
株式会社aby 代表取締役 後藤 悠紀
株式会社abyは、システムやアプリケーションの受託開発をはじめ、資金調達支援やDX推進など、幅広いサービスを手がけています。技術力だけでなく、人間力を重視する経営方針が大きな特長です。ピボットを経て現在の事業を構想し、独自の強みを築いた代表取締役の後藤悠紀氏に、起業のきっかけや今後の展望、将来の起業家へのアドバイス、さらには採用したい人物像についてなどを伺いました。
システム開発から資金調達までワンストップで支援
事業の内容をお聞かせください
システムやアプリケーションの受託開発を主に手がけています。我々の強みは、開発の上流から下流まで一貫して対応できる点にあり、また、開発の幅が非常に広いことも特徴です。
具体的には、業務システムやスマートフォンアプリ、DX支援、ホームページ制作、ECサイトの構築など、多岐にわたる領域で開発を行っています。
また、我々のもう一つの大きな特徴は、単なるシステム開発にとどまらず、ファイナンス面での支援も行っている点です。融資や補助金の調達支援、エンジェル投資家の紹介といった資金面での支援も手がけています。
これは、我々の会社にCFOが在籍しており、開発とファイナンスの両方をサポートできる体制があるからです。
たとえば、中小企業のお客様が「システムを導入したいが、キャッシュが足りない」といった課題を抱えている場合には、我々が融資の手配を行い、必要な資金を確保するお手伝いをします。
ほかにも、補助金の申請を支援し、採択された場合にはその資金を開発費として有効にご活用いただいています。スタートアップ企業であれば、エンジェル投資家とのマッチングを行うなど、包括的な支援を行っています。こうしたサービスにより、我々は他の開発会社とは異なる、独自の強みを築いています。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
自分の力はどの程度なのか、通用するのか昔から気になっていました。自分の知らない世界にチャレンジをしようと思ったのが起業したきっかけです。
私の先輩が亡くなった経験や、自分のペインから「これ以上このような事象を増やしたくない」と思い最初は、オンラインカウンセリングサービスを立ち上げました。
しかし、マネタイズが非常に難しく、自分が期待したような結果を出すことができませんでした。今振り返っても、オンラインカウンセリング市場は簡単ではなく、当時の自分が捉えていた市場感にもズレがあったと感じています。
私はもともとエンジニアでしたので、開発スキルはありました。ただ、実際にカウンセリングサービスを立ち上げてみると、開発はできても、それをお客さまに届けるという点で大きな壁にぶつかりました。
そうした経験から、現在の事業にピボットすることになりました。当時、複数の顧問の先生方からアドバイスをいただく機会があり、その中で「システムやアプリ、ホームページを作ってくれないか」という依頼をいただきました。その言葉をきっかけに、自分には他にできることがあるのだと気づき、今の事業をスタートさせました。
逃げずに、やり切る──人間力を重視する仕事観
仕事におけるこだわりを教えてください
私の仕事における基本のポリシーは「逃げずにやり切る。なんとかする」です。この姿勢は、一緒に働くエンジニアにも大事にしてほしいと思っています。
エンジニアというと、技術に特化していればいいと思われがちですが、私はむしろエンジニアこそバイタリティが必要だと考えています。なぜなら、どんなに良いものを作っても、最終的には人と人との信頼関係の中で仕事は成り立っているからです。
実際、開発案件であっても、DX支援であっても、発注をいただくにはまず、私たち自身を信頼してもらう必要があります。数百万円から数千万円規模の案件が多いため、技術力だけでなく、誠実さや責任感、人としての信頼が非常に重要です。
だからこそ、エンジニアにもコミュニケーション能力や人間力を磨くことが求められると思っています。今はAIの進化も目覚ましい時代です。そんな中で生き残っていくためには、人間力がより一層大切になってくるでしょう。
起業から今までの最大の壁を教えてください
起業してから、何度も壁に直面しました。中でも大きな壁だったのは、プロダクト開発をしていた時の出来事です。
当時は、事業計画に基づいてある程度の数字の見通しが立っており、CFOとも相談のうえ、まずはデットファイナンス(借入)でスタートしました。その後、追加の資金調達を進める計画で、運転資金を得るために受託開発の仕事も同時に並行して行っていました。
しかしその過程で、ある案件で開発費を支払ってもらえないという事態に直面しました。その結果、未払いによるキャッシュアウトが数千万円にのぼり、大きな負債を抱える危機に陥りました。
