【#462】TikTokマーケティングのリードカンパニーが創る、クリエイターの才能を最大収益化する仕組み|代表取締役 若井 映亮(株式会社TORIHADA)

株式会社TORIHADA 代表取締役 若井 映亮
株式会社TORIHADAは、「クリエイターDX」をテーマとしたクリエイターエコノミー支援企業です。TikTokを中心としたSNSマーケティング支援や、クリエイター事務所事業を行いながら、クリエイター向けサービスであるFANMEを運営しています。さらに、急成長するTikTok Shop市場で、セラーとクリエイターのパートナーとしてディスカバリーコマースを推進。新しいコマース体験の創造を行っています。代表取締役の若井 映亮氏に、事業内容や今後の展望なども含めて詳しくお聞きしました。
日本最初期からTikTokマーケティングを推進してきたノウハウを活用した、包括的なSNS支援
事業の内容をお聞かせください
「クリエイターDX」をテーマに、3つの事業を展開しています。
1つ目は、SNSマーケティングの支援を行う広告代理事業です。
2つ目は、SNSクリエイターの事務所「PPP STUDIO」の運営です。TikTokやYouTubeで活躍しているクリエイターとパートナーシップを結んで、案件の営業や進行サポート、ファンの方向けのイベント開催、ライブコマースの準備など、SNSでの活動を中心としたサポートを行っています。
2つの事業の特徴としては、DXによる生産性向上を図っていることと、TikTokを中心とするショート動画プラットフォームに注力してきたことです。そのため、ショート動画プラットフォームにおけるインフルエンサー施策の案件数やクリエイター数は国内最大規模だと自負しております。
3つ目は、クリエイターの方々に向けた自社サービスの開発です。
その1つが「FANME(ファンミー)」というサービスで、マネタイズができる個人のミニホームページを作れます。
動画や写真などのデジタルコンテンツ、チェキやアクリルキーホルダーなどの推し活グッズがスマホ1つで出品できます。
ランダム形式の販売や、コンプリート要素によるファンランキング機能も搭載しています。デジタルデータを入稿するだけで製造から配送まで対応し、無在庫でノーリスクの販売が可能です。
YouTubeとTikTokとの連携も進めており、FANMEに出品した商品がYouTubeの画面下に表示され、インフルエンサーがライブコマース中や動画投稿の下部に自分の商品を紹介できるようになっています。同様の連携をTikTokにもしていく予定です。
DX化ではどのような取り組みを行っていますか?
私たちのDX化の柱は「ピタゴラス」という自社データベースです。ここに動画ごとの再生数、フォロワー数の推移、コメントといったSNSにまつわるリアルタイムデータを蓄積しています。
画面上でハッシュタグの有無やPR表記の有無などでフィルタリングができ、それをワンボタンでPDFやエクセルの提案資料にエクスポートできます。他社では一人ひとりのクリエイターリストを手作業で作成しているケースもある中で、基本的に私たちは自動作成できます。
私たちは単なる瞬間的なデータ取得ではなく、すべての動画において過去から現在まで蓄積しています。これにより、1ヶ月間の再生回数変動とGoogleトレンドといった外部データとの相関分析が可能となり、従来よりも高度なKPI設計と精緻なレポーティングを提供できます。
マネジメント業務のDX化にも力を入れています。クリエイターの方々の誕生日や10万フォロワー達成などの節目をマネージャーがすべてを記憶し、適切なタイミングでコミュニケーションを取ることは現実的に難しいです。
そこでクリエイターデータベースに誕生日、フォロワー数、エンゲージメント率などを統合し、フォロワー数が節目に近づいた時、コメント欄で炎上の兆候が見られた時、誕生日が近づいた時などに、担当マネージャーに通知が送信されるシステムを開発しました。これにより、クリエーターと密なコミュニケーションを取ることができるようにしています。
将来的には、蓄積したデータを活用した金融サービスの展開も考えています。私たちのデータベースには各クリエイターの月間収益をはじめ、さまざまな信用情報が蓄積されています。
現在、年収2,000万円を稼ぐYouTuberやTikTokクリエイターでも、賃貸契約やローンの審査に通らないケースが多いのです。当社のデータを活用し、今まで審査に通らなかった方にも新たな機会を提供していきたいと考えています。
