
株式会社ヒオリス 代表 藤田 豊和
「原点を、頂点に。」というブランドスローガンを掲げる株式会社ヒオリスは、東海地方を拠点とする映像ブランディングカンパニーです。名古屋、東京と拠点を展開する中、地元岐阜県美濃市の350年の歴史を活かしながら、温故知新、新旧交えた現代の先端を走るクリエイティブを発信し続ける代表の藤田豊和氏に、事業内容や今後の展望について詳しくお聞きしました。
「お客様主体」映像ブランディングで企業の経営課題を解決
事業の内容をお聞かせください
映像制作を得意として、企業や自治体のブランディング支援を行なっています。ブランディングを設計から制作まで一気通貫で行うスタイルの中、映像分野に特化している理由には、私自身のキャリアと今の時流が関係しています。
クリエイティブの業界に入って20年になりますが、元々はグラフィックデザイナーと商業フォトグラファーとしてスタートしました。名古屋でスタジオを運営していたのですが、2011年に生まれ故郷である岐阜県美濃市に戻り、家業で70年ほどやっている製紙会社の新事業立ち上げ、その後個人事業でのクリエイティブ事務所を経て、現在の法人化に至りました。
スタジオのカメラマンとして照明や撮影を手がけていた経験に加え、ディレクションが得意だったこと、また18歳の頃から音楽業界でのキャリアもあったので、自然な流れで映像分野に携わるようになりました。
2019年頃には、岐阜県内初となるRed社8Kシネマカメラ(1機1000万円程する業務用シネマカメラ)を2機投入し、多数の照明機器、音声収録も自社施工、加えて自社でスタジオを完備しています。
地方では十分と言えるほどの制作環境を作り上げ、ブランディングに特化した映像制作会社は東海地方では数社に留まり、県内では頭一つ抜けている状態。受賞歴、大手出版社やメーカー、マンションデベロッパーなどとの実績があります。
現在では、お客様からよく伺うお悩みの一つが「採用」です。中堅会社でも新卒採用に困る中、企業のコンセプトの再設計、世界観作り、発信。インハウスでは品質が上がらない中、私たちがお役に立てる現場が増えてきている印象です。
また、事業承継のタイミングでのご相談も多いです。2代目、3代目が継承し、2、3年事業を行い、いよいよ自分の時代を作っていく、そんな時に先代の想いを汲み取り、社員と一緒になってブランドイメージを一段階あげています。
その過程で、コンセプト設計や、ターゲティング、コンテンツ設計、制作、発信。ブランドマネージャーとしてお客様と並走し、制作においては映像だけでなく、Webやグラフィックまで、総合的な世界観づくりをお手伝いさせていただくケースが多いです。
ブランディング設計ではどのような点を重視していますか?
ブランディングで重要なのは「お客様自身が主体になる」ことです。
私たちはアート制作ではなく、商業デザイン、総じてブランディングとここでは呼ばせていただきますが、定義をすると、「情報を導き出し、整理し、磨きあげ、見える化する」仕事と定義しています。自分たちが本来作りたいものではなく、お客様が表現したいものを優先する必要があります。
そして、お客様が創り出したい世界感、表現したいものを見極めるには、ヒアリングやコンサルティングが非常に重要です。デザイン力や撮影力、映像制作力という技術的な部分に注目されがちですが、制作物として目に見えにくいディレクション(先導役)の部分が重要だと考えています。
イメージのすり合わせやニーズを引き出すためには、とにかく話すしかありません。この業界に入って以来、様々な経験を積む中で、お客様の真のニーズを引き出せるようになってきたと思います。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
起業(法人成)のきっかけは、個人事業として写真映像デザインなど、企業ブランディングなどを手がけていた頃に出会った私の師から教えて頂いた一つの言葉。「経世済民(けいせいさいみん)」という言葉です。
この言葉は本来、「経世」と「済民」を合わせた仏教用語です。真理で世を治め、民を救う、という意味で、これが略され、また意味も随分と変化し、現在の「経済」という言葉になっています。現代では多くの人が経済というとお金をイメージしますが、本来、経済というものは「世の中や、人を救うためにあるもの」だったのです。
私もかねてから勉強をさせて頂く、偉大なる起業家や経営者たちは、雇用や自社の商品、サービスを通じて何十万人、何百万人という人々とその家族の生活を支え、雇用を生み出し、納税によってこの母国の発展に寄与してきました。これこそが「経世済民」の実践であると、8年ほど前に教わりました。
