
Empire State株式会社 代表取締役社長 板倉 小陽
「営業の総合商社」を謳うEmpire State株式会社では、各業界のトップセールスが集結して営業特化型の企業支援サービスを提供しています。そのサービスの質の高さにより、現在は新規依頼の8~9割が既存顧客からの紹介によるという同社。今回は代表取締役社長の板倉小陽氏に、サービスの特徴や起業の経緯についてお聞きしました。
営業人材不足という課題に、あらゆる角度からアプローチ
事業の内容をお聞かせください
弊社は法人営業に特化した営業代行やコンサルティングなどのサービスを手掛ける会社です。
メンバーは国内の上場企業のトップセールスで構成されており、法人・個人向けの営業で豊富な経験と実績を積んできています。この営業領域のノウハウを活用し、国内の企業の皆さまのお役に立つべく事業を立ち上げました。
現在、国内では営業人材が著しく不足している状況です。日本企業の49%が営業人材不足に悩んでいるともいわれています。
営業としてキャリアをスタートさせても、その後は企画やコンサルティングなどに移っていって、最後まで営業として走り続ける人材は少数です。
しかし事業には必ず「物を作ること」と「物を売ること」という2つの要素が必要です。どれだけ良い商品やサービスを作っても、売る人間がいなくては事業は高止まりすることになります。
現在ではECやAI技術の発展によって、インターフェースに人間の介入は不要と思われるかもしれません。しかし、営業という仕事には未だ大きな可能性があると考えて、営業特化型のサービスを構築しました。
我々は営業特化型のサービスではあるものの、お客様の課題をすべて営業に結び付けてご提案するわけではありません。まずお客様が目指しておられるビジョンを共有していただき、それらに合わせてサービスを提供させていただいております。
また弊社では現在、「BUDDY」というフリーランスの営業人材とのマッチングプラットフォームも運営しています。登録人材には誠実な人柄とビジネススキル、そして仕事への姿勢という3つの点で厳格な審査基準を設けており、ハイレベルな営業人材を見つけられるのが特徴です。
弊社ではこのように営業代行、コンサルティング、マッチングプラットフォームとあらゆる角度から、お客様の営業力強化のお手伝いをさせていただいております。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
起業したいという考えはずっと昔から抱えていましたが、何のためにするのか、具体的に何がしたいのかは見つかっていませんでした。
大学卒業後に大手保険会社に入社し、営業として成功を得ました。ただ保険という商品はあまりに限られたシーンでしかお役に立つことができませんでした。私はお客様が直面するもっと重要な経営課題の解決を支援したいと考えて、コンサルティング企業に転職を決めました。そこでは大手メーカーのプロジェクトに携わっていましたが、起業への思いは消えていませんでした。
さらに後悔のない人生を送りたいという気持ちが湧きあがり、そこでやっと起業に踏み出すことができました。一緒に会社を立ち上げたのは、中学生の頃からの親友です。お互いが大手企業でキャリアを築いている途中でしたが、「挑戦によって人の可能性を広げる」というビジョンを信じて、取締役副社長の前田 康太と起業しました。
事業内容は、効率的かつ戦略的な営業支援を通じて、クライアント企業の成長を力強く後押しできる、法人営業に特化したBtoBサービスに決めました。なお、社名には私自身の原点ともいえる思い出が込められています。幼い頃、父に連れられて訪れたニューヨークでエンパイア・ステート・ビルを目にしました。
その壮大な姿に心を打たれ、以来、私にとって夢の象徴として心に刻まれてきました。この体験が、今のビジネスを志すきっかけとなり、社名にもその思いを込めています。
「量は質を凌駕する」という信念
仕事におけるこだわりを教えてください。
私が仕事の軸としているのは「量は質を凌駕する」という考えです。仕事で重要なのは、量だと思います。
お客様に対しては、私も効率や質といったお話はさせていただきます。ですが質や効率の追求というのは、あくまでも量をこなしたうえで見えてくるものです。ですから、私はいつでも仕事量や行動量に一番に重きを置いています。
またもう1つ、従業員と共有したいビジョンとして「挑戦によって人の可能性は広がる」ということも非常に重視しています。
弊社の役員陣は、全員が上場企業でのキャリアを有しています。仮にそのまま勤め続けていれば、20代で年収1,000万円を超えることも現実だったでしょう。しかし、あえてその道を選ばず、自らの可能性を信じてベンチャーの世界へ挑戦する道を選びました。
私たち自身のその選択と姿勢が、「たった一度きりの人生だからこそ、本当にやりたいことに挑戦し、自分の可能性を広げてほしい」というメッセージとして、多くの方に届けたいと考えています。ですから、社員のモチベーションを保つうえでも、我々が見ている挑戦と可能性のビジョンを全体に徹底的に共有するということを心がけています。
