株式会社ASIS 代表取締役 古月 靖之

「仕事を夢中に、人生を豊かに」をミッションに掲げる株式会社ASISは、働く人と企業の双方に寄り添って伴走する人材サービス企業です。単なる求人紹介ではなく、独自ツール「キャリアカルテ」を用いて価値観を可視化し、理想のライフスタイルを軸としたキャリア構築をサポートしています。代表取締役の古月 靖之氏に、事業内容や今後の展望なども含めて詳しくお聞きしました。

理想のライフスタイル起点のキャリア構築支援

事業の内容をお聞かせください

当社の社名「ASIS」の由来通りの事業を展開しています。企業と個人の両方に対して、「As Is」(現在の姿)を適切に把握していただき、そこから「To Be」(あるべき姿)を一緒に描き出し、実現に向けて伴走することが会社の根幹となっています。



事業には2つの柱があります。1つ目は「ASIS AGENT」という、未経験者・キャリアチェンジに特化した転職エージェントサービスです。

 

2つ目は「Career Room」という、転職までは踏み出せないものの、仕事の悩みやキャリアについて相談したい方向けのサービスです。キャリアコーチングのように大きく人生を変えるのではなく、些細な悩みに対して的確に相談できる場を提供したいと考えています。

 

「As Is」は人によって千差万別ですが、多くの方が見つけられないまま求職活動を始めています。「なんとなくこういうことがしたい」「この状況を改善したい」といった状態で、「To Be」に向かって行動することが多いと感じています。

 

そのため、求人を紹介されて転職しても、入社後に自分が大切にしている部分との不一致に気づき、早期離職につながるケースが少なくありません。私が大手エージェントで働いていた時も、多くの転職が成立しても、一定数の早期離職が発生する現実を目の当たりにしてきました。

 

そういった事態を防ぐため、私たちは面談で「As Is:今、何を大事にしているのか」などの部分を深掘りし、それを基に「To Be:今後どうなりたいか」への道筋を設計することを大切にしています。

 

企業側にも同様のことが言えます。例えば「優秀なコンサル経験者が欲しい」といったリクエストでも、詳しく話を聞くと実際には「コミュニケーション力があり周囲を巻き込める人材」が必要なケースもあります。その場合、営業経験者なども十分候補になり得ます。

 

このように企業の採用要件も「As Is」を適切に理解することが重要で、私たちがその間に入って最適な「To Be」を一緒に描いていくお手伝いをしています。

 

ASIS AGENTサービスでは、独自ツール「キャリアカルテ」を開発しました。これは求職者の「As Is」を可視化するもので、仕事で大切にしたい価値観を選んでいただき、現時点での満足度とその理由、将来どうしたいのか、何をどう変えたいのかを約90分の面談で明確化します。最終的にはグラフ化され、その人のキャリアの「カルテ」が完成するツールとなっています。

キャリアカルテで明確化した内容をもとに、企業・求職者の最適なマッチングを生み出し続けていきたいと考えています。

競争が激しいHR業界で、他社とどのように差別化していますか?

「求人を紹介する」ではなく、「理想のライフキャリアを描いて伴走する」ことを仕事だと捉えている点です。私自身も以前エージェントを使って転職した経験があり、その時に感じた「こうあってほしい」という思いが今の事業に直結しています。

 

また、多くの方が自分のキャリアの延長線上だけで転職を考える中、当社のツール「キャリアカルテ」を活用すると、「ライフスタイルとしてこの働き方がしたい」などの要望も見えてきます。そうした深掘りから、現在の仕事から全く異なる仕事へのキャリアチェンジを希望される方も多く、結果的にキャリアチェンジ領域の転職支援に強みが生まれています。

 

転職決定後も「最終面談」で次の会社での具体的な行動計画を立て、業界ルールの範囲内で定着支援も行っています。私たちは単なる転職エージェントではなく、長い人生におけるキャリアの「かかりつけ医」を目指しており、これは「Career Room」というサービスでもさらに発展させていく予定です。

 

「Career Room」の詳細を教えてください

転職を考えていない方でも気軽にキャリア相談ができるサービスです。転職エージェントは転職意欲が明確な方が多いですが、Career Roomでは「キャリアについて気軽に相談できる場」を目指しています。

 

キャリアについて相談できず、悩みを抱え込んでいる方は多いです。実際の相談では「上司との関わり方で悩んでいます」などの転職とは関係のない仕事での悩みもあります。私たちはキャリアの「かかりつけ医」として、「そういう時はこのマインドで取り組むといいですよ」と、ピンポイントのアドバイスをさせていただいています。

 

長期的には、キャリア相談に特化したマッチングプラットフォームを構築したいと考えていますが、まずは私たち自身が直接相談者となり、サービスの質と方向性を育てている段階です。また、希望に応じて自社の転職サービスも提供できますが、他社求人への応募も含め、利害関係なくサポートします。

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

新卒で入社したテーマパークの運営会社で、現場のスーパーバイザーを担当していました。多くのスタッフが人間関係や収入のことで悩む一方で、表では笑顔でイキイキと働いている姿を見て、自分の人生を仕事の中で謳歌できている人がもっと増えてほしいと思っていたのです。

 

その中で、仕事選びの段階からミスマッチを防ぐ支援がしたいと考え、リクルートの転職エージェント領域へ入社しました。企業担当として主に中小・ベンチャー企業を担当し、「どのような人がこの会社で活躍できるのか」「どの人が入社すれば会社が伸びるのか」を考えるようになりました。しかし、リクルートでは案件数が多く、一人ひとりの価値観まで含めた丁寧なマッチングが難しいと感じました。