当時私は名古屋から故郷岐阜に戻っていましたが、映像や写真、ましてやブランディングなどの仕事に携わるには、少なくとも名古屋、やはり東京の都市部に出るのが一般的でした。実際、岐阜にはWEB系、印刷系の優秀なデザイン会社さんはいくつかありましたが、真剣にブランディングに特化した映像ができる会社はありませんでした。
そんな中でも、私は地方にいながら大手企業の案件に携わり、大規模なプロモーションにも関わることができていました。そうした経験を通じて実感したのは、”やり方次第で地方にいてもクリエイティブな仕事ができるということです。
一方で、若い人たちがそうした仕事に挑戦しようとしたときに、その第一歩を踏み出せる場が、地域にほとんど存在していないという課題にも気づかされました。そこで一念発起、法人化に踏み切り、私の起業の1丁目1番地として、「クリエイティブ業界の地方雇用を生み出すこと」を掲げました。
”関わる人全て”が幸せになる事業運営にこだわる
仕事におけるこだわりを教えてください。
事業を伸ばしていくには、戦略や戦術、「ヒト・モノ・カネ」などのリソースも大事ですが、目には見えない哲学や倫理観とのバランスを1番大切にしています。企業運営をしていく上で欠かせないものが人です。縁あって弊社に入社して頂いた人たちが、生活していく上で糧となるお給料も、クリエイターとしての技術向上も大切です。
そうした定量的な観点と併せて、私は定説的な部分とのバランスも大切にしています。なかなか若い世代ではこうした事を学ぶ機会は家庭や学校でも少なくなっていますが、企業で働く中で”自分の人生の幸せは何か”、そんな哲学的な部分に触れ、成長をしていける企業風土を作っています。
名古屋、関東と拠点展開する中でも、地元美濃市で、築350年700坪の文化財を全館改装し、本社兼迎賓館としていることも、物や情報が溢れるこの時代、”間”、を大事にしてほしいという私からの社員やお客様へのメッセージでもあります。
昔、著名人の一冊に「間抜けの構造」という本がありました。大変共感する内容でした。クリエイティブに真剣に向き合いたいからこそこだわる、”間”という存在。それはもちろんクリエイティブ制作の活動にも影響し、結果、お客様の世界観を作り上げていくことに寄与します。
経営や、組織構築に関しては、まだまだ私も勉強中で模索しています。私自身プレイヤーとして長く活動してきて、経営経験はありませんでした。創業から6年経ってようやく経営の「け」の字が見えてきた段階なので、これからだと思っています。
私や弊社に関わる全ての人を幸せにする。それが私なりの事業を通じた経世済民の実践方法、こだわりなのかもしれません。
起業から今までの最大の壁を教えてください
私自身、経営者としての経験が不足している中で、どのように事業を成長させるかが最大の課題です。事業が成長しなければ、雇用の創出や社員の幸福、何よりお客様の夢の実現も叶いません。その実現に向けて自ら率先して事業成長を牽引する必要があると強く感じています。
この課題を乗り越えるためには、シンプルに「営業力の強化」が不可欠です。
プレイヤーとしてはそれなりに時を経てきましたが、営業となるとまだまだ勉強しなければなりません。現在は、優秀なプロデューサー人材や営業人材の採用による営業力の向上が、最も重要な課題であると認識しています。
これまでは有難いことに、東海地区でお客様からのご紹介を中心として、ビジネスを展開してきました。良くも悪くもですが、地元では弊社に頼むのは敷居が高い、というブランドポジションが確立され、品質の高い作品を提供することで、また先にあるお客様をご紹介いただく流れを築いてきました。
しかし、地元では「敷居が高い」と感じられる一方、名古屋、関東の相場と比較すると当社の価格は約3分の2程度であり、過去には関東のお客様から、見積もりが安すぎて経営を心配されることも何度かありました。
私たちでいう商品とは、RED品質をはじめとした高品質な映像制作からSNSなどの細やかな映像制作、一気通貫で行うブランディングなどにあたりますが、やはり、どの業界、どの商品においても、マーケティングが最重要です。
日本の伝統文化に根ざした映像制作会社だからできることがある
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
当社には20代の若手スタッフが多く在籍しており、彼らの成長が企業の成長に直結していると実感しています。その成長を促進し、時に見守り、共に歩むことが今の私の大きなモチベーションです。
私が描くコンセプト「原点を、頂点に。」この言葉の先には、社員一人ひとりの幸せだけでなく、地域社会やお客様の幸せも確実に存在しています。その実現に向けて、日々邁進して行きたいと考えています。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
定量的な部分ですと、先ずは5年で売上10倍の成長を実現することを目標に掲げています。
