株式会社イチドキリ 代表取締役 徳永 崇志

完全成功報酬型の補助金申請支援を掲げる株式会社イチドキリ。システム開発案件に特化し、採択率は約8割を誇ります。代表取締役の徳永崇志氏に、事業を始めた経緯や、今後の展望を伺いました。

 

採択率約8割、成功報酬型

事業の内容をお聞かせください

当社は中小企業様向けの補助金申請支援を行う会社です。特徴は主に3つあります。

 

1つ目は、システム開発に活用できる補助金申請に特化している点です。私自身がエンジニア出身で、この分野のご相談を多くいただいたことからこの領域に集中しています。

 

開発領域はAIエージェント、ノーコード、モジュール、AR/VRなど専門用語が多いのが特徴ですが、申請資料ではそれらを直感的かつ分かりやすく表現することを常に心がけています。

 

2つ目は、「完全成功報酬型」である点です。着手金や顧問料といった初期費用は一切かかりません。申請が採択された場合だけ、成功報酬として採択額の10〜15%をいただきます。

 

一般的な補助金支援サービスでは、最初に10〜30万円程度の着手金が発生し、採択時にも追加で10〜20%の報酬がかかるのが普通ですが、当社では余計なオプション料金や顧問料などは一切いただきません。

 

成功報酬のみで事業が成り立つ理由は、私自身が「通る案件」を見極めていることにあります。一般的に補助金申請の採択率は4〜5割程度ですが、当社の採択率は約8割ほど。元エンジニアの私が、補助金の趣旨に合った事業かどうか、審査を通過する可能性が高いかどうかを経験的に判断できるからです。

 

採択の可能性が低いと判断した案件はお引き受けしておりません。それが、お客様にとっても私たちにとっても最も誠実な対応だと考えているからです。

 

3つ目は、お客様の手間を極力減らしている点です。30分ほどの初回ヒアリングで必要情報を整理し、その後は当社が伴走しながら申請準備を進めます。補助金リサーチや要件整理、申請書策定など煩雑な工程は当社がサポート。法令を順守したうえで、お客様の手間と時間を大幅に削減します。

 

ご相談の内容としては、「自社で使える補助金はないか」といった大まかなご相談をよくいただきます。システム開発には1000万円以上の費用がかかることも多く、資金的なコストを削減したいとの切実なニーズがあるのです。

 

このほか「この補助金を使いたいが、資料の書き方が分からない」「一度申請したが落ちてしまった」といった具体的なご相談もあります。

 

補助金には国・都道府県・市区町村の3階層があり、それぞれに制度が異なります。当社はお客様が「何をしたいのか」「予算や規模はどの程度か」を丁寧にヒアリングしたうえで、最適な補助金を選んでいきます。

 

また補助金を活用する上でのデメリットや事業進行における制約事項も必ず伝えた上で、お客様にご判断いただくようにしています。

 

弊社には、中小企業診断士や行政書士の資格を持つ者もおりますが、補助金申請は資格よりも実務経験や資料策定力が問われる分野ですので、多様なバックグラウンドを持つ専門家がチームを支えています。

 

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

事業を始めたきっかけは、祖父の影響が大きいです。彼は60歳で兵庫県の園田競馬場で走る競走馬を預かる「競走馬休養センター」と競馬関係者向けの飲食店を起業しました。その背中を見て育った私は、いずれ自分も起業するだろうと漠然と思っていました。

 

その後、どんな事業で起業しようかと考えたとき、当時伸びていた個人向けのキャリアコーチングサービスに注目しました。正直、熱意があったわけではないのですが、事業として採算が取れると思い、500万円の融資と100万円の自己資金、合計600万円で事業をスタートさせました。

 

しかし、実際にやってみるとTikTok広告に毎月数百万円を投じても成果が出ず、売上もあがりきらないまま、資金が100万円を切るところまで追い詰められました。精神的にもきつくなり、人生で初めて仕事が原因で寝込むほどのうつ状態になってしまったのです。

 

そこで「自分に何ができるのか」を改めて考えた結果、前職で行っていた補助金の申請支援の経験を思い出しました。「これなら自分も熱をもってできる」と思い、周囲の知人に声をかけてみたところ、「手伝ってほしい」といった声をいただきました。そこで補助金申請支援に注力することに決めて、今に至ります。

 

 

この経験があったからこそ、今では“心から熱意を持てることだけを仕事にしよう”と決めています。

誠実に、自ら最前線で

仕事におけるこだわりを教えてください。

私の行動指針は2つあります。1つめは「目の前のお客様に誠実に向き合い、全力で取り組む」、2つめは「自分が自社サービスの1番の営業マンになる」です。

 

前者について、私は人生の時間は有限であると強く感じています。会社名を「イチドキリ(一度きり)」と名付けたのも、こうした想いが根底にあります。経営者が限りある人生の時間を事業に注ぎ込み、挑戦し続ける姿は本当に格好良いと感じ、心から尊敬しています。

 

支援する立場として、お客様に誠実に向き合い、補助金を使うメリットもデメリットもきちんと説明し、納得いただいた上で支援する。それが私たちの基本スタンスです。

 

もう1つの「自分が自社サービスの1番の営業マンになる」については、以前のキャリアコーチング事業の失敗経験からきています。当時は理屈先行で、コーチングへの熱量も乏しかったため、顧客対応をすべてメンバー任せにしていました。

 

事業の失敗で寝込んでいたとき、リクルート時代の上司の言葉を思い出しました。「営業はAccount Executiveだ。Account=顧客へのExecutive=代表はお前だ。お前の背後には広報・マーケ・開発など会社全員がいる。代表として顧客に向き合え。」

