
Co-Creations株式会社 代表取締役 茂木 健太
Co-Creations株式会社は、企業合宿を中心とした組織開発コンサルティングとコーチングを提供する企業です。日常から離れて自然を感じられる非日常の環境での「合宿」を中心に、未来への勢いと組織文化を創るサポートをしています。代表取締役の茂木健太氏に、事業内容や今後の展望なども含めて詳しくお聞きしました。
組織の成長を加速させる「合宿」のアプローチ
事業の内容をお聞かせください
当社は、主にベンチャー企業向けに組織開発コンサルティングとコーチングを行っています。特に2022年に立ち上げた「合宿人(がっしゅくじん)」という、経営合宿や全社合宿を中心とした組織づくりに注力しています。
合宿は、山や海など豊かな自然が感じられる非日常の環境で、主に1泊2日かけて行います。大まかな内容としては、まずお互いの理解を深めるため、個人の強みや価値観の共有を、これまでの生き方や仕事のストーリーとして語り合います。
次に、創業からこれまでの会社の歴史を当時を知る人が語り、自分達がこれまで大事にしてきた価値観を抽出し、事業や組織の理想の未来像を描いていきます。そして後半は、描いた未来を実現するために必要なチャレンジテーマを出し、テーマごとに議論し、具体的なアクションプランを策定し、日常での実践に繋げます。
一般的な企業研修と大きく異なるのは、議論や対話のセッション以外の時間も含めた全体設計にあります。食事の時間や夜の懇親会、自然を体験する時間など、セッション以外の「余白の時間」も、目的達成のための重要な要素として捉えています。
特徴的なのは、夜の焚き火を囲んだセッションです。日中とは異なる雰囲気でみんなで火を囲むことで本音の自己開示の連鎖が起こることも少なくありません。また場合によっては、食事づくりもチームビルディングの一環として活用することも多々あります。
通常の研修では得られない非日常の体験を通じて、より深い相互理解と理想の未来を創っていくのが、当社の合宿です。
合宿の具体的な内容を教えてください
当社の合宿は、大きく4つのステップで構成されています。
まず、参加者一人ひとりの人生について深く語り合います。参加者には事前に、幼少期から学生時代、社会人になってからの自分の強みや価値観が発揮された瞬間を洗い出してもらい、10分程度のストーリーとして語ってもらいます。その後、聴き手から、その人が自分らしく前進していくためのポジティブフィードバックをしていきます。
次に、創業前からこれまでの会社の歴史ストーリーを語っていきます。創業者を中心に、創業の背景や想い、成功体験だけでなく、ハードシングスの危機といった苦労した経験など、会社の歴史から、自分たちの根底に変わらずに流れるDNAのようなものを掘り起こしていきます。
後からジョインしたメンバーの視点からのストーリーを重ねて語り合っていくと、全員で会社の歴史を追体験する感覚となります。これにより、「今、このメンバーで合宿ができていることが奇跡である」ということに気づき、結束が強まっていきます。
その後は、我々が心から実現したいと思える理想の未来を描いていきます。リーダーが理想の未来像を語り、「未来年表」と言うワークで、年表形式で3年〜5年後の理想の姿を付箋に書き出していきます。
また、理想の未来を描くだけでなく、現在の地点から理想の未来にワープするような体感ワークを通じて、全員でその未来を具体的にイメージしていきます。空間全体を使って体を動かしながら、理想の未来をみんなで体感するのが特徴です。
いくらいい時間を過して熱量が高まっても、日常の業務に忙殺されるうちにすぐに冷めてしまいます。そのため、理想の未来を描きっぱなしにせず、合宿中の熱いうちに実現に向けたチャレンジを創出して話し合っていきます。
このように、これまで10年以上に渡って積み重ねてきた合宿から、基本の流れとワークの型があり、お客様ごとの課題感ややりたいことに合わせてカスタマイズする形でご提供しています。
最近では、ミッション・ビジョン・バリューや中期経営計画などのアウトプットを、合宿を起点に策定して全社で共有したいという要望もいただきます。通常数ヶ月かけて行う策定プロセスの最初に、エッセンスを抽出するために経営合宿をやることもあれば、策定されたものを全社合宿でみんなで腹落ちして自分事化してチャレンジを創出するために合宿をやることもあります。
加えて、合宿で生まれた気づきやアクションを確実に実践につなげるため、合宿の1週間後位にSlackなどで個人の振り返りをシェアし、コメントし合っています。また、1〜2ヶ月後には「追い焚きセッション」と名付けた1〜2時間のフォローアップミーティングを開催し、理想の未来に向けたチャレンジが熱量高く持続できるようサポートしています。
参加した方はどのような変化がありますか?
