
株式会社BLOCKSMITH&Co. 代表取締役社長CEO 真田 哲弥
ブロックチェーンゲームとして世界初の成功例とも言われる「キャプテン翼 -RIVALS-」によって、業界で一躍注目を集めた株式会社BLOCKSMITH&Co.。代表取締役社長CEOの真田哲弥氏は過去に5回もの起業経験を持ち、豊富な実績と人脈を築いてきました。そんな真田氏の次なる目標は、Web3の新しい世界を築くことだと言います。今回は、真田氏が今Web3や仮想通貨の市場に意欲を見せる理由についてお聞きしました。
ポイントシステムと参加型コンテンツを組み合わせた新しい価値の提供
事業の内容をお聞かせください。
現在、当社の主力事業はポイントが貯まるクイズアプリ「QAQA(カカ)」の運営です。このアプリは、近年盛り上がりを見せている“ポイ活”市場に着目して開発されました。ユーザーはクイズに答えることでポイントを獲得でき、そのポイントは金券や商品、さらには当社独自の仮想通貨と交換することができます。
このような「ポイント×クイズ」という仕組みを採用したのは、ポイ活が幅広い層に浸透してきている今、多くのユーザーに興味を持ってもらいやすいと判断したためです。
また、私たちは将来広く使われる仮想通貨には、「現実世界の資産と交換できること」が重要だと考えています。そのため、当社が発行する仮想通貨も、現実の金券や商品と交換可能なポイントとの連携を目指しています。
さらに、「クイズ」は広告手法としても非常に効果的です。従来の広告は一方的に情報を届けるものが多く、ユーザーにとっては「押しつけがましい」と感じられることもあります。しかし「QAQA」では、ユーザーはポイントをもらうために自発的にクイズに答え、その中で商品やサービスについて自然と考えるようになります。こうした体験を通じて、情報がしっかりと記憶に残る仕組みになっています。
実際に「QAQA」では、さまざまな業界の企業と提携し、その商品・サービスに関するクイズを配信しています。その結果、商品への理解が深まったり、ECサイトへの訪問数や購買行動の増加といった具体的な成果にもつながっています。
また、企業にとっては、クイズの回答データをもとにユーザーの理解度や関心度を数値で把握できるため、マーケティング戦略にも役立てることが可能です。
加えて、当社は人気サッカー漫画『キャプテン翼』を原作としたブロックチェーンゲーム『キャプテン翼-RIVALS-』を株式会社Mint Townと共同で開発・運営しています。本作では、NFTとして生成された選手カードを収集・育成・対戦させることができ、プレイヤー同士の対戦やマーケットプレイスでの取引を通じて、ゲーム体験と資産性を両立させた新しいエンターテインメントを提供しています。IP(知的財産)とWeb3の融合によって、国内外の幅広いユーザー層にアプローチできるコンテンツとして注目を集めています。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
Web3や仮想通貨、ブロックチェーンが注目され始めた頃、さまざまな関連サービスが登場しましたが、私はどれも一時的なブームのように感じて、本質的な価値を感じることができませんでした。
一方で、Web3やブロックチェーンそのものの仕組みには大きな可能性を感じ、「もっと持続性のある活用方法を自分たちで作れないか」と考えたのが、今の事業を始めたきっかけです。
最初に取り組んだのはWeb3ゲームでした。その中でも、人気IP「キャプテン翼」を使ったゲームは、Web3ゲームとしては世界的にも珍しい成功例になりました。ただし、従来のモバイルゲームと比べると、ユーザー数は圧倒的に少なく、Web3ゲームが主流になるにはまだ課題が多いと感じました。
そこで次に開発したのが「QAQA」です。当初はWeb3ゲームとして開発していましたが、途中でコンセプトを変更し、最終的に「ユーザー投稿型SNSクイズ」アプリにたどり着きました。
もともとポイントの交換先としては仮想通貨のみでしたが、昨今「ポイ活」が人気になっていることに着目し、思い切ってポイ活要素も盛り込みました。
ポイント事業は地味に見えるかもしれませんが、実は国内だけでも3兆円を超える巨大市場です。現在の「QAQA」では、クイズに答えることでポイントが貯まり、それを大手ECサイトのギフト券などに交換できる仕組みになっています。
新領域への挑戦がスタートアップ成功の鍵
仕事におけるこだわりを教えてください。
私は、まだ誰も手をつけていない分野に積極的に飛び込むことを大切にしています。いわゆる「ファーストペンギン」のように、最初の一歩を踏み出すことに価値があると考えているからです。
誰もやっていない新しい分野であれば、スタートアップでも十分に勝負できます。一方で、すでに当たり前になったビジネスでは、資金力や規模の勝負になりがちです。
たとえば当社では、ブロックチェーン技術から事業を始めましたが、途中からAI技術との組み合わせに着目し、現在では「AI × ブロックチェーン」や「AI × Web3」を中心テーマとしています。将来的にはAIを主軸とした新たなビジネスも構想中です。