「これは本当にまずい」と感じた私は、そこからとにかく行動を起こしました。取引先に直談判しにお願いに行ったり、周囲の知人や関係者に「仕事を紹介してください」と頼み込み、あらゆるチャンスを使って動きました。
正直なところ、あの壁を越えられる人はあまり多くないでしょう。幸いなことに、私には支えてくれる先輩方がいてくださったので、なんとか乗り越えることができました。
あの経験は非常に厳しかったですが「深く考えすぎずに、とにかく動くことが大切だ」ということを学びました。動き続けることで、何とかなることを身をもって体感した経験でした。
自分自身とチームの成長を追い求める
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
モチベーションのひとつは、「いけるところまで行ってみたい」という純粋な探求心です。
経営者として、事業をどこまで成長させられるのか、自分自身の力をどこまで高められるのか、そんな思いが原動力になっています。同時に、自分だけでなく共に働く役員や従業員をどこまで成長させられるのかもモチベーションの一つになっています。
社会的な観点で言えば、今後は主力事業であるDX支援をさらに推進し、人材不足に悩む地方企業や老舗企業の力になりたいと考えています。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
これまで取り組んできたDXプロジェクトを、地方を含めてさらに広げていきたいと考えています。
DXがうまく機能すれば、企業が成長フェーズに入ったときに、より大きなレバレッジがかけられるため、その可能性を多くの企業で実現していきたいです。成長意欲の高い企業に積極的に入り込んで、伴走していければと考えています。
また、中小企業向けのM&A領域におけるDXプロダクトも構想しています。
さらに、過去に立ち上げたオンラインカウンセリングサービスを再始動したいと考えています。大きくスケールさせるというよりは、必要な人に届けられるサービスとして展開し、会社としてのビジョンやポリシーを体現するサービスにできればと考えています。
世の中は甘くないが、起業を通じて得られる貴重な経験がある
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
世の中は決して甘くないと、私自身強く感じています。しかし、それ以上に、起業を通じて得られる経験は本当に面白く、かけがえのないものだと思っています。壁も多いですが、どれだけ面白い経験ができるかにフォーカスして、頑張っていただけたらと思います。
また、求職者の方、とくにエンジニアの方にお伝えしたいのは、貪欲に学び吸収しながら、しっかりとアウトプットをしていく姿勢が大切だということです。
そして、それと同じくらい「人間力」を高めることが、長期的に見て非常に大きな武器になると考えています。技術だけでなく、人としての魅力や信頼感を備えたビジネスパーソンを目指していただけたらと思います。
採用について、貴社が求める人材像と、入社後にどのような経験を積めるのかを教えてください
私が採用で重視しているのは「人間力」です。エンジニアのスキルはもちろん大切ですが、正直なところ、世の中に開発会社は無数にあり、一定以上のスキルを持った人材も多いため、スキルだけで差をつけるのは難しいと感じています。
発注側から見ても、実力は大差がない場合が多く、最終的に決め手となるのは「人となり」であることが少なくありません。
だからこそ、当社ではエンジニアであってもお客さまと直接会話し、課題を引き出し、ビジネス視点でディスカッションできる力を大切にしています。実際に、そうした力を持つメンバーが活躍していることが、当社の大きな強みになっています。
経験面では、少数精鋭のチームだからこそ、開発の上流工程から下流工程まで一貫して携われる環境が整っており、幅広い経験を積むことができます。資金調達にも関わるため、なぜ企業が資金を必要とするのかといった、経営的な背景を理解する機会もあります。
さらに、クライアントの多くは中小企業の経営者のため、経営者が抱えるリアルな悩みに直接触れながら仕事をすることで、ビジネス全体を俯瞰する力が養われる点も大きな魅力です。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:後藤 悠紀氏
企業情報
法人名 |
株式会社aby |
HP |
|
設立 |
2021年1月 |
事業内容 |
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