
株式会社Your Verse 代表取締役 長谷川 朋弥
人生の方向性が見えたとき、心震える瞬間が訪れます。「この瞬間は何度立ち会っても格別」と語るのは、株式会社Your Verse代表取締役の長谷川朋弥氏です。個人や企業の価値を見いだす支援をする会社を立ち上げたきっかけや、仕事へのこだわりについて伺いました。
自分を理解し、前に進むためのサポート
事業の内容をお聞かせください
弊社は「あなたの物語を紡ぎ、世界を紡ぐ、心震える瞬間を。」をミッションに、人生の意味や会社の存在意義について悩む個人・法人のお客さまに対し、その価値を見つけて一歩踏みだすためのサポートをしています。
個人のお客さまは、中学生から80代の方まで幅広い年齢層にわたります。特に就職や起業など人生の節目でのご利用が多く、例えば中学生だと「親から医者になるよう言われて私立の中高一貫校に入ったけれど、このまま進路を決めていいのかわからない」「勉強のモチベーションも上がらない」といった悩みを打ち明けられることもあります。
我々が個人のお客さまに提供しているのは、1対1の対話を通して自己理解を深めるための支援です。人生にはさまざまな選択肢がありますが、自分が進む道を自分で決断できると、その後のモチベーションも格段に高まります。
法人のお客さまは、ベンチャー起業から数千人規模の上場企業までさまざまですが、共通する悩みは「目指す会社の姿が見えない」ことです。
例えば、子会社の社長に就任した方からは「親会社の方向性を社員にどう伝えるべきかわからない」といったご相談もいただきます。このようなお悩みに対しては、経営者個人の思いと会社の存在意義を重ね合わせながら、具体的な目標を一緒に設定します。必要に応じて経営コンサルティング業務、人材育成、社員研修なども行います。
弊社が関わった結果として「従業員のエンゲージメントが高くなった」との声を数多くいただきます。「自分が会社ですべきことがわかった」「会社にいる意味がわかった」と話す社員が増え、副次的ですが離職防止にもつながっています。弊社が支援に入った後、売上が約2.5倍になった例もあります。
お客さまは紹介がほとんどですが、HPや口コミを通じてお問い合わせくださる方もいます。
ここ5年ほどで相談件数が急増しているのは、生成AIの影響が大きいと思います。大手企業にいれば安泰の時代も終わりました。AIの利用が進む中、「自分たちの会社は何ができるのか」を経営者が考え直す機会が増えたのだと思います。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
大学生の頃に経験したベトナムでのインターンが、起業の大きなきっかけとなりました。
高校までは野球一筋でしたが、大学2年のとき「野球と同じように情熱を注げるものがほしい」と思い立ち、ある起業家が立ち上げた海外でビジネスを経験する2週間のプログラムに参加しました。
そのプログラムでは、現地のベトナム人はもちろん、日本企業の方、外資系コンサルティングファームで働く方などたくさんの人と交流する機会がありました。そこで感じたのは、熱い思いを持って働く人の熱量やバイタリティです。皆さん本当に楽しそうに働き、仕事に熱中している方ばかりでした。
このプログラムを企画した起業家も「日本の若者を世界に飛び立たせる」との熱意を持っており、自分もこんな風になりたいと強く思いました。
そんな思いを胸に、いざ日本で就職してみると、情熱を持って働く人はそう多くはいません。独立系コンサルティング会社に就職し、多くの大企業のクライアントを支援しましたが、高い給料をもらって家族を養うためにやっているんだと、自分をなかば納得させて我慢するように働く人も目にしたこともあります。その違和感が心に深く残り、自分の思いに蓋をしたまま働くしかない日本社会に対し、危機感を覚えるようになりました。
折しもその時期は、父親がうつになり、弟が自死するといった家族の不幸も重なりました。自分を偽って仕事をして、成し遂げたい思いが消えてモヤモヤする状態のことを、我々は「精神的飢餓」と表現します。この状態が続くと、うつや自殺につながってしまう恐れがあるのです。
この大きな社会問題を解決するには、一人ひとりが心から震えるものを見つけ出すことが必要だと痛感し、2019年にこの事業をスタートしました。
どんな人生にも、必ず意味がある
仕事におけるこだわりを教えてください。
「どんな仕事にも、どんな人生にも意味がある」。このことを肯定し続けることです。すでに存在しているものには、必ず意味があります。
周りからの評価は関係なく、誰に何を言われようが、今まで生きてきたことで周りに影響を与えています。たとえ本人が悲観していても、我々はその意味を解き明かすまで決して諦めません。
人生や仕事に意味を見いだすことは、いきいきと働くことにつながります。このように輝いて生きられるのは決して一部の成功者だけではありません。最低賃金の仕事に就いていようが、その仕事に納得感を持つ人もいます。「私たちが社会を支えている」との実感があることで、そこから誇りが生まれるのだと思います。
理念や思いが合致すれば、誰でもいきいきと輝ける。これは、私が事業を5年間続けてきた中で強く感じていることです。
起業から今までの最大の壁を教えてください
一度、メンバーを解散したことがあります。
一時期は20人ほど集まっていましたが、資金面で非常に苦労し、翌月にはキャッシュアウトするところまで追い詰められ、残った10人のメンバーに解散を告げました。
