株式会社Bocek 代表取締役 沖村 昂志

株式会社Bocekは、SNS要素を取り入れた生成AIプラットフォーム「Taskhub(タスクハブ)」を主軸とする企業です。業種や世代を問わず誰もが生成AIを使いこなせる環境を提供し、導入企業ではAI利用率が20〜30%向上するなどの実績を上げています。代表取締役の沖村 昂志氏に、事業内容や今後の展望なども含めて詳しくお聞きしました。

 

「生成AI×SNS」プロンプト不要で業務効率化を実現

事業の内容をお聞かせください

生成AIを主軸に、3つの事業を展開しています。

 

主に、「Taskhub」というクラウドツールの販売、法人向けの生成AIの導入・利用率向上のコンサルティング、また生成AIの開発を行っています。企業ごとに「こういうサービスを作りたい」等のニーズがあるため、弊社の「エンジニアの比率が大きい」という強みを活かして開発を請け負っています。

 

「Taskhub」の最大の特徴は、SNS的な要素を取り入れている点です。ChatGPTで作った活用事例が、自動的に共有されていくよう構築されています。現在は主に法人向けに提供していますが、4月からは個人向けにも展開をスタートしました。

 

ChatGPTは基本的に閉じたサービスであり、自分の履歴だけが残るだけで、個人レベルでの活用ノウハウが共有されないことが課題だと考えています。質問が苦手な人にとっては使いこなすのが難しいため、事例がプラットフォーム内で共有される仕組みを軸に作っています。Taskhubを開くと「この人がこういう使い方をしました」という情報が、Youtubeの再生回数のような形で表示、共有されます。

 

さらに、ChatGPTへの命令の共有だけではなく、社内でChatGPTを活用したアプリケーションをコーディングなしで作ることができるツールも提供しています。例えば、Gmailで届いたメールの内容を入力するとGoogleカレンダーから空き日程を自動取得し、それを踏まえた返信文を自動生成するアプリも簡単に作ることができます。

 

ワークフロー自体を提供するサービスはいくつかありますが、私たちはそこにSNS的要素を掛け合わせ、さらに通常のChatGPTのような機能も備えた、オールインワンのプラットフォームとして展開しています。

 

今年1月にリリースして以来、現在1,500〜2,000ほどのアプリが登録されており、それらの人気ランキングも見ることができます。

 

ユーザーは既存の1,500のアプリから探すこともできますし、新しく考えて作ることも可能です。探し方としては、YouTubeのおすすめ機能のようなものをイメージしてください。過去の検索履歴から、おすすめのタスクやアプリの人気ランキングが表示される仕組みとなっています。

 

また、導入のハードルは非常に低いです。導入した瞬間からアプリが揃っているため、すぐに使える状態になっています。

 

Taskhubを導入した企業の声を教えてください

最も多いのは「AIを使いこなせなかった人たちが、使えるようになった」という声です。

 

利用率の向上が顕著で、「ほとんど誰も使っていなかった状態から、利用率が20〜30%まで上がりました」といった報告をいただいています。これは私たちが一番実現したかったことなので、非常に嬉しく思っています。

 

特に生成AIを使ったことのない方や、生成AIをうまく使いこなせなかったという方から、普段から生成AIを使いこなしている方まで、Taskhubを通じて管理職層も含めて使いやすくなったという評価をいただいています。

 

基本的に若い世代のほとんどはAIを使いこなしているのですが、上の世代はなかなか取り組みづらい面があります。そこで、若手社員が作ったアプリを、上司も含めて全員で活用しようという流れができています。

 

コンサルティング事業ではどのようなことを行なっていますか?

基本的には、Taskhubと連携して行うケースが多いです。企業でよく起こるのが、ChatGPTを全社導入したものの「意外とみんなが使ってくれない」という状況です。使ったことのない方にとって、未知なサービスを利用することが難しいのは当たり前だと思います。

 

そこで私たちがまず「先生」として、「AIはこういう風に使います」という基礎的なことから伝えていきます。各部署単位で「どういった事業や仕事をしているのか」をしっかりヒアリングした上で、「このやり方だと、もっと役立ちますよ」と、個別に提案していくスタイルを採用しています。

 

業務効率については、アンケートベースで導入後に業務時間が30〜40%短縮されたという声が多いです。私たち自身も使ってみて、最低でもその程度は効率化できているという実感はあります。

 

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

元々Webマーケティングの会社で働いていました。その中で「新しい技術で情報格差が生まれるものをメディア化すれば、必ず伸びる」という考えに至りました。

 

GPT-3.5が登場した2022年の3月頃「これは絶対伸びる」と確信し、プロンプトエンジニアリングに特化したメディア「PROMPTY」を立ち上げました。月間30万〜40万アクセスを集めるメディアにまで成長しました。

 

その後は、次のステップとしてコンサルティング事業を開始し、さらに新しいサービスの開発にも取り組むようになり、今に至ります。

 

起業としてはこれが2社目です。1社目はDraftyという会社を運営していました。私自身は全くコードが書けないため、大学時代からの友人にエンジニアとして参加してもらい、とても助けられました。

 

