【#402】30分のネイルケアを「当たり前の習慣」に。サブスク型の新サービスで心も豊かに|代表 久賀田有紀 (株式会社mani creation)

株式会社mani creation 代表 久賀田有紀
月額定額で何度でも通える「サブスク型ネイルケアサービス」を展開する株式会社マニクリエーション。爪を整える習慣がセルフケアの意識を高め、心にもゆとりをもたらすといいます。元教員からネイル業界へ飛び込み、難民支援などの社会課題にも積極的に取り組む代表の久賀田有紀氏に、起業のきっかけや今後の展望を聞きました。
手軽に通えるサブスクリプション型ネイルケア
事業の内容をお聞かせください
当社は現在、東京に6店舗、関西エリアに3店舗、九州エリアに1店舗の計10店舗のネイルサロンを運営しています。
従来の都度払いのネイルサービスに加え、近年注力しているのが、サブスクリプション型のサービスです。月額定額制で、何度でもネイルケアを受けられる新しいスタイルのサービスとなります。
当社のネイルケアは、わずか30分で施術が完了するのが大きな特長です。従来のネイルサロンでは、ジェルネイルやカラーリングを含めると1回の施術に2時間以上かかることも珍しくありませんが、当社のサブスクは短時間で手軽に受けられます。
さらに、当社のサブスクでは全国どの店舗でも利用が可能です。提携先のコナミスポーツやマルイといった商業施設の中に店舗を構えることで、仕事帰りや買い物のついでに気軽に立ち寄れる環境を整えています。
そのため、仕事や育児に忙しく自分のケアに時間をかける余裕がないものの、美意識の高い方々から支持をいただいています。お客さまは男女問わず、年代も20代〜50代まで幅広いですが、特に40代の利用者が最も多いです。手軽さと利便性の高さを強みに、多くのお客様に継続的にご利用いただいていています。
新規のお客様に対してはお試し価格での体験プランを用意しており、現在、会員数は約1000名に達しており、右肩上がりで増加しています。一方で、会員数の増加に伴って既存のお客さまの満足度が下がることがないようにすることを第一に考えています。
定期的にキャンペーンを実施し、お客さまに「毎月行く価値がある」と思っていただくための工夫を重ねており、ありがたいことに3年前にサービス開始移行、2年以上通ってくださるお客様も少なくありません。今後の事業拡大に向けては、現在3店舗あるフランチャイズ展開を積極的に進めていく予定です。
また、当社は社会貢献と事業の成長を両立させながら、新しい価値を生み出す取り組みを進めています。難民支援を行うNPOと提携し、日本で働く難民の女性にネイルの技術を教え、彼女たちだけで運営するネイルサロンを渋谷にオープンしました。
当社の従業員の中には、未経験から活躍している人も少なくありません。東京エリアのマネージャーも、もともとはアパレル業界で店長を務めていました。実は、コロナ禍でホテル業や飲食業で働いていた方が職を失い、ハローワークの職業訓練校を活用してネイル技術を学ぶケースが増えていました。当社はこうした職業訓練校と提携し、卒業生の受け入れを積極的に行ってきました。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
元々は教員として働いていました。ただ、学生の頃からリーダーシップを取ることが好きだったので、誰かに指示を仰いで働く環境に違和感を覚えていました。また、20代で教頭先生、校長先生等になるのは難しく、それなら20代のうちに起業して、自分で自由に働ける組織を作ろうと決意したのです。
もともと人と話すことやデザインが好きだったこともあり、2013年に「マニネイル」を立ち上げ、個人事業主として2年間ネイルサロンを運営していました。
それから、より多くの人にサービスを届けたいと思うようになり、事業規模の拡大を進めてきました。現在の社名「マニクリエーション」は、ネイル事業にとどまらずさらなる事業展開を見据え、マニネイルから派生して名付けたものです。
2015年には1年間の休業期間を取り、ワーキングホリデービザを活用してフランス・パリで様々な経験を積みました。現地のネイルサロンでアルバイトをしながら、在住の日本人向けに出張ネイルサービスを提供したり、撮影やイベントのお手伝いもしていました。
フランスでの活動を通じて実感したのは、日本のネイル技術や美容サービスの質の高さです。サロンでは現地のマダムから「日本人のあなたに施術してほしい」と直接指名されることもありました。日本の技術とおもてなしの心が評価される場面が多く、それが帰国後の事業展開にも大きな自信となりました。
100人いれば100通りの働き方がある
仕事におけるこだわりを教えてください。
信用を失わないことです。信用は長い時間をかけて積み重ねるものですが、ほんの些細なことで崩れてしまいます。そのため、口約束はせず、できることとできないことを明確に伝え、相手への連絡や報告を徹底することを心がけています。何よりも、嘘をつかないといった基本的な誠実さを一番大切にしています。