これからも、まだ誰もやっていない領域にチャレンジし続ける姿勢を大切にしていきたいと思っています。
起業から今までの最大の壁を教えてください
「QAQA」のプロダクト開発において、当初は1年でのリリースを予定していましたが、実際には2年を要しました。その主な要因は、市場環境の変化により、当初設計していたプロダクトのままでは競争力が維持できないと判断したためです。結果として、複数回にわたるコンセプトの見直しと方向転換を行う必要がありました。
開発が長期化するなかで、類似サービスが次々と市場に投入されましたが、いずれも十分な成果を上げることはできていませんでした。この状況から、より精度の高いプロダクトの必要性を再認識する一方で、開発の遅延は資金面への圧迫も招きました。
リリース前の段階では資金調達も難航し、「不完全な状態で市場投入すべきか」「完成度を高めるためにリスクを取って開発を継続すべきか」という判断を迫られる状況に直面しました。
この意思決定の難しさと、それに伴う資金的プレッシャーが、起業後最大の試練だったと考えています。
Web3の新しい世界という理想に向かって
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
私が前に進み続けるモチベーションには、主に2つの要素があります。
1つは、私たちが目指す「Web3の新しい世界を創る」という理想と、それを実現するプロダクトに対する強い思い入れです。自分たちの手でまだ見ぬ価値を生み出すというチャレンジそのものが、大きな原動力になっています。
もう1つは、私個人や当社の可能性を信じて支援してくださっている方々への責任感です。立ち上げ当初から信頼のもとに応援してくださっている方々がおり、その期待に応えたいという想いが、日々の仕事の原動力になっています。
その信頼に応えるためにも、日々、着実に前進し続けることを心がけています。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
現在、私たちはWeb3ウォレットを自社で開発・提供しており、顔認証技術を活用することで、誰でも簡単かつ安全に仮想通貨を管理できる仕組みを実現しています。
仮想通貨に関しては、セキュリティ面の課題がたびたび報道されていますが、厳重なセキュリティはユーザー体験の煩雑さにもつながるため、一般層への普及には壁がありました。私たちはこの課題を解決すべく、利便性と安全性を両立できる新しい認証技術を取り入れ、スマートフォン決済と同じくらい直感的に使えるウォレットの実現を目指しています。この技術に関しては、すでに2つの特許も取得しています。
今後は、この認証技術を基盤としたブロックチェーン×フィンテック領域への事業展開を視野に入れています。拡大が見込まれる市場で、私たちの技術を活かしたサービスを展開していきたいと考えています。
また、AIを活用した取り組みにも注力しています。これまでもクイズ生成や投稿内容の自動チェックなどでAI技術を活用してきましたが、今後はAIを主軸とした事業展開にも踏み込む予定です。すでに「BLOCKSMITH AI Lab」を立ち上げており、AI技術の研究開発と新規事業の立ち上げを進めています。
努力は夢中に勝てない
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
起業を考えている方にお伝えしたいのは、「努力よりも夢中になれるかどうかが重要」ということです。
目標達成のために頑張る「努力」は多くの場合、一定の負荷や我慢を伴うものです。しかし、「こういう世界を実現したい」という強い想いがあり、それに夢中になって取り組める場合、時間や労力を負担と感じることは少なくなります。むしろ没頭すること自体が原動力になります。
つまり、単なる努力よりも、自分が本当に実現したいビジョンに対して情熱を持てるかどうかが、継続的なエネルギーになるということです。
成功や収益はもちろん大切ですが、それ以上に「自分がどんな未来をつくりたいのか」という視点を持ってスタートすることが、起業における大きな意味と価値を生むと考えています。そして、そういった起業は結果的に非常にやりがいがあり、楽しいものになると思います。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:真田 哲弥氏
関西学院大学在学中から5回起業したシリアルアントレプレナー。
1998年株式会社サイバードを共同創業し史上最短記録でJASDAQ市場に上場。
2000年KLabを設立、2011年にマザーズ市場、2012年に東証一部に上場。
2022年Web3関連事業の株式会社BLOCKSMITH&Co.を設立。長年のノウハウを活かし新しい独自のGameFiモデルの創出に挑戦中、ほかWeb3関連の講演多数、ハッカソンなどのアドバイザリーも務める。
企業情報
法人名 |
株式会社BLOCKSMITH&Co. |
HP |
|
設立 |
2022年4月1日 |
事業内容 |
ブロックチェーン技術または暗号資産、NFTを活用したプロダクトの開発および配信 |
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