株式会社インプル 代表取締役 西嶋 裕二

株式会社インプルは、最先端技術を使ったシステム開発を強みとするIT企業です。最近では、世界的に注目されるGX(グリーントランスフォーメーション)分野に関連した自社アプリの開発に取り組んでいます。「北海道でNo.1のシステム会社を目指す」と語る代表取締役の西嶋裕二氏に、事業内容や仕事へのこだわりを伺いました。

 

クロスプラットフォームに特化した企業

事業の内容をお聞かせください

メインの事業として、スマートフォンアプリやシステムの開発を企業から受託しています。

 

顧客は主に首都圏の大手IT企業や中堅のエンドユーザー企業です。最近の実績は、小売店舗の会員証アプリやマッチングアプリの開発など、さまざまな領域のアプリ開発を手がけています。

 

当社が得意とするのは「クロスプラットフォーム」を用いた開発です。これは、Appleの「iOS」やGoogleの「Android」といった異なるプラットフォームで同じアプリケーションを動かすためのプログラムのことを指します。

 

2011年の創業当時は、まだこうしたプログラムは存在していませんでした。システムエンジニアが2種類のOSに対応するアプリをそれぞれゼロから作っていたのです。

 

一変したのは約7年前、クロスプラットフォームに対応したフレームワーク「React Native」を使い始めてからです。Meta社(旧Facebook社)が2015年に開発したこのフレームワークを使ったことでエンジニアの作業効率が上がり、短納期で高品質のアプリが開発できるようになりました。

 

当社はGoogle社の「Flatter」にも対応し、現在はクロスプラットフォーム開発を専門としています。従業員は170人ほどで、この分野に特化し、100人以上の規模で展開している会社はなかなかないと思います。

 

お客さまにとって価値あるサービスを提供するため、常に新しい技術を取り入れてきた結果です。

 

直近では、自社開発アプリ「エコプル」をリリース予定だそうですね?

現在リリースに向けて準備を進めており、これは寒冷地のご家庭向けのアプリで、家ごとに最適な暖房の設定方法を提案し、CO2排出量の削減を目指すものです。

 

暖房の温度設定といわれても、何となくの感覚に頼っている人がほとんどだと思います。しかし、各家庭の最適温度は家の断熱性能やその日の気温、日照条件、利用する時間帯などによって変わります。

 

断熱性能については、住まいに関する簡単な質問に答えるだけでおおよその等級を推定するアルゴリズムを北海道科学大学と共同で開発し、実装しています。

 

当社が脱炭素のテーマに注力する背景には、グリーンテックへの投資熱の高まりがあります。当社が本社を置く北海道札幌市は令和6年6月、脱炭素を進めるGX(グリーントランスフォーメーション)分野への投資を積極的に呼び込む「CX金融・資産運用特区」に指定されました。

 

そこで当社は、地元のソフトウェア会社として新たな分野へ挑戦したいと思ったのです。

 

ビジネスモデルとしては、アプリを採用した地方自治体が住民に無料で提供する形を取っています。道内に179ある市町村を対象に、徐々にヒアリングを進めている状態です。

 

いずれはカナダ・バンクーバーやアメリカ・ニューヨーク、ドイツ・フランクフルトといった北半球の寒冷地までマーケットを広げたいと考えています。

 

寒冷地では、1年間のエネルギーコストの中で冬の暖房費が最も高くつきます。かといって、省エネのために暖房を我慢して寒い思いをするのは違うでしょう。それならエコ家電に変えようと思っても、例えばボイラーを熱伝導の良いものに交換すると数十万〜数百万の費用が必要になってしまいます。

 

その点エコプルは、アプリで簡単に、無料で省エネに取り組めます。地球にも人間にも優しく、過剰な投資もいらない。これが一番の特徴です。

 

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

2011年に当社を起業するまでITベンチャー4社を渡り歩き、プログラマーやSEの仕事をしていました。

 

起業のきっかけは、人との縁が大きかったです。最後に勤めた企業では銀行や証券会社向けにガラケーのアプリを作っていました。その中でお客さまの一人から「君が独立するなら仕事を相談したい」とのお話をいただいたのです。

 

取引先の企業が個人との契約はできなかったため、始めから私一人で会社を立ち上げました。起業から5〜6年は20人ほどの小さな会社でしたが、13年経った今は170人まで増えました。

 

会社が大きくなったのには、一つのきっかけがありました。起業してからの数年間は、私は社長でありながらプログラマーとしても手を動かしていました。私自身はソフトウェアを作ることが大好きなので楽しかった一方、会社は成長しませんでした。というのも私がプレイヤーとして動く時間が多く、会社の宣伝や採用活動に十分な時間が割けなかったからです。

 

「このままだと大した仕事はできない」、そう思っていた頃、大きなプロジェクトを受注しました。採用に力を入れないと回らない時期と重なり、7年目から社長業に専念し、それ以降は営業や採用に注力できるようになり、会社の規模も大きくなっていきました。

