スマートソーシャル株式会社 代表取締役 酒井 禎雄

「自分はエンジニアに向いていない」と15歳で悟った酒井禎雄・代表取締役。技術を持つ人が力を発揮できる環境づくりに力を注ぎ、 現在は構想段階から伴走する「課題解決型のサービス」の開発を手がけています。現在の事業の詳細や、今に至るまでの歩みを伺いました。

発注側と開発側のすれ違いをなくす

事業の内容をお聞かせください

「すべらないシステム開発®」のコンセプトのもと、堅牢なセキュリティを備えたWebサービスの開発・運営を行っています。

 

この「すべらないシステム」とは、発注側と開発側で起こりがちな認識のズレやすれ違いを、構造設計とナッジ理論によって最小限に抑え、プロジェクトを着実に前進させるための独自手法です。

 

当社は売上100億円を超えるエンタープライズ企業を含めた複数の大企業と直接取引を行っています。クライアントさまが「インターネットを活用して新たなサービスや事業を立ち上げたい」とお考えの際に、その構想を使える(すべらない)システムとして形にし、ビジネスとして成功へと導くお手伝いをしております。

 

すべらないシステムを実現するには、単なる技術力だけではなく、豊富な経験と高度なバランス感覚が求められます。その点、弊社のエンジニアは、大手企業において大規模Webサービスの立ち上げに携わってきた豊富な実績を持っています。

 

たとえば、ユーザーがスムーズにログインできるUI/UX設計、高度なセキュリティ対策、さらにはサービスがどのように収益に結びつくかといった全体設計まで理解しています。お客さまの構想を実現可能なプロジェクトへと落とし込み、確実に形にしていく体制が整っていること、これこそが当社の最大の強みです。

 

当社が開発に携わったサービスの一つに、「引越れんらく帳」があります。これは、関東圏を中心とした多数の電気・ガス・水道などのインフラ事業者と連携し、煩雑な引越し手続きを一度の申請で完結できる仕組みを提供するサービスです。

 

1億4000万人の個人情報を扱うことから、日本でも最高レベルのセキュリティが求められるプロジェクトであり、国や大手企業など多くの関係機関が関与する極めて高度な案件でした。

 

それでも私たちは、お客さまの課題にエンジニアとともに真摯に向き合い、一つ一つ丁寧に解決を積み重ねることで、このサービスを実現に導きました。

 

こうした「課題解決型」の開発の姿勢を、15年以上にわたって貫いています。

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

もともと私はエンジニアを目指していました。そこで新潟県の長岡市にある、ロボコンで有名な長岡工業高等専門学校に進学したのですが、入学後3日目にして「自分はエンジニアに全く向いていない」と気づいてしまったんです。15歳にして、完全にメタ認知が働いた瞬間でした。

 

ですが家計が厳しかったこともあり、退学して新たな道を探す選択肢はありません。「入ってしまった以上、5年間を生き抜くしかない。」そう腹を決めて始めたのが、ロボコンに打ち込むエンジニア志望の同級生たちの観察です。

 

「どうすれば彼らと仲良くなって勉強を教えてもらえるか」を徹底的に研究し、彼らの話題に寄り添ったり、テストの傾向と対策を分析させてもらい自分用のレポートを作成したりしました。振り返ればこうした人間関係のマネジメントが、今の私の活動の原点になっています。

 

我慢の5年間も終わり卒業後の進路を模索していた頃、大きな転換期が訪れました。NTTの民営化に象徴される「通信の自由化」が始まり、それまで国の機関が担っていた通信事業に、インフラ企業が一斉に参入したのです。

 

この変化にいち早く着目したリクルートの創業者・江副浩正さんは、1000億円もの資金を投じて新規事業を立ち上げました。

 

「世の中を本気で変えようとしているベンチャー企業の雄の挑戦に乗れば、自分自身も大きな成長曲線に乗れるのではないか」自分の人生を変えたいと強く願っていた私は、こう考えました。

 

ただ、普通に受けて簡単に入れる会社ではありません。リクルートに入社していた先輩に、毎日公衆電話で連絡して、営業所に押しかけては「今日はどんな仕事をしたんですか?」「社内で評価される人はどんな人ですか?」と聞き出しました。

 

それは単なる面接対策ではなく、入社後に評価される人材になる準備でもありました。

 

こうしてリクルートへの入社が決まりました。今の環境から抜け出すには何ができるのかを真剣に考え、一歩を踏み出した努力が実を結んだ結果だと思っています。詳しいエピソードは、私のNoteで公開しています。

 

【自己紹介:就活編】「愛されキャラ」で内定をつかんだ。〜事件の渦中、リクルートに挑んだ田舎の太った高専生〜: スマートソーシャル株式会社 代表

 

キャリアの始まりは通信事業部の営業職でした。ここでの私の役割は、営業とエンジニアの間に入り双方の意見を調整する、いわば「コウモリ男」です。営業側はとにかく売ることを重視し、エンジニア側の意見にはなかなか耳を傾けない構図があったため、両者の間にはしばしば摩擦が生じていました。

 

この立ち位置は、新人時代から異動先の部署、そして現在に至るまで変わることのない役割となっています。

 

こうした経験をもとに、モバイル関連のベンチャー企業で働いていた優秀なエンジニアとともに、現在の会社を立ち上げました。

 受託ではなく「共創」

仕事におけるこだわりを教えてください。

お客さまのビジネスがシステムを通じて成功する、それだけを突き詰めています。

 

当社にとってシステムは、あくまで手段の一つ。開発して終わり、ではなくその先にあるお客さまの成功を一番に考えています。お客さまが成功しなければ私たちも成功しない、だから2つは運命共同体なのです。

 

振り返ってみると、新入社員の頃から現在に至るまで、一貫して取り組んできたのは、「エンジニアとともに、お客さまの課題を解決する仕組みをつくること」でした。

 

どれほど優秀なエンジニアであっても、お客さまのニーズを無視し、自らの技術に固執してしまっては、仕事はうまく進みません。常に相手の立場に立ち、歩み寄る姿勢を持つことが、私にとって何より大切な価値観なのです。

起業から今までの最大の壁を教えてください

強いてあげるのならば、開発前の打ち合わせが大変なところでしょうか。

 

エンジニアが技術だけでなく、お客さまのビジネスを理解することが不可欠です。業界や事業モデル、将来の方向性を把握し、最適な提案ができなければ、伝えられた要件をそのまま実装しても、後でズレが生じます。結果として、納期やコストに影響が出て、双方にとってマイナスになります。

 

プロジェクトの最初の段階でお客さまの意図を理解し、必要であれば方向修正を提案することで、プロジェクトを正しい軌道に乗せることを重視しています。

技術を生かす場をつくる

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

「自分にはできないこと」を具体化できる人の力を信じ、それを世の中に届けたいという思いがモチベーションになっています。

 

私は、エンジニアがこの世にない価値を生み出せる、ある意味「魔法」を持った存在だと思っています。私自身は技術を生み出すことはできませんが、それをどう世の中に届け、どう生かせるかを考えることはできます。

 

アップルの創始者であるスティーブ・ジョブズと天才エンジニアであるウォズニアックの関係のように、私は「こんな世界を実現したい」と夢を描き、それを具現化できる人に託す。そして、それによって社会がどう変わるかを伝えていきたい。それがずっとモチベーションの源になっています。

 

以前聞いた、日本一のラーメンチェーンを築いた社長の話にも大きな影響を受けました。料理が得意ではない社長が自分のラーメン屋を開くにあたり、店の味は料理人に任せ、自分はその人が力を発揮できる環境を整えることに注力したのです。

 

私は技術では勝負できません。でも、技術を持つ人が力を発揮できる場をつくる。それこそが自分の役割だと思っています。

今後やりたいことや展望をお聞かせください 

当社を皆さんに知っていただき、成長させていきたいと考えています。

 

最近あらためて感じたのですが、世の中を見渡しても、当社に似た企業はなかなかありません。良い意味で変わっていて、そこに価値があると捉えています。ビジネスモデルには自信があるので、しっかりと広げていくべきだと思っています。

 

新卒の頃から「日本を変えよう」と取り組んできた思いを発信し、共鳴してくれる人たちに、ぜひ仲間に加わってもらいたいです。

【会社説明資料 配布中】採用情報 | スマートソーシャル株式会社

迷ったら、一歩踏みだす

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

どんどん起業してください。堀江貴文さんが提唱した桃太郎理論のように、行動したから成功をつかめるのだと思います。

 

私も30年以上前、人生に迷いながらも「このまま流されてはいけない」と一歩を踏み出しました。勉強も好きではなく、むしろ落ちこぼれに近い存在だったからこそ「少しでも変わりたい」と思えたのかもしれません。

 

勇気を出して一歩踏み出せば、人生の景色は変わります。起業は簡単ではありません。苦労も失敗もあります。でも、自分の人生を自分で切り開けるのは、とても面白いことだと感じています。

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:酒井 禎雄

1968年新潟県生まれ。長岡工業高等専門学校機械工学科卒業。89年4月、株式会社リクルート入社。オリコン株式会社、株式会社サイバードを経て、高いスキルを誇る技術者に技術を活かす場を提供するために、2011年3月にスマートソーシャル株式会社を設立、代表取締役に就任。

 

企業情報

法人名

スマートソーシャル株式会社

HP

▼会社概要

https://www.smartsocial.co.jp/

▼サービスサイト

すべらないシステム開発|失敗しないWebシステム制作ならスマートソーシャル株式会社

▼事例

開発事例など | スマートソーシャル株式会社

設立

2011年3月8日

事業内容

ITシステム構築・移管プロジェクトのマネジメント、Webサイト/スマートフォンアプリの受託開発、常駐型プロジェクト支援サービス

 

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