Quickry株式会社 代表取締役社長 坪井勇介

「入店を待たされない」あるいは「待ち時間をより有意義に過ごす」という価値をユーザーに提供し、なおかつ店舗側には費用の負担をかけない。そんな画期的な整理券システムを開発したのがQuickry株式会社。今回は代表取締役社長の坪井勇介氏に、この理想的なサービスが生まれた経緯をお聞きしました。

 

店舗の初期費用・システム利用料0円の整理券システムを実現

事業の内容をお聞かせください

弊社が開発したサービス「Quickry」は、飲食店を始めとした店舗向けの整理券システムです。一般的な整理券システムが店舗側にシステム利用料の負担を強いるものであるのに対し、「Quickry」は初期費用や月額利用料の縛りがなく利用できるというのが最大の特徴となっています。

 

これを可能にするのが店舗の利用料以外からの収益モデルで、「Quickry」では店舗の利用お客様向けの有料機能で利益を上げる仕組みを実現しました。具体的にはお金を払うことで入店の順番を早めることができる「優先案内券」と、お店から離れた場所でも順番取りができる「遠隔整理券」という数十円〜数百円の課金プランです。

 

これらの整理券の発行手数料によってマネタイズできているため、店舗の方々には無料で「Quickry」を使っていただくことができます。

 

もしも店舗側が、優先案内機能によって順番を抜かされる利用者の不満を懸念するのであれば、この機能はオフにもできます。ですが「Quickry」には、順番を抜かされた利用者にポイントで還元する仕組みがありますから、実は抜かれた人にとってもお得なシステムです。

 

もちろん抜かされ続けていつまでも入店できないという事態にならないように、割り込み数にも制限を設けています。そして待っている人にはその時間を店舗前に縛られず、より生産的に充実して過ごしていただきます。

 

店舗前にお客様が戻ってくる順番はランダムで、店舗スタッフの案内においても優先案内利用者とその他の利用者に差異がないため、抜かされたことに気づきにくい仕掛けになっているのです。

 

待ち時間を楽しく過ごしてもらうために、周辺施設の中でその人の嗜好に合ったものをレコメンドし、「待っている間に施設Aと施設Bが回れます」というようなプランも提案しています。さらにクーポン情報なども紹介するので、利用者もお店の外で過ごす方へとより意識が向きやすくなるでしょう。

 

アンケート調査なども実施した結果、集客やブランディングに適した行列の長さは5人から10人が理想と判明しました。そこで弊社としては店舗側に、この人数になるように行列をデザインしていこうというお話をしています。

 

Quickry」の導入は簡単で、Webアプリのアカウントを作成してもらい、こちらからお送りしたQRコードのポスターをお店に貼ってもらうだけです。

 

管理画面はできるだけ見やすく直感的に操作できるようデザインしていますし、飲食店、アパレル、理美容院などあらゆるお店で使っていただけます。導入コストがかからないので、単発のイベントを運営する事業者様などにもおすすめです。

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

この事業を始めることになった背景は、単純に私自身が行列が嫌いだったということです。並ぶのは嫌いなのですがラーメンが好きで、仕方なく待ち時間を我慢してきました。その経験が人よりも圧倒的に多かったということもあって、いつしか「待ち時間はもっとこうあるべき」と考えるようになりました。

 

また、学生時代には先輩が立ち上げた会社にインターンとして参加したことで、今の起業につながる独立心を養うこともできました。その後友人と一緒に最初の起業を試みましたが、それは失敗に終わって借金だけが残る形になってしまいました。

 

そのような状況だったため、ひとまず就職という道を選びましたが、そのとき会社選びで重視したのは残業が少なく副業が許可されていることです。もう一度自分で事業をやりたいという気持ちがずっとあり、それが実現可能な環境を選びたかったのです。

 

希望どおり、入社後には営業代行などの様々な副業を経験しました。その中で、とある会社の社長に今の待ち時間についての自分の考えやサービスのアイデアを聞いてもらったところ、「そんなアイデアがあるなら、やってみればいい」と背中を押してもらいました。

 

そうして、あくまでも副業という形ですが、今の整理券システムの事業を立ち上げることを決意しました。

こだわっているのは、店舗が純粋に収益を増やせる仕組み

仕事におけるこだわりを教えてください。

店舗側のシステム利用の金銭的な負担は抑える、あるいはまったく無くすという方向でビジネスモデルを構築することです。

 

日本国内では「お店は安くて良いものを提供するのが理想」という考えが根強く、そのために店舗側は薄利にならざるを得ない現状があります。

 