もう一つ大切にしているのが、どんなことであってもやりきることです。どんなに良いアイデアや能力があっても、最後までやり抜かなければ意味がありません。途中で諦めず、行動し続けることが成果につながると信じています。
スタッフにも、まずは成功している人のやり方を真似てみることを勧めています。職場には経験豊富なスタッフがいるので、まずは学び、継続することが成長につながります。
起業から今までの最大の壁を教えてください
人材や資金面で深刻な問題にはまだ直面していません。もちろん細かい苦労はありましたが、事業の運営が大きく揺らぐことはなく、それもこれまで築いてきた信用の積み重ねがあったからだと感じています。
実際、当社では求人に特別な費用をかけていません。私はSNSやブログを通じて会社のコンセプトや働きやすさを発信しています。例えば、フレックス制度の導入や有休を活用した最大10連休の取得、勤務時間を9時から18時にするなど、スタッフが働きやすい環境づくりを徹底しています。「100人いれば100通りの働き方がある」の考え方のもと、一人一人に寄り添った制度を整えてきました。
また、当社のフランチャイズオーナーも地域で信頼されており、スタッフの定着率が高いのが特徴です。すでに郡山市や熊本市など複数の地域から出店依頼が来ています。今後は、そうした新しい場所で一緒に働いてくれる方を見つけることが課題になってくるでしょう。
ネイルケアを「当たり前の習慣」に
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
起業前は「自由に自分で仕事をしたい」との思いが強かったです。ですが、事業を続ける中で多くの従業員や仲間に支えられていることを実感してからは、自分の成長が誰かの勇気や行動のきっかけになり、社会に少しでも良い影響を与えたいと思うようになりました。
私は比較的恵まれた環境で育ってきましたし、特別にお金に困ることなく今までやってこれましたが、自分の力ではどうしようもないこともあるでしょう。日本では女性経営者の割合もまだまだ少ないです。だからこそ、当社みたいな小さな会社が成長していく姿が、これから起業を目指す女性たちのヒントや背中を押すきっかけになればと思っています。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
サブスクサービスを全国に広めていきたいです。もちろん自社で展開していくのが理想ですが、資金面やスピード感を考えると時間がかかってしまいます。だからこそ、当社に共感してくださるオーナーさんと一緒にやりたいと思っています。
最終的な目標は、ネイルケアを当たり前の習慣にすることです。指先を清潔に保つことでセルフケアの意識が高まり、結果的にストレスの緩和やウェルビーイングにもつながります。この考え方をもっと社会に広めていきたいです。当社は聴覚障害のある方や難民の方への教育支援も行っていますが、店舗が増えることでこうした社会貢献活動もより充実させられると考えています。
目標は2027年末までに100店舗です。かなり挑戦的な数字ですが、地方にも積極的に展開していくつもりです。地方の女性たちがもっと自信を持って活躍できる場を増やし、「私でもこんなに稼げる」と自己肯定感が上がるきっかけを当社が作りたいと思っています。
泥臭さと誠実さを大事に
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
誠実さと泥臭さを大切にしてほしいと思います。
起業は、誰でもできることだとは思います。だからこそ、大事なのは責任をもってやり抜くことと覚悟を持つことだと考えています。自分で決めたことなら、たとえ失敗しても後悔する必要はないですし、次に生かせばいいのです。
また、何かを築いていくのに、簡単なことなんて何ひとつありません。私も最初は、本当に地道なことばかりでした。お客様フォームから自分で問い合わせをしたり、美容室の一角を借りるために片っ端から電話をかけたりと、泥臭く行動しました。誰かが動いてくれるのを待っているだけでは、何も始まりません。
今でも日帰りで東北を回ることもあります。自分で足を運び、どれだけ時間を使うかが結果につながると実感しているからです。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:久賀田有紀 氏
教員を経て起業を志し、ネイリストに転職。2013年maninail創業。2015年より1年休業しパリで活動のち再開して店舗展開。現在フランチャイズ店舗も合わせて11店舗展開中。日本のネイルと海外をつなぐ海外ネイル協会設立、えがお爪工房立ちあげ。
企業情報
法人名 |
株式会社 mani creation |
HP |
|
設立 |
2020年6月 |
事業内容 |
ネイル事業 |
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