株式会社ビーウェル  代表取締役 大亀 雄平

株式会社ビーウェルは、国内外の学生と企業をつなぎ、共に成長する場を創造する会社です。学生マーケティング・プロモーションや採用支援を軸に、事業展開しています。さらに、日本と韓国の架け橋となる人材マッチングプラットフォーム「KOREC(コレック)」を運営し、アジア規模での人材活用を推進しています。今回は代表取締役の大亀 雄平氏に、事業内容や今後の展望なども含めて詳しくお聞きしました。

 

1,000以上の学生団体ネットワークによる、企業と学生の価値共創をサポート

事業の内容をお聞かせください

学生を軸とした事業を展開しています。家庭教師派遣からスタートし、現在は学生マーケティング・プロモーション事業と人材紹介事業を主軸としています。特に、新卒採用支援においては、就活生の集客やイベント運営で高い実績を上げています。

 

私たちの最大の強みは、全国の大学におけるリアルなネットワークです。教授陣とのつながりや、約1,000以上のアクティブな学生団体・サークルとの密接な関係を持っています。「明日の朝までに東大生2,000人分の手書きアンケートが必要」といった緊急の要請にも対応できるほど、リアルなネットワークを構築しています。

 

このネットワークを活かした取り組みが、学生団体への支援プログラムです。文化祭で300万円の資金が必要な団体や、カンボジアで学校建設を目指す学生たち、合宿資金30万円が必要な部活動などに対して、企業は協賛といった形で支援を行います。

 

その見返りとして、学生たちは企業のプロジェクトや仕事に参画するという独自のビジネスモデルを確立しています。

 

現在、アクティブに取引のある企業は50〜100社程度です。お菓子メーカーや就活メディア、資格スクール、振袖や袴・ドレスのレンタル会社など、大学生活に関連する業種と協力関係を築いています。

 

通常、学生団体が企業に協賛を依頼する際は「お願い」ベースの営業しかできませんが、私たちは企業と学生の双方にメリットのある関係を構築しているため、業界最高水準の学生還元額を実現しています。

韓国人材に特化した採用支援も行っているそうですね

日本の中小・ベンチャーの人材採用における課題から、韓国人材の可能性に着目しました。具体的に言うと、就活イベントで中小企業が100万円を投資しても、知名度の低さから学生は集まりません。その現状に対し、新たな解決策を見出しました。

 

2017年、韓国での就活イベントで出会ったのは、TOEICスコア800〜900点台、即戦力となるプログラミングやデザインスキルなどを持つ韓国の優秀な学生たちでした。

 

しかし、日本企業と韓国人材の間にはミスマッチがありました。日本企業側は採用に及び腰で、多くの韓国人学生は大手企業しか知らず、自身が受ける企業の予備知識もないまま就活に臨んでいました。

 

彼らが日本の就職活動の進め方や企業文化を理解すれば、必ず採用につながる。そして、優秀な人材の採用に苦戦している中小・ベンチャーにとっても、韓国人材の採用は新たなブレイクスルーになると考えました。

 

そこで2019年、ソウルに「日本就職カフェ」をオープンしました。教育サービスへの課金が一般的な韓国で、あえて「無料の就活支援」を展開したことは、大きな反響を呼びました。

 

それまでは韓国の学生たちは日本の有名企業にしかアプローチできていませんでしたが、当社が日本の就活の仕組みを丁寧に教え、中小・ベンチャーとのマッチングも実現していきました。

 

コロナ禍では事業継続が危ぶまれ、撤退を勧める声も多かったのですが、これまでの縁を大切にしたいとの思いから、子会社化しました。資金調達も実施し、オンライン面接プラットフォーム「KOREC」の開発など、新しい取り組みも進めています。

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

ありふれた大学生活を送っていましたが、20歳で、とある経営者の方と出会い、ビジネスの世界に触れる機会を得ました。飲食や貿易など多角的に事業を展開し、自由に生きる姿に強く惹かれました。サラリーマン一家に育った私にとって、全く新しい価値観との出会いだったのです。

 

そして、まわりが就職活動を始める中、「失敗するなら若いうちがいい」との思いで、具体的な事業の計画もないまま起業しました。

 

この経験から、学生支援にこだわっています。多くの学生は、周りと同じ選択をしがちですが、異なる価値観を知ることは、人生の可能性を広げるきっかけになるでしょう。そのため、学生たちが普段は出会えない新しい経験の機会を提供し続けたいと考えています。

 

‶いきる人‶を育む企業の挑戦

仕事における「こだわり」を教えてください。

人を軸とした事業展開にこだわっています。

 

当社のミッションである「”いきる人”をふやす」という言葉には、2つの意味が込められています。一つは自分自身が生きがいを持つこと、もう1つは他者を活かすという意味です。事業内容は様々ですが、大切なのはその人がどれだけ心を込めて取り組めるかです。

 

例えば、韓国人材の採用支援は、単なる就職支援ではなく、日本での新しい人生を選択する彼らの「いきる」をプロデュースする仕事です。社内でも「いきる」という言葉が共通言語となっており、社員一人ひとりが自分の「いきる」を見つけ、それが会社のビジョンと重なるのであれば、私は全面的に支援します。

 

そして、私が社員に求めるのは、マナーやテクニックよりも、まず心を磨くことです。「With All Your Heart〜ここにある”こころ”と向きあう〜」という当社のビジョンの通り、相手の気持ちを理解し、共感する心があれば、必要なスキルやマナーは自然と身についていきます。この考えは、社員だけでなく全ての関係構築においても同じです。

起業から今までの最大の壁を教えてください

27歳の時に経験した、会社を解散せざるを得なかったことです。

若さゆえの多角化戦略の失敗により、給与未払いの事態が発生し、多額の負債を抱えることになりました。全社員を前に涙を流しながら謝罪し、会社は一度、解散しました。

 

この経験から私は単にお金のために経営していたのではなく、仲間とともに歩むことに意味を見出していたことに気づきました。突然すべてを一人でこなさなければならない現実に直面し、仲間の大切さを痛感しました。

 

狭いアパートの一室で、かつては部下に任せていた資料作成や経費計算まですべてを一人でこなしながら、約3年かけて再起を図りました。この経験が、人を大切にする今の経営スタイルの原点となっています。

アジアを中心に人材マッチング事業を拡大する

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

モチベーションの根源は責任感にあります。

 

多くの経営者は「夢を持ちなさい、目標を持ちなさい」と言いますが、私は理想や夢よりも、背水の陣での挑戦の方が力を発揮できると考えています。例えば、月5万円を貯金するのは難しくても、借金返済なら確実にできる。それは人への責任があるからです。

 

実際、3年ほど返済を続け、残り半年となった時には大きな手応えを感じました。毎月数百万円の返済が自分の利益に変わる、その実感は大きな自信となりました。

 

現在、韓国のビジネスに取り組んでいることも、単なる収益性だけでなく、日韓の政治的状況が厳しい中でも、両国をつなぐ人材の架け橋になるという使命感からです。国家間の交流をより良いものにできる可能性に、強いモチベーションを感じています。

今後やりたいことや展望をお聞かせください 

私たちは人を軸にビジネスを展開してきており、その方針は今後も変わりません。

 

社内からは、積極的に起業家を輩出していきたいと考えています。必ずしも当社グループ内である必要はなく、独立も大歓迎です。自分らしく“いきる人”をどれだけ育てられるか、それが私の人生の幸せであり、この可能性をどこまで広げられるかにチャレンジしていきたいと考えています。

 

事業面では、現在韓国で展開している人材と企業のマッチング事業を基盤に、台湾への進出も進めています。この分野は多くの企業が成功できていない領域です。日本発のグローバル人材マッチングの大手企業が不在の中、言語や文化の違い、政治的な要素など、様々な壁がありますが、これらを一つずつ克服していくことに価値があると考えています。

 

今後は、インドネシアなど諸外国への展開も視野に入れており、40代のうちに更に多くの海外進出を目指しています。これからの数十年で、どこまで事業を広げていけるか、それが私の大きな楽しみであり、挑戦です。

起業にリスクは存在しない

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

起業しようと思っているのであれば、ぜひ起業してください。

 

収入が減るのではないか、生活水準が下がるのではないかと不安に感じる方が多いと思います。ですが、10万円の収入なら10万円以下の生活を、30万円なら30万円以下の生活を選択すれば良いだけの話です。自分の状況に合わせた生活設計ができれば、リスクはありません。

 

私も27歳の頃に、数千万円の借金を抱えながら再起を図りました。起業して失敗しても、それは終わりではありません。また、市場が飽和していると考える必要もありません。どんなに小さなビジネスでも、独自のアプローチや差別化で必ず道は開けます。

 

実際の事業展開は、実体験のある人にしか見えてこない部分が多いものです。頭で考えているだけでは見えない可能性が、実際に行動することで見つかるはずです。

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:大亀 雄平氏

1982年/兵庫県生まれ。

大阪市立大学(現・大阪公立大学)在学中に株式会社ビーウェル創業。関西を中心に学生マーケティング・プロモーション事業などを幅広く展開し、同時に数多くの企業の役員を務める。2万人以上の大学生と関わり、それぞれにとって成長できる環境を用意している。

企業情報

法人名

株式会社ビーウェル (Bwell co.,ltd.)

HP

https://bwell.jp

設立

2006年10月

事業内容

  • 日本と韓国の学生就活支援事業(ALPSCHOOL(大阪)と KOREC(韓国/ソウル・プサン)の運営)
  • 学生市場に特化したプロモーション事業
  • 学生市場に特化したマーケティング事業
  • 学生市場に特化したコンサルティング事業
  • 転職支援事業
  • その他、上記に付帯する事業
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