今回の2社目でも彼に声をかけ、彼を起点に今ではエンジニア組織が構築されています。現在合計で17名ほどのエンジニアチームがあり、この規模の会社としてはかなり大きい組織ではないかと思います。

 

成長できる機会を提供し続ける

仕事におけるこだわりを教えてください。

経営方針として「Win-Winの関係性」を重視しています。

 

「社長だから言えないことがある」「建前上こう言わなければいけない」という起業家の悩みをよく聞きます。対して私は、「社員が辞めないようにこう言おう」というアプローチを基本的に取っていません。むしろ「社員の人の人生にとってBocekが最善の選択肢であるように、会社運営側が環境作りを行う」という姿勢です。

 

私たちがその人の人生にとって「最大限の価値を提供できるかどうか」という視点が、私が一緒に仕事をする上で大切にしているポイントです。誰かが会社を去ることになっても「また機会があったら一緒にやろうよ」と、気持ちよく別れられる関係性を繋ぐようにしています。

 

また、社員それぞれが業務にコミットしてくれていることに感謝していますが、人生の目標が「この会社にコミットすること」ではないと理解しています。「会社は人生の一つの手段」として見ていると思うため、良い機会を提供することを常に意識しながら会社運営をしています。

 

起業から今までの最大の壁を教えてください

創業当初は自己資本でスタートしたため、資金調達に苦戦しました。

 

キャッシュフローの悩みは誰もが経験すると言われています。本で読むと「そんなの当然だろう」と思っていましたが、実際に経験すると大変でした。冷静に対応し、優先順位の高い問題から順番にひらすらコミットすることで乗り越えました。

 

この経験から学んだことは、様々な教材がある中で、実際に現場でお客様に価値を届ける体験に勝るものはないということです。本からの知識と比べ、実際のお客様との関わりから得る経験は何百倍も価値が違います。そのため私は「まずはお客さんと向き合うこと」を最優先にしてきました。

 

生成AIサービスでシェア1位を獲得したい

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

社員が「うちの会社が一番楽しい」と言ってくれることです。そのコミュニティ的な喜びが大きなモチベーションになっています。

 

サービス面では、お客様から「御社と仕事ができてよかったです」という言葉をいただけるのがシンプルに嬉しいです。

 

また、当社は「仕事のやりがいはGiveから始まる」という考え方を大切にしています。自分から与えると相手も与えたくなるものです。採用面接でも、一緒に飲みに行ったりランチに行ったりして、まず時間を使うことを心がけています。

今後やりたいことや展望をお聞かせください 

生成AIサービスが乱立している中で、シェア1位を取ることです。無謀な目標かもしれませんが、多くのサービスがある中で最も使ってもらえるサービスを目指しています。

 

この目標は、3〜4年で達成したいです。AI市場はスピードが非常に速いため、今現在で一気に資金を投下しサービスを成長させ、今後どうなるかを見てみようと考えています。

 

マーケティング戦略としては、現在は代理店を主軸に展開しており、法人向けは代理店と展示会に力を入れています。展示会には年14回ほど出展しています。toC向けには既存コミュニティとの連携を進めており、近々有名コミュニティと公式アンバサダーという形で提携する予定です。

 

成長し続けたいなら起業の道へ

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

起業は、自己成長が好きな人には非常に向いていると思います。楽しいことがたくさんあれば辛いこともたくさんあり、総合的に見るとわずかにプラスだと感じています。

 

起業の醍醐味は、現場で一度挫折し改善していく、の繰り返しの過程にあります。組織に所属するより自分で事業を動かす方が、売上を含め全てを主体的に見ることができる面白さがあります。だからこそ、成長したい方には起業をお勧めします。

 

「失敗したらどうしよう」と心配する人は多いですが、起業して少しでも結果を出せば経験と能力を買ってくれる企業はたくさんあります。起業はリスクだと構えすぎず、思い切って挑戦すれば予想以上に面白い経験になるでしょう。

 

採用を強化されているそうですね。どのような人材が理想でしょうか?

カルチャーフィットを重視しています。

 

エンジニアの場合は経験を見ざるを得ない部分もありますが、営業職やビジネスサイドに関しては、柔軟な思考を持っていること、組織で一緒に頑張ろうという熱量を持っていることを重視しています。

 

エンジニア以外の職種であれば、特化した技術を持っていなくても大丈夫です。現在のマーケティング部長は学生インターンから始め、最初はAIの知識が全くありませんでした。しかし、展示会の法人営業で結果を出し、今では法人営業全体の総括をしています。現場で知識を学び、成長できる環境が揃っています。

 

▼採用情報の詳細はこちら
https://jobs.bocek.co.jp/

 

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:沖村 昂志氏

1998年北海道札幌市生まれ。2018年東京工業大学第5類に入学。2019年、Web マーケティング企業を経て、2020年株式会社Draftyを創業、同社取締役COOへ 就任。株式会社Draftyの退職後、2022年6月に株式会社Bocekを創業。

 

企業情報

法人名

株式会社Bocek

HP

https://bocek.co.jp/

設立

2022年6月

事業内容

  • オールインワンAIツール「Taskhub」の提供
  • 生成AIコンサルティング事業
  • 生成AI基盤チャットボット「AmyChat」の提供
  • 生成AI情報ポータルサイト「PROMPTY」の運営

 

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