売却し、今の産業医サービスを立ち上げるまでの期間です。次に何をやればいいのかが分からず、1年近く事業内容を模索し続けていました。

 

当初は「自分が何をやりたいか」を軸に考えていて、健康経営の支援や人材紹介業など、興味のある分野でさまざまなビジネスを検討しました。ですが、どれも核心をついていない気がして決断できなかったのです。迷い続けるうちに自分自身への信頼も揺らいでしまい、「自分は何をやっても駄目なんじゃないか」と思うところまで精神的に追い込まれてしまいました。

 

ですが、私は生来の負けず嫌いで「こんな負け方は自分で許せない」と考えて踏みとどまりました。そこで「自分が何をやりたいか」から「自分が役にたてることは何か」「自分の強みを活かせることは何か」に軸を移して考えることにしました。

 

産業医としてメンタルヘルス改善や従業員の方々の自己実現を支援する方法があることに気づいたとき、やっと進むべき道が見えてきました。

 

自分を信じてくれる人たちのために、必ず結果を出す

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

苦しい場面では、自分の負けず嫌いな性格に助けられていると思います。子どもの頃から「勝ちたい」という思いが何よりも強くて、勉強がうまくいかないときには、悔しくて泣きながら机に向かっていたこともありました。

 

ただ、今の自分が進み続ける一番のモチベーションが何かと聞かれると、それは支えてくれた方々に恩を返したいという思いです。

 

一番に心に浮かぶのは、シングルマザーとして私を育ててくれた母のことです。私が医学部に進学しながら起業の道を選んだときにも、母はその決断を受け入れて応援してくれました。

 

医師になったほうが安定した人生を送れるのは明らかで、母の中では心配する気持ちもあったと思います。それでも私を信じて応援してくれた母に、事業を成功させることで恩返しがしたいです。

 

また私を信じて応援してくださるのは株主の方々も同じです。起業家としての私を支えてくださる皆さんのために、必ず結果を出すと心に決めています。

 

今後やりたいことや展望をお聞かせください 

すべてのベンチャーとスタートアップ企業に産業医としてアクセスすることが、目下の目標です。具体的な数値目標としては、3年以内にベンチャー・スタートアップ向けの産業医サービスとしてトップシェアを獲ることを掲げています。

 

日本の社会は、まだまだメンタルヘルスに対してネガティブなイメージを抱いていて、そのような社会全体の風潮が、現在の自殺率の高さにつながっていると考えられます。

 

例えばアメリカなどでは、人々はもっと気軽にカウンセリングを利用しています。恋人と別れたとき、転職で環境が変わったとき、彼らはすぐに精神科医のカウンセリング削除を利用して、メンタルの不調に早期に対処しています。

 

ベンチャーやスタートアップ企業で働く人たちは、ビジネスの最前線で大きなストレスにさらされています。特に経営者の肩にかかる重圧は大きく、私は経営者の方々にこそ一度産業医の面談を受けてみてほしいと思っています。今後もそのことを訴えて、当社の産業医サービスを経営者の方々の間で広めていきたいです。

 

その次の段階としては、メンタルヘルスのケアに留まらず、キャリア支援にも事業を拡大していきたいと考えています。私がずっと事業を通してやりたいと思ってきたことが、他の人たちの夢の応援、自己実現のサポートのため、今後はより大きな枠組みでそれを達成していきたいです。

 

ここに起業したい人へのアドバスが入ります

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

起業の道は、おそらく想像の100倍、1000倍大変です。それでも、起業を考えるのは何かビジネスをやることに心惹かれるものがあるからだと思うため、興味がある人にはぜひ挑戦してほしいと思っています。

 

いきなり事業を始めるのはハードルが高いと思うのであれば、まず副業の形で自分が興味のある分野の仕事をしてみてもいいでしょう。あるいは兼業でスタートアップの事業を手伝ってみることで、起業後の働き方を少しイメージできるかもしれません。

 

自分がリスクを引き受けられる範囲で、まずは一歩踏み出してみることをおすすめします。強すぎる不安は焦りにもつながるので、少しずつ挑戦の幅を増やしていくのがベストかなと思います。

 

ベンチャーやスタートアップ企業の経営者のプレッシャーは、並大抵のものではありません。だからこそ、気軽に相談できる産業医として力になりたいと考えています。

 

当社もそのような形で若手経営者の方々の事業を応援していきたいと思っています。今後起業をお考えの方は、ぜひそのような外部のサービスも活用しながら、自分の事業をやり抜いてみてください。

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:​​前田美里 氏

鹿児島大学医学部医学科卒業、認定産業医。

2021年にブランド立ち上げ支援事業を設立し1年半で売却、2社目としてMIRAERA株式会社を設立。

産業医サービスを通した企業成長の推進を目指す。

 

企業情報

法人名

MIRAERA株式会社

HP

https://miraera.co.jp/

設立

2023年10月11日

事業内容

  • ベンチャー・スタートアップ・中小企業向け産業医サービス「産業医NEO」
  • 健康経営優良法人認定支援
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