そんな店舗から整理券システムや予約システムの利用料まで頂いてしまっては、お客が増えても実際にはほとんど儲からないという結果になってしまうでしょう。それでは店舗側にとっても我々にとっても消耗戦で、持続的な関係は期待できません。

 

そのため、我々のサービスを使ってもらえればお店が確実に儲かるという仕組みにこだわり、最近ではそうしたビジネスモデルの新たな予約システムも考案して、すでに特許を出願済みです。

 

起業から今までの最大の壁を教えてください

起業初期に最も苦労したのは、「契約」に関する認識の甘さでした。立ち上げ当初は、人との信頼関係や熱意を優先してしまい、しっかりとした契約書を交わさないままプロジェクトを進めてしまったことがありました。

 

当時は「細かい契約より、まずは形にすることが大事」と考えてしまいがちでしたが、後になって認識のズレが生じ、権利や報酬に関するすれ違いが大きな問題に発展してしまいました。

 

幸い、話し合いや法的な確認を経て円満に解決できましたが、今思えば、最初にお互いの役割や条件を文書化しておくことの重要性をもっと理解すべきだったと痛感しています。

 

この経験を通じて、どんなに信頼できる相手でも、後々の誤解を防ぐためには書面での合意が不可欠であるという、経営者としての基本を学びました。

 

社会に対する「もっとこうあるべき」という思いが自分を動かす

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

一番は、世の中に対する「もっとこうであればいいのに」という思いを追求したい欲求だと思います。

 

私は昔から何についても「こうあるべき」ということを考えるのが好きでした。会社勤めにおいても、組織の旧態依然としたやり方を変えるべきだと思えば、はっきりとそう提言します。もっと良いやり方を考えて、既存のシステムを変えるべく挑戦するのが好きなのです。

 

他の人がやらないことをやるというのも気分が良いと思いますし、根がそういう性分なのだと思います。だからこそ皆が当たり前のように行列に並んで順番待ちをしているのを見ていると、「いや、待ち時間はもっとこうあるべき」という自分なりのアイデアが湧いてきます。それを突き詰めて実現したいという気持ちが、私の原動力です。

 

今後やりたいことや展望をお聞かせください 

私がこの整理券システムやその周辺の事業で実現したいのは、「何かをしたいと思ったときに待たされる体験」を変えることです。

 

「すぐに利用できる」、待つとしても「待ち時間を生産性のある時間に変える」ということを目的として、今後もプロダクトを展開していきたいと思っています。その1つが整理券システムですが、それに加えて新たに予約システムの開発にも着手しました。

 

例えば歯医者に行きたいと思っても、予約が取れるのは2週間先というのはよくあることでしょう。けれど、ときとして歯が痛くて2週間も待てないという場合もあります。そうなったときに、直近の予約を押さえている人にお金を払って譲渡してもらえるような仕組みがあれば便利です。

 

反対に予約をしていたけれど行けなくなったという人にとっては、キャンセル料の負担が無くなるメリットも生まれるでしょう。

 

このように予約の流動性を生み出し、そこで収益化できるビジネスモデルがあれば、既存の予約システムのように店舗側が利用料を何十万も負担しなくてはならない現状も打開できます。私が目指す「システム利用によって店舗がより一層儲かっていく」という仕組みにも繋がるのです。

 

ゆくゆくは、私が今本業で携わっている街づくりと、これらの自社サービスをリンクしていければという展望もあります。現状、Googleマップなどでお店の位置は分かっても、どこのお店が今どのくらい混んでいるかは分かりません。整理券システムや予約システムと連動させて、そこまでの情報を可視化できるようにしたいと考えています。

信頼できる人にすぐ相談できる環境づくりを

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

私はまだ偉そうにアドバイスできるほどの成功は収めていません。それでも自分の経験からお伝えしておきたいと思うのが、誰かに相談できる環境は大切だということです。

 

何か悩みや迷いがあったとき、起業を経験している人などが身近にいるのは強みになります。私はそういう相談相手がいなかったので、色々と失敗してから「もっとこうしておけばよかった」と後悔することが少なくありませんでした。

 

今振り返ると、もしも行動する前に誰かに聞くことができたら、そういった失敗も避けられたのだろうと思うのです。ですから起業を考えるのであれば、信頼できる人にすぐ相談できる環境を整えておくほうがいいと思います。

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:坪井勇介

神奈川県平塚市出身。29歳。

2019年にNTT東日本に入社し、代理店の販売支援業務や地域自治体と協業してまちづくりに従事。2024年に株式会社Rundots(現Quickry株式会社)を創業して、ウェブ整理券サービスを提供。

 

企業情報

法人名

Quickry株式会社

HP

https://lp.quickry.jp

設立

2024年2月2日

事業内容

WEBサービスの開発、運営

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