 

そのひと言が胸に突き刺さり、ハッとしました。以来、商談の最前線には必ず自分が立ち、サービスの魅力を誰よりも語れるのは自分だと肝に銘じて動いています。

 

起業から今までの最大の壁を教えてください

先ほど述べた通り、個人向けキャリアコーチング事業で資金が底をつきかけ、1カ月ほど寝込んだ時期です。いざ撤退を考えたときに「会社をたたむのにも100万円近くかかる」と知り、愕然としました。

 

完全に道が塞がれたように感じ、精神的に人生で最も苦しかった時期だったと思います。

 

立ち直れたきっかけは、自分自身の思考習慣にあります。気持ちが落ち込んだときは紙に現状を書き出し、客観的に状況を見つめ直し、少しずつメンタルを立て直しました。

 

そして、やりたいことばかりを追いかけるのではなく、「今の自分にできることは何か?」に目を向け直しました。私は過去に本業と副業を合わせて4社で新規事業開発に携わり、興味のある領域の国内外企業のIR資料を四六時中読み込んでいた時期もあります。

 

事業計画書を何本も書き、壁打ちを重ね、実証実験を繰り返しました。

 

結果、リサーチの速さと確度が大きく向上し、事業の成否を左右する「変数」がどこにあるのかを即座に把握する癖がつきました。

 

その経験やスキルを買われて友人たちから事業相談を受ける機会が増え、自分では当たり前だと思っていた知見や分析が感謝されるようになりました。

 

それが今のビジネスにつながっています。とりわけ補助金申請支援の仕事は、さまざまな会社やビジネスモデルを深く知ることができるので、とても楽しく刺激的です。

国と企業と個人をつなぐ「ハブ」になる

今後やりたいことや展望をお聞かせください 

 私は、国・企業・個人の「やりたいこと」をつなぐ「ハブ」のような存在でありたいと考えています。補助金は、国が実現したい政策や方向性を具体化した手段の一つです。そして、それが企業の目指す方向や挑戦と重なるのであれば、両者を結びつけることに大きな価値が生まれます。

 

補助金申請支援の仕事は、まさにその接点を見出し、橋渡しする役割を担っており、私はその意義を強く感じています。そして今後は支援の領域をさらに広げていくつもりです。

 

今、特に注目しているのがリスキリング(学び直し)の分野です。キャリアが一度途切れた方や、環境の変化で新しいスキルが必要になった方が、再び社会や企業で活躍できるよう後押しする仕組みをつくりたいと考えています。

 

公的支援制度と親和性が高く、制度を活用した持続可能な支援モデルを設計できる可能性があると考えております。

 

私は教育分野に強い思いがあります。実家は元々寺子屋を営み、両親や親戚には教員が多い環境で育ちました。大学では教育学部に所属し「スタディサプリ」のような教育サービスに携わった経験もあります。またリスキリング補助金でも多くの事業者を支援してきました。

 

人は生涯にわたり学び続けることで、新しい挑戦のチャンスをつかめると信じています。だからこそ、公的制度と民間の挑戦をつなぎ、誰もが学び直せるエコシステムを整えることが私の次の目標です。

 

補助金申請支援で培った「ハブ」としての強みを生かし、この領域でも価値を提供していきたいと思います。学ぶ人が増え、挑戦する人が増えれば、社会全体にさらなる活力が生まれると信じています。

できることに目をむけよう

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

起業する前は、「経営者はみんな超仕事ができる超優秀なスーパーマン」だと思っていました。でも実際、自分を含めた周りの経営者の方々は、皆がそうとは限りませんでした。

 

むしろ、自分のやりたいことに愚直に向き合っている人たちばかり。「自分には無理」だと思っている方も、まずは一歩踏み出してみることをおすすめします。

 

「自分が何で事業をすべきか?」と悩んでいる方には、「他人からよく褒められること」や「自分にとってまったく苦にならないこと」に注目してみるのがいいかもしれません。

 

やりたいことだけでなく、できることに目を向ける。そこにヒントがあると思います。

 

御社に興味のある方に一言をお願いします

自社でシステムを新規開発・追加開発したいと考えられている企業様に向けてですが、初歩的なお問い合わせからでも、ぜひご相談いただきたいです。

 

30分で、どのような制度の活用可能性があるのかお答えできます。

 

また、受託開発を行っている会社さまからは「他社との差別化が難しい」「営業が大変」といったお悩みを聞きます。補助金を一つの提案材料に加えることで、アポイントの獲得がしやすくなったり、提案単価を上げられたりといった効果があります。

 

過去には130社以上を集めたセミナーを共催した実績もあり、こうした協業も大歓迎です。

 

事業を広げるためにも、IT領域に知見がある、もしくは興味を持っている方に当社に参加していただきたい。他社の事業やビジネスモデルに対して関心を持てる方だと、より仕事を楽しめるはずです。まずはお気軽にご連絡ください。

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:徳永 崇志

兵庫県西脇市出身。エンジニアからキャリアをスタートし、リクルートで教育系SaaS「スタディサプリ」の法人営業を担当した後、レアジョブでAIを活用した新規事業を立ち上げる。その後素材図書で役員を務めたのちにイチドキリを設立し、システム開発に使える補助金の完全成功報酬型 申請支援を行う。

 

企業情報

法人名

株式会社イチドキリ

HP

https://ichidokiri.jp/

設立

2023年01月

事業内容

  • 資金調達(補助金・融資)支援事業
  • 引退競走馬支援 関連事業

 

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