
株式会社ヒトミー 代表取締役社長 滝川 翔
岡山や岐阜、広島といった地方の求人情報に特化した媒体「ヒトミー」。東京などの大都市ではなく地方特化にもかかわらず、学生たちの間では認知度が高まりつつあります。代表取締役社長の滝川翔氏に、なぜ地方特化型のサービスをあえて選んだのか、そこに込められた想いをお聞きしました。
地方に特化しているからこそ、学生たちに地元企業の魅力が伝わる
事業の内容をお聞かせください
弊社は地方特化型説明会求人媒体「ヒトミー」を運営しています。掲載している情報は、主にインターンや就職・転職に関する企業説明会の情報です。
地方の人手不足という課題解決に貢献すべく、それぞれの企業が自社で採用課題を解決できるようサポートするのがサービスの主旨となっています。そのため実態としては採用コンサルタントに近い事業です。また、人を採用することだけに専念するのではなく、各企業の魅力を発信するブランディング支援の領域までを手がけています。
媒体としての「ヒトミー」の特徴は、岐阜・静岡・岡山・広島・香川を中心とした地方の企業情報に特化している点です。東京・大阪・名古屋など大きな都市の企業情報は掲載していないので、比較されることもありません。
日本の各地域には非常に魅力的な企業が多く存在するにも関わらず、学生たちがそれらの企業に注目する機会があまりに少ないためにマッチングが実現していない現実があります。
確かに東京には地方にはない最新のビジネスがあふれていますが、そもそもがアメリカなどで既に広まっているビジネスの後追いであるケースも多いでしょう。日本が本当に世界で勝負するためには、日本ならではの強みである一次産業や伝統文化などに関連した事業を手がける地方の企業にこそチャンスがあると、私は考えているのです。
学生たちに地方の魅力を知ってもらうために、まずは「ヒトミー」を入口として多くの企業との出会いを作る必要があります。
そこで「ヒトミー」では、求職者側にポイント制を導入しました。学生が参加した説明会のアンケートを書くと、ポイントが付与される仕組みです。そうして貯まったポイントは、現金やギフト券に交換できます。就職活動中の学生はアルバイトなどを休止せざるを得ず、収入が減ってしまう現状があるため、食費などに充ててもらえればと考えてポイント制を始めました。
こうして求職者から回収したアンケートで説明会の満足度や課題を分析し、各企業にフィードバックします。こうして説明会の回数を重ねるごとに内容が改善されていく流れになっています。
「ヒトミー」はまだ新しいサービスですが、私自身が複数の学生団体にスポンサーとして入っていることもあり、学生の間での認知度は少しずつ高まってきていると感じています。
最近では週3のペースで学生たちとの交流会に参加していて、都内でも学生から声をかけられることが増えました。現在媒体としての「ヒトミー」は大学生をメインのターゲットとしていますが、今後は高校生や第二新卒のユーザーにまで広げていこうと考えています。
また、弊社のもう1つの強みとしてSNSからの流入が挙げられます。実は私が以前SNSに関する事業を手がけていて、そのノウハウを生かして企業のインタビュー動画をSNS上で公開するといった取り組みも始めました。企業のブランディングにはSNSが効果的で、学生向けの求人情報だけでなく、今後は世界に向けて日本各地の企業の魅力を発信するためにも活用していく予定です。
さらに動画制作は「ヒトミー」にも取り入れようと考えていて、今後はできるだけ文字情報を減らして、企業に関して動画で表現する方向性で検討しています。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
私は19歳くらいの頃、夢や目標が見つからずに悩んでいた時期があったのです。そのときに悩みを相談させてもらった人がいて、その人が採用に携わる業界の人だったというのが、この世界に入ったきっかけでした。
まずはインターンとして働くことになり、法人営業やキャリアアドバイザーの仕事を経験させてもらいました。そうして働くなかで、いつか自分自身が起業して経営者として大きな仕事がしてみたいという漠然とした夢も出てきました。
そこからSNSの事業を自分で新たに立ち上げて念願の起業を果たしましたが、その事業も基本的に企業の採用支援に関わるサービスです。20歳の頃から今まで、私の仕事の主軸には「いかに採用を成功させるか」があったと言えます。
インターンとして働いているときにも、SNSを用いて企業支援をしているときにも、地方の企業ほど採用で大きな課題を抱えているという現状を強く感じました。「説明会に人が集まらない」「採用支援のサービスは料金が高すぎる」「自分たちのニーズに合ったサービスが無い」といったお悩みは常に耳にしてきました。
そしてお客様から「自分たちのような地方の企業に特化した採用支援サービスを作ってもらえないか」とご要望を受け、意を決して新たに立ち上げたのが「ヒトミー」です。
訪問の数で、地方の営業の壁を崩す
仕事におけるこだわりを教えてください。
一番のこだわりは、人を大事にすることです。
常にお客様を最優先にし、お悩みごとについて聞かせていただくときには、何時間でも耳を傾けます。重要なのは、お客様が今何を求めているのか理解することです。
本来私は負けず嫌いな性格もあって、「絶対契約を取るぞ」というところに強いこだわりがあるのです。けれど、意識的に自分のそうした部分を抑えて、目の前のお客様のお悩みを丁寧に聞くよう心がけています。
もう1つ心がけていることとして、常に笑顔というのは意識しています。こちらの表情が堅いと、やはり人はなかなか心を開いてくれません。それではお客様のニーズを深堀できませんから、「この人にだったら話したい」と思ってもらえるような、明るい笑顔を絶やさないようにしています。