先ほども申し上げたように、弊社は、岐阜県美濃市の、伝統建築物保存地区「うだつの町並み」内にある、築350年700坪の文化財をリノベーションし、本社を据えています。そこには、充実した機材・設備を備えると共に、真剣にクリエイティブに向かい合える環境を構築しています。
そのような中で、多様な業種のお客様との取引実績や受賞歴も重ねてきました。歴史・設備・実績。全てを図って行ってきたかというとそうではなく、有難いことにご縁の中で運に恵まれ6年目を迎えました。このある種恵まれた、バランスの取れた体制を整えているクリエイティブ企業は、国内においても非常に稀であると自負しています。
こうした強みを最大限に活かし、まだ私たちの力が届いていない全国のお客様にも貢献したいと、また時には、他の地域からのIターン、Uターンの就職先として、未来の仲間の力にもなりたいと考えています。
そして定性的な観点で申し上げますと、日本の文化や伝統を背景に持つ私たちだからこそ提供できる、海外への発信活動を行っていきたいと考えています。
現時点では具体的なサービス形態は控えますが、インバウンドが増える中、一時的な需要の享受に留まらず、日本文化×クリエイティブ、この観点から将来的な事業領域の一つとして取り組んでいきたいと考えています。
もうひとつ、私の願いとしては、美濃市の文化財の本社には、迎賓館として江戸から残る書院づくりの和室、明治中期建設の豪華客間など、全部で10部屋以上の部屋があります。茶室も備えており、私が茶道を嗜むこともあり、ご来社頂くお客様にはしばし日常から離れていただき、茶を点て、ゆっくりと互いの話に花を咲かせる、こんな一時を楽しみにしています。
名古屋からは高速で1時間以内ですので、観光しながら、ブランディングのご相談に足を運んでいただけるようになる事が、私の今後の夢です。
小さな一歩を踏み出してみる
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
大変烏滸がましい事で、何かをアドバイスできるような知見は持ち合わせていないのですが、もし一言、と言われるのであれば、私は、「とにかくやってみる」ことをおすすめします。
起業や経営は、挑戦してみると上手くいかないことも多いです。実際に私はそうでした。ですが、実際に行動を起こさなければ何も分からなかったと思います。
私自身も、小さな一歩を踏み出したことで、人や物事とのつながりが拡がり、次第に可能性が開けていくことを体感し、実感しています。まずはできることから、行動に移されると、きっと次の何かが、またご縁で自分の元にやってきてきてくれる、そんな体感があるかもしれません。
貴社のサービスに興味がある企業へのメッセージをお願いします
名古屋、東京でもかねてからお問い合わせを頂いておりますが、採用にお困りな企業は現在非常に多いと感じています。
自社の世界観を作り上げていくことや、映像に限らず「どのように自社を表現したらよいのか」「どういう伝え方をすれば効果的なのか」というお悩みがあれば、ぜひご相談ください。
私は岐阜、名古屋、東京、湘南逗子と拠点を点々としております。また、美濃の築350年の文化財を改修した本社は、迎賓館としてお客様をお迎え致しております。茶室もあり、観光かねてお越しいただき、普段の喧騒から少し離れ、ゆっくりとお話ができる場所です。いつでもお気軽にお声がけ頂ければと思います。
▼お問い合わせはこちら
https://hioryes.jp/contact/
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:藤田 豊和氏
1985 岐阜県美濃市生まれ
2003 愛知県名古屋市にてフォトグラファー・デザイナーとして活動開始
2004・10 渡米・渡JAMAICA音楽活動、愛知県でクリエイティブ活動
2011 岐阜県美濃市へUターン
2014 個人オフィス「Office Fujita」設立
2019 株式会社HIORYESへ法人化
2021 岐阜県初Red社8Kシネマカメラ導入
2021・22 岐阜県関市観光PRプロデューサー
2021 ドラマ「フラワーズブルーム」プロデュース/制作
2023 日本国際観光映像祭2023 入賞
2023 ブランド・マネージャー認定協会認定資格取得
2023 集英社「SHUEISHA MANGA-ART HERITAGE」映像担当
2023 FujiFilmX-H2 8Kショートフィルム「Detail in Life」制作
2024 築350年旧郡上八幡城主本陣 古民家スタジオ 「たまぼし」プロデュース
2024・2025 岐阜県関市立関商工高等学校 名古屋モード学園 特別講師
2025 名古屋・東京・湘南オフィス開設
企業情報
法人名 |
株式会社ヒオリス |
HP |
|
設立 |
2019年12月3日 |
事業内容 |
|
関連記事