 

その後、人事部門に異動し組織育成に携わる中で、出身企業の社風と活躍度合いの関係などを目の当たりにしました。そこで気づいたのが、スキルや専門性よりも、その人のスタンスやポータブルスキルが活躍に大きく影響していることでした。

 

これらの経験から、価値観や「As Is」を重視した転職エージェントを自分で立ち上げ、一つひとつのマッチングを大切にするサービスを提供したいと考え会社を設立しました。

 

現在の姿(AsIs)を把握した上で未来を描く

仕事におけるこだわりを教えてください。

「As Isの理解」を一番大事にしています。



当社では、自分の仕事にも人のキャリアにも「どういうことをしたいのか」という定義付けまで一緒に行いたいと考えています。「As Is」という現状を適切に自分も理解し、相手にも理解してもらうところが、絶対に譲れない軸だと感じています。

 

会社を作った時のコンセプトには、私が働く上で大切にしている2つの要素を込めました。1つは、気の知れた仲のいいメンバーと一緒に遊ぶように働けること。もう1つは、仕事と生活に大きな区別をつけずに働くことです。

 

当社のビジョンが「夢中になれる仕事を通じて、誰もが自分らしく輝ける」なので、私自身が夢中になれる仕事、仕事を仕事と思わずにできている状態でないと、このビジョンは実現できないと思っています。

起業から今までの最大の壁を教えてください

最近特に痛感しているのが、組織づくりの難しさです。

 

現在、仲のいい友人たちと仕事をしていますが、私の描く理想を皆に同じように持ってもらえないことに気づきました。「なぜこれが仕上がらないんだ」「なぜオーダー通りにならないんだろう」と思うことが多々ありました。

 

しかし、共同創業メンバーとの会話から、彼らは私と話す時は表面的に合わせていても、実は確固とした「こうしたい」という思いを持っていたことに気づいたのです。自分の考えを押し付けることで壁にぶつかっていたとわかった時、大きなブレイクスルーがありました。

 

すべての人が仕事に夢中になれる社会を作る

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

キャリアに悩んでいる方の人生に、前向きな変化が生まれる瞬間を目の当たりにすることです。

 

私は30歳になる少し前に起業したのですが、周りにはキャリアに悩んでいる人が本当に多かったです。共通して抱えていたのは「今の仕事をずっと続けていいのかな..」といった漠然とした悩みでした。

 

私は以前から友人の相談に乗ることが好きだったのですが、悩みが解決され、人生が好転する予感を感じ始める瞬間は本当に素晴らしいです。表情が明るくなり、その後のプライベートな食事の場でも全く違ったテンションになっていたりします。前向きな変化に日々触れる中で、私たちのサポートを通じてそういった方々がさらに増えてほしいと考えています。

 

今後やりたいことや展望をお聞かせください 

働くすべての人々が、仕事に夢中になれる状態を作ることです。これは当社のビジョンでもあり、私たちが目指す未来です。

 

現在の事業展開としては、2つの柱があります。まず一つ目は、転職エージェントとして「As Is」と「To Be」を明確にする支援を行いながら、キャリアチェンジに注力したサービスにしていきたいです。「未経験・キャリアチェンジの転職と言えばASIS」と、第一想起されるサービスにしていくことが目標です。

 

2つ目の「Career Room」は、キャリアのかかりつけ医のような存在、学校でいう保健室のような場所を目指しています。キャリアに関する悩みや仕事での困りごとがあれば、気軽に駆け込めるサービスにしていきたいです。

 

2つのサービスを通じて、働くことがより魅力的になり、仕事・キャリアで悩む人が1人でも減り、イキイキと仕事をする人が増える社会を実現していきたいと考えています。

 

企業に対しては、未経験者の採用と面談を確約していただくことを条件に、通常とは異なる料金プランを提案するなど、未経験者の転職が一般的な採用手法となる仕組みづくりを進めていきます。

 

求職者へのアプローチでは、広告展開を強化する予定です。美容師が営業職へ転身したり、オフィスワーカーがエステティシャンになるといった、職種を越えたキャリアチェンジの可能性を広告で積極的に発信し、「そんな転職の道もあるんだ」と多くの方に気づいていただきたいと考えています。

自分が解決したい課題を明確に

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

ビジネスアイデアだけを動機にするのではなく、自分自身の内側にある本質的な動機を大切にしてください。

 

起業ありきで考えるのではなく、自分自身と向き合うことが重要です。なぜなら、自分が本当に解決したい課題や、誰に対してどのような価値を提供したいのかが明確でないまま起業しても、困難に直面したときに続けられないからです。

 

だからこそ「これから先どういうキャリアを歩みたいのか」「自分が提供する価値は一体何なのか」を、起業前にしっかり考えてみてください。

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:古月 靖之氏

新卒で株式会社オリエンタルランドに入社し現場のSV(スーパーバイザー)業務に従事。その後株式会社リクルートに転職し、ベンチャー・スタートアップ向けの人材紹介、大手製造業メーカーへのRPO(採用代行)支援、社内人事の経験を経て株式会社ASISを創業。

 

企業情報

法人名

株式会社ASIS

HP

https://asis-inc.jp/

転職相談の方

https://lin.ee/o0wwCdk

Career Roomでの相談の方

https://lin.ee/Zvllgu3

公式note

https://note.com/asis_inc

設立

2024年6月

事業内容

キャリア支援・人事コンサルティング

沿革

2024年6月 株式会社ASIS設立

 

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