起業から今までの最大の壁を教えてください
今直面しているのが、地方特有の営業の壁です。私はこれまで東京や大阪での営業が多かったのですが、地方には地方の難しさがあると身をもって感じています。
例えば営業感を出しすぎると相手が引いてしまったり、その地域の文化を考慮して対応しなくてはいけなかったり、といった課題もあります。中でも一番大きいのは新しいものに対する拒否感で、そこをいかに崩していくかが地方での営業の鍵だと思います。
そのため、私はとにかく相手に何度でも会うようにしています。一度断られても、もう一度提案させてくださいと言って会いに行く、一緒に食事しましょうと誘い続ける、それの繰り返しです。
やはり地方のほうが「遠くから会いに来た」ということで誠意が伝わりますし、今はオンラインで済ます人が多いので、対面で話すことで強く印象づけられるようになったのだと思います。
何より地方の経営者の人などは、オンラインで話そうにもZoomの使い方を知らないことも多く、私が訪問してそうしたツールの使い方もレクチャーすると大変喜ばれます。今の時代といえども、やはり地方が東京と比べて情報が2、3年遅れているのは事実です。そこで、私ができるだけ東京のトレンドなどを共有することで、地方の企業にも必要な情報を届けられたらと考えています。
地方創生という大きな夢を抱いて
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
やはり大きな夢を持つことがモチベーションになると思っています。
私は小学校2年生から18歳までサッカーに取り組んでいて、真剣にプロを目指していました。その時期は大きな夢があったからこそ楽しかったし頑張れたのですが、足の怪我をきっかけにプロになる夢を諦めることになり、その後の19歳から20歳のときには何をするにもモチベーションが維持できなかったのです。
今は「2029年までに地元岡山で上場する」と目標を立て、20代のうちに地方で上場して地域を盛り上げるという夢を再び持つことができました。それを達成できれば地元への恩返しにもなりますし、何よりも「東京にしか選択肢がない」と当時の自分が感じていた思いを、次の世代にはさせずに済むでしょう。
今就職活動をしている若い世代の中にも、東京を息苦しく感じている人や、一度は東京の企業に勤めたものの地元に帰りたいと思うようになった人もいます。そうした新卒や第二新卒の人たちは地方の企業の魅力を知らず、そのせいで東京の企業しか選択肢がないと思い込んでいるだけなのです。
我々が企業のブランドを発信して彼らに届けることができれば、きっと新しい可能性が開けます。そして私が地方でのビジネスで大きな成功事例を示せば、同じように地方にチャンスを見出だして地元で起業しようと思う人も増えるかもしれません。そうすれば、もっと地方が盛り上がると、私は信じています。地方創生という大きな夢が、今の私のモチベーションです。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
直近の大きな目標は、2029年に岡山で上場することです。20代で地方の経営者が上場を成し遂げた例はないので、実現すれば投資家や東京の企業の目も地方に向けられ、地域活性化につながるでしょう。
その後は地方の黒字倒産や後継者のいない企業などを買収して、ホールディングス化するという構想があります。豊田市におけるトヨタ自動車のような巨大な経済圏を持つ企業を、岡山で育てたいのです。
また弊社は「22世紀の地域を守る会社」をコンセプトとして掲げていて、そこに対してまずは目の前のクライアント企業の課題を一つひとつ解決していき、地方で元気な企業を増やすことが一番大切だと思っています。
最終的には「地方から世界で戦える企業を生み出す」というのを必ずやり抜く覚悟なので、興味を持ってもらえる企業様や投資家の方がいらっしゃったら、ぜひ力を貸していただきたいです。そして地方の自治体の方々も、新しい取り組みやイベントをお考えの方はぜひご連絡ください。現地に伺って、企画から運営まで私自身がサポートさせていただきます。
何よりも大切なのは時間、今より若いときはない
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
私は何より大切なものは時間だと考えています。だから、起業したいと思ったらすぐに行動するべきだと思うのです。誰にとっても、今より若いときはありません。
失敗を恐れる気持ちはあると思いますが、若いうちなら何度でもやり直せます。私自身、経営者として売上や資金繰りの面で確かに苦労はあります。けれどモチベーションを持って色んなことに挑戦できる今が、最高に楽しいです。
大きな夢を持って、迷わず飛び込んでみてください。まずは色々な人に会って、自分の想いを伝えるところから始めてみるといいと思います。共に頑張りましょう!!!
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:滝川 翔氏
岡山出身・東京、岡山在住。地方特化型人材紹介事業や地方創生事業を展開中。2029年までに地元岡山から上場を目指し、「四方良し」のビジネスで地方活性化に取り組む。
企業情報
法人名 |
株式会社ヒトミー |
HP |
|
設立 |
2024年12月25日 |
事業内容 |
地方に特化した人材紹介・採用支援サービス |
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