起業から今までの最大の壁を教えてください
私自身が仕事に没頭しすぎて不安定になり、眠れない状態が続いた時期が大きな試練だったと思います。
仕事に終わりがなく、その感覚を恐れるのと同時に楽しいという気持ちもあり、かなり不安定な精神状態に陥っていました。眠っているときでも、夢の中で仕事をしていたこともあり、実はかなり追い込まれていたのだと思います。
しかしこんな状況がいつまで続くのかと思う一方でずっと続いてほしいとも思っていました。
今振り返るとこの時期を乗りきったことが、1つの壁を超えた瞬間だったと言えます。
従業員のモチベーション向上に必要なのは、ビジョンの共有
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
いつも自分の会社が社会にとって意味のある場所になるようにという目標を持って進み続けています。
そして私自身もこの世に生きた証を残したいという願いがあり、それをやり遂げずして辞めることはできません。それが個人的なモチベーションになっていますが、私は経営者ですから自分だけでなく、従業員にも同じようにモチベーションを高く保ってもらう必要があります。
そのために大切なのはビジョンの共有です。自分が見ている景色と会社が見ている景色を共有することを重視しています。
私自身、常に「誰よりも働く」という意識を持って経営にあたっています。現場で直接動くことは少ないかもしれませんが、経営には多くの重要な課題が山積しており、ひとつひとつに真摯に向き合う必要があります。
だからこそ、経営者として自ら率先して取り組む姿勢を示し、メンバーたちに「誰よりも働くリーダーの背中」を見せることが、組織全体を鼓舞する力になると信じています。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
今後はビジネスを発展させて物を作る側にも進出していきたいと計画しています。
これまで売ることに関してのノウハウや実績を築いてきました。次は自分たちで製造し、お客様にダイレクトに自社製品をお届けする企業へと成長したいです。
今、私が特に関心を寄せているのは医療機器の分野です。超少子高齢化へと進む日本において医療の発展は不可欠であるにも関わらず、製造は得意であるものの営業が弱いという医療機器メーカーが少なくありません。そのせいでマーケットが広がらなかったり、医療分野全般の進歩が遅れていたりといった問題が起きており、それを営業の力で変えていきたいと思っています。
また今後は組織づくりにもさらに注力したいと考えており、より多様性のある職場を実現していきたいと思います。
目指すのはフルリモートで働く人や外国籍の人、何らかのハンディキャップを持つ人など、様々なバックグラウンドを持った人材が気持ちよく働き、成果を出せる組織です。
働く人の能力と可能性をどれだけ引き出せるか、我々経営者側のミッションだと捉えています。他では活躍できなかった人たちも、ここでなら能力を発揮できると思ってもらえる組織にしていきたいです。
起業が「五方良し」につながる選択かを考える
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
起業は決してゴールではありません。「起業したい」という強い気持ちがあるにせよ、それはあくまでも手段として考えるべきでしょう。
大切なのは、自分の人生の目的はどこにあるのか、本当のゴールをあらかじめ設定しておくことだと思っています。
そしてもう1つ、自分のことだけでなく、もっと広い視野で見て直感的に起業したいと思ったのならば、起業するべきです。
私が好きな言葉に「五方良し」というものがあります。五方とは「お客様・従業員・社会・未来・自分自身」を指します。この5つすべてにとって良いものでなければ、どのような物事もうまくいかず、そして自分自身も苦しい思いをするはずです。
まずはこの「五方良し」を考えて、そのうえで起業が最も適切な選択肢であると思ったのなら、そのときにこそ起業へと一歩踏み出してみてください。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:板倉 小陽 氏
立命館大学卒業後、東京海上日動火災保険株式会社で法人営業、代理店支援業務、地域交通課題解決事業に参画。その後、経営コンサルティング会社であるデロイトトーマツコンサルティング合同会社へ転職し、某大手企業へ基幹業務システムの要件定義案件並びに実行支援のプロジェクトへ参画。2023年9月にEmpireState株式会社を設立し代表取締役社長に就任。
企業情報
法人名 |
Empire State株式会社 |
HP |
|
設立 |
2023年 |
事業内容 |
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