「私財を投じてもいい」と言ってくれたメンバーもいましたが、それだけでは状況は変わらない、私の心は持たないと感じました。意味のある事業をしながら収益を上げることの難しさを痛感しました。
この危機をきっかけに、YourVerseの価値をもう一度捉え直すことにしました。
お客さまは何を価値として感じ、我々は何が提供できるのか。その思いを改めて言語化し、プログラムとして整理し直しました。立て直しに2年ほどかかりましたが、その後は収益が着実に伸びていきました。当社の価値を再認識する大切な時期だったと思います。
心震える瞬間に立ち会える幸せ
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
私が続けなければ誰がやるのか、という使命感があります。
元々私は、素晴らしいリーダーを支えるNo.2のポジションに憧れていました。一人で起業するつもりはなかったのですが、自分がやりたいことを実現している起業家も、企業もありませんでした。じゃあ、自分がやるしかないと考えました。
メンバー解散の危機に直面したとき、いっそ会社を潰してしまう手もありました。でもそうしなかったのは、私が会社を無くしたら、この事業をやり続ける人がいなくなると思ったからです。まだまだ小さな会社ですが、助けを求めてきてくれる人がいる。その方たちの逃げ場をなくすことは絶対に避けたい。この強い思いがあったから、頑張ることができました。
事業を続ける醍醐味もあります。お客さまと一対一、もしくは数人単位でセッションを続けるうちに、過去と今がつながる最高の瞬間が訪れるのです。
「うちの会社のキーワードはこれ」「これを成し遂げるために会社がある」「私がやりたいのはこれだ」といった言葉があふれ、感極まって泣き出す人もいれば、明るい笑顔になる人もいます。心が震えた瞬間のことを我々は「収穫」と呼んでいます。収穫の瞬間に立ち会えたときは、やってきて良かったと心から思えます。この瞬間の感覚は半端ないですし、病みつきになります。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
今はメンバー6人がお客さまと個別セッションを組むのを基本としていますが、この形だけでできることには限界があると感じています。一度相談にきた方がまた悩みを抱えたとき、ご自身で振り返りができるアプリや検索ツールなど、お客さまにより身近なプラットフォームを構築したいと考えています。
こうしたツールの活用は、学校からのニーズも高いと感じています。数百人単位の生徒一人ひとりが、偏差値だけで学校を決めるのではなく、自分がやりたいことが学べる学校に進む、もしくは就職先を見つけるためのお手伝いができればと思っています。今年の夏頃にはリリースできる予定です。
成し遂げる気持ちを持ち続けて
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
ノリと勢いで会社を立ち上げるのも一つですが、私自身は起業することは、リスクや責任も含めた「重みがある」と感じています。わざわざ起業するのであれば、自己表現としての起業を目指してほしいです。
例えば、世の中の課題を解決したい、稼ぎたい、偉くなりたいなど、何でもいいんです。自分が実現したい思いを簡単には譲らず、世の中で表現し切ってほしいと思います。
起業すると、大変なことも数多くあります。私も妻に反対されたり、離婚してほしいと言われたりと、最初は誰も何も認めてくれませんでした。そういった反対に抗えずに人から喜ばれる仕事をしてしまうと、本来の自分とはどんどん離れていってしまうのです。
そうではなく、自分が成し遂げたいことを忘れずに、自信を持ち続けてほしい。起業を目指す方にはそこを強くお伝えしたしたいです。もし心が折れそうになったら、そのときはぜひ我々に声をかけてください。
今後は新しい投資事業として、「ストーリーファウンディング」もリリース予定です。名前の通り、個人のストーリーに投資する事業です。
投資といっても、5年で利息10%でリターンするなどの償還期限を設けたファンドではありません。我々はターゲットファンドとして、その人の思いが結実するまで応援し続けます。それに加えて、起業家が世の中で活躍するためのコンサルティングや採用の支援なども提供していきます。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:長谷川 朋弥氏
1992年、足立区生まれ、埼玉県育ち。 小2〜高3まで野球一筋。2011年、早稲田大学入学。武者修行プログラムに参加し、主催者の「日本を本気でよくしようとする」思いに感銘を受け、経営者という生き方を考える。 2015年、グローウィン・パートナーズに入社。コンサルタントとして、JTグループ、東急グループ、JCBなどに対するDXサービスや組織開発サービスなど多数経験。 2018年、父のうつ、弟の自死を経験し、現代社会の生き方や組織のあり方に課題感を持ち、2019年、Your Verse創業。
企業情報
法人名 |
株式会社Your Verse(ユアバース Your Verse Inc) |
HP |
|
設立 |
2019年8月 |
事業内容 |
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