変化は組織開発で使われる、「関係の質」「思考の質」「行動の質」「結果の質」という成功の循環モデルで見ています。
まず、「関係の質」では、メンバー同士がお互いの人となりを深く理解することで、率直な意見交換ができるようになります。相手を思いやりながらも、本音で議論し合える関係性が築かれていきます。
「思考の質」については、日々目の前の業務を淡々とこなしていた社員が、長期的な視点で新しいチャレンジを提案したり、革新的なアイデアを気軽に出せるようになったりなどの変化が見られます。
具体的な事例として、1年間で2回の全社合宿を実施したスタートアップ企業では、合宿で若手メンバーを中心に熱量と結束が強まり、1年後には売上が500%以上に成長するという驚くほどの成果が出ている会社もあります。人員を増やすことなくこのような大きな成果を出せたことからも、合宿が組織の成長を加速させる重要な機会となっていることを実感しています。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
2012年に、株式会社野村総合研究所の社内ベンチャーのチームに参画し、組織開発コンサルティングを始めた際の合宿経験がきっかけでした。仙台での合宿に誘われ、震災ボランティアとチームでビジョンを描く合宿に参加し、そこで「こんな楽しい仕事があるんだ」と衝撃を受けました。
その後、独立を経て組織開発コンサルタントとして、ミッションやビジョン、バリューの策定や、リーダー育成プログラムなど、ここぞという局面で合宿をやってきました。
転機となったのは、2020年からのコロナ禍です。すべての仕事がオンラインで可能になった中、好きな仕事をやっているはずなのにオンラインのミーティングが続いている状況に、物足りなさを感じていました。そんな中で、これまでたまに実施していた「合宿」こそが、最も好きで、価値を出してきた仕事だったことに気づいたのです。
さらに、コロナ禍では合宿どころかリアルで集まる機会がなくなっていく状況を目の当たりにし、「このままでは、合宿がなくなってしまう」といった使命感が立ち上がり、今までたまに合宿をやっていたのが、これからは合宿をメインに振り切っていこうと決意したのです。
理想の未来に向けて何を話すのが最もインパクトがあるか?の選択の連続
仕事におけるこだわりを教えてください
「その場から創る」これが私のこだわりです。特に合宿は、1泊2日と時間が限られています。その限られた時間の中で、いかに最大限のインパクトを生み出すかにこだわっています。
十分な時間があるように思える合宿も、実際に始まってみるとあっという間に時は過ぎていきます。だからこそ、決まりきったプログラムを時間通りにこなすのではなく、瞬間瞬間で、何をするのが未来からみて最もインパクトがあるか?という問いが常にあり、状況に合わせて投げ込んでいる感覚です。
例えば、AさんとBさんが水面下で対立していることに気づいたり、チーム全体が停滞感に包まれ、前に進めようにも進み難いといったことが見えてきたりします。そのような時は、予定通りの進行にこだわるのではなく、「では今、2人で話し合いましょう」といったように、その瞬間に最もインパクトのある選択をしていくことを大切にしています。
そうやって合宿中に新たなワークが生まれることも多々あります。
起業から今までの最大の壁を教えてください
コロナ禍での合宿文化づくりの立ち上げでした。
私が合宿文化を創り拡げようと決意し活動を始めたのは、コロナ禍の最中でした。合宿文化が失われていくかもしれない危機感から始めたのですが、想像以上に苦戦を強いられました。
ひたすらSNSで情報発信を続け「合宿いいですね」といった言葉をいただくものの、実際に「では合宿をやりたいです」という企業がなかなか増えない時期が続きました。
しかし、その中でも少しずつ合宿の依頼をいただくことが増えていき、昨年には日経新聞でスタートアップの合宿が増加していることに取材をいただくなど、徐々に合宿の波が起きていきました。しかし、まだまだ私が思い描く「合宿文化」の実現には及びません。その意味では今でも常に壁を感じています。
最も好きな「合宿」という仕事への揺るぎない情熱
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
