【#362】唇にも紫外線ケアを。日韓発の企業が「環境に優しい日焼け止め」で世界を目指す｜代表取締役　菊池 由貴（株式会社Pure et Pro）

株式会社Pure et Pro　代表取締役　菊池 由貴

株式会社Pure et Proは日本と韓国に事業所を置く、化粧品の製造・販売を行う企業です。珊瑚礁を破壊する成分をほとんど含まない、環境に配慮したリップ専用の日焼け止めや、固形のフェイス・ボディ用の日焼けどめなどの製造・販売をしています。「グローバルに活躍するのが夢だった」と話す代表取締役の菊池由貴氏に、起業のきっかけや今後の展望などを伺いました。

紫外線吸収剤フリーの日焼け止めを韓国で製造

事業の内容をお聞かせください

当社は港区に本社を置く、化粧品の製造・販売、輸入代行を行う会社です。韓国にも現地法人を設立し、現地の工場で製造しており、、日本の販売許可を得て卸販売をメインにしています。

現在販売している商品は2種類の日焼け止めで、リップ専用の「POHO＋ UVリップヴァーム」と、顔・体用のスティックタイプ「POHO＋UVスティック」を展開しています。

「唇に日焼け止めが必要なの？」と、疑問を持たれる方も多いかと思います。しかし、唇は皮膚ではなく口の中の粘膜の性質も持っており、そこに直接紫外線が当たっているのです。きちんとケアをしないと「乾きやすい」「荒れやすい」といった症状だけでなく、唇が色素沈着を起こして黒ずんでしまう場合もあります。

すでに市販されている日焼け止めリップの多くがSPF30程度であるのに対し、当社の商品はSPF50+/PA++++と高めです。そのため紫外線からしっかり唇を守ってくれます。

メイク後の塗り直しにも→お顔の隅々まで塗布できます。医師・薬剤師監修の元、ヒアルロン酸やビタミンEなどの美容成分もたっぷり配合しております。韓国の工場で作ることで→韓国の工場と打合せを重ね、全て自社対応することで、販売価格も抑えております。

そして、こうした当社の商品には、紫外線防止成分の一つである紫外線吸収剤がほとんど含まれていません。スティックタイプのものでは、紫外線吸収剤フリーを実現しました。

この成分は海の中の珊瑚礁を破壊するといわれ、それによって海洋生物にも悪影響を与えてしまいます。ハワイやモルディブではこの成分が入った日焼け止めの持ち込みが禁止されているほど世界では問題視されていますが、国内ではまだ多くの商品に含まれていることが現状です。

今年は大阪万博が開催される年でもあります。地球環境の変化は、それに影響を受けた魚を食べている私たち自身にも大きく関わる問題です。日本も今こそ、環境を大切にするグローバルの潮流に乗るべきでしょう。

当社の商品は、提携先のクリニックや、薬局の店舗で購入できるほか、自社サイトでも購入可能です。

ゴルフ場にも置かせていただいており、直射日光の下で長時間にわたって紫外線ダメージを受けがちなゴルファーの方には、男女問わず多くの方に手に取っていただいています。

事業を始めた経緯をお伺いできますか？

学生時代から英語が好きで「将来はグローバルな企業で働きたい」という思いを持ちつつ、将来的には起業の選択肢もあると考えていました。

前職では大手IT企業の社長秘書を務め、仕事のやり方から人脈形成まで多くの学びを得ながら、起業への準備をさせてもらいました。

そんな折にコロナ禍に。将来について思い悩んでいたとき、この状況が落ち着いたらずっとしたいと思っていた海外留学に行こうと決めました。これは思いがけないことでしたが、留学先でルームメイトと話しているうちに、起業のヒントも見つけました。

「コロナが終わったら、美容に対する意識がより高まる」「マスクを外した後には紫外線を気にする時期が必ず来る」とスクールで出会った各国の友人と話していく中で、世界は一歩先を見ていると実感したのです。

そこで外資系企業で働く段階をスキップしてすぐに起業しようと思い直し、2023年3月に当社を立ち上げました。

ただ実を言うと、起業する前の段階で明確な事業プランがあるわけではありませんでした。もちろん化粧品に興味はありましたが、すでにたくさんの競合他社がいますし、そこで勝負できる未来が描けなかったのです。

ここで助けになったのが、留学でできた人脈です。各国の友人にアドバイスをもらい、韓国の工場に直接足を運んで契約を取ることができました。

そして具体的に何を売ろうか話し合う中で出てきたのが、「環境に優しい日焼け止め」です。エコフレンドリーは当時のトレンドでもありましたし、数多くの資料を読み込むうちに、グローバル市場で一層伸びていく分野であるとも感じました。