SNSマーケ支援会社が急増する中で、貴社が選ばれる理由を教えてください
まず、当社は日本で最初期に、TikTokのマーケティング事業を始めました。私自身、TikTokマーケティングに関する本を日本で最初に出版し、早い段階から案件実績やノウハウ、ショート動画にまつわる人脈を構築して参りました。
次に、ニューメディアやニューテクノロジーへの対応を重視していることです。AIの活用や、TikTokにこだわらず、様々なSNSに最も早く対応することで、競争力を高めています。
最後は、会社の文化を良くしていくことで差別化できると考えています。まだ途上段階ですが、社員一人ひとりがお客様やクリエイターのことをしっかり考え、思いやりを持って活動していくことが根本的に大事だと思っています。
そうした社風を作り、社員と一致団結してやっていく組織力で選ばれる会社にしていきたいと考えています。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
学生時代からDJとして活動していましたが、2011年頃、東京オリンピック招致に伴う法規制の見直しが進む中で、ナイトタイムエコノミーに対する環境が大きく変化しました。当時、ナイトクラブは法律上深夜営業が制限されており、業界慣習と制度の間にギャップがある状況でした。
音楽・カルチャーの自由な表現の場を守るための署名活動に参加するなど、できる範囲で環境改善に取り組みましたが、すぐに状況が変わることはなく、「音楽活動の継続は難しい」と感じ、一度現場を離れることにしました。その後、新たなキャリアを模索する中でサイバーエージェントに入社しました。
2017年に法改正が行われ、深夜営業に関するルールが緩和されたことを受けて、再び音楽の世界に戻ろうと会社を退職しました。しかし、ブランクの影響もありプレイヤーとしての復帰には難しさを感じました。
そこで発想を転換し、これまで培ってきた知識や経験を活かして、アーティストやクリエイターをサポートする事業を立ち上げました。
誰に対しても誠実であること
仕事におけるこだわりを教えてください。
「敬天愛人」という言葉を大切にしています。「天を敬い、人を愛す」という意味で、稲盛和夫さんから学んだ言葉です。
この言葉と出会ったのは前職のサイバーエージェント時代です。自身の中で努力はしていたものの昇格や昇給の機会をいただくことは叶わず、人間関係にも悩んでいました。
その後起業してから、稲盛さんの本を読み、誠実さや真心を大切にする経営哲学に触れ、それまでの自分の考え方が誤っていたのだと気づきました。それを心がけてリスタートしたところ、色々なことが好転し、人生が明らかに豊かになりました。
会社のカルチャーにも落とし込み「TORIHADA PHILOSOPHY」として定義しました。その哲学をもとに「良い行動」「悪い行動」を小冊子にまとめ、社員が迷った時の指針にできるよう配布しています。
起業から今までをの最大の壁を教えてください
現在もさまざまな壁に直面していますが、これまでに特に大きな壁が2つありました。
1つ目は、事業の方向転換です。TikTok事業は当初、いくつかある新規事業のひとつにすぎず、主軸は受託業務でした。しかし、受託事業での失敗をきっかけに、TikTok事業に注力する決断をしました。
その経営判断によって、当時30人程社員がいましたが、5人くらいを残して去ってしまいました。それはとても寂しく不甲斐なさを痛感する経験でした。今振り返ると、必要なステップだったと感じておりますが、分かりやすい組織崩壊だったと思っています。
2つ目は、昨年の資金繰りです。これまで自己資本での運営を続けてきましたが、初めて外部からの出資を必要とする状況となり、大きな挑戦となりました。
CFOも不在の中、主に管理部長と私の2人で対応し、非常に大変なプロセスでしたが、資金調達の全体像や交渉の進め方など、多くの学びを得ることができました。
失敗すればオフィスの変更や人員削減も視野に入れる必要があるというプレッシャーもありましたが、ひとまず乗り越えることができ、ご縁とサポートに本当に感謝しています。
自分の信念と一致した事業を行う
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