 

時代の最先端を取り入れる

仕事におけるこだわりを教えてください

受託開発でも自社開発でも、常に新しい取り組みにチャレンジすることを大事にしています。

 

GXや脱炭素といったホットなテーマに挑む「エコプル」はもちろん、2021年にリリースした小売事業者向けの会員証アプリ「OneStack」も時代のニーズを取り入れて開発しました。コロナ禍の当時、小売事業者の経営が厳しい中でもお客さまに貢献したいと考え、作ったものです。

 

こうした気持ちを持ち続けられるのは、ベンチャーでの経験が大きいと思います。4社とも新しい事業に果敢にチャレンジする社風で、最初の企業に勤めた頃はインターネット回線がほとんど普及していませんでしたが、そんな中でもネットで電話ができるアプリを作っていたのです。その気概を、当社も受け継いでいます。

 

起業から今までの最大の壁を教えてください

今も直面している課題として、人材不足があります。会社を大きくする上で増員は必須です。優秀な人材をどう獲得するかは、会社の最大の課題です。

 

どんな人材を求めていますか?

新しいトレンドを進んでキャッチアップできるエンジニアです。当社の社員の9割以上は技術職です。当社が強みとする「React Native」や「Flutter」はもちろん、今なら生成AIのCoPilotを使いこなせるなど、新しい開発ができる人材を求めています。

 

会社とともに自分も成長し続ける「ベンチャーマインド」を持っていることも重要です。向上心の高い方と、ぜひ一緒に働きたいと思っています。

 

▼詳細はこちらから。

https://recruit.impl.co.jp/

 

北海道No.1のIT起業を目指す

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

目標に向かって頑張り、それを一つ一つ達成することでしょうか。今は契約が取れたときの喜びが一番のモチベーションです。

 

企業でSEとして勤めている頃から、営業と一緒にお客さまと商談するのが好きでした。クライアントによって内容も規模も予算もさまざまで、コンペで競合に負けて悔しい思いをするときもありますが、次はどうしたら契約が取れるかを考えるのが面白いです。

 

その気持ちは今も昔も変わりません。経営者はつまるところ、競争に勝つことが好きな人間なんだと思います。

 

今後やりたいことや展望をお聞かせください 

独立したソフトウェア会社の中で、北海道No.1を目指しています。一番の物差しはさまざまありますが、当社は純粋に利益でトップを取りたいです。当社より規模が大きな会社もございますが、利益率の高さを武器に勝負ができると考えています。

 

目標としては3年以内に北海道No.1を取りたいです。その後は、地方に本社を置く企業の中で全国トップを目指そうと考えています。

 

会社の規模が大きくなると「本社を東京に移して上場を」と考える経営者も多いかと思いますが、私はそうは考えません。顧客がいる都合で東京に支社は設けていますが、本社は地方に置くと決めています。

 

というのも、今までデジタルやITの恩恵を十分に受けてこなかった地方にこそ、デジタル分野での伸びしろを感じるからです。

 

競争する上で重要なのは「どの舞台で一番を目指すのか」、その意味でも、今後も事業に有利な地方を選んで展開していきます。

 

この目標を実現する上で最も大事なのは、優秀な人材を多く獲得することです。他社より一人でも多くの人材が獲得できればうれしいですし、負けていたらもっと頑張らなくては、と力が入ります。

 

起業に失敗してもプラス評価

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

少しでも起業に興味があるなら、即行動してほしいと思います。

 

私は37歳で起業しました。当時はそこまで遅いスタートではなかったかもしれませんが、今は新卒で就職しないで起業する人も増え、創業資金を無担保で貸してくれる制度も整っていると聞きます。

 

起業へのハードルが下がっている上に、私たちの世代には少なからず存在した「起業家=出世コースから外れた人」といったイメージもほとんどありません。

 

仮に失敗したとしても、起業経験があることで人材としての価値は高まります。大手企業に入社できるのは新卒だけの時代もありましたが、今は違います。失敗した経験も含めて、企業は評価してくれるのです。

 

どう転んでもプラスになるのですから、それを生かさない手はないでしょう。恐れずにチャレンジしてほしいと思います。

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:西嶋 裕二氏

立命館大学理工学部中退、株式会社ソフトフロントホールディングス、株式会社コネクトテクノロジーズ(現:株式会社ジー・スリーホールディングス)にて金融機関向けモバイルアプリ開発事業に携わる。2011年株式会社インプルを設立し、代表取締役CEOに就任。2022年9月より一般社団法人北海道モバイルコンテンツ・ビジネス協議会会長に就任。

 

企業情報

法人名

株式会社インプル

HP

https://www.impl.co.jp/

設立

2011年6月23日

事業内容

アプリ・WEB受託開発事業

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