ターゲットを絞り、成約率8割越え

仕事におけるこだわりを教えてください。

どんなときでも人として正直に、誠実に仕事がしたいと思っています。

これまでも人と人とのつながりにとても感謝する部分が多かったので、よそで悪く言われるやり方は絶対にしないと決めています。この考えは資金面でも徹底しており、融資も銀行を通したり、投資家とも定例ミーティングを重ねて手堅くやっています。

これは当社の従業員にも事あるごとに話し、共有している考え方です。

起業から今までの最大の壁を教えてください

起業から1年間は人生で一番大変でした。当初は起業から3カ月で販売・収益化を見込んでいましたが、実際は1年がかり。もちろんその間は収入もありません。

特に大変だったのが、化粧品の開発です。

商品に違法な成分が入っていないか、本当に小さな単位まで一つひとつ成分をチェックする必要があるので、日々たくさんのサンプルと向き合っていました。ルールや制度を調べたり、当社がある港区の産業課に相談に行ったりと、勉強漬けの毎日です。

また、化粧品を自社で製造・販売する際に必要な「化粧品製造販売許可」を得るのにも時間がかかりました。初期は代理業者を挟んでおりましたが、将来を見越しこの許可の取得に尽力しました。この許可が取れたことで、製造から販売までをスムーズに行えるようになりました。

時間もお金もない中での1年間でしたが、会社の基盤を整える大切な時期だったと思います。

こうして無事に商品ができた後には、次の課題として販売先の確保が浮かんできます。幸いにもそれまで広告代理店とIT企業で働いてきて、たくさんの取引先とつながりを持ってたので、まずはそこに売り込みに行きました。

当初から企業間で取引するBtoBビジネスとして展開しましたが、この判断は正解だったと思います。

消費者と取引するBtoCビジネスでは、積極的に広告マーケティングを仕掛けなければなりません。ただ、最初は資金も限られますし、費用対効果が見合っていないと感じたのです。ターゲットを企業に定めた結果、アポイントが取れた店舗さまの成約率は約8割にのぼりました。

「グローバルに活躍する」夢を追い続ける

進み続けるモチベーションは何でしょうか？

「世界で活躍したい」と学生の頃からずっと思い描いてきたので、この夢が一番のモチベーションです。

前職の社長秘書時代にこの思いがより強くなりました。社長はとにかく行動力があり、「言ったことは即行動」を体現する人でした。その姿が本当にかっこよかったのです。

ほかにもグローバルに活躍する素晴らしい経営者の方々と出会え、「私もこうなりたい」と強く憧れを抱きました。

今後やりたいことや展望をお聞かせください　

当社の商品を日本中に広げるのはもちろんですが、これからも世界を見据えて商品を展開していきます。国内では最近は沖縄に注力しております。沖縄は年中紫外線が強い且つ海に囲まれた地域なので、人と自然との協和は欠かせないと考えております。

沖縄JTB様とお仕事をさせていただいたり、沖縄限定パッケージの商品をつくり、沖縄Likesというサイトに掲載もスタートしました。

2024年10月末には、ドバイで開かれた世界最大級の美容展示会「Beautyworld Middle East 2024」に出展しました。

世界中から2000社が出展し7万人以上の来場者を記録した今回の展示会には、日本から約10社が参加しましたが、美容大国である韓国で生産している当社の商品には非常に多くのお客さまが興味を持ってくださいました。今は各国とアポイントの調整をしている状態です。

問い合わせがあったのは、インドネシアやフィリピン、ベトナム、トルコなど。意外なところではイラクからもお声がかかりました。これらのお話をすべてものにし、今は30カ国との取引を目指しています。

その次のステップとして商品ラインナップも充実させながら、いずれは日本と韓国を代表する化粧品メーカーになりたいと思っています。

Beautyworld Middle East 2024にて

いつかしたいなら、今すぐ起業すべき

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

正直、もっと早く起業すればよかったと後悔することがあります。 

会社員の安定した給料がなくなることや資金面での不安は尽きないと思いますが、東京都に限ればベンチャー向けの融資や補助金などの制度がそろっています。行動すれば、なんとかなります。いつか起業したいと思っているなら、今すぐするべきです。

そこで重要になるのが、体力とメンタルです。

会社が回るまではどうしても忙しくなりますし、たくさんの人と関わる機会も増えるでしょう。そうした環境に負けない体力と強いメンタルは必要ですが、そこをクリアし、周りの人を大切にする気持ちを持ち続けられれば、困ったときにはきっと誰かがアドバイスをくれます。

本当に落ち込むこともあるかと思いますが、せっかく起業したのだから、目標に向かって頑張ってほしいと思います。

本日は貴重なお話をありがとうございました！

起業家データ：菊池 由貴氏

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