私が進み続ける原動力は、信念に基づいた挑戦をしていることです。
これまでさまざまな事業に取り組んできましたが、ほとんど撤退してしまいました。そんな中でも続けられた事業は、自分がライフワークとしてやろうと覚悟が決まっていた事業です。
その経験から、自身の信念に照らし、退路を断って勝負ができることかというのは非常に重要だと考えています。つまり、モチベーションを保つというよりも、「それだけは絶対に逃げずにやり遂げるんだ」という覚悟を決めきることが大切だと思います。
もうひとつ、大きな後悔も私の背中を押しています。学生時代、私がDJとして活動していたのは、日本でも有数の集客を誇るクラブでした。有名DJ達と肩を並べ、若手ながらトップレベルの現場に立たせて頂いていたと自負しています。しかし、その道を途中で離れてしまいました。その判断を、今でも後悔しています。
今、かつての仲間や後輩たちが、世界のフェスに出演するトップDJとして活躍しています。「もし自分も続けていたら・・・」、そんな思いが消えないからこそ、「あのときの自分を超える何かをDJのルーツを活かして成し遂げたい」と強く思っています。その後悔が、今の挑戦の大きな原動力です。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
今年リリースされるTikTok Shopにおける事業の展開です。
中国ではライブコマースから約100兆円の流通が生まれており、中国版TikTokのDouyinが牽引してます。日本でも、中国の事例と人口とEC化率の差を考えると、約2.6兆円の市場が生まれる可能性があります。
うち10%~20%程度が私たちのようなサポートする会社やクリエイターの手数料売上になると考えられ、2,000~6,000億円の市場が生まれると予想しています。これは現在のインフルエンサーマーケティング市場約1,000億円の2~6倍に相当します。
TikTok Shopは従来のECと異なります。目的を持って商品を探すのではなく、何となく動画を見ている中で商品に出会い、そのまま購入できるディスカバリーコマースという新しい形態です。
私たちはセラーサポート、クリエイターサポート、アフィリエイトパートナーの3つの側面でTikTokからのお墨付きを頂き、現在すでに約100社を超えるセラー様の支援を進めております。将来的には、海外への展開も視野に入れています。
起業こそ、最高に楽しい仕事
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
起業は、大変ですが想像以上に楽しいです。興味があるなら、絶対に挑戦した方がいいと思います。
ただ、何もいきなり社長として起業することがすべてではありません。かくいう私も社長を務めていただいた共同創業者がいたところからスタートしました。自分の覚悟やチャンスがくるまでは、今の環境で一生懸命やることも大切だと思います。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:若井 映亮氏
1989年、東京都生まれ。慶應義塾大学在学中にDJとして活動。大学卒業後、サイバーエージェントに入社してアドテク事業を経験。2017年10月にTORIHADAを取締役として共同創業。創業初期よりTikTokやショートムービーの日本での広がりに可能性を感じ、TikTokでインフルエンサーマーケティング事業を推進する。2020年4月には、ショートムービークリエイターの事務所PPP STUDIOを設立。2025年時点では、所属・提携含め約3000組のクリエイターを抱える日本最大規模のクリエイター事務所としてクリエイターサポートを行う。自身もフォロワー5万人を超えるクリエイターの1人として、ショートムービー・プラットフォームを活用し、クリエイター目線を持って活動のサポートを行う。より個人が活躍できる機会をつくりだし、新たな経済活動へとつなげることを使命とし、日々取り組んでいる。
企業情報
法人名 |
株式会社TORIHADA |
HP |
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設立 |
2017年10月2日 |
事業内容 |
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