【#454】栄養と美味しさをそのまま閉じ込めた、第3のペットフード|代表取締役社長兼CEO 岩橋 洸太(株式会社バイオフィリア)

株式会社バイオフィリア 代表取締役CEO 岩橋 洸太
今人気のドッグフード「ココグルメ」の製造・販売を手掛ける、株式会社バイオフィリア。食材の味や栄養を損なわない製造方法にこだわり、高価格路線のペットフードブランドを展開しています。一般的なフードの3倍以上の価格でも売れ続ける同社の商品の魅力について、代表取締役CEOの岩橋洸太氏にお聞きしました。
栄養豊富で、人間も食べられる品質のペットフードを
事業の内容をお聞かせください
弊社はワンちゃんやネコちゃんのための手作り品質のフードを製造・販売しています。手掛けるブランドは現在主力となっている愛犬用手作りごはんブランド「ココグルメ」と愛猫用手づくりごはんブランド「ミャオグルメ」です。そしてミャオグルメから新しく登場したネコちゃん用ピューレおやつ「にゃっち」も最近人気が出てきています。
これまでペットフードといえばカリカリの呼び名で知られるドライフード、そして缶詰やパウチに入ったウェットフードが主流でした。そして我々が取り組むのは第3のペットフードとも呼ばれる「フレッシュフード」というジャンルで、現在はこの市場は拡大期にあります。
フレッシュフードの大きな特徴は、まず原材料のグレードの違いです。通常ペットフードの一部には「飼料グレード」と呼ばれる、人間が口にするものよりグレードが低い材料が使用されている場合もあります。
しかし弊社では人間が食べる「食品グレード」の材料を使用し、さらに人間の食べ物を加工している工場で製造しています。そのためワンちゃん、ネコちゃんはもちろん、飼い主さんも食べられるほど安心・安全な品質です。
そしてもう1つの特徴となるのは、フレッシュフード特有の製造方法です。通常は保存性を高めるために高温・高圧で加工して、食材に負荷をかけます。しかし、このやり方ではどうしても味や栄養が損なわれるため、フレッシュフードでは食材を低温で加工し、できたてを冷凍状態で保存するという方法を取ります。
さらにココグルメは肉の比率にもこだわりを持ち、一般的なフレッシュフードの肉の割合が3割〜4割が多いのに対して、6割〜7割という比率で味と栄養を追求しています。実際に飼い主さんがペットフードを選定する際に弊社の「ココグルメ」を食べてみたところ、「味に非常に満足した」というお声もいただいています。
またオンラインショップを通じて直接消費者の方に販売するDtoCの形態をとっており、お客様の声をすぐに商品改良に活かせるのも強みです。現に4年間で8回の製品リニューアルを実施していて、このスピード感は、我々の強みであると自負しています。
お陰様で現在はフレッシュフードの市場において弊社が圧倒的1位を占めています。我々の事業は元々「動物たちを救いたい」という思いから生まれているので、こうして得た利益の一部は保護犬猫へのフード支援や動物保護団体さんに寄付をしています。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
原体験となっているのは、実家で子どもの頃から一緒に暮らしていた2頭の愛犬と過ごした日々だと思います。2頭とも本当に愛おしく「こんなに無垢で純粋な存在はない、動物とは何て尊いんだろう」と感じました。
2頭ともすでに亡くなりましたが、病気だったために非常に苦しみながらの最期でした。その姿を見ていた私は当時深い哀しみに襲われました。
その経験で気づいたのが、この辛さは愛犬の死そのものよりも「2頭のためにもっと何かできたのではないか」と自分を責める気持ちや後悔からくるものだということです。他の人たちにこんな辛い思いをしてほしくないという気持ちから、愛する我が子のために飼い主ができる精一杯のことは何かを考えて「食」に辿り着いたのです。
手作りのご飯を食べているワンちゃんは、ペットフードを食べているワンちゃんよりも平均で3年ほど長生きするというデータも知りました。犬にとって、3年というのは非常に大きな違いです。
我々が手作り品質のフレッシュフードの商品を展開すれば、ワンちゃん、ネコちゃんたちはもっと長生きできるかもしれません。そしていつか亡くなってしまっても、飼い主さんの後悔を減らすことができるかもしれません。そうすれば私のように苦しむ人も減ると考え、この事業に賭けることにしました。
「毎日がDay 1」変わらない情熱でやり抜く
仕事におけるこだわりを教えてください。
心がけていることとしては、「自分のやっていることが社会に良い影響を与える」と常に意識するようにしています。
会社を大きくして社会にインパクトを与えたいという思いはずっとあるのですが、「そもそもこの仕事自体が果たして社会にとって良いことなのか」という点には気をつけておく必要があると考えています。
例えば、我々のような事業でいうと、単純に商品のお肉の比率を30%を下げれば、その分、会社としては多くの利益を生み出せます。けれどそれがお客様の求めていることか、ワンちゃんの健康のためになるかというと決してそうではありません。
人間の社会は一社一社の、ひとりひとりの積み重ねによって形作られるものです。それぞれの心がけによって世界は変わると思うので、環境が変わっていくことに期待をするのではなく、自分自身がこの世界を変えるために仕事をするということには強いこだわりを持っています。
また、私自身がこうした信念を持つのは当然のこととして、できるだけ他のメンバーにも同じ思いを持ってもらうようにメッセージを発信しています。やはり日々仕事をしていく中で当初の想いを忘れることは人間誰しもあるので、例えば、「毎日がDay 1」というフレーズで入社した当初の想いを絶やさず、情熱を持ってやり続けようと伝え、どうぶつの幸せを一緒に目指しています。
そうした会社が目指すべき方向性はしっかりと全社で共有しておく必要があるので、現在、新たな「ミッション・ビジョン・バリュー」の発表も準備しています。
起業から今までの最大の壁を教えてください
資金が底を突きかけた事が最大の壁です。
大学卒業後に大手証券会社に4年半勤めて経験を積んだのち、最初は動物の殺処分を無くすための事業を立ち上げたのですが、残念ながら軌道に乗せることができませんでした。
会社勤めで貯めたお金を資本金として事業を立ち上げたのですが、お金が出ていくばかりで最後にはほとんど残っていませんでした。学生時代から温めていた夢でしたが、その状況では一旦諦めざるを得ませんでした。
それから4回ほどピボットして今のフレッシュフードの事業に行き着いたのですが、会社が大きくなってからもお金の問題はついて回りました。
このような局面を乗り越えるために、次はVC(ベンチャーキャピタル)や投資家の方からの資金調達が必要になります。VCから見て魅力のある事業であるかが1つのポイントになります。VCにとって魅力的なスタートアップが2〜3ヵ月ほどで着金するのが一般的な中、我々は資金調達に10か月か11か月ほどかかりました。
ただ、その間もずっと事業に力を注いでいたことで、売上は着実に伸びていました。本気でお客様のために取り組んでいる姿勢も伝わり、50社にアプローチした中の最後の1社から出資を受けることができ、無事に資金調達が実現しました。
正直、簡単な道のりではありませんでしたが、振り返ってみると、毎日お客様のために積み重ねてきた努力が、最終的に資金調達という形で実を結んだのだと思います。
動物たちを救うという使命感に支えられて
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
私は早い段階から「自分はどうぶつたちのために人生を賭けるんだ」と心に決めていたので、そのおかげで苦しい中でも進み続けてこられたのだと思います。
これまで資金繰りなどで幾度も壁にぶつかってきました。しかし、どれだけ辛い思いをしても「でも自分はどうぶつたちを救うんだから、何とかしないと」ということに意識を向けることで、1時間後には立ち直ってまた歩き出せたのです。
私が思うに、損得で考えるのであれば、そもそも起業するべきではありません。お金を貯めるだけなら、多分サラリーマンとしてコツコツ頑張るほうがいいでしょう。
自分がやりたいことや夢に人生を賭けるということにこそ、起業の意味があります。私自身そこに大きな意味があるから起業を決意できましたし、今もやり続けられるのだと思います。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
今後の展望については、3つの軸で考えています。
1つ目が新商品の軸で、現在の主力である「ココグルメ」のように、愛猫用ブランド「ミャオグルメ」をもっと伸ばしていこうとしているところです。傾向としてワンちゃんよりもネコちゃんのほうが食に敏感なところがあり、事業としては難しい領域ではあります。
ただ我々の新商品であるピューレタイプのおやつ「にゃっち」は、飼い主さんが不安を感じやすい原材料の安全性や塩分量カットを実現した上で味も自信を持っておすすめできるおやつです。
猫ちゃんの「食べたい」という気持ちと、飼い主さんの「あげたい」という気持ちがマッチするところを狙った、この「にゃっち」から猫ちゃん向けの事業を拡大していく予定です。
2つ目の軸が販売チャネルの拡大で、今後は実店舗での販売に力を入れていきたいと思っています。現在中心となっているオンライン販売はスタートアップにとって参入しやすさが魅力ですが、ペットフード市場全体の2割程度に過ぎません。
多くのお客様はリアル店舗での購入を望んでいます。現在、既に1,500店舗以上に商品を置かせてもらっていますが、さらにオフラインでの販路拡大に取り組んでいきます。
そして3つ目の軸として海外展開も推し進めており、すでに台湾と香港で販売をスタートしました。どうぶつへの愛情はどの国でも同じものだと思っておりますので、我々が誇る高品質のごはんを世界中のご家庭にお届けしていきたいです。
本気で「社会を変えたい」と思っている人を応援したい
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
もしも「社会を良くするために起業したいけれど、怖くて迷っている」という人がいたら、ぜひ前に進んでほしいと思っています。
私も起業は怖いと思っていたので気持ちは分かりますが、私自身はこの道を選んでほんとうによかったと思っています。また、もしも失敗したとしても起業の経験は自分の人材としての市場価値に必ずプラスになるでしょう。
尚且つ、起業の動機が本気で世界を変えるためだとしたら、私はその思いを心から応援したいです。起業の目的は人それぞれではありますが、その中でも「社会を変えたい」という気持ちはとても重要で価値があるものです。もし本気でそう思っている人がいるなら、恐れずにぜひ挑戦してほしいです。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:岩橋 洸太 氏
1989年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、SMBC日興証券にて未上場企業の上場準備、支援業務(公開引受業務)に従事。メイン担当者として IPO3件、 市場変更1件の実績。退社後2017 年株式会社バイオフィリアを創業。ペット領域で複数事業を立ち上げ、フレッシュペットフード事業「ココグルメ」「ミャオグルメ」を展開しNo.1を獲得。愛犬はミニチュアダックスフンドのリヴ(享年15歳)、ぴの(享年14歳)、愛猫は元保護猫のちち丸、ちびちび、ぱん。
企業情報
法人名 |
株式会社バイオフィリア |
HP |
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設立 |
2017年8月 |
事業内容 |
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