私にとって合宿は最も好きで得意な仕事であり、合宿をやること自体が最大のモチベーションです。実際、合宿を実施すればするほど、もっと合宿に携わりたい気持ちが強くなっていきます。
特に大きな力となっているのは、合宿終了時の参加者の姿です。未来に向かって進む覚悟が決まった瞬間の皆さんのキラキラした表情は、強く印象に残っています。
また、合宿を実施した企業がその後事業を大きく伸ばしたり、カルチャーフィットした採用が順調に進んだり、会社の活動が活発になって企業文化が充実していく。そうした成果を目の当たりにすると、「合宿が企業の成長の一躍を担えている」ことへの喜びを感じます。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
まず直近の目標として、これまで個社単位で実施してきた合宿を、複数のチームや会社による合同合宿と言う形でやっていきたいと考えています。3〜5社ほどが大きな施設に集まり、昼間は各社で個別に経営合宿を行い、食事や夜の時間、時には日中のセッションでも交流を図ります。
次に「合宿人」の新しい展開を考えています。各企業の合宿幹事による、他社の合宿づくりを支援する仕組みを作ります。シリーズBの合宿を企画した経験のある人が、アーリーフェーズの企業をサポートするなど、合宿を起点とした「恩返し」の循環を作り出すことで、企業文化の相互触発を促進します。
加えて、「合宿」という日本独自の文化をグローバルに広げていきます。海外のチームが日本で古民家に宿泊や日本文化を体験を通じて、チームのモメンタムとカルチャーを築いていく。そうした異文化交流の場としても「合宿」を展開していきたいと考えています。
最後に、スタートアップ企業における「資金調達後の合宿」を一つの文化として確立することも目指しています。すでに多くの企業がリピートして実施してくださっており、VCのとも連携を始めています。
自分が本当にやりたいことを研ぎ澄ませる
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
自分は何をすることが最も好きで得意なのか?この自分にとってコアとなるものを探求し続けてください。
成功するかどうか、トレンドがどうかなどの環境的な要因はたくさんありますが、自分が本当にやりたいことを研ぎ澄ませていくことが大切です。
私は2018年に独立し、2022年に「合宿文化を作る」という旗を掲げました。さまざまな仕事をする中で、合宿が「最も好きで得意なこと」と気づき、どうせ一生やり続けるだろうと感じました。大変なこともありますが、「好きなこと」をしているからこそ、困難を乗り越える力になるのです。
貴社のサービスに興味がある企業へのメッセージをお願いします
すでに合宿を実施されている企業の方には、ぜひ合宿を続けて練度を高めていっていただけたらと思います。続けていくとマンネリ化していくことも多いので、変化や勢いをつくりたい時には呼んでいただけたらと思います。
まだ合宿を実施されていないチームには、組織課題を解決するための手段の1つとして、合宿をやってみることも考えていただきたいと思います。最初から宿泊が伴う合宿が難しい場合は、1日でも、金曜日の夕方でも「今の組織の状況についてどう思うか?」の課題感を共有することから始めてみてください。
小さな一歩からでも、組織を変えていくきっかけとして、合宿という選択肢を検討していただければと思います。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:茂木健太氏
(株)野村総合研究所でITコンサルタント・組織開発コンサルタントとして活動後、Ideal Leaders(株)の共同創業を経て、2018年 Co-Creations(株)を創業、経営者やリーダー向けにコーチングと組織開発コンサルティングを提供。 その後SaaSスタートアップ企業のCHRO(人事責任者)を兼務。2022年「合宿文化を創る」合宿人(がっしゅくじん)を立ち上げる。
企業情報
法人名 |
Co-Creations株式会社 |
HP |
|
設立 |
2018年4月3日 |
事業内容 |
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