【#418】「LINEでのショップ開設」と「事業成果を伸ばす」2軸の支援で日本のよさを世界へ・未来へつなぐ|代表取締役社長 西澤 理花(株式会社Chai)

株式会社Chai 代表取締役社長 西澤 理花
株式会社Chaiは、LINEで簡単にオンラインショップを開ける「BuyChat」と、グローバルビジネスや中小企業の事業成果を伸ばすトータルサポートを提供する「NOVUS」の2つの事業を軸に、日本の「いいところ」を世界へ・未来へとつなぐ企業です。現在は国内でサービス提供を行っていますが、世界展開を目指し、躍進を続けています。今回は、代表取締役社長の西澤理花氏に、起業までの経緯や今後の展望などをお伺いしました。
地方力やモノづくり、伝統…日本の「いいところ」を世界へ・未来へ。
事業の内容をお聞かせください
私たちは「日本の誇りを、世界へ・未来へ。」というミッションのもと、2つの事業を展開しています。
1つ目は、LINEを活用したECプラットフォーム「BuyChat」です。スマートフォンとLINEさえあれば、誰でも簡単にオンラインショップを開設・運営できるサービスで、地方の商店街や農家、ハンドメイド作家など、地域に根ざしたスモールビジネスの方々に多くご利用いただいています。
特に、他のECプラットフォームと比べて利用者の年齢層が高く、50代以上のオーナーや購入者の方も多い点が特徴です。LINEという日本国内で圧倒的に普及しているアプリを基盤にしているため、スマホ操作に不慣れな方でも、手軽にデジタル販売を始められるのが大きな強みです。
購入者にとっても、LINE内ですべての購入体験が完結します。公式LINEからショップを探すこともできますし、実店舗で気に入ったショップのLINE会員になることも可能です。会員登録後は、チャットで注文したり、LINE内のホームページを通じて決済を行うなど、普段使っているアプリの中でシームレスに買い物が完了します。
オーナーが配信機能を設定していれば、消耗品の消費のタイミングで通知が届き、簡単にリピート購入できる点も、継続利用の促進につながっています。
現在、BuyChatは大規模な広告展開は行っていませんが、電話や訪問、地域イベントなどのオフライン施策や、利用者からの紹介を通じて少しずつ拡大を続けています。また、今後は地方自治体やローカルインフルエンサーとの連携を強化し、地域全体を巻き込んだ活性化にも取り組んでいきたいと考えています。
2つ目の事業は「NOVUS」という、中小企業やスモールビジネス向けのマーケティング・データ分析支援サービスです。
BuyChatの運営で蓄積してきたデータとノウハウを活かし、コンサルタントやデータ分析の専門家チームとAIを組み合わせて、販促やブランディング、SNS運用などの課題に応じた実践的な支援を行っています。
最近では、企業名とURLを入力するだけで基本的なレポートを自動生成できる無料ツールの提供を開始し、より多くの企業が自社の可能性に気づくきっかけを提供しています。
特に私たちの強みは、自社でECプラットフォームを保有し、日々そこに蓄積される膨大なデータを活用できる点にあります。これまで多くのスモールビジネスの支援に取り組んできた中で、実践的なノウハウとリアルな運用知見を蓄積しており、それらをもとにした質の高い支援が可能です。
今後もこの強みを活かしながら、地域発の価値ある事業を世界へとつなげていくことを目指しています。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
私は21歳までのほとんどを海外で過ごし、22歳のときに日本へ戻ってきました。帰国後に改めて感じたのは、日本には地方の力強さやモノづくりの技術、伝統文化など、世界に誇れる「いいもの」がたくさんあるということでした。その一方で、そうした価値あるものがあまり世の中に知られておらず、十分に活かされていないことにもどかしさも感じました。
最初に取り組んだ事業は、ペットフードの販売です。最初は、自分たちで商品を売る側としてスタートし、各地のマルシェやイベントに出店していました。活動を始めて1年ほど経った頃、コロナ禍が始まり、多くの小規模な販売者が営業を続けられずに店を畳む姿を目の当たりにしました。
ペットフード事業自体は順調だったのですが、そんな中でも本当に良い商品をつくっている人たちが苦しんでいる状況を見て、「こうした人たちを支える仕組みの方が、自分にとってもっと意味がある」と強く感じるようになり、それが、今の事業を始める大きな転機となりました。
ヒアリングを重ねてお客様の想いを汲み取り、事業に反映する
仕事におけるこだわりを教えてください。
私が仕事でいちばん大切にしているのは、「まずお客様の声にしっかり耳を傾けること」です。業務の中ではつい「効率化」や「DX」といった言葉が先行しがちですが、どんなに便利な仕組みでも、お客様の想いや悩みをきちんと理解していなければ、本当に意味のあるサービスにはならないと思っています。
BuyChatでは、出店者の方と直接お話しする機会が多くあります。ヒアリングやサポートの場では、目の前の課題だけでなく、その背景や想いまで丁寧に受け取ることを大事にしています。そうすることで、プロダクトやサービスにきちんと反映し、使いやすくて続けやすい形にしていくことができます。
実は、私の母もBuyChatを利用して刺繍作品の販売やオンライン教室を始めた1人です。家族という最も身近な存在の声を聞きながらサービスを磨いてきた経験もあり、どんなお客様に対しても「大切な誰かの挑戦を支える」という気持ちで向き合っています。
起業から今までの最大の壁を教えてください
一番大きな壁は、「社会人としての経験がない中で、どう信頼を築くか」でした。
私は大学院を卒業してすぐに起業したため、いわゆる「社会人経験」がありませんでした。特に難しかったのは、自分より年上の方々と一緒に仕事をするときです。「若すぎる」「経験が浅い」と感じさせてしまう場面もありましたが、だからこそ、しっかり行動で示しながら信頼を積み重ねていくことを大切にしてきました。
また、組織づくりにおいても苦労しました。自分自身が会社の中で働いたことがないので、評価制度やカルチャー、採用の基準などをゼロから考える必要がありました。人を雇い、チームをつくり、事業を前に進めていくのは想像以上に大変で、ひとりで抱え込みすぎてしまうこともありました。
事業面でも、最初に手がけたドッグフード販売から現在のプロダクトにたどり着くまでの転換期は、正直かなり厳しいものでした。コロナ禍とも重なり、売上も形になるプロダクトもない状態が1年ほど続いた時期は、精神的にも大きな試練でした。それでも、「本当に必要とされるサービスをつくりたい」という想いを支えに、地道に前に進んできた感覚があります。
打席に立ち続ければいつか成功する
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
私のモチベーションは、「挑戦し続ければ、必ず何かをつかめる」という信念です。起業から7年が経った今でも、私は常に次の打席に立ち続ける気持ちを持ち続けています。
そしてもう一つの原動力は、お客様の変化や成長を間近で見られることです。たとえば、コロナ禍で事業継続が難しかった方が、私たちのサービスをきっかけに再び立ち上がっていく姿に何度も勇気をもらってきました。
身近な例でいえば、私の母もその一人です。もともと専業主婦でしたが、今では自分の作品を販売したり、オンライン教室を開いたりと、生き生きと活動しています。そうした変化を間近で見ているからこそ、この事業が人の人生を動かす力を持っていると実感していますし、それが私の大きなモチベーションになっています。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
まず「NOVUS」の支援領域をさらに広げていきたいと考えています。現在は国内のマーケティング支援が中心ですが、私自身がこれまで築いてきた海外とのつながりも活かしながら、将来的には海外市場への支援も展開していきたいと思っています。
さらに先の展望としては、「事業承継」にも取り組みたいと考えています。良い商品や技術を持ちながら、後継者不足で継続が難しくなっている方々を多く見てきました。そういった価値ある事業が次の世代へ受け継がれるよう、支援の形をつくっていけたらと思っています。
BuyChatについても、海外展開に向けて準備を進めています。LINEは台湾やタイなどでも広く使われており、実際に現地に足を運んでヒアリングも行いました。ただし、国ごとに通信環境や使われているアプリが異なるため、それぞれの事情に合わせた展開方法を慎重に検討しています。
私たちは、日本にも海外にも、まだ埋もれた魅力を持つ人や商品がたくさんあると感じています。たとえば、ファッションやお茶など、海外でも十分に通用する商品がもっと広がっていくような流れをつくりたいですし、将来的には他国のローカルビジネスを支援する側にもまわっていきたいです。
「本当に良いもの」が正しく伝わり、未来につながっていく。そんな世界を、私たちのプロダクトを通じて少しでも広げていけたら嬉しいです。
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
自分の中に「やってみたい」と思える気持ちがあるなら、人と比べることなく、その想いを信じて一歩を踏み出してみてください。起業の過程では、特に資金調達の場面などで、思いがけない否定的な意見を受けることもあります。でも、どんなにうまくいかないことがあっても、挑戦を続けていれば、必ずチャンスは巡ってくると私は信じています。
とはいえ、すぐに成功する人はごく一部です。だからこそ「本当にやりたいこと」であることが大切です。続けるためには、強い想いや覚悟が必要になります。
私自身、「その領域に20代の10年をかけられるか?」を一つの基準にしています。それくらいの覚悟があるテーマなら、たとえ壁があっても乗り越えていけると思います。焦らず、着実に、一緒に挑戦していきましょう。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:西澤理花 氏
1996年生まれ。幼少期はアメリカ、中国、日本、ドイツで過ごす。2017年UC Berkeley数学学部応用数学学科を卒業、2018年Columbia University大学院の教育政策学部データ分析学科(修士)を卒業。その後日本に帰国し、2018年10月に株式会社Chai設立。 設立当初のオーガニックドッグフード販売事業を推進していた際、ブランドと顧客の接点の複雑さに疑問を持ったことをきっかけに、シンプルな買い物体験を提供できるサービス「BuyChat」を開発。その後、ドッグフード事業、BuyChat事業での経験を活かし、いいものを世に届けるためにできることは何かと考え、成長支援サービス「NOVUS」を立ち上げる。
企業情報
法人名 |
株式会社Chai |
HP |
|
設立 |
2018年10月1日 |
事業内容 |
日本の可能性を磨き、次世代へ繋ぐ。 直感的に使えるLINEで完結するECプラットフォーム 「BuyChat」 と、調査・分析から戦略設計、実行までを伴走する成長支援サービス 「NOVUS」 を運営。 |
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