株式会社Nuginy 代表取締役社長 景山 譲

学習のアウトプットに特化したAI自動採点ツールを提供する株式会社Nuginy。英語資格試験におけるスピーキングやライティングの記述式問題を、公式基準に基づいて高精度で自動採点するプロダクトを展開し、教育現場の負担軽減と学習者の自己成長を支援しています。AI全盛の時代において、ばらつきのない一貫性ある評価にこだわる同社。今回は、代表取締役社長の景山譲氏に、起業の背景やプロダクトに込めた想い、そして今後の展望についてお話を伺いました。

 

採点のばらつきをAIでなくす。教育制度を高める挑戦

事業の内容をお聞かせください

我々は、AIを活用して書く・話すといったアウトプット学習を支援するツールを提供しています。

 

主なサービスは、英語資格試験に特化したAI学習ツールWernickeのほか、駿台と連携した大学の志望理由書添削サービスTGF-Scholarを提供しています。

 

中でも主力となっているのがWernickeです。教育者の負担を減らし、TOEFLやIELTSなどのスピーキングやライティング問題を、公式の採点基準に準拠して約10秒で自動評価する自己学習ツールです。

 

スコアの提示に加え、フィードバックや解答例も表示されます。スピーキングでは、直接話しかけると、自動で採点が行われます。また、サンプルを音声で確認することも可能です。

 

生成AIでも似た機能は可能かもしれませんが、我々はそこを徹底的に研究し、採点のばらつきを抑えた高い評価技術を実現しました。

 

この技術は特許も取得しており、明確な採点基準に基づく一貫性ある評価が大きな強みとなっており、競合との差別化にもなっています。

 

Wernickeは、toCとtoBの両方に対応しています。toBにおいては、教育者向けに、学習者ごとの得点履歴やフィードバックを確認できる管理者画面を提供し、指導にも活用いただけます。

 

単にサービスを提供するだけでなく、導入をご希望いただいた際にはデモを実施し、ヒアリングを通じて必要に応じて管理画面のカスタマイズにも対応しています。

 

1社ごとに柔軟に対応し、最適なかたちで導入できる点も、我々ならではの差別化ポイントです。

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

もともと、英語の家庭教師をしていた際に、タイ在住でIELTSの試験を控えた生徒がいました。

 

生徒から送られてくるライティングの答案を採点していましたが、時差の問題や我々の対応時間に限界もあり、全てを人手で対応することの大変さを実感しました。

 

加えて、人が採点するとどうしても評価にばらつきが出てしまいます。これらの課題を解決する方法として、AI技術の活用に着目したことがサービス開発のきっかけでした。

 

当時はAIが注目され始めた時期でしたが、生成AIは何でも答えられる一方で、全てを浅く答える傾向があり、毎回異なる点数が返ってきてしまいます。

 

これでは学習者が自分の成長を実感できず、継続的な学習にもつながりません。

 

我々が目指したのは、英語資格試験のライティングやスピーキングに特化し、明確な採点基準に基づくばらつきのない評価を行うことでした。

 

最初から起業しようと考えていたのではなく、目の前の生徒の困りごとに向き合う中で、次第にビジネスの可能性を感じるようになりました。

 

一歩ずつ進んでいく中で、取引先から法人化を求められたことをきっかけに、法人としての歩みをスタートさせました。

一人の声に向き合う。教育×AI市場で貫く姿勢

仕事におけるこだわりを教えてください。

我々が大切にしているのは、丁寧に、真摯に向き合うことです。Wernickeも、もともとは一人の生徒の課題に丁寧に向き合った過程から生まれた商品です。

 

TGF-Scholarも同様で、私たちが中学生の頃に通っていた塾とのご縁から、親しくしている先生にサービスをご紹介したところ、新たな提案をいただいたことがきっかけで始めました。

 

小さな声に真摯に向き合い、丁寧に掘り下げていくことで、商品化へとつながったのです。

 

現在も、展示会や知人との会話の中でいただく何気ない声を起点に、商談や検証中のプロダクトがいくつか進行しています。

 

大小様々な課題に向き合った結果、プロダクトが生まれ、法人化につながり、成長していると実感しています。この姿勢は、これからも変わることのない我々の軸です。

起業から今までの最大の壁を教えてください

まさに今が、最大の壁だと感じています。

 

AI分野は非常に注目されており、我々が取り組む教育×AIの領域にも、次々と企業が参入しています。

 

開発当初は、我々のプロダクトは日本で唯一無二だと思っていましたが、今では似たサービスを展開する企業も増えてきました。

 

我々の目標として、日本全国に普及させたいとの思いがあります。その実現には、いかに早い段階で市場に認知され、シェアを確保できるかが重要だと考えています。

 

そうした中で、現在は展示会への出展にも力を入れています。実際に展示会で出会った方がサービスに登録してくださったり、会話の中から新たな商談や取引が始まったケースもありました。

 

また、導入に関してもハードルを感じています。我々のサービスは、塾であれば一度生徒に使ってもらえるといった柔軟なお試しが可能ですが、学校への導入となると高いハードルがあります。

 

生徒の貴重な学習期間を使う以上、導入判断は慎重になりやすく、実績の有無が重視されるため、スタートアップの私たちにとっては顧客獲得の面で大きな課題となっています。

学びの現場から生まれたAIで、日本の教育を変えていく

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

目の前にいるお客様の存在です。これまで、困っている教育業界の方や、生徒に向き合いながら商品開発を重ねてきました。

 

我々のサービスである自動採点AIには、無限の可能性があると信じています。だからこそ、様々な場面でいただくフィードバックや、何気ない一言をとても大切にしています。

 

展示会で立ち寄ってくださった方の話を社内に持ち帰り、会議をすることもあります。小さな声を拾うようになったのは、誰かが決めたわけではなく、自然と皆が心掛けるようになっていました。

 

何気ない会話の中での一言も、きちんとメモに残し、議事録として共有するようにしています。

 

そうした姿勢を大切にしながら、今も変わらず取引させていただいている企業や個人の方々の存在が、開発を続ける大きなモチベーションとなっています。

今後やりたいことや展望をお聞かせください 

我々のサービスを日本全国に普及させたい思いがあります。学習塾から私立学校へと展開していく中で、将来的には公立の小中学校にも広げていきたいと考えています。

 

我々が手がける、教育×AIのアウトプット領域のプロダクトは、教育者の負担を軽減するだけでなく、学習者にとっても新しい学びのスタイルを提供でき、日本の教育そのものを変えることができると思っています。

 

だからこそ、営利や非営利を問わず、誰もが知っていて、誰もが使えるツールとして根付かせていきたいです。

 

たとえば、小中学校で実施されている社会や英語の翻訳など記述式問題においても、採点基準を明確化します。

 

それをAIに読み込ませることで、これまで人の手で行われていた作業を代替するサービスとして開発し、プロダクトの輪を広げていきたいと思っています。

 

どの学習塾でも当社のサービスが使われている状態を実現したいと考えています。

 

スタートは自己資金。自分の色を守る起業のかたち

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

資金調達に過度にこだわる必要はないということです。

 

起業するとなると、多くの方がまず自己資金や資金調達について考えますし、誰かに相談をしても資金面について聞かれると思います。

 

我々は目の前の問題に対処するため、自分たちにできる範囲から始めたことで、少しずつ成長してきました。

 

資金調達にこだわることで、自分たちの価値観やスタイルを見失うこともあると思います。外部からの影響で、本来やりたかったことがずれてしまうくらいなら、まずは自分たちの手で始める選択肢もあるということを伝えたいです。

 

自分たちのビジョンを大切にし、確実に前進できる方法でスタートすることが、最終的には大きな成果につながると信じています。

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:景山 譲

インドネシア、タイで幼少期と学生時代を過ごす。高校入学を期に日本に帰国し、国際基督教大学高等学校に進学。現在は早稲田大学社会科学部に所属。2024年に株式会社Nuginyを設立した。

企業情報

法人名

株式会社Nuginy

HP

https://nuginy.com/

設立

2024年2月

事業内容

特許技術を活用したAI採点プラットフォームを開発し、学習者や教育機関に革新的なソリューションを提供

 

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