アトラスト・ヘルス株式会社 代表取締役 バローチ・ニール

高校時代に起業への関心を抱き、中央大学商学部在学中にスニーカー愛好家向けのオンラインプラットフォーム立ち上げやプロダクトの設計に従事する。その経験が、2019年7月のアトラスト・ヘルス株式会社の創業へと繋がり、「心を照らす医療を拡張する。」をミッションとした、オンライン×対面の総合精神医療プラットフォーム作りと、クリニック開業・DX支援展開を実現させる。そして今、福祉も見据えた新たな医療のステージを、目指しています。

 

精神科医療の新しい選択。ハードルを下げ、適切な医療が受けられる社会へ

事業の内容をお聞かせください

アトラスト・ヘルス株式会社では「”心を照らす医療”を拡張する。」をスローガンに掲げ、ふたつの事業を手掛けています。

 

ひとつ目が「オンライン×対面の総合精神医療プラットフォーム」で、心療内科や精神科を受診しようと思っている方に対し、自宅から医師の診療を受けられるようにしたサービスです。

 

診療は弊社が提供するオンラインミーティングサービスを使用して行い、お薬は当日中に処方され、翌日や翌々日などには患者様の元に届けられます。またこれは、対面のクリニックに行くことも可能なサービスとなっており、オンラインと対面の両方ができるプロダクトであることが大きな特徴です。 

 

弊社が診療科目に心療内科や精神科を選んだのは、“心療内科や精神科において、受診するまでのハードルが高い”と感じたからです。物理的、心理的なハードルにより躊躇を重ね、病状が悪化してからやっと受診に繋がるケースが多いのが現状です。この特有な課題を、オンラインで解消していきたいと考えています。

 

また、オンライン化することにより、患者様より同意を得て匿名加工されたデータ収集や解析が容易となり、得られた情報をフィードバックし、より良い治療提案に繋げていくことも可能になるのではと考えております。

 

弊社は、オンライン化による新しい医療のスタンダード作りと、治療効果を実感できる世界観作りを進めていきたいと思っています。

 

ただし、本事業には注意点もあります。例えば、ルールの厳守が挙げられます。心療内科で使うお薬でも特に副作用の影響が強いお薬に関してはガイドライン上オンラインでは扱うことができません。

 

また、“お薬を処方して終わり”とせず、患者様に寄り添った治療過程の確認及び丁寧な後追いをしていくことが大切です。「適切なプラットフォーム作り」と「ITの推進」は、しっかり両輪でやっていきたいと考えています。

 

弊社プラットフォームの大きな特徴として、50〜60人の医師から選択が可能であることも挙げられます。一般的には、ひとつのクリニックに1人ないし2人の医師しかいませんから、医師との相性が合わなかった場合、別のクリニックへ移る他ありません。

 

しかし弊社であれば、「同じプラットフォーム内で選択し、ご自身に合う医師と出会う」ことが可能です。より相性の合う医師と出会える可能性が高まる設計となっています。

 

もちろん、相性ではなく、日時での選択も可能です。現在、心療内科や精神内科では数か月待ちといった声も多い中で、最短・当日といった選び方ができることは、大きな意味を成していると言えるでしょう。


また、弊社プラットフォームでは、患者様の寛解向けて、医師の診療以外に心理士のカウンセリングも連携していき、悩みの受け皿として最適なソリューションを当てはめていけるよう、チャレンジしていきたいと思っています。 

 

ふたつ目の事業となるのが、「クリニックDX/開業支援サービス」です。これは、弊社が構築したシステムを単にクリニックに使ってもらうだけでなく、BPO事業として、マーケティングのお手伝いや医療事務ができるスタッフ、経営に長けた人材などの採用のサポートをします。

 

それに加え、弊社の抱えるスタッフがクリニックで、業務をお手伝いすることでより経営をスマートにしていく事業となっています。

 

弊社のサービスを利用することで、成功を掴み取っているクリニックは多くあり、そこが他社との差別化できている部分であり、強みであると言えます。

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

中学生の頃に友人がうつ病だと知りましたが、当時はただ見守ることしかできませんでした。しかし、そこから時を重ねた時に「こうだったら良かったんじゃないか?」と、当時の疑問が関心軸へ変化し、今に繋がっていると感じます。

 

治療への正しいアクセスと、患者様に治療実感を持ってもらうこと、そして次第に病状が安定し、「治療のアウトカム」の向上に繋げることを目指したいと思い、現状、様々な取り組みを行っています。 

 

大学生の頃に立ち上げたスニーカーマーケットのプラットフォームでは、「プラス1の喜びがプラス5になった」感覚でした。しかしその時、「マイナスからゼロ、そしてプラス1へともっていく」ことが本当にやりたいことだと気づき、今の事業へのシフトチェンジに繋がっています。

 

すべての人に、“一輪の花”を。患者様の人生に寄り添い、福祉への連携を考える

仕事におけるこだわりを教えてください。

正しい医療を提供する、そして患者様が良くなってると実感できることが、一番の軸であると考えます。

 

そしてチームマネジメントにおいては、チームでの成長や、チームでの成功体験を重視しています。メンバーが各々好き勝手な方向を向くのではなく、全員で同じ方向に向かえることを大切にしています。 

 

弊社のビジョンは、「すべての人に、”一輪の花”を。」です。ある患者様の例なのですが、心療内科へのハードルを感じておられ、やっと罹られた時には病状が悪化しており、今後が見えず、何もできない状態に陥っておられました。

 

しかし、堅実な診療を続けることで少し良くなり、そのタイミングで医師から気分転換に「本を読もう」と提案がなされ、読書が趣味となり、「いつか小さな本屋を作りたい」と夢を語るようになったという事例がありました。

 

つまり、その方にとっての一輪の花は“本”だったわけです。本は、特別なものではありません。でも、それが患者様にとっての一輪の花であることの気づきは、特別なこととなります。これこそが、弊社の役割であると感じています。

 

自分の身近にある一輪の花に多くの人は気づくことができていません。弊社は、先に挙げたように「心療内科や精神科へのアクセスを改善する」とのスローガンを掲げ、「第二の人生の一歩となる一輪の花に気づいてもらう」ビジョンの実現を、目指しています。

 

起業から今までの最大の壁を教えてください

仲間集めが壁であり、重要なポイントだと思っています。

 

弊社がこのプラットフォームを手がけたタイミングはパイオニア的存在でした。当然のことながら将来性の有無は不確実性が高いですし、医療業界では全く新規の取り組みがあまり好まれない傾向がありました。

 

その状況下で、会社のメンバー、投資家、そして医師等、一緒に活動していく仲間を探すことはとても大変でした。

 

説得するためにデータやエビデンスを用意し、説明に伺う地道な作業を繰り返し、一人、また一人と仲間が増えていき、現在の体制にまで至ったところです。 

 

今では、医療のDX化やオンライン診療は当たり前のものとなりました。競合が増加したことで差別化を図ることも考えてはいますが、実は前提となるのは真新しいものではないと思っています。

 

だからこそ、医師の方々に協力をいただくことや、心理士と協力するなど基礎固めこそが重要であると感じます。

 

その上で、今後の事業展開として考えているのが“福祉”との連携です。医療は、患者様の生活における断片的なソリューションでしかなく、治療を適切に包括することはできません。

 

例えば、患者様が復職する段階になった時、次に関わるのは福祉の領域となります。にもかかわらず、医療と福祉は全く別の存在であり、より繋がりを深くしていける可能性があると考えています。

 

そこで、弊社のプラットフォームを用いて、医療と福祉を繋げていく新しい医療のスタンダードを実現させれば、「治療のアウトカム」はさらに向上し、寛解率の向上や減薬率の向上にも繋がっていくと予測します。これが今後乗り越えるべき壁であり、実現できれば、他社との差別化になると考えています。

スピード感を重視し、社会課題の解決と事業成長を実現

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

心療内科や精神内科の診療を、適切にお届けできていると実感できていることが弊社のモチベーションとなっています。そして、それに対して患者様がポジティブな反応を示してくれており、社会貢献に繋がっていることも強く実感しています。

 

僕が目指した「マイナスの状態にある人をゼロやプラス1にもっていく」ことが実現できていることを、今、大変嬉しく思っています。

 

今後やりたいことや展望をお聞かせください 

基本的には先ほどお話したように、“医療と福祉をつなげること”が今後の展望です。ベースとなるのは現事業の心療内科・精神科向けのプラットフォームですが、そこに必要なソリューションを繋げていき、弊社独自の最適な医療体制を作り上げていくことを前提としています。

 

そしてその先に、治療成果が数字などから判断できるようにすれば、より開けていくのではと感じます。また、それらのスピード感も大切です。スピーディな成長を心がけていきたいと考えています。

 

今後全国展開も考えていますが、中にはオンラインにまだ関心が高くない医師もいらっしゃいます。しかし弊社はオンラインと対面のどちらにも対応しており、医師がご自身で対面かオンラインか“やりたい方を選べる”ことを大切にしており、“働きやすい体系作り”を目指しています。

 

このように、今後全国展開していく場合でも、都市部や地方といった所在による溝を払拭し、上手に包括できるようにしていけるのではないかと考えています。

信念×知見が成功へ導く。起業に挑戦する価値とは

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

僕が掲げる人生の目標は、起業によって近づいてきていると強く実感しています。

 

起業すると大変なことの方が多いのですが、自分が本当にやりたいことを実現するための、有効な手段の一つであると言えるでしょう。今、起業したいと思っている方や、何らかの信念をお持ちの方は、それを信じて進んでいくことをお勧めしたいです。 

 

また、起業に際し周りから批判的な意見を出されることは決して少なくないことを心に留めておくべきだと思います。そして、その意見を一蹴するのではなく、先輩起業家の貴重な知見を真摯に受け止め、汲み取りながら事業を進めていくことで、自身の信念と周囲の意見・知見が掛け合わさり、より良い方向へと事業が発展していくと感じています。

 

採用についてお聞かせください

素敵な医師が多くいるからこそ患者様にお喜びいただけますし、また、医師に働きやすいと感じていただき、選ばれるプラットフォームになりたいとも思っていますので、医師の採用と定着支援は随時行っています。

 

そして、業務改善を行える人材も募集しています。医療のプラットフォーム作りには、国のシステムを使うなど大変な部分があります。上手に活用し、業務改善が行えれば、さらに人員の削減が叶うといった部分はまだ眠っていると感じており、そういった部分を担える人材を求めています。

 

▽お問い合わせはこちらから

https://atlasthealth.co.jp/recruit/

 

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:バローチ・ニール

中央大学商学部卒。高校生の時に起業に関心を持ち、大学1年次にスニーカーマーケットでの情報交換、購入、販売をサポートするスニーカー愛好家向けのオンラインプラットフォームの立ち上げやプロダクトの設計に従事。2019年7月にアトラスト・ヘルス株式会社を創業。「“心を照らす医療”を拡張する。」というMissionを掲げ、自宅から手軽に精神科医療を受けられるオンライン×対面の総合精神医療プラットフォームと、医療現場のデジタル化をサポートするクリニック開業・DX支援を提供。

 

企業情報

 

法人名

アトラスト・ヘルス株式会社

HP

https://atlasthealth.co.jp/

設立

2019年7月12日

事業内容

  • オンライン×対面の総合精神医療プラットフォーム
  • クリニックDX